2017/08/02

書評: 視力を失わない生き方 - 日本の眼科医療は間違いだらけ (深作秀春)


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視力を失わない生き方 - 日本の眼科医療は間違いだらけ という本をご紹介します。



本書の内容


以下は内容紹介からの引用です。

海外で修業を積み、数々の治療法を開発。海外の学会で最高賞を20回受賞の 「眼科界のゴッドハンド」 が語る、日本の眼科の真実。眼に関する日本の非常識、時代遅れを斬る!

併せて最善の治療法を解説。

大学病院、総合病院は練習病院と心得よ / 白内障も緑内障も真に優秀な眼科外科医なら治せる / 「手術はもっと後で」 「薬で様子をみましょう」 にだまされてはいけない / レーシックの真実 / 眼球体操は危険 / 眼は水で洗うな… etc.


眼について知らなかったこと


この本を読んでよかったと思ったのは、眼や眼科医療について、自分の知らないことが多くあったことに気付かされたことです。

例えば本書では眼のことを 「むき出しの臓器」 と表現されています。

眼は衝撃に弱く、埃やゴミ・紫外線にさらされている状態です。視覚情報を得るための器官なので、皮膚や骨で覆うことができず、他の器官に比べてとても傷つきやすいのが眼です。

もう1つ、本書の指摘であらためて知ったことは、寿命が延びている一方で、眼の寿命 (失明せずに見える期間) は追いついていないことです。


日本の眼科医療のレベル


著者の問題意識は、日本の眼科医療の実態です。以下は本書の 「はじめに」 からの引用です。

日本の眼科医のレベルを知っていますか

日本人は、日本の衣料は先進国でもトップレベルだと信じているかもしれません。

しかし、こと眼科手術医療に関して言えば、世界トップレベルからみると圧倒的に遅れており、むしろ低レベルと言ってよいと思います。

日本には優秀な 「眼科外科医」 が極端に少なく、手術技術が高い、できる眼科外科医は、私の見るところ10人程度しかいません。


眼科医療の実態


日本の眼科医療が世界から遅れていることの弊害は、患者にしわ寄せがきます。以下のことが 「はじめに」 に書かれており、私は本書を興味深く読み始めました。

本書からの引用です。

軽視される 「手術の腕」

ところが、白内障をはじめ、網膜剥離、また日本では治療ができないと信じられている緑内障も加齢黄斑変性も、早期であれば手術で治せることがまったく知られていません。私の病院であれば、世界レベルの眼科手術を施行することで、ほとんどの眼の病気を治すことができます。それが先進世界では普通のことですが、日本にいると奇跡の方法にさえ見えるようです。

患者さんは情報を持たないために、治せる眼科疾患でも、あきらめたり、手遅れになったり、間違った治療を受けることで、視力を失っているのです。世界トップレベルでの眼科手術治療であれば、多くの患者さんの眼は救われたはずなのにです。

しかし、日本の、とくに大学病院や総合病院の眼科のような研修病院を中心とするほとんどの眼科では、手術方法、病気の分類、手術機器や材料、薬、そして医師の腕……のどれをとってみても、時代遅れか勘違いしている不十分なレベルが多いのです。患者の眼を救うどころか、視力をさらに低下させたり、あるいはかえって失明にいたらせる治療さえおこなわれています。何もせずにただ時間を引き延ばすか、放置しているにすぎないような治療も漫然とおこなわれており、なくなりません。


適切な対応をすれば治せる


これまで私は、白内障や緑内障、網膜剥離は手術をしても対処療法でしかならず、視力を回復する完治は難しいと思っていました。しかし、この本を読んで知ったのは、適切な手術をすれば治ることです。

適切な手術とは、早期発見をし、高い技術と豊富な経験を持つ眼科外科医に処置をしてもらうことです。

この本を読むと、実態はそうではないようです。適切な対応をしていれば本来は視力が戻ったはずが、不適切な対応で視力が悪化したり、場合によっては失明をしてしまうのが現実としてありました。


研修病院の問題


大学病院や総合病院での研修医の問題も取り上げられています。本書から引用します。

研修病院の実態

さらに、必要悪 (練習は必要だが、できたら人間で練習しない方がよい) ともいえる 「研修病院」 においては、患者を材料にして練習させている実態を、患者に説明することなく、情報を十分に与えずに間違った治療が多くおこなわれているのも、困ったことです。

たとえば、網膜剥離は完全に治せるのが世界の常識ですが、日本では多くが失敗しています。その理由の一つは、眼科手術教育が間違っていることがあります。

(中略)

とくに、子どもの網膜剥離で、研修病院でのバックリング手術と冷凍凝固を最初に受けて治らず、さらに旧式の硝子体手術を追加して治らず、眼がボロボロになってから、当院に助けを求めて来る患者が、日本中から多く来ます。小さい子どもが苦しんでいるのを見て、自分の子どもならと思うと、泣けてくるほど可哀そうになります。

研修病院の問題は、患者を練習台にするということをあらかじめ患者に伝えないだけでなく、手術後に悪い結果が出ても、正しい情報を伝えないで、ごまかす傾向になることです。我々の施設には、日本全国から網膜剥離などの手術を失敗した患者が殺到しています。


価値のある情報を知っているかどうか


本書から初めて知ったことは多くありました。トータルで思ったことは、情報の価値です。

書かれていた内容を知っているかどうかで、自分の眼だけではなく家族など大切な人たちの視力を守ることができます。情報があり、患者として適切な対応ができれば、その可能性を高めてくれます。

情報を持っているかは人生を左右します。本書のケースでは、失明をしてしまうか視力を失わずに済むかです。

あらためて気付かされたのは、自分がわかっていると思っていたことも、メディアやマスコミで言われていることを鵜呑みにしたり、安易なイメージで理解したつもりになっていたことです。

具体的には、白内障や緑内障・網膜剥離については発症すれば治らない症状だと思っていました。他にもレーシックについても、報道される内容や自分が持っていたイメージから、リスクの高い手術だ思っていました。

報道や言われていることを鵜呑みにせず、自分自身で調べ、理解や判断をすることの大切さを本書からあらためて考えさせられました。



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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。