2013/02/03

TEDxTokyo yz 3.0 ~de-mosaic-ing~:自分にとって忘れられない翼の話

昨日は、TEDxTokyo yz 3.0 ~de-mosaic-ing~ に参加してきました(@表参道の青山学院スタジオ)。

TED のコンセプトを受け継いだ団体である TEDxTokyo が、「TEDxTokyo yz」として開催したのが今回のコミュニティイベント。yz というのは Y 世代・Z 世代のことで、10代-30代に焦点を当てているものます(TEDxTokyo yz についての詳細はこちら)。

友人が今回の TEDxTokyo yz 3.0 の運営リーダーをやっていたこともあり、招待してもらい参加することができました。あらためて感謝です。

TEDxTokyo yz に参加し、刺激をもらったり色々と考えさせられたりしました。Ideas worth spreading というコンセプトで開催される TED の動画プレゼンはよく見ていたりしますが、参加してライブを体験すると、全く違います。

書きたいことはいくつかあるのですが、今回のエントリーではそのうち最も考えさせられたことを取り上げようと思います。

■ 若き実業家・大関綾さんのプレゼン

今回のスピーカーは総勢10名で、第一セッションの最後に登壇されたのが、大関綾さん(株式会社ノーブル・エイペックス代表取締役社長)でした。以下は TEDxTokyo yz で紹介されている大関さんのプロフィールの引用です。

14歳でビジネスコンクールに出場して最年少記録樹立、二冠を達成。

クールビズ運動が始まった頃、ノーネクタイ・ワイシャツ姿のビジネスマンに対し「だらしない、かっこ悪い」と感じたのがきっかけとなり、クールビズ対応・新感覚ネックウェア”ノーブルタイ”の研究開発を始め、2010年高校在学中(当時17歳)に起業。ブランドコンセプトは「卓越したデザイン、優れた機能性、他に類を見ない新規性を持つ商品の提案」。

そのデザイン性・機能性・新規性が認められ、国内メディアをはじめ海外メディアからも注目を集め、2012年春に自社ブランド ”Aya Ohzeki” を立ち上げる。全国百貨店・小売店・ECサイトでの販売の他、新たに香港でも販売を開始。

2013年よりアメリカ進出が決定。「平成のココ・シャネル」になることを目標に、Aya Ohzeki ブランドを世界に広げるため活動中。

大関さんのプレゼンは彼女の座右の銘から始まりました。尊敬する Chanel 創業者であるココ・シャネル(1883-1971)の言葉だそうです。()内はフランス語でプレゼン内には出てきませんでしたがせっかくなので付けています。

翼を持たずに生まれてきたのなら、翼を生やすためにどんな障害も乗り越えなさい。(Si vous êtes née sans ailes, ne faites rien pour les empêcher de pousser.)

この言葉を知った時、大関さんは考えたそうです。自分にとっての翼とは何か?そして行き着いたのが「発想力」でした。なぜなら、中学生くらいの時からなりたいと思っていた実業家にとって大切な要素だからです。

大関さんが次に考えたことは、起業するためには社会のことを知る必要がある、ということでした。

あらためて身の回りをその視点で見てみると、大きな資本力・組織力を持つ大企業が社会を支配している現実に気づいたそうです。また、グローバル化により安いものがたくさん入ってくる。彼女の結論は、大企業やデフレに影響されないビジネスにしたいというものでした。

そのために何をすればいいのか。その後に大関さんは知的財産という存在を知ります。色々と知的財産について調べていくうちに、知的財産は新しい発想から生まれていることに気づく。だから発想力を磨きたい。

では、発想力をつけるためにはどうすればよいのか。彼女の答えは「とにかく24時間考え続けること。常に考えること」でした。

例えば、買いものとかで外を歩く時は発想力を鍛える絶好の機会だそうです。不便なものはないか、改善してより良くできるものはないかを常に考えることです。

こうした積み重ねで発想力が磨かれていきます。1つ1つのアイデアは小さなことでも、発想力トレーニングは商品開発や改良に役立つとのことでした。

アイデアについての大関さんの考えは、「アイデアは天から降ってくるわけではない、アイデアは考え抜いた末に生まれる」。

発想力はアイデアを生むツールであり、彼女にとっては夢を実現する「翼」。大関さんはプレゼンの最後をこう締めくくりました。

どんなことでもする覚悟を持ち、それを実行すれば、翼は手に入れることができる。

■ 自分にとっての翼は何か?

