2015/02/01

書評「戦後史の正体」:日本の戦後史を、アメリカに対する「自主独立派」と「対米従属派」の視点で俯瞰する

今年2015年は、終戦70周年という節目の年です。

2015年が始まって1ヶ月、戦後70年ということで注目を集めているのは、安倍首相の「談話」がどういった内容になるのかです。

個人的に違和感があるのは、談話内容に議論が集まりすぎている点です。もちろん、時の政権が先の戦争に対してどういったスタンスなのかを軽視するつもりはありません。しかし、文言をどうするかなど、あまりに細かい点がフォーカスされすぎています。

思うに、戦後70年というタイミングで振り返るべきは、その70年という中身ではないでしょうか?すなわち、1945年から現在までの日本の歩みを総括すること。政治家や政権に任せるのではなく、日本国民の一人ひとりが戦後の歴史を知ること。これこそが、今必要なことだと思っています。

■日本の戦後史を、アメリカに対する「自主独立派」と「対米従属派」の切り口で俯瞰する

戦後70年をいかに俯瞰するか。

そのために読んでよかったのが「戦後史の正体 1945-2012」という本でした。

本書の特徴は、戦後の歴史の全体像を見るにあたって、優れた切り口を提供してくれることです。それは、日米関係において、対アメリカに対して「自主独立派」「対米従属派」のどちらなのかという視点です。

アメリカからの日本への要望や圧力に対して、
  • 自主独立派:少々アメリカとの間に波風を立てでも、日本の国益上守るべきものがある時や、アメリカの言いなりになると国益上マイナスになる時ははっきりと主張する
  • 対米従属派:常に米国との関係を良好にすることを目指す。できるだけ言うとおりにし、その中で日本の国益を最大化することを考える



本書を読むと、戦後70年間、日本の政権は自主独立派と対米従属派が、せめぎ合い、時に入れ替わってきたことがよくわかりました。

自主独立路線 vs 対米従属路線の視点により、戦後の国内政治だけではなく、外交、産業政策、軍事の理解が進みます。「歴史は過去を知るために学ぶのではなく、現在起こっている問題を理解するために学ぶものである」とは著者の言葉です。

■アメリカの対日本方針の変遷

本書を通して興味深いと思ったことは、アメリカの日本に対する方針は時代ごとに何度か変わった点でした。戦後のアメリカの対日方針の変遷は、大まかには次の通りです。
  • 終戦後の占領期:日本を二度と戦争のできない国にする(日本の経済/軍事力を徹底的に排除)。民主化は進める
  • 冷戦時代:共産国(特にソ連)に対抗するために日本を防波堤として利用する。そのために経済復興を優先
  • 冷戦後: 経済的に日本を脅威と見なす。台頭する日本の経済力にどう対応するか。一方で、世界の警察としてのアメリカの軍事戦略の中で、日本を同盟国として日本の貢献を必要とする

それぞれ、180度違う方針です。共通しているのは、いかにアメリカにとって自国の国益のために、日本とどう向き合うか(どう扱うか)が表れている点。

それに対して、日本は対米自主派と対米追随派がせめぎ合い、自主派が優勢だった時、追随派が優勢だった時を繰り返したのです。

■自主派と追随派の政権

本書では、対米従属の政権は傾向として長期政権であり、自主独立派のほとんどの政権が短期で終わったと指摘しています。

対米従属の長期政権の例としては、吉田茂、池田勇人、中曽根康弘、小泉純一郎。また、安倍晋三も従属派に含めています。

対して、何らかの形で自主独立を主張した首相の例として、重光葵、石橋湛山、芦田均、岸信介、鳩山一郎、佐藤栄作、田中角栄、福田赳夫、宮澤喜一、細川護熙、福田康夫、鳩山由紀夫。彼らの意図せざる形で退陣させられています。本書では、その裏でアメリカが動いていたことを示唆しています。

全てにおいて、アメリカが関与したのか。決定的な証拠があるわけではありません。また、従属派においても短期政権に終わった首相もいるわけで、必ずしも自主 or 従属の1つの要素だけで政権の運命が分かれたわけでもないことには注意が必要です。また、自主派の政権はアメリカに潰されたと簡単に結論を出すことには抵抗があります。

もう1つ、自主路線 = 善、従属路線 = 悪、という単純な構図で見てはいけないと思います。

戦後の日本の歴史を見る時に、日米関係は欠かすことのできない要素です。そして、良くも悪くもアメリカの力がなければ、日本の戦後復興は成し遂げられなかった(もしくはもっと時間がかかった)でしょう。70年間、ずっと自主路線を貫き通せたかというと、それは現実的ではなかったのではないでしょうか。

■現在を知るために歴史を学ぶ

冒頭の問題意識に戻りますが、大切なのは戦後70年というタイミングで、日本は戦後をどのように歩んできたのか。その歴史にあらためて一人ひとりが向き合うこと。戦後70年のタイミングで、現在を知るために過去の歴史、特に戦後70年間を学ぶ。

ブッシュ政権の後半からオバマ政権にかけて、かつてのアメリカよりも世界への影響力は相対的に弱体化しているように見えます。そんな環境の中で、今後、日本はどうあるべきなのか。これこそが今議論されるべきです。




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多田 翼 (書いた人)