投稿日 2024/05/11

部屋を改造しゲーム専用空間に。ビジネスでの理想提示型の問題解決への学び

#マーケティング #問題設定 #理想提示型

一見するとうまくいっているように見えるのに、実は奥には解決されていない問題が潜んでいた…。そんな経験はないでしょうか?

今回は、自宅の部屋をゲーム専用のスペースに改造するという密かなトレンドから、ビジネスへの学びとして問題設定と問題解決の秘訣を探ります。

リビングや子どもの部屋をゲーミングスペースに改造


出典: 日経

家の中でゲームをする空間が進化しています。

リビングや子どもの部屋をゲーミングスペースに改造する家庭が増えているとのことで、住まいに関する SNS 「ルームクリップ」 では2023年のゲームに関する検索水準が2020年の1.6倍になっているようです (参考記事) 。

室内空間をゲーム専用にするとは、どういう部屋なのでしょうか?

具体例を見てみましょう。

さいたま市で夫と2人で暮らす会社員、ことりさん (ハンドルネーム, 44) の自宅2階のリビングにはテレビやソファがない。代わりにあるのが2台のゲーミングパソコンとゲーム機、3台のモニターが並んだ机と、ゲーミングチェアだ。夫婦ともにゲームが好きで、団らんのお供もゲーム。「ゲームをするためのリビングなので、ゲーミングリビングと呼んでいる」 と話す。

10年前に結婚した夫 (32) とはオンラインゲームがきっかけで知り合った。ゲーミングリビングが登場したのは22年に現在の自宅に引っ越してからだ。その前に住んでいた賃貸マンションで2人ともパソコンの前で過ごす時間が長く、「思い切ってリビングをゲーム用のスペースにすることにした」 とことりさん。

 「キッチンやダイニングとゲームするスペースが近いので移動が楽で、私が家事をしている時もゲームをしている夫と会話ができる。一つのスペースで過ごせるので光熱費の節約になるし、いいことずくめ」 という。

インテリアにもこだわった。落ち着きつつ、すっきり明るい空間にするために観葉植物を飾り、調湿・脱臭効果のある壁面タイルを導入。さらに断熱・遮音効果のある内窓を設置して、ゲームで大きな声を出しても問題ないようにした。

遊びに来た母親には 「来客用にソファぐらい置いたら」 と苦笑されたが、「実際に友達と話すのが多いのはオンラインゲーム上なので、このリビングの形が自分たちにとって最も自然」 と笑う。

問題設定と問題解決への示唆


それでは、家のリビングや子どもの部屋をゲーミングスペースに変えているという事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

問題設定と問題解決に示唆があります。

全体最適ではなくなり、いつの間にか非効率に


自宅の部屋をゲーミングスペースにするという話を一般化して捉えると、目的やメインの活動に対して、これまでの仕組みややり方が合わなくなり、全体最適ではなくなってしまったということです。

このような現象は、古い慣習や手順が習慣化し固定化されているため、いつの間にか非効率や不便になってもそれが問題だとは気づかず、改善の動きが起きにくいことを示しています。

だからこそ、こうした状況に目を向け、解決策を見出せればビジネスチャンスに変えられます。

では、問題設定と問題解決への学びを掘り下げていきましょう。

問題には二種類ある


問題解決によっては、そもそも何が問題なのかを明確にするところから始めることが必要になります。

というのも一見すると、目の前の事象や状況を多くの人々は問題だと捉えないからです。理想イメージや本来のあるべき姿を認識することで、はじめて今の現状が問題だと理解できます。

