2015/04/01

Yahoo! JAPAN のアンケートと検索ログデータを比較した調査




Yahoo! Japan が検索データを使ったおもしろい研究をしています。検索データとアンケート回答で、商品購入検討開始のタイミングに違いがあるかの調査です (2014年10月実施) 。

参考:Yahoo! JAPAN の検索ログデータで見る 「購買プロセスにおける購入検討開始のタイミング」 |Yahoo! JAPAN マーケティングソリューション


検索データという 「行動データ」 と、アンケートからの 「意識データ」 の両方を使って調査し、検証している興味深い取り組みです。


どんな調査をしたのか


この調査は、商品を買うための検討をどれくらい前にし始めたかの研究です。検討開始時点を、検索データとアンケート結果を比較し、タイミングがどう違ったかを比較しています。

商品購入検討開始の定義を、検索データでは以下のように決めています。

「購入の検討を始める」 という行為を 「商品に関する情報収集を始める」 と再定義し、「商品の関連キーワードの検索を始めた時期」 と明確に位置づけました。

こうすることにより、実際に 「検索」 という行動に表れる商品購入の検討開始時期を知ることができると考えたからです。

購入検討をより厳密な表現をすれば、商品の関連キーワードの検索を始めた時期です。


調査結果


「商品関連キーワード検索の開始時期 (赤色グラフ) 」 とアンケートからの 「購入検討の開始時期 (黒色グラフ) 」 の違いを、自動車で見た結果が以下です。x 軸は何ヶ月前に購入検討が開始されたか、y 軸は回答者数です。


引用:Yahoo! JAPAN の検索ログデータで見る 「購買プロセスにおける購入検討開始のタイミング」 |Yahoo! JAPAN マーケティングソリューション


調査からわかったことは2つです。

  • アンケートデータでは、約7割の人が購入前の直前 ~ 4ヵ月以内に購入を検討開始すると回答
  • 一報、検索ログデータでは、購入前の4ヵ月よりも以前の時期から検索を開始している人が多くいる

Yahoo! のこの調査のポイントは、同じ調査対象者について、アンケートと検索の両方をデータとして入手し、検証していることです。同じ人のアンケート回答と検索データを見られるのは、検索ローデータを持っている Yahoo! だからこそできる調査です。


意識データと行動データの 「購入検討開始タイミング」 定義は同じか?


この調査結果を見た時にまず思ったのは、アンケート回答による購入検討開始タイミングと検索データから定義した購入検討開始タイミングを、同列に比較してよいかどうかでした。

すなわち、2つは同じ定義として扱ってよいかという問題です。なぜなら、次のように全く同じではないからです。

  • アンケート:購入検討開始時期
  • 検索ログ:検索開始時期

2つ目の検索ログデータからの定義は、ヤフーは 「購入の検討を始める = 商品に関する情報収集を始める」 と再定義したと説明しています。

検索を開始した時点では、まだ購入を考えていない状態もあり得ます。

例えば、単に知りたくて検索した場合です。ある商品やサービスについて検索をする場合、「XX とは」 と検索するケースです。検索対象のことを知りたいという行動にすぎず、本人はまだ買うかどうかまで至っていません。

「商品関連キーワードを初めて検索したタイミング = 購入検討を開始」 とは全てで当てはまらないと思います。検索データの定義については、表現はあくまで 「商品関連キーワード検索の開始時期」 とすべきです。

もちろん、定義なのでどちらが間違いという問題ではなく、ある意味で決めの問題です。

一方で、アンケート回答からの 「購入検討開始のタイミング」 をどう定義したかは、ヤフーのリリースでは詳しくは書かれていませんでした。

アンケート上でどういう質問のしかた (表現) をしたのかがわからないので、意識データのほうは厳密な定義自体が不明です。今回の検証結果を見る際に、そもそもとして行動データと意識データの定義は本当に同じであるかが知りたいところです。


意識データと行動データをどう活用するか


意識と行動の乖離を、データから検証するという取り組みは興味深いものです。

意識についての調査は、アンケートから知る方法が一般的です。ただし、今回のヤフーが実施したような最大で12ヶ月前までを対象期間にするようなアンケートでは、回答者の記憶もあいまいになっていたり、記憶違い (誤認) の可能性もあるでしょう。

アンケート自体を否定するわけではありませんが、アンケート結果を見る際にはそうした前提情報を持った上で分析する必要があります。

検索ログデータなどの行動データについては、集計結果からどう解釈し、何を読み取るかです。集計結果というファクトから、どんなインサイトを得られるかです。ここが分析者にとって腕の見せどころです。

アンケート結果は正しいという前提に立った場合、今回の調査が教えてくれたのは、意識上の購入検討開始のタイミングよりも、初めて関連ワードを検索するのはもっと前であったという事実です。

つまり、重要なのは、アンケートと検索データで購入検討開始が一致しないというよりも、「関連検索を初めてするのは、本人が購入を検討し始めたと意識しているよりも前のタイミングですでに起こっている」 ということです。

活用の例として、このズレ (検索行動は意識よりも事前に発生) を活かしたマーケティングです。こうした生活者の真実を知るために、

アンケートという意識データと、検索データなどの行動データをどううまく活用するかです。生活者をより深く理解し、どういうアクションを取るかがポイントです。

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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にて 「シニア マーケティングリサーチ マネージャー」 (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝1時間のランニング。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。