自社のビジネスのお客さんの LTV (顧客生涯価値) の向上を阻む 「隠れたボトルネック」 に気づいているでしょうか?
今回は LTV をキーワードに、LTV を高めるための秘訣を紐解きます。
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こちらの本、LTV (ライフタイムバリュー) の罠 (垣内勇威) から、LTV についてぜひ一緒に学んでいきましょう。
本書の概要
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LTV (顧客生涯価値) は、マーケティングの現場では理想としてやっていきたいと思えても、現実的な運用には難があるという概念です。
LTV を現実的に向上させる方法論
LTV への重要性を認識し取り組みを強化しても、運用が続かず、次第に形骸化していくこともあるでしょう。
この本は、LTV への問題意識を投げかけ、現実的な解決策をもたらしてくれる1冊です。LTV を向上させるためにはどうすればいいかが体系立てて解説されています。
LTV 向上のために 「ボトルネックを解消する」 というアプローチ
本書で前提となっている考え方は、「顧客側に主導権のある顧客行動 (カスタマージャーニー) の全体最適を無理に押し進めて変えようとするよりも、ジャーニーという行動の中でのボトルネックを解消する部分最適の方が LTV 向上へのコストパフォーマンスは良い」 というものです。
お客さんにとってもメリットのある形で、カスタマージャーニーを改善することを目指します。
カスタマージャーニーのボトルネック MAST
ボトルネックが発生している典型的な4つが 「MAST」 です。
MAST は、「Meet (出会う) 」 、「Attract (引き付ける) 」 、「Sense (検知する) 」 、「Trade (商売する) 」 の4つの英語 (ボトルネック) の頭文字からとったものです。
✓ カスタマージャーニーのボトルネック MAST
- Meet 出会う: お客さんに商品を認識してもらうまでの障壁が高いために発生しているボトルネック。入口のハードルが高くなっている
- Atract 引き付ける: 商品の魅力がお客さんに伝わっていない
- Sense 検知する: 顧客接点が少ないためにお客さんの状況がわからない。お客さんの変化やニーズの検知ができていないという顧客接点での問題
- Trade 商売する: 実はもっとお客さんに買ってもらえる余地はあるのに、遠慮して売り込んでいなく、チャンスを逃している
MAST について、それぞれをもう少し詳しく見ていきましょう。
Meet 出会う
Meet でのボトルネックが発生しやすい商材の特徴は、3つあります。
- 単価の高い商材
- 企業 (売り手) のあずかり知らぬところで、購入検討が終わってしまう商材 (例: ホテルや旅館のように比較サイトで購入され、公式の自社サイトには来てもらいにくいもの)
- 商品を所有されていたり使われていても、商品のことを認識されない商材 (習慣的に使うが商品名までは覚えていない関与度の低い日用雑貨品)
Meet というボトルネックを解消するためには、カスタマージャーニーを丁寧に分析し紐解いてき、自社商品のことを認識してもらえるポイントを見つけ出すいいでしょう。
Attract 引き付ける
2つ目の LTV 向上へのボトルネックは、もともと備わっている商品の魅力がお客さんに伝わっておらず、引き付けられていないというものです。
伝わらないのは非対面でのコミュニケーションでよく起こります。たとえばオンライン商談などの非対面の場では、お客さんに説明できる範囲が狭く、時間が少なく、対面に比べると微妙なニュアンスまでは伝えきれません。
また、一般消費者向けでも、EC で購入する場合は実店舗での商品を手にとって実物を確認できないので、商品の魅力は伝わりづらいでしょう。
一方で、対面コミュニケーションでも価値が伝えられない問題は起こり得ます。企業が勝手に価値だと思ったことを強引に売り込んでしまい、むしろ顧客体験を悪くするような過剰なお節介が生まれてしまうからです。
いずれにも共通するのは顧客起点の欠如です。「過剰品質のような魅力もどきの訴求」 はすぐにやめ、お客さんにとって本当に価値のあることは何かを顧客視点で再定義することから見直すといいでしょう。