大関さんのプレゼンで「私にとっての翼は何か?」という言葉が発せされた時、自分にも問いかけられているように思いました。「自分にとっての翼は何か?」には根源的な問いであるように感じました。

ココ・シャネルの言葉の翼とは、今は持っていない能力/スキルのことだと理解しています。たとえ今は持っていなくても、それを望む強い気持ちがあればどんなハードルも越えていくことができる、と。

では自分にとっての翼は何か?私の場合は「考え続ける力」です。少なくとも日中の活動している間は、何かを考え続けていたいと思っています。

仕事のこと、読んでいる本のこと、ネットの情報を見ている時、ニュースについて、他には家族だったり将来のこと、それこそあらゆるものについてです。ちょっと考えて終わりではなく、ずっと考える・思考体力をもっと鍛えたいと思っています。こうしてブログを書いているのも、目的の1つはそのためです。

■ 翼を生やすことよりも重要なこと

「翼を持たずに生まれてきたのなら、翼を生やすためにどんな障害も乗り越えなさい。」

この言葉で忘れてはいけないと思うのは、翼を生やすことがゴールではないということ。翼はあくまで大空を羽ばたくためのツールです。何のために翼を生やしたいのかが重要です。

大関さんの場合は明確です。実業家になりたい、そのために必要なのは発想力です。これが翼です。自分の夢の実現というゴールから逆算して翼が位置づけられています。

では自分にとって、何のために翼を生やしたいのか。これが大関さんのプレゼンから問われた宿題でした。

考えてみると、私の場合は明確な目的がまだ定められていないことに気づきました。

正しい順序は、思い描くゴールがあって、そのために必要な能力を磨くことです。シャネルは「翼を生やすためにどんな障害も乗り越えなさい」と言っていますが、逆に言うと、どんな逆境でも手に入れたいという覚悟がないと、それは翼ではないと思います。

翼を手に入れ、どこへ飛ぶのか、どんなふうに飛びたいのか。2013年の新しい年も1ヵ月が終わりました。今年のまだ早い時期に、考えさせられる自分への問いに出会えてよかったです。

★  ★  ★

TEDx のようなイベントに参加したのは今回が初めてでした。イベントの最後の最後まで運営スタッフさんが真剣で、何より自分たちが楽しむスタンスがこちらにも伝わってきたのが印象的でした。あらためて、ありがとうございました。


※参考情報

TEDxTokyo yz
About|TEDxTokyo yz
Aya Ohzeki Official Site


2013/02/02

ローマ法王に米を食べさせたスーパー公務員の 「心揺さぶる3つの言葉」


ローマ法王に米を食べさせた高野誠鮮氏


ローマ法王に米を食べさせた男 - 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか? という本をご紹介します。読んでいるうちに元気がもらえる本でした。



本書の内容


以下は本書の内容紹介からの引用です。

石川県羽咋市の市役所職員・高野誠鮮氏は2005年、過疎高齢化で 「限界集落」 に陥った農村を含む神子原 (みこはら) 地区の再生プロジェクトに取り組み、それが大成功を収めるまでの紆余曲折とアイデア満載、感動的実行力のプロセスを克明に記す。

高野氏は数々のユニークなアイデアを次々と繰り出し、そのアイデアを驚くべき行動力で実行していく。その結果、多くの若者を誘致し、農家の高収入化を達成!

非常識と一般では思われてしまうかも知れないことを恐れることなくアイデアを自由に発想し、そして、それを躊躇なく、しかし確実に実行する、高野氏の仕事の流儀に大いに学ぶための、多くのヒントがちりばめられている一冊。

2013/02/01

朝日新聞はなぜ「録画再生率が視聴率上回る例」を一面で報じたのか?




朝日新聞が、テレビの録画再生を含めた視聴率の実態を報じました(2013年1月31日付)。昨日の新聞の1面と、3面の解説記事で取り扱われています。

「ドラマは録画」くっきり 再生率が視聴率上回る例も|朝日新聞

記事の出だしから引用です。

テレビの録画再生を含めた視聴率の実態が、朝日新聞が入手した調査結果で初めて分かった。視聴率は放送時間中に見られた数値しか公表されていないが、視聴実態をより反映した録画を含めた数値をみると、人気ドラマの中には録画再生が放送中を上回る例もあった。

テレビ放送が始まって2月1日で60年、視聴率調査が始まってから半世紀以上がたつが、公表数値が視聴実態と離れつつあることが浮き彫りになった。

いくつかの録画再生率は下図の通りです。

確かにドラマ「ラッキーセブンスペシャル」の1/3放送分については、放送中に見たリアルタイムでの視聴率:12.6%、録画再生率:13.5%と、録画での視聴率が放送中のそれを上回ったようです。なお、今回の録画視聴率の定義は「録画した番組を放送の7日後までに再生した人の割合」とのことです。


出所:Yahoo!ニュース

■ 驚いたのは朝日新聞の1面に掲載されたこと

この記事を見た時にまず驚いたのは、視聴率のデータ自体よりも、今回のニュースがそもそも報じられたことでした。なぜ朝日はこのニュースを配信したのでしょうか?その意図や裏が非常に気になりました。

その前に少し前置きを書いておきます。

「録画での視聴率を含めない放送中のリアルタイム視聴率だけでは不十分」というのは、業界では昔からある不満です。自分の TV の視聴を考えてみても、録画して後から見るというタイムシフト視聴は当たり前のようにやっています。これが正確に反映されていない今の視聴率では実態が捉えられていないわけです。

