2015/04/11

4つの Moment of Truth (真実の瞬間) は、古くて新しいマーケティング理論




今回のエントリーでは、マーケティングでの消費者行動の概念である Moment of Truth (真実の瞬間) をご紹介します。


P&G が提唱した店頭マーケティング概念 FMOT


商品やサービスを提供する企業側と、それらを買う消費者との間には、商品とサービスについての情報量に非対称性が存在します。情報や知識は、企業のほうが消費者よりも多いのです。

企業が商品やサービスを売る際に提示する情報やイメージに対して、消費者は本当にそれが自分の満足につながるかどうか、自分が期待する利用価値を持っているかどうかを、商品購入前にできるだけ知ろうとします。

例えば、店頭で商品を手に取り、表のパッケージ情報だけではなく、裏面の商品紹介を見て価値があるかどうかを判断する、提示価格と天秤にかける、などの消費者行動です。

マーケティングにおいて、この考え方を積極的に取り入れたのが、P&G でした。

2005年に提唱した FMOT (First Moment of Truth の略。エフモットと読む) という店頭のマーケティング概念です。

FMOT とは 「消費者は、店頭で商品を見て3~7秒で魅力的かどうかを判断する」 という考え方です。P&G は、この3~7秒に 「真実の瞬間 (Moment of Truth) 」 があると考えたのです。


4つの Moment of Truth


Moment of Truth は、店頭での真実の瞬間を First Moment of Truth、つまり第一段階と言っています。真実の瞬間には、4つの段階があるとされています。

  • Zero Moment of Truth (ZMOT): 商品を検索したり、口コミ情報を見たとき
  • First Moment of Truth (FMOT): 店頭で商品を見たり手に取ったとき
  • Second Moment of Truth (SMOT): その商品を買って実際に利用したとき
  • Third Moment of Truth (TMOT): その商品をリピート購入するなど好きになったとき

なお、4つの段階を 1, 2, 3, 4 ではなく、0, 1, 2, 3 としたのは、作られた順番という経緯があるからです。P&G が店頭での消費者行動を、その商品が利用される前に顧客が商品を判断する初めての瞬間であると提唱しました。

その後、検索サービスを提供するグーグルが、もっと前に別の真実の瞬間があると言いました。真実の瞬間は、店頭で商品を手に取る前に事前の情報収集にもあり、検索プロセスで商品やサービスを魅力に思うかの瞬間があるという考え方です。これは first より前だから zero である、よって、グーグルは Zero Moment of Truth と名付けました。


顧客が買うのは期待価値である


元ハーバード・ビジネススクール名誉教授である胡セオドア・レビット (Theodore Levitt) は、「顧客が買うのは商品やサービスではなく “期待価値” である」 と言いました。

Harvard Business Review (2008年11月号) に再掲されたセオドア・レビットへのインタビュー記事からの引用です。

顧客は商品やサービスではなく 「期待価値」 を買う

顧客はーーどのような製品やサービスであろうとーー自分が望むところを必ずや満たしてくれるという 「事実」 について、事前に 100% 知ることはできません。したがって、企業は 「我々はあなたを満足させます」 という 「誓約」 を売り、顧客はそれを購入することになります。

商品やサービスを買う消費者の心理は、なるべく得られる価値への期待と、実際の現実とのギャップを小さくしたいことです。企業側からの 「誓約」 を鵜呑みにしてよいのかという気持ちです。買って使ってみたけれど、言われていたほど・期待したほどの満足が得られなかったのは避けたい、期待価値ほど実際の価値はなかったという残念な経験はしたくないという思いです。


期待価値と Moment of Truth


4つの Moment of Truth に当てはめれば、消費者は ZMOT (事前情報収集) で正しい期待値を得ておき、FMOT (店頭) で期待値をより確実なものにします。

SMOT という初めての利用シーンで、期待と実際が交錯します。実際が期待通り、あるいは期待以上であれば TMOT というリピート購入やファンになる瞬間につながります。

P&G が FMOT という考え方をつくったのは2005年でした。FMOT だけではなく、その前後に存在するいくつかの 「真実の瞬間」 そのものは、人々が何かを買っていたどの時代でもあったものでしょう。お金と商品やサービスをやりとりする以前の、物々交換の時代でも真実の瞬間はあったはずです。

Moment of Truth という考え方は、古くもあり新しくもあるマーケティング理論です。



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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。