Sense 検知する
3つ目は、お客さんの状況をそれぞれの顧客接点で把握しておらず、顧客ニーズの発生を検知できていないために発生するボトルネックです。
起こる要因は3つです。
- 顧客情報の未取得
- 顧客シグナルの見逃し
- 顧客データの不足
1つ目は、そもそもとしてお客さんの情報を収集していない、2つ目は取得していてもお客さんの変化や兆候に気づけない、3つ目は察知するための十分なデータがないことからです。
解決策としては、顧客側のニーズがどうなっているのか、お客さんの何を検知したいのかを明確にした上で、必要十分なデータを取得することです。注意点は、目的なきデータ収集や社内での顧客データ統合に陥らないようにすることです。
Trade 商売する
4つ目は、売り手である企業がお客さんに遠慮し過ぎて、営業や販売機会を逃しているというボトルネックです。
売り手が気づいていないだけで、実はお客さんは 「売り込みや提案を待っている」 というケースです。
ここでのボトルネックの要因は3つあります。
- 満足している既存顧客へのアップセルが弱い
- 購入検討している新規顧客へのもうひと押しが弱い
- 人による対面営業が不足している
LTV を高めるために
では LTV を向上させるためには、どうすればいいのでしょうか?
考え方や姿勢
まずは姿勢として先ほども触れたように、お客さんの側に主導権のあるカスタマージャーニーの全体を無理に変えるよりも、ジャーニーのボトルネックを解消する 「部分最適」 に注力するといいでしょう。
そこでまずは、想定するお客さんのカスタマージャーニーを仮説でもいいので作るところからです。ここでは MAST の4つを意識してボトルネックを見極めると効果的です。
もう1つポイントになる考え方は、LTV への指標に完璧なものを求めないことです。
というのは LTV は未来の話であり、正確に予測することは簡単ではないためです。ビジネスの実務においては適切な妥協点を見つけるほうが現実的です。
LTV への KPI 設計
ではどうするかと言うと、LTV への向上に影響すると考えられる 「カスタマージャーニーのボトルネック解消を測る KPI 」 を設定するといいです。すなわち、MAST から落とし込んだ KPI 設計です。
MAST の 「出会う」 「引き付ける」 「検知する」 「商売する」 での KPI を作るために、カスタマージャーニーの全体像を把握することからはじめ、MAST の4つの観点からボトルネックを見極めます。
ボトルネック解消の打ち手としてたとえば、Web サイトのリニューアル、アプリの UI 改善、広告や SNS からの EC への訪問者数の増加などの、単体で成果が出やすく、かつ MAST のボトルネックに効くところからスタートするという方法です。
まとめ
今回は、書籍 LTV (ライフタイムバリュー) の罠 (垣内勇威) をご紹介し、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- LTV 向上には、カスタマージャーニーのボトルネックを特定し、ボトルネックを解消する 「部分最適」 のアプローチが効果的
- カスタマージャーニーでの4つの主なボトルネックとなる 「MAST (Meet 出会う, Attract 引き付ける, Sense 検知する, Trade 商売する) 」 に焦点を当て、カスタマージャーニーの障壁を理解し、改善策を見つける
- 実践的な LTV 向上策として、LTV への向上に影響すると考えられる 「カスタマージャーニーのボトルネック解消」 につながる KPI を設計する
- KPI のボトルネック解消の打ち手は、Web サイトのリニューアル、アプリの UI 改善、EC への訪問者数の増加などの、単体で成果が出やすく、かつ MAST のボトルネックに効くところから着手するといい
ご紹介した 「LTV (ライフタイムバリュー) の罠 (垣内勇威) 」 は、マーケティングへの学びが多くありました。
よかったらぜひ読んでみてください! Amazon はこちらです。
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