2017/08/18

羽生善治 × 岡田武史が語る 「ひらめきは何から生まれるのか」 が興味深い


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勝負哲学 という本は、将棋の羽生善治氏とサッカーの岡田武史氏が対談した内容が書かれています。



将棋とサッカーの違う立場から、勝負というテーマでの2人の対談は興味深く読めます。


データなしでは勝てない、データだけでも勝てない


対談で印象的だったテーマの1つは、データや論理の位置づけでした。

岡田氏はサッカーにおいては、データは自分の感覚を裏付ける情報でしかないと言っています。

試合中の各選手の動きなどのデータは役に立ち、勝利に不可欠なものという認識です。しかし、一定水準まではデータ重視で勝てるものの、データからの確率論だけでは勝てないレベルに到達する、本当の勝負はそこからであると述べています。

羽生氏もこの考え方に同意します。

将棋の局面を論理から積み上げて予想しても、実戦では理詰めだけでは勝てないときが必ず来る、本当の勝負が始まるのは、そのロジックの限界点の後であると言います。

二人の認識をまとめると、「データなしでは勝てない、データだけでも勝てない」 です。データは勝利への必要条件ではあるが、十分条件ではないという考え方です。


ひらめきと直感


羽生氏と岡田氏の対談は、データに何をプラスすれば勝利につながるのか、どうすればそれを得ることができるのかに話題が移ります。

二人の見解は、ひらめきや直感の重要性です。

岡田氏と羽生氏はそれぞれ、次のように表現しています。本書から引用です。

岡田:答えを模索しながら思考やイメージをどんどん突き詰めていくうちにロジックが絞り込まれ、理屈がとんがってくる。ひらめきはその果てにふっと姿を見せるものなんです。

(中略)

羽生:さきほど十手先も読めないという話をしましたが、では、どうやって手を絞り込むかといえば、まさに直感なんです。平均八十通りの手から直感的にふたつか三つの候補手を選び、そこからさらに歩を動かすと桂馬を飛ぶといった具体的なシミュレーションをするのですが、このとき残りの七十七 ~ 七十八の可能性を検討することは基本的にはしません。

直感によるオートフォーカス機能を信用して、直感が選ばなかった他の大半の手はその場で捨ててしまうんです。最近のカメラには自動焦点機能がついていて、カメラが自動的にピントを合わせてくれますが、直感の作用はあれによく似ています。

データや論理は、集めたり作ろうと思えばいくらでもできます。勝負で最終的に1つに決断しなければいけないとき、答えを出さないといけないときに、絞ったり決めるのに必要なものが、ひらめきや直感であるという考え方です。


ひらめきや直感は何から生まれるのか


羽生氏は直感はヤマカンとは異なると言います。

何もないところから思い浮かぶものではなく、もっと構築的なもので、今までの経験や努力の積み重ねを通して得られると表現します。

岡田氏も直感やひらめきの後ろには、たくさんのものが詰まっていると述べています。直感とロジックの関係について、「直感はロジックを超えるものだが、同時に直感はロジックによって支えられている」 と説明されていました。

これは、「データは勝利に必要だが、データだけでは勝てない」 につながります。直感やひらめきはデータという支えがあってはじめて得られるものです。何もないところにいきなり直感は生まれません。


ロジックとひらめきは直列関係


データやロジックと、直感やひらめきの関係で思ったのは、並列ではなく直列ということです。

一般的に、データやロジックは左脳、直感やひらめきは右脳というイメージで理解されています。左脳と右脳で捉えると、ロジックとひらめきは左右に並列している印象を受けます。

しかし、「ロジックがひらめきを支えている」 と位置づけると違った捉え方ができます。ロジックとひらめきの関係は横に並ぶのではなく、ロジックが先にありその上にひわめきが乗っているという位置関係です。

何もないところからひらめきは生まれない。データやロジックは必要であるがそれだけでは到達できないレベルがある。ロジックはひらめきを支えている。仕事での自分の専門分野にも当てはまる、示唆に富む話でした。



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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にて 「シニア マーケティングリサーチ マネージャー」 (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝1時間のランニング。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。