2016/08/29

書評: 広告コピーってこう書くんだ!読本 (谷山雅計)


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広告コピーってこう書くんだ!読本 という本をご紹介します。



論理が 70% 、センスは 30%


著者は、コピーライターの谷山雅計氏です。主な広告コピーは、東京ガス 「ガス・パッ・チョ!」 、資生堂 TSUBAKI 「日本の女性は、美しい。」 、新潮文庫 「Yonda?」 、日本テレビ 「日テレ営業中」 です。

広告コピーは論理と感性/センスが必要で、著者は論理が 70% 、センスは 30% だと言います。

コピーを書く作業での論理と感性の関係は、エンジンとガソリンだと説明します。エンジンが論理、ガソリンが感性で、2つが合わさり、広告コピーライティングという動力を生み出されます。

ガソリンという感性は、人によって持っている量はおおよそ決まっている一方で、エンジンという論理は、伸ばすことができるという考え方が本書の前提になっています。ガソリンが多くない人でも、最高の技術の低燃費エンジンを身につけられれば、速く走ることもできる、つまり、いいコピーやいいアイデアを考えられるようになると言います。


良いコピーを書くための 「論理」


本書を通じて書かれているのは、良いコピーを書くための 「論理」 です。わかりやすい文章で読みやすく書かれています。著者は、本書の冒頭で 「発想法」 ではなく 「発想体質」 を、と書いています。引用します。

言うまでもないことですが、スタートの直前にちょっと工夫したぐらいで、タイムが伸びるはずはない。速く走るためには、競技会以前から、きちんとしたトレーニングをする必要があります。

これと同じで、広告制作でも、本当にいいアイデアやいいコピーは、発想法を知ればすぐに誰にでもつくれるというものではありません。ふだんから、発想ができるような体質、つまり自分のアタマを〝発想体質〟にしておく必要があるわけですね。

あなたをこの〝発想体質〟〝コピー体質〟に変えていくために、この本では31のヒントをお話ししたいと思います。

今回のエントリーでは、本書から印象に残っている発想体質になる方法をいくつかご紹介します。


「なんかいいよね」 を禁句にする


「なんかいいよね」 「なんかステキだよね」 「なんかカッコいいよね」 と言って終わりにするのをやめ、その代わりにこう考えてみます。「なぜいいのか。これこれこうだからじゃないか」 「なぜカッコいいのか。こういう工夫をしたからじゃないのか」 と。

自分の感情や何かに違和感を持ったことに立ち止まり、なぜそう感じたのかや思ったのかを、自分なりに考えるクセをつけておくとよいです。「なぜ」 がわかれば、応用ができ再現できるようになります。著者の言う普段から発想体質になっておく方法です。


広告コピーを書く手順は 「散らかす → 選ぶ → 磨く」


著者は良いコピーを書くためには、まずはたくさんのコピーを書くことを推奨します。これが 「散らかす」 です。コピーを書こうとしている商品や企業について、できるだけ多くの切り口や視点を探していく作業です。

次のステップが 「選ぶ」 です。散らかしたたくさんの切り口の中から、単に 「自分はコレが好きだ!」 というお気に入りを選ぶのでは なく、「受け手にとって本当に意味があるものはどれか」 という視点で選び出すことが重要だと言います。

3つ目のステップが 「磨く」 です。選んだものを、受け手にとってわかりやすく印象深いものにするために、言葉をブラッシュアップしていきます。

著者が強調するのは、1つ目の散らかす作業です。散らかしが足りないと、少しかない中から選ぼうとしても、2の選ぶ能力は身につかない。無理やり選んだものを磨こうとしても、磨く能力が向上しないからです。


広告コピーは短くシンプルなほうがいい


うまい人の広告コピーは、「誰もコピーなんか読みたいと思ってない」 という出発点から書きはじめて、「じゃあ、どうやってそういう人を振り向かせるか」 と発想していると言います。

誰も広告など好きではない、誰も広告を積極的に見ようとはしないことが前提です。

広告をつくる側は、まずは見てくれる人に振り向いてもらわないといけません。「これ、なんだろう?」 と注目してもらい、伝えたい内容を理解してもらうところまで誘導しなくてはいけないのです。長いコピーは読む手間がかかるので、まず高いハードルになってしまいます。

うまい人のコピーというのは、「誰もコピーなんか読みたいと思ってない」 という出発点から書きはじめて、「じゃあ、どうやってそういう人を振り向かせるか」 と発想していくから、自然と短く、強く、シンプルになっていくのだそうです。

