投稿日 2024/05/01

ファストリが 「PLST (プラステ) 」 をユニクロの姉妹ブランドとして強化。狙いから学べることは?

#マーケティング #ブランド #想起

今回は、ファーストリテイリング傘下のアパレルブランド 「プラステ」 を取り上げます。

ファストリは、プラステをユニクロや GU と連携し姉妹ブランドにすることで、ファストリが展開するブランド全体を強化しようとしています。

ファストリの狙いを紐解くことで、マーケティングへの学びが得られます。ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

ファストリがプラステを強化


出典: WWD JAPAN

ファーストリテイリングが傘下の PLST (プラステ) の事業をてこ入れしています。

プラステの販売価格は1万円以上が中心で、ユニクロや GU と比べて価格は高く、オフィス向けの品ぞろえが中心で、主に 30 ~ 40 代を狙っているブランドです。

プラステはこれまで路面店や商業施設に単独で出店してきましたが、2023年8月期からはユニクロの店内にも出店し始めました (参考記事) 。これにより、ユニクロの商品を目当てに来店してきたお客さんにプラステの商品も提案していきます。

今後もユニクロの店内にプラステを併設する連携を加速し、プラステの商品の高機能化を進めていくとのことです。

ロゴでもファストリの中でのグループ感を統一しています。プラステは2023年3月にブランドロゴを変更しました。従来の横長の文字列から正方形を基調としたデザインです。ユニクロの正方形で赤地のロゴや、青地の GU と同じ形になりました。


ブランド資産の有効活用


ではファストリのプラステの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

姉妹ブランドになることでの狙い


ファストリが進めるプラステの取り組みは、プラステをユニクロや GU の 「姉妹ブランド」 と位置付けようとしています。

広く知られているユニクロや GU というブランドとプラステを関連付けることで、消費者からの 「想起」 を強化する狙いがあります。

ユニクロ店舗内でプラステの商品を扱うことにより、もともと消費者の頭の中にあったユニクロにプラステが結びついた印象を与え、セットで記憶してもらうわけです。プラステ単体では、他の同価格帯のアパレルブランドとの差異化が難しいかもしれませんが、ユニクロとの連携はブランドの知名度の向上に寄与するでしょう。

新規顧客の開拓


プラステがユニクロの姉妹ブランドになることで期待される効果は、プラステを今まで知らなかったユニクロ (や GU) の顧客層にプラステブランドを認知してもらえることです。

プラステにとって新しい顧客層の開拓となり、ブランドの認知度を高める機会となります。

プラステはビジネスシーンでの服が中心なので、ユニクロの服よりもさらに上質な大人の雰囲気のあるジャケットやパンツが欲しい人にとっては、ユニクロの服では満足できなくても、プラステのクオリティには魅力を感じてもらえることが期待できます。

ファストリの 「松竹梅」 の形成


プラステはブランドロゴを新しくし、同じファーストリテイリング傘下のユニクロや GU のロゴデザインに近くなりました。

ユニクロの店内でブラステの商品も一緒に扱うなど、姉妹ブランドとしてユニクロとプラステのトータルでの強化と相乗効果を図っています。

消費者の頭の中での記憶にあったユニクロと GU のもともとの結びつきに加え、プラステという新しいブランドが記憶ネットワークの中で結合し、プラステの認知向上やイメ-ジの向上、ブランド想起 (ブランドを思い出してもらうこと) の起こりやすさが期待できます。

プラステがユニクロの姉妹ブランドに入ることによってファストリが展開するプラステ、ユニクロ、GU の3つが、いわば 「松竹梅」 のようなフォーメーションが形成されるわけです。

相対的価値の演出


ユニクロとプラステの商品が同じお店の中で扱われることは、価格設定においても効果を発揮します。

ここ最近は、ユニクロの商品は以前よりも低価格なものが減っている印象がありますが、ユニクロの高価格帯商品と、プラステのユニクロよりさらに値段の高い商品が同じ店内にあることで、ユニクロの商品が相対的にお手頃に感じられるでしょう。

例えば、ユニクロのメンズジャケットのお店での最高価格が17,900円だった場合、それより高いプラステの23,000円のジャケットとの比較から、ユニクロの17,900円のジャケットがお買い得に見えるという演出につながります。

各ブランドの相乗効果への期待


消費者にはさまざまな価格帯とスタイルの中から選択できる幅広いオプションが提供され、ファストリは GU 、ユニクロ、プラステの各ブランドの特性を活かしたマーケティング戦略を展開することが可能になります。

それぞれのブランドが持つ独自性を保ちつつ、ファストリのグループ全体のブランド力が相乗効果から高まっていくことが期待できます。


まとめ


今回は、ファーストリテイリングがプラステをユニクロや GU の姉妹ブランドにすることに注力しているという事例から、学べることを見てきました。

最後に 「ブランド資産の構築」 という観点で、この事例から学べるポイントをまとめておきます。

  • ファストリは、プラステをユニクロ店内に出店させたり、ロゴデザインの統一からユニクロや GU との連携を強化することで、プラステのブランド知名度の向上を狙う。消費者はユニクロとプラステをセットで記憶しやすくなり、ブランドの想起を起こりやすくなる

  • プラステがユニクロの姉妹ブランドになることで、プラステの新規顧客の開拓につながることが期待できる。ユニクロがきっかけでプラステを知ったり興味を持ってもらい、ユニクロの顧客層にプラステブランドを認知してもらうことを狙う

  • プラステが入ることで、ファストリのブランド力全体が強化され、消費者に幅広い選択肢を提供できる。ファストリ傘下の中でプラステ・ユニクロ・GU の3つが 「松竹梅」 を形成し、各ブランドの相乗効果を目指す


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。