自社のビジネスからは 「三方よし」 の価値を提供できているでしょうか?
今回は、CCC のポップアップストア出店支援サービスを取り上げます。
来店者、出店者、そして自社 (CCC) のそれぞれにメリットをもたらすビジネスモデルの仕組みを、どのように構築しているのかを探っていきます。
CCC のポップアップストア出店支援サービス
出典: PR TIMES
カルチュア・コンビニエンス・クラブ (CCC) が、期間限定での 「ポップアップストアの出店支援サービス」 を始めました (参考記事) 。
移動可能な箱形の店舗ブースを貸し出し、商業施設などで一定期間に設置できるようにするサービスです。
様々な出店の用途に対応するとのことで、たとえば、日用品や飲料・食品メーカーなどが新商品を試験販売するといったケースです。EC のみで商品を展開する化粧品や食品などの企業が、消費者に自社商品を実際にお店で試してもらったうえでサイトに誘致するといった企業ニーズにも応えます。
CCC は出店企業に 「T ポイント」 を活用した来店客のデータ分析を提案します。出店企業はテストマーケティングとしての結果や効果を検証できます。
三方よしのビジネスモデル
この事例で注目したいのは、CCC のポップアップストアの出店支援サービスには 「三方よし」 が入っていることです。
三方よし
三方よしとは、もともとは江戸時代の中頃から近江の商人が大切にしたとされる商売理念のことです。
三方とは売り手よし、買い手よし、世間よしです。
自分たち売り手にとって良いことだけではなく、お客さんにとって良い商いをし、さらには世の中全体にとって良い行いにつなげる商売をするという理念です。
では CCC の期間限定でのポップアップストアへの出店支援サービスについて、「三方よし」 を当てはめて見ていきましょう。
買い手よし
まずは買い手からです。
買い手である出店者にとって、CCC のサービスは自社の商品を売る販路ができ、新たな顧客接点を期間限定でも獲得できるというメリットがあります。
期間限定でのポップアップストアは、特にリアルでの実店舗を自社で持たない企業にとって、商品を市場に出す新たな機会になります。出店に際して初期コストを抑えられ、変動費ベースでの出店が可能なため、リスクをかけることなくテスト的な出店ができます。
また、CCC から出店企業へのフィードバックは、顧客理解や商品力、売り方の改善に役立ちます。
世間よし
次に世間よしを当てはめると、ポップアップストアに来店する消費者に恩恵があります。
期間限定のポップアップストアは、一定期間ごとにテナントや商品が入れ替わるので、常に新鮮な買い物体験をもたらします。消費者は様々な商品やサービスに出会うことができ、多様なショッピングを楽しむことができます。
売り手よし
売り手である CCC にとっては、出店料を得られるだけではなく T ポイントを使う機会を生み出せます。ここに CCC にとってのポップアップストアへの出店を支援する1のつ狙いがあると見ます。
もし T ポイント導入店が頭打ちになりそうだとしても、ポップアップストア店で T ポイントの使用を促すことによって、T ポイントの利用者や利用頻度が増えることが期待できるわけです。
さらに、T ポイント経由での消費者データを獲得することにもつながります。
会員属性データや購買データからの消費者データを持っていれば、データ自体が他社へのマーケティングや商品開発に活用できる 「売り物」 にできます。
社会貢献という大局観を持つビジネス
以上を考えると、CCC が移動可能な箱形のブースを貸し出し、商業施設などで一時的に設置できるようにする期間限定ポップアップストアの出店支援サービスは、三方よしのビジネスモデルになっていることがわかります。
CCC の事例は、ビジネスを行う上での大局観の持ち方や、様々な利害関係者への配慮の重要性を教えてくれます。
自分たちの取り組みにはお客さんにどんな価値があるのか、さらには世の中にとってより良いことなのかという社会全体への貢献を念頭に置くことで、持続可能で価値あるビジネスを展開できるのです。
まとめ
今回は CCC の期間限定のポップアップストア出店支援サービスを取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- CCC のポップアップストア支援は、買い手よし、世間よし、売り手よしの 「三方よし」 の理念を体現するビジネスモデル
- 出店者には初期コストやリスクをかけすぎることなく顧客開拓ができる (買い手よし) 。消費者は期間限定の店舗で新鮮な買い物体験を享受でき、多様な商品との出会いを楽しめる (世間よし) 。CCC にとっては、展開する T ポイントの利用拡大と消費者データの獲得を期待できる (売り手よし)
- ビジネスを行う上では大局観を持ち、様々な利害関係者への配慮が大事。自分たちの活動からお客さんはどんな価値を得るのか、さらには世の中全体にとってより良い取り組みからの社会貢献につなげることで、持続可能で価値あるビジネスになる
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