このアプローチを 「理想提示型」 の問題解決と呼ぶことにします。それに対して、誰がどう見ても問題だとわかるものが 「問題明確型」 です。

では、理想提示型と問題明確型の2つの問題設定について、後者の問題明確型から見比べてみましょう。

[パターン 1] 問題明確型


問題明確型の特徴は、見ればそれが問題であることは誰にも明確なことです。

始めから関係者間で問題設定の認識が揃っています。問題解決のイメージは、マイナスをゼロに持っていくことです。

たとえば、売上が減少しコストが変わらなかったことで赤字になっている状況です。誰が見ても問題であることは明確です。

[パターン 2] 理想提示型


もう1つの問題設定が 「理想提示型」 ですが、これは一見するとはっきりと問題であるとは思えないものです。人によって、それを問題と捉えるのかどうかが変わります。

というのも、見えている人には理想とするあるべき姿があり、その理想と照らし合わせると現状が問題だと認識します。しかし理想を持っていない人にとっては、問題だとは思えません。理想が提示されることによって初めて問題だとわかります。

先ほどの問題明確型がマイナスをゼロにするという問題解決だったのに対し、この理想提示型はゼロをプラスにする問題解決です。

売上の例で続けると、理想提示型は売上が前年比 105% の状況を問題だと見なします。

なぜ問題かと言うと、市場全体の伸びは 110% なので、市場の中で優位性を持つ自社は本来はもっと伸ばせたはずである、従って売上が前年比 105% なのは問題と捉えるからです。

では、この理想提示型について、もう少し掘り下げて見ていきましょう。

理想提示型の問題設定方法


理想提示型で最初にやらなければいけないのは、それが問題であるという認識を揃えるところからです。

人によって問題認識の差があり、もっと言えばある人は問題と思っていても、別の人はそもそも問題だと気づいていないからです。

どこが問題なのか、そして、なぜ問題なのかの根拠を明確にします。そのためにはあるべき姿という理想から描く必要があります。

あるべき姿を解像度高く描き、理想と比べた時に現状とのギャップから本当に解決すべきことを問題として設定します。理想と今の現状を対比することによって、具体的な問題箇所をあぶり出すというアプローチをとります。

理想と比較した現状が問題であるという認識を合わせ、そこから問題の所在は具体的にどこなのか、問題箇所を掘り下げて真因追求し、解決するための課題を見出します。

一般的に、誰がどう見てもそれが問題である 「問題明確型」 の場合は、問題を解決したいという機運は高まりやすいです。それに対して 「理想提示型」 では、理想が示されて初めて問題だと気づきます。

よって、そもそもあるべき姿は何かを解像度高く描写することが、適切な問題発見と課題設定につながるのです。

どちら型の問題かの見極めが大事


二種類の問題設定で重要なのは、それは問題明確型なのか、理想提示型なのかをまず見極めることです。

前者の問題明確型であれば、問題であることの根拠は関係者で同意されているので、問題点を追及をするために掘り下げる箇所を見極め、本質的な原因の把握、そして解決策へと進みます。

後者の理想提示型であれば先ほども見たように、まずは理想を描きます。

理想と現状のギャップから、そもそもこれは問題であるという認識を合わせ、なぜ問題だと捉えるかの根拠を明確にし、関係者間で理解を深めます。ここが最初の重要なポイントです。

問題認識が揃ったところで、その後は問題明確型と同じプロセスに進みます。問題箇所の把握、根本原因である真因の追求、そして解決策です。


まとめ


今回は、リビングや子ども部屋をゲーム専用の空間にする事例を取り上げ、そこからの横展開から問題設定への学びへとつなげました

最後にポイントをまとめておきます。

  • 問題設定には2つのタイプがある。問題明確型では、誰もが問題と認識でき、マイナスをゼロに改善する問題解決をとる。たとえば、売上減少による赤字化が問題明確型

  • もう1つの理想提示型は、理想と現状のギャップを通じてはじめて問題だと認識できるもの。あるべき姿を持っている人にとっては問題だとわかる。ゼロをプラスに変える解決を目指す。たとえば売上は前年比プラスだったが、市場伸び率よりも低い場合

  • 重要なのは問題の型を見極めること。理想提示型では理想を描き、現状との乖離から問題を特定し、解決策を実行する


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。