2016/02/29

検索広告の新しい提供価値に光を当てたグーグル




日経新聞が、グーグルの検索広告への取り組みを報じています。

グーグル日本法人、検索広告で認知度向上 企業に助言:日本経済新聞 (2016年2月6日)


日経記事の内容


記事から、ポイントだと思った箇所は以下の通りです。

  • これまで検索広告では、認知度の向上などの広告効果を測定することは難しかった
  • グーグル日本法人が、新しい調査手法でモバイル検索広告の調査を実施 (2015年11月) 。クリックされなくても、広告を表示するだけで広告対象の商品/サービスの認知度を高める効果が確認された
  • グーグルは今後、クリックされなくても効果があることを企業に説明し、広告の利用を呼び掛ける


従来の検索広告の価値


検索連動型広告の使われ方は、生活者のニーズが検索をするという行動として顕在化したときに、適切に訴求することです。

あるキーワードで検索をするということは、その言葉に関して 「知りたい」 などの欲求が生じています。例えば 「赤ちゃん 肌 乾燥 保湿」 と検索をする場合、赤ちゃんの肌を保湿するためにはどうすればいいかを知りたいわけです。

その 「知りたい」 に対して、関連性の高い検索広告が検索結果ページに表示されます。

同じ例で言えば、赤ちゃん用の保湿クリームの広告が出るでしょう。赤ちゃんの乾燥肌をなんとかしたいと考えている親に、アプローチができるのです。

検索広告が期待される役割は、クリックをしてもらい自社サイトや EC サイトなどに呼び込むことです (誘導先のページのことをランディングページと言います) 。集客の役割を担います。

クリックからサイトに誘導させる確率をいかに高めるかが、検索広告に求められます。検索広告の評価基準は、どれだけ広告をクリックされるかです。指標はクリック率 (表示数に対するクリック数の比率) が使われます。専門用語では CTR (Click Through Rate) と言います。

このように、ニーズが顕在化したユーザーの瞬間を捉え、ニーズのある人を自社サイト等に集客できることが検索連動型広告の価値です。


クリックされなくても効果がある


日経で報じられたグーグルの取り組みで興味深いのは、検索広告の新しい価値を見出そうとしている点です。

日経記事のポイントは、グーグルが実施した調査によって 「クリックされなくても検索広告を表示するだけで、広告対象の商品/サービスの認知度を高める効果がある」 ことがわかったことです。

もちろん、全てのあらゆる検索広告に必ずしも当てはまるものではないでしょう。日経の記事で紹介された調査は、特定の検索広告でした。
 重要だと思うのは、検索広告への新しい評価基準を提示したことです。

従来はいかにクリックされるかが評価基準でした。これに対し、たとえクリックがされなくても意識を変える効果があるという、従来とは別の視点での評価です。

検索広告がクリックされなくても効果がある、具体的には、ブランド認知等の生活者の態度変容に効果があるとなれば、検索広告の新しい価値を提供できることを意味します。

従来は、検索広告を使う広告主は、クリックをして自社サイトに誘導できることに価値を置いていました。

一方で、広告を出す目的に自社ブランドの認知を上げたいと考える広告主にとっては、検索広告は広告投資をする候補として、対象にならなかったはずです。それよりも、動画広告やテレビ広告に予算が配分されていたでしょう。

検索広告にも、動画やテレビなどと同様、自社商品やサービスの認知を上げることが期待できれば、検索広告も投資先の候補になるのです。


新たな価値に光を当てるグーグル


グーグルの狙いもここにあります。検索広告の既存顧客ではない、新しい顧客の開拓が期待できます。

グーグルは、検索広告にはクリックされなくとも広告効果があるという、新しい価値に光を当てました。

あらためて検索広告の価値を整理すると、

  • 既存の検索広告の価値: 広告がクリックされることで、自社サイトなどに集客できる
  • 新しい検索広告の価値: クリックされなくても、広告を見た人に自社商品/サービスのことを知ってもらえる

興味深いのは、グーグルは検索広告それ自体へは、特に何も新しい改良をしていないことです。従来の検索広告という仕組みは変えずに、提供価値に新しい見方を提示しているにすぎません。


新しい価値を提供するとは、新しい使い方ができるということ


今回のグーグルの新しい取り組みをマーケティングの観点で一般化してみます。

グーグルがやろうとしていることは、自分たちが提供する商品やサービスは変えずに、新しい価値を見い出すことで新しい顧客を獲得することです。

新しい価値を提供するとは売る側の視点です。一方の買う側の視点で見れば、新しい価値が提供されるとは、新しい使い方ができることを意味します。

グーグルの例で言えば、クリックされて自社サイト等に誘導し、直接の売上や会員登録などのコンバージョン目的ではない、ブランディングやカテゴリーニーズ喚起を目的とした使われ方です。


提供するモノは変えずに、新しい価値を提供する


新規顧客を獲得するアプローチはいくつかあります。

  • 既存のモノ/サービス + 既存の提供価値で、新規顧客を開拓
  • 既存のモノ/サービス + 新しい提供価値で、新規顧客を開拓
  • 新しいモノ/サービス + 新しい提供価値で、新規顧客を開拓

マーケティングの観点で言うと、おもしろいと思うのは2つ目のやり方です。

生活者の視点で言えば、この商品にはこんな使い方があったのか、と気づく瞬間です。

例えば、入院患者などに向けて開発された栄養補給食品が、手軽に取れる健康ダイエット食品として美容/健康意識の高い女性の間で人気になる、と言ったイメージです。

今、自分たちが持っている資産を、新しい使い方 (提供価値) はできないか。それを従来とは違う顧客に、伝え方を変えて訴求できないか。灯台下暗しになっているかもしれません。

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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にてマーケティングリサーチ マネージャー (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝 8km のランニングとピアノ。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。