投稿日 2016/09/15

書評: ここらで広告コピーの本当の話をします。 (小霜和也)


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ここらで広告コピーの本当の話をします。 という本をご紹介します。



エントリー内容です。

  • 本書の内容
  • 魅力的な広告コピーをつくるために
  • ブランドとは 「気持ちのいい記憶」


本書の内容


本書の内容紹介から引用です。

コピー1本で100万円請求するための教科書。コピーライター志望者、若手コピーライターに知ってもらいたい本当の話。“伝える"だけのコピーなんて、コピーじゃない!

著者は、広告キャンペーンでプレイステーションの全盛期をつくり、いまなお最前線で活躍するクリエイター・小霜和也氏。コピーライティングというビジネスの根底を理解すると、効果的なコピー、人を動かすコピーが書けるようになる。広告とコピーに関わるすべての人に役に立つ、いままでにないコピーライティングのビジネス書。

本書では、広告コピーをどう書けばよいかのテクニックの話ではなく、本質的なところから丁寧に説明がされています。


広告コピーの役割


広告コピーの役割は2つあります。


広告コピーの役割
  • 言葉を使って商品の価値を上げるもの
  • モノとヒトとの新しい関係を創ること


1つめは、広告が扱う商品やサービス自体は変えずに、広告コピーで価値が上がるよう伝えることです。

2つめの新しい関係を創るとは、広告で初めてその商品やブランドを知