2013/02/10

書籍 「究極の身体」 がおもしろい




究極の身体 という本をご紹介します。



本書の内容


本書の内容紹介からの引用です。

「ゆる体操」 の創始者であり、武道と現代スポーツの双方に通じ、日本古来の身体の動かし方の神秘を実践と体験を通じて研究してきた著者の身体論、待望の文庫化。

豊富な図解で、真の人体のすばらしさ、可能性がわかる。上下左右に動く魚類の脊椎、獲物を狙う猛獣の四肢を取り戻す。読むそばから身体の動きが変わってくる。自分の身体への希望が湧いてくる本。

身体構造や運動のメカニズムについて独自理論が展開され、わかりやすく書かれていました。


究極の身体とは


本のタイトルでもある 「究極の身体」 の定義についてです。

究極の身体とは、「人体の中で眠っている四足動物、あるいは魚類の構造までをも見事に利用しきることで生まれる身体」 です。


人間の身体が持つ 「四足動物構造」 と 「魚類構造」


究極の身体の定義は、人間の進化プロセスから考えられたものです。

脊椎動物の進化は、魚類 → 爬虫類 → 哺乳類 → 人間、と経てきました。著者は、人間の身体には今も魚類や四足動物 (爬虫類や哺乳類) の構造が残っていると言います。

しかし、普通の人には意識されておらず、魚類や四足動物の身体の構造を活かしてはいないとのことです。著者が言うのは、人間がせっかく持っている身体の潜在的な仕組みを有効活用できていないことです。

魚類の構造と、四足動物の構造は、それぞれ次のような運動を可能にします。

  • 魚類運動:脊椎を使った動作
  • 四足動物の運動:脊椎の体幹主導の動作、4本足主導の動作

両方ができるのが究極の身体です。再度、究極の身体の定義とは、「人体の中で眠っている魚類・四足動物の構造をも利用しきることで生まれる身体」 です。

著者が強調しているのは、人間の身体運動の原点は魚類にあることです。

例えば、生まれてまだ間もない人間の赤ちゃんのハイハイの動きと、魚の泳ぎ方の仕組みには共通点が見られると書かれていました。上から見ると、同じ仕組みで動いているとのことです。


人間は身体能力が退化したという自分の認識


究極の身体の背景にある著者の考え方は、魚類や四足動物の両方を受け継いだ人類は進化論上究極の身体構造を持っていることです。今ままでの自分の考えとは、異なる捉え方でした。というのは、人間は進化とともに身体能力は退化したと思っていたからです。

具体的には、以下の通りです。

ヒトの身体構造の特徴は二足歩行です。四本足で動く他の哺乳類や爬虫類にはない動作です。二足歩行から、人間は両腕の自由を手に入れました。

このメリットは計り知れません。採集や狩猟による食料の確保・住処をつくり・衣服により体温を一定範囲に保てるという衣食住へのメリット、火をおこす、道具の発明、文字も書けるようになりました。

狩猟社会という他の動物とあまり変わらない社会形態から、農耕文化が起こり、産業革命による工業化、情報化革命と、他のどんな動物も成し得なかった高度な文明に発達したのです。

一方で、二足歩行のデメリットもあります。四本の足で自重を支えていたのが二本になったために不安定な身体構造になりました。

人間は、ちょっとした段差や何もない所で転んで怪我をしてしまいます。歩行や走行の動作スピード、持久力、パワー、等々は他の動物に比べて見劣りする存在で、文明の発達の影で身体能力が劣ったのは二足歩行進化による必然だと思っていました。以上がこれまでの私自身の認識です。


著者の認識は逆


しかし、高岡氏は次のように言います。魚類や四足動物の両方を受け継いだ人類は進化論上は究極の身体構造を持っていると。ただし、究極の身体を持っているにもかかわらず、現在の人類の多くはその身体資源を使いきれていないというのが、著者の指摘です。


興味深かった身体の構造


本書には、魚類構造と四足動物構造のこと以外にも、様々な興味深い内容が書かれていました。具体的には、次の通りです。

  • 身体使いの達人は、身体の各パーツを分解し、それぞれ個別に動かし分けることがでできる (身体分化)
  • 重心とセンター (軸) の重要性。センターとは、身体の重力線とほぼ一致するところを通る身体意識。センター意識が構築されると潜在的に、常時重力線の意識が存在することになる
  • 筋肉ではなく骨で立つ
  • 出足に体重をかけるのはつま先ではなく踵から。踵で踏み出す感覚。このほうが無駄な動き (体重移動) は少ない
  • 究極の身体に不可欠なのは重心を意識すること。そのために脱力が必要。立つという動作例では、立つためのギリギリの筋出力で立っているのが脱力できている状態
  • 究極の立ち方は、吊り人形のように頭部の糸を持って吊り上げ、そこからゆっくり下ろして足を接地させたような立ち方 (緩重垂立) 。体重を支えるギリギリのところまで力を抜いたプラプラの状態

理論としてはどれもおもしろいものばかりです。一方で、究極の身体を手に入れるためにはハードルが多く、さらに、それぞれが高いというのが率直な感想です。

できるところから取り入れてみたいです。重力と重心・軸を意識すること、脱力、踵からの体重移動、腕は肩甲骨から動かす意識、脚は股関節や脊椎とつながる大腰筋 (インナーマッスルの1つ) から踏み出すことを意識する、などです。

身体動作や身体のメカニズム、身体構造に興味のある方におすすめの本です。



最後に


学生の時にやっていたのがカポエイラでした。ブラジルで生まれた、格闘技とダンスの両方の要素を持ってるスポーツです。以下はカポエイラを紹介する動画です。


Best Capoeira Brazil (Extended Version) | YouTube


カポエイラがきっかけで考えるようになったのが、身体の構造だったり動かし方でした。始めはどうすればうまくなるのかを考えていたのが、次第に身体構造そのものに関心が移っていきました。

当時の結論は、身体をいかにうまく動かすか/コントロールするかのポイントは2つでした。

  • 肩甲骨と股関節を柔らかくし可動域を高めること
  • 自分の身体の 「重心」 と 「軸」 を意識すること

これは今も変わらない考え方です。あらゆるスポーツや身体運動に共通するものと思っています。

学生時代は今よりも時間もあったこともあり、身体動作系の本も読んでいました。今回のエントリーでご紹介した本は、学生当時に読みたかった1冊です。

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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。