ただし、どんな場合でも短いコピーが良いかというと、必ずしもそうではないという指摘が興味深かったです。

受け手が積極的に見て、理解したいと思うようなジャンルの広告の場合は、コピーが長くとも受け入れられるとのことです。

例えば、求人誌の読者です。求人誌は、読者が求人情報を知りたいと思って見るので、広告そのものを見ることにも意欲があります。コピーが長くとも読んでくれ、むしろ情報量があって説明されたもののほうが好ましいでしょう。

ポイントは、広告コピーは、見る人のかかわり方の意欲の強さで、理想的な長さが変わることです。


「描写」 ではなく 「解決」 を提案する


広告コピーでは、描写をしているだけでは不十分で、解決につながることを書かなくてはいけない。描写だけをしているコピーよりも、解決まで提案するほうが人を動かす可能性は高いと著者は言います。

コピーライターは、ペンを片手に原稿用紙に向かう仕事です。「このペンの力で、すばらしい言葉をつづってやろう」 と考えるのではなく、「自分のペンの力で、いまある状況をなんとか変えてみせよう」 です。

広告コピーの第一の目的は、「描写」 ではなく 「解決」 である。読んでいて、考えさせられました。


広告コピーの影響をイメージする


自分が書いた言葉やアイデアと、世の中との関係をどれくらいイメージできているのかが、広告制作者の仕事のレベルを決定づける重要なポイントという指摘が印象的でした。

広告コピーを、どこまで考えられるかにいくつかの段階があると著者は言います。

  • Step 1:原稿用紙にコピーを1行、たとえば 「おいしい生活」 と書いたとする。それを見て、カッコいいフレーズが書けたなと思う
  • Step 2:コピーとビジュアルとの関係性を考える。タレントが写っている写真にこのコピーを入れたらどうか、ステーキの写真の横にこのコピーを置いたらどうか。ただし、この段階ではまだ、つくり手としての立場での発想にとどまっている
  • Step 3: 「この広告を見た人はどう思うだろうか」 と考える。受け手の立場がイメージできるようになる
  • Step 4: 「広告を見た人が他人になんと言うだろうか」 「どう伝えるだろうか」 と考えます。その結果、どういう種類の話題が世の中に広まり、どのような意識の変化が起こるのかをイメージする。受け手を個人としてではなく、広い社会としてイメージする
  • Step 5:そうした話題の広まりや意識の変化によって、「来客数が20万人くらいは増える」 などの実際の人の動きまで読めるようになる

最初にまず、原稿用紙に向かってコピーを書くのは同じです。コピーを書きながら、世の中に広がっていくイメージをどこまで描けるかです。


優れた広告コピーは常識と芸術の間にある


常識とコピーと芸術の三分類の考え方がおもしろかったです。

意見を人に言ったときに、それを聞いた受け手の反応は大きく3つに分かれると著者は考えます。そりゃそうだ、そういえばそうだね、そんなのわかんない。

  • そりゃそうだ = 常識
  • そういえばそうだね = 広告コピー
  • そんなのわかんない = 芸術

広告コピーは 「そういえばそうだね」 という気づきを与える役割です。伝えたいことは知っていますが、普段は意識の下に眠っているものでしょう。誰でも知っている 「そりゃそうだ = 常識」 でも、誰も知らない 「そんなのわかんない = 芸術」 でも、良い広告コピーにはなりません。

広告コピーをつくるのに大切なのは、どういう考え方は、今はまだ 「そんなのわかんない」 であり、どんな考え方がちょうど 「そういえばそうだね」 であり、どういう考え方はすでに 「そりゃそうだ」 になっているのかを把握していること、という指摘は印象的でした。


プロはどうあるべきか


最後に、著者のプロはどうあるべきかがよくわかる箇所の引用です。

1回だけの勝負では、アマチュアに負けることもある。でも、クライアントから依頼があったときには、かならずある一定以上のレベルのコピーを、何度でも書くことができる。それがコピーライターに求められる、大切な資質ではないでしょうか。

(中略)

「あるレベル以上のものをくり返し書く」 ために必要なのは、自分の書いたコピーがなぜいいのか、どこがいいのかを正しく認識できていることです。

〝大阪のおばちゃん〟が、いつでもおもしろい発言をくり返せるわけではないのは、自分の発言がなぜおもしろいかを正しく理解していないからです。なんとなく口にしたらおもしろかった、というノリですから、続けて同じレベルの発言をくり返すことができません。

でも、自分のコピーのよさやすぐれているところをしっかりと理解していれば、あるいはどういうコピーが広告としてすぐれているのかがわかっていれば、同じレベルの表現をくり返し生み出すことができます。

この本でずっと説明してきた 「論理」 は、この 「くり返せる力」 のためでもあるのです。



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多田 翼 (書いた人)