背景には、ビデオリサーチが公表している600世帯での視聴率が絶対的な意味を持っていることがあります。

600世帯での視聴率はTV番組の人気のバロメーターに使われ、TVCM の広告費を出すためにも使用されています。テレビ視聴の指標として唯一無二の存在です。「通貨」とも呼ばれるほどです。

しかし、通貨である視聴率には録画再生率が含まれないために、録画視聴率はわかりません。つまり通貨として広く使われているが、価値が正しく付いていない(実態を捉えきれていない)のです。

なお、朝日記事の視聴率は通常の視聴率とは異なるものを使っています。「通常の」というのはビデオリサーチの関東600世帯からなるピープルメーター(PM)という機械を使った調査結果から出る数字です。

朝日の記事で「公表数値が視聴実態と離れつつあることが浮き彫りに」とある公表数値というのが通貨として使われているこの視聴率のことです。一方、同記事にある録画再生率はそれとは全く別の200世帯での調査結果です。両者は単純には比較できないです。

ここまでが前置きです。

今回の朝日の記事について、なぜ驚いたかの理由は、

  • 朝日新聞は朝刊の1面と3面に掲載した。国会も始まり、国内外でのニュースも色々ある中、かなりの力の入れようである
  • これまで表に出てこなかった「録画再生率」を公然と出してきた
  • その録画再生率は「通貨である視聴率」にはなかった指標。記事では単純に比べられないとしているが、通貨視聴率の絶対性を崩しかねない。視聴率が複数あるダブルスタンダードは、業界的にかなりタブーのはず(通貨は1つ)
  • データソースはビデオリサーチと書かれているが、そもそもビデオリサーチやバックにいる電通はこのニュース内容を事前認知はしていたのか。記事掲載は許容されていたのか

ビデオリサーチや電通はこのニュース配信にGOを出したとは思えません。朝日のニュース配信には何か強い意図を感じます。

■ なぜ朝日は録画再生率ニュースを流したのか?

なぜ朝日はこのニュースを配信したのでしょうか?その裏にはどんな意図があるのかをいくつか考えられることを書いておきます。

1.TV 番組の人気度を正しく認知してもらうため:人気度とは正確には視聴世帯率の高さ。通常の視聴率では放送中に視聴するリアルタイム視聴だけだが、録画をして後からの視聴も含めるとこんなに高い、というメッセージ。

2.TV 全体で言われる視聴率低下の原因を伝えるため:リアルタイム視聴だけ見ると低下傾向にあるが、録画も含めるとそんなことはない、という反論。

3.現在の「通貨である視聴率」への不満を表している:上記のように、通貨とも呼ばれるにもかかわらず正しく視聴実態を捉えているとは言えない視聴率。別データを具体的に提示することで、事実を反映していない不満を伝えたかった

4.視聴率を新しくするべきとの主張:3の不満への先として、より正しい視聴率を出してほしい意思表示。記事の最後のほうに書かれているのが「米国ではすでに録画も含む視聴率が公表されている。(中略) 実態を正確に測ろうとの試みもあるほどだ」。さらにリサーチ評論家の藤平芳紀氏のコメントが続く。以下は記事から引用。

技術の発展で視聴形態は劇的に変化し、自宅以外のあらゆる場所でテレビは見られている。メディアのあり方に大きな影響を与える基礎データなのだから、録画も含めて実態を正しく反映させた調査結果が世に出されるべきだ

■「通貨」視聴率のそもそもの問題点

民放では、番組の途中や番組と番組の間に CM が放送されます。現状では、A という番組の視聴率をもってして、番組 A の中で流れたCMの視聴率を出しています。

しかし、本来は番組視聴率と CM 視聴率は分けるべきなのです。もっと言うと、CM は数本が連続して流れるのでそれぞれの CM に対して視聴率を出すのが望ましいです。

ここで問題になるのが、番組の視聴率 = CMの視聴率なのか?という点です。多くの人は CM に入れば他のチャンネルに切り替えたり、席を外したりします(中座)。この状況では番組ほど CM は見られません。

録画での再生になると、CM スキップはもっと起こるはずです。リモコン1つで CM を飛ばせ、早送りをすれば CM は見られません。リアルタイム視聴での視聴率以上に録画視聴率においては CM の視聴率を正しく測れていないことになります。

以上から、個人的に思う視聴率の問題は以下です。

  • 「TV 番組視聴率 = CM 視聴率」が成り立たないのが実情。よって、TV 番組視聴率と CM 視聴率は本来は分けるべきだが、現状は1つの視聴率が使われている。これでは CM 視聴率が正しく測られていない
  • 民放のビジネスは CM から得られる広告費で成り立っている。にもかかわらず、その広告費を出すための CM 視聴率が正しくないという構造。広告費算出に使われている GRP には CM 視聴率を用いるべき
  • 視聴率に録画再生率を含めたとしても、依然として CM 視聴率が実態を正しく捉えていない現状は変わらない


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社概要はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。