投稿日 2024/05/04

顧客起点で切り拓く、雑貨店 PLAZA の新たな挑戦

#マーケティング #顧客起点 #商品開発

日常に潜む小さな不満やフラストレーションが、実は大きなチャンスに変わることがあります。

雑貨店の 「PLAZA」 がオリジナルの女性用品を開発した背景には、女性の悩みや店頭接客での苦い経験がありました。

PLAZA の事例から、お客さんの心に響く商品開発からマーケティングへの秘訣、ぜひ一緒に紐解いていきましょう。

PLAZA オリジナルの女性用品の開発


2022年、雑貨店 「PLAZA」 が、「女性の "こころ" と "からだ" を応援する」 プロジェクトを立ち上げました (参考記事) 。

出典: アドタイ

このプロジェクトが生まれた背景は、コロナ禍のキャリアの挫折と店舗休業をきっかけに、生理用品の取り扱いの必要性を感じたからとのことです。

プロジェクトは異なる部門のメンバーで構成され、オリジナル生理用ナプキン 「The Week Sanitary Pad」 とサニタリーショーツ 「SaniBuddy」 を開発しました。

パッケージデザインは生理用品らしくないスタイルです (詳細は後述) 。女性の本音に寄り添ったプロモーション活動を行い、女性の生理期間の感覚を反映したノベルティバッグも提供しています。


顧客起点の商品開発


では今回の PLAZA の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

マーケティングの視点を入れた商品開発というテーマで学びが得られます。

店頭接客での 「不」 の体験


雑貨店の PLAZA は、これまでは女性客と女性のスタッフが中心でありながら、生理用品を取り扱っていないという状況でした。

多くの来店客の女性が 「PLAZA なら生理用品はきっとある」 と思って来店してくれ、お客さんからの 「生理用品はありますか?」 と尋ねられても、「 (生理用品は当店には) ありません」 と答えることが、スタッフにとっては心苦しいものだったとのことです。

このようなスタッフの体験は、PLAZA にとって新たなカテゴリーへの挑戦を促すきっかけとなりました。お客さんのニーズに応えるために、生理用品の取り扱いが必要であるという認識が生まれたのです。

オリジナル女性用品の開発へ


こうした状況や現場からの意向を受けて、PLAZA はオリジナルの生理用品開発へと踏み出しました。

オーガニック生理用ナプキン 「The Week Sanitary Pad」 (出典: アドタイ

2022年3月には、オーガニック生理用ナプキン 「The Week Sanitary Pad」 を (上の画像) 、続いて2023年9月にはオリジナルのサニタリーショーツ 「SaniBuddy」 を発売しました。

生理用ナプキン 「The Week Sanitary Pad」 では従来の生理用品とは異なるユニークなパッケージデザインを採用しました。お菓子やコスメ、雑貨を選ぶような楽しみを生理用品の購入にも提供したいという思いからです。

もともとの PLAZA の世界観を反映しつつも、商品が生理用ナプキンであることを明確に伝えるデザインを目指しました。

女性の奥にある本音をとらえた商品開発


PLAZA は商品開発において、女性の心の中で普段は隠れている気持ちや奥にある本音を捉えることに重点を置きました。

独自に実施したアンケート結果では、女性からは 「生理期間中にジャンクなお菓子が食べたくなる」 という声が多数挙がりました。一般的な健康への考え方は 「 (生理中は) ハーブティーなどで身体を温めるべき」 と言われますが、心の中ではどこか罪悪感を感じながらもジャンクフードを求める女性の心理を見出したのです。

こうした女性への理解は、商品開発に活かされました。

 「The Week」 のノベルティバッグ (出典: アドタイ

たとえば 「The Week」 のノベルティバッグは、生理用品に加えて食べたいお菓子も入れられる大きさのサイズに設計されています。生理期間を少しでも楽しく、女性に生理のときにも前向きに過ごしてほしいという PLAZA からの思いが込められたノベルティバッグです。


心の琴線に響く価値提案


マーケティングへの汎用的な学びにつなげると、PLAZA の事例から学べるのは、お客さんの 「心の琴線」 を捉える重要性です。

奥にある望み


マーケティングの成功のカギを握るのは、深くは困っていなくニーズとしてまだ顕在化していなくても、「実は本音ではこうしたい」 という奥にある望み (顧客インサイト) をいかに捉えるかです。

顧客インサイトとはシンプルに言えば、「人を動かす隠れた気持ち」 のことです。

普段は人の無意識下に眠っているものですが、心の琴線に触れることで 「欲しい」 や 「買いたい」 という気持ちが一気に生み出され、態度変容や行動変容に強く影響する奥にある本音です。顧客インサイトのことを 「心のホットボタン」 や 「心のツボ」 と言ったりもします。

心のホットボタンを押すマーケティング


顧客インサイトが隠れているのは、お客さん本人がまだ気づいていなかったり、わかっていても言葉にして他人にうまく説明できない、あるいは人に言うのを躊躇するような生々しい本音だからです。

マーケティングの役割は、このような顧客インサイトをマーケターが自ら発掘し、見出したインサイト (心のホットボタン) に響く価値として商品の魅力を提案することです。

マーケティングの全体像と醍醐味


最後に今回のまとめとして、マーケティングでのポイントは次のとおりです。

  • お客さんを決める
  • 顧客インサイト (人を動かす隠れた気持ち (心のホットボタン) ) まで深く理解する
  • お客さんの心 (顧客インサイト) にもとづき商品の価値を定義する
  • 商品の魅力をお客さんの心の琴線に触れるメッセージにして価値を提案する
  • 自社商品がお客さんに選ばれる状況をつくる

ここにマーケティングの役割と、そして何よりもおもしろさがあります。

* * *

マーケティングレターのご紹介


マーケティングのニュースレターを配信しています。


気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。

マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。

レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。

こちらから登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!

最新記事

Podcast

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。