どのようにして、既存のビジネスモデルに新しい風を吹き込むことができるのでしょうか?
今回取り上げる 「エアシェア」 というレンタカーと運転手マッチングサービスは、この疑問への1つの答えを提示してくれます。
従来は別々に考えられていた要素を掛け合わせることで業界の 「当たり前」 を覆し、利用者に今までになかった新しい価値を提供することができます。
エアシェアの事例を通じて、異業種の成功例から自社のビジネスに応用可能なヒントを見つけにいきませんか?
レンタカーと運転手をマッチングするサービス
航空機のシェアリングサービスを手がけるエアシェア (北海道帯広市) が、北海道のニセコで 「レンタカー」 と 「運転手」 をマッチングするサービスを始めました (リリース) 。
※ 3月に2023-24冬季シーズンのニセコエリアでの実証実験を終了しました。2024年夏季以降の道内実証実験第2弾に向け準備を進めていくとのことです
出典: 日経
サービスの代理店はニセコエリアのホテルや飲食店が担います。
サービス利用者はエアシェアのシステム (DRIVA (ドライバ) ) を通じて、レンタカーと運転手をそれぞれ時間単位で契約します。1時間あたりの合計料金は1万円強が中心です。
サービス利用の流れ
このマッチングサービスの利用イメージは、まず車を使いたい利用者が人数や利用時間、出発場所と目的地を指定します。次に、あらかじめサービスに登録されているレンタカーから車種を選び、ドライバーを依頼します。
これで依頼ドライバーが選択した車に乗って来てくれ、利用者はその車に乗り込み、ドライバーに運転してもらって移動ができるようになります。
料金設定と提供の背景
利用料金は、レンタカーの提供者や運転手側がそれぞれ自由に設定できます。
国際的なスノーリゾートであるニセコではタクシーが不足しています。このサービスは第2種運転免許を持っていなくてもドライバーの登録が可能です。
まずはニセコ限定でのサービス提供ですが、将来的には他のエリアや個人所有車の登録も検討しているとのことです (参考記事) 。
学べること
では、エアシェアのレンタカーとドライバーのマッチング提供サービスから、学べることを掘り下げていきましょう。
ユニークなビジネスモデル
エアシェアによるニセコでのレンタカーと運転手のマッチングサービスは、従来のビジネスモデルに新しい息吹をもたらそうとしています。
この事例から学べることは、ビジネスの枠組みを捉え直し、既存のサービス要素を組み合わせることで新たな価値を創出できるという点です。
「当たり前」 を変える
従来は、レンタカーサービスとドライバー派遣サービスの2つは、それぞれが独立したサービスでした。レンタカーと言えば自分で運転するために借りるもの、送迎サービスは送迎業者が提供する車に乗り移動するというサービスです。
一方のエアシェアのサービスは、この 「当たり前」 を変えるアプローチをとっています。
レンタカーを借りるのは同じですが、選んだレンタカーを他の登録ドライバーに運転してもらうという仕組みは、既存サービス要素の 「切り離し」 と 「バンドル (組み合わせ) 」 を巧みに利用しています。
今までのサービスの要素を分解し、新たに再構成することで、ユーザーにとってはより柔軟でカスタマイズ可能な選択肢を、また、提供者にとっては新たなビジネスチャンスを生み出します。
利用者ニーズに合うように需要と供給をマッチングすることで、観光客や地元の人たちにとっても新しい機会や選択肢を提供しているのです。
社会的課題への対応
エアシェアの新しいサービス提供の背景には、ニセコエリアでのタクシー不足の解消という切実で現実的な課題があります。
スキーシーズンの冬の季節に観光客が集中するニセコでは、タクシーが慢性的に足らず、観光客の移動手段が限られるという状況です。観光客にとってはせっかくの楽しい旅行のはずが移動に足止めをくらい、ただ待っている時間だけがすぎてしまえば、ネガティブな滞在・旅行体験になってしまいます。
エアシェアはこの問題を解決するために、レンタカーとドライバーのマッチングサービスを提供することで、既存のレンタカーや送迎サービス、タクシーとも異なる移動体験をもたらします。
地元の人にとっては、ドライバーとして登録する際に第2種運転免許が不要となるため登録ドライバーとして参加しやすく、ニセコに訪れている旅行客は車でのスムーズで効率的な移動ができるようになります。
このサービスは経済的な側面も注目に値します。
利用料金がレンタカー提供者と運転手によって自由に設定できるので、柔軟な価格設定が可能となります。冬季のニセコのように人件費が高騰するエリアでも、供給と需要のバランスが取れたサービスになるでしょう。
既成概念を超えた発想
エアシェアの事例から学べるのは、固定観念や既成概念にとらわれず、当たり前を疑う姿勢の重要性です。
エアシェアは、レンタカーと送迎サービスという今までは独立した2つを組み合わせたユニークなビジネスモデルをつくり上げました。顧客ニーズにもとづいたサービスの再構築を行うことで、新たなビジネスチャンスを見出そうとしています。
また、社会的な課題解決に貢献することで、企業の社会的責任 (CSR) の観点からも価値を提供しています。
これらの点は、どの業界においても応用可能なビジネス構築の考え方であり、ビジネスモデルを模索する際のヒントになります。
まとめ
今回は、エアシェアがニセコで期間限定で展開していたレンタカーと運転者をマッチングする新サービスを取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- エアシェアのレンタカーと運転手マッチングサービスは、従来のサービスの要素を組み合わせることでユニークなビジネスモデルをつくり、新たな価値を創出する事例
- サービスの中身やビジネスモデルの 「当たり前」 を見直し、異なるサービス要素を組み合わせたり異業種の成功例も参考にすることで、新しいビジネスへのヒントになる
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