2017/08/06

書評: おじいちゃん戦争のことを教えて - 孫娘からの質問状 (中條高徳)


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おじいちゃん戦争のことを教えて - 孫娘からの質問状 という本をご紹介します。



本書の内容


以下は本書の商品説明からの引用です。

ある日著者は、息子である父の転勤でニューヨークの高校へ通う孫娘から、アメリカ史の授業の課題で家族や知人で戦争の体験をした人の話を聞くことになったので、戦争のことを教えてほしい、という手紙を受け取る。これがこの書のスタートである。

著者は昭和2年生まれ。陸軍士官学校に入学したものの、戦地に赴く前に終戦を迎えた。

日本の歴史教育 (特に日本史) においては、第2次世界大戦とその周辺の事情について触れることが少ない。そのために多くの人が第2次世界大戦に対する十分な知識を得ることができずにいるのが現状だ。

その意味で、本書は極めてすぐれた近代史教育の素材といえる。日本が戦争に突入した国際情勢が確実にあったこと、アメリカのハワイ併合は実は対日戦争をにらんでのことだったことなど、いまではほとんど述べられないことがきちんと書かれている。

大切なのは、正しかったか悪かったかを考えることではなく、いいはいい、悪いは悪いときちんと整理をつけて把握することだ、という主張は、戦争という悲劇を繰り返さないためにも重要である。「戦争」 ということを知るために、多くの人にぜひ読んでほしい1冊である。

本書は、著者が孫娘の質問に答える形式で書かれています。

著者の孫娘が、戦争を実際に体験した祖父へ戦争について教えてほしいと手紙を送りました。おじいちゃんへの手紙に書かれていた質問は全部で16個でした。例えば以下です。

  • おじいちゃんの生まれたころの日本は?
  • アメリカとの戦争は正しかったと思う?
  • 極東軍事裁判について、どう思う?
  • 戦後の社会を見て思うことは?
  • 天皇について、おじいちゃんの考えは?
  • 日本のこれから、そしてアメリカとの関係は?

祖父は自らの人生を振り返り、孫娘の問いに1つ1つ丁寧に真摯に、自身の体験や経験、思いや考えを手紙に書き、孫娘に伝えます。


歴史の捉え方・教訓の活かし方


合計16個の質問それぞれにへの著者の答えは、興味深く読めました。

それ以上に本書で印象深かったのは、歴史をどう見るか、教訓にするためにどう考えるかという著者の考え方でした。本書の全体を通じて述べられていることです。具体的には以下の2つです。

  • その国の国益という視点から歴史を捉えることの大切さ
  • 歴史の、特に戦争の教訓を活かすためにどう考えればよいか


その国の国益の視点で歴史を捉える


国益の観点から歴史を見ることの重要性について、著者は次のように書いています。本書から引用です。

大正から昭和のはじめにかけての各国の動向を見ると、だれにでもわかるのは、どの国も自国の国益を最優先にしているということである。国民国家は自国の国民の安全と財産を守るためのシステムなのだから、国益最優先が行動原理となるのは当然なのだ。これはいい悪いの問題ではなく、国際社会に働く力学の現実なのである。その点では日本もアメリカも例外ではない。

だから、二つの国の利益が相反したとき、一方にとっては正義でも、その正義は相手国にとっては正義ではない、ということが起こる。これもまた、当然のことだ。

実はこのようなことは常識以前の常識であって、いわずもがなのことなのだ。それをあえていわなければならないのは、戦後の日本にはあまりにも国益を無視した議論が多いからである。日本の国益にとってどうだったのかという視点を欠いたまま、近現代史を論じることが非常に多い。これでは歴史的事実を認識するのに、リアリティを欠くというものだ。

過去の出来事を今の時代の価値観から見ることは、時として真実を見誤ります。当時の時代背景である社会情勢、人々の考え方など、時代ごとの価値観は必ずしも現在の私たちのそれとは同じではありません。

同じ時代でも、自国と相手国でも異なります。それぞれの国が自分の国の国益を優先し、何を考えてどのような行動を取ったかです。双方に正義があります。日本には日本の国益を考えての行動があり、他国にも自国民の国益を優先した結果の行動があるのです。

この視点を持って歴史を見るべきです。


歴史の教訓を活かすために


歴史の教訓を活かすために、どう歴史を捉えればよいかについてです。本書から該当箇所を引用します。

戦争の正邪は軽々しく判断すべきではないし、またできるものではない。

ただ一つ、確かにいえることは、戦争はあってはならないものだということだ。勝つにしろ負けるにしろ、戦争がもたらすものは悲惨でしかないからだ。

大切なのは、正しかったか悪かったかを考えることではない。結果にとらわれず、その中身を一つひとつ正確に吟味して、いいはいい、悪いは悪いときちんと整理をつけて把握することだ。そうしてこそ、歴史に学び、その教訓を未来に生かすことができる。

あってはならない戦争を、日本とアメリカはやったのだ。その責任は日本とアメリカの双方にある。日本は中国大陸に戦線を拡大して誤った。アメリカは日本を戦争以外の選択肢がないところに追い込んで誤った。双方がそういう過ちを犯したのだということをきちんと認識しなければならない。

ところが、結果からものごとを見てしまいがちな人間の性向で、戦争に関して日本はすべてが悪かった、アメリカはすべてが正しかったと考える傾向が確かにある。特に日本はその傾向が強い。

これではいけない。戦争の教訓を真に生かすことはできない。

景子が誤解しないように再度いっておくが、おじいちゃんは決して戦争を讃えているのでも肯定しているのでもない。きみも感じていると思うが、いまの日本人は過去の戦争については自虐に陥っている。総理大臣すらが自虐的になり、こと戦争に関係することになると 「お詫び外交」 一辺倒になってしまう。

詫びなければならないものは、素直に詫びなければならない。しかし、日本はすべて悪かったととらえて、ただただペコペコと頭を下げるばかりなのは、歴史を正しく認識しているとはいえない。むしろ、歴史に対する冒瀆である。自分が生まれ育った国に唾するものである。

いうべきことはきちんと主張しなければならない。そうでなければ、国益を損なってしまう。

特に印象的だったのは、「結果にとらわれず、その中身を一つひとつ正確に吟味して、いいはいい、悪いは悪いときちんと整理をつけて把握することだ。そうしてこそ、歴史に学び、その教訓を未来に生かすことができる」 という指摘です。

歴史とは、ある出来事が結果になり、その結果が原因になり、次の結果へとつながっているものです。歴史とは因果関係の束なのです。

著者の言う 「結果だけにとらわれず」 は、結果を引き起こした原因やプロセスにも目を向けるべきと理解しました。一つ一つを吟味し、良いことは良い、悪いことは悪いと整理すべきであるという指摘です。

引用した後半に書かれているような、全て日本が悪かったという態度・ただ謝罪を繰り返すばかりでは、歴史の未来への教訓は得られません。


最後に


本書は、戦中や戦後を生きた方の貴重な情報、考え方や歴史の見方を示してくれます。

その当時の国益の観点から歴史を見ること、歴史を未来への教訓としてどう活かすか、という2つの視点は忘れないようにしたいです。

全てにおいて日本が悪かったのか、アメリカは正しかったのかというような一方的な見方ではなく、双方に過ちがあったのではないかという観点など、歴史を見る視点の重要性に気付きを与えてくれます。

1人でも多くの人に読んでもらいたい1冊です。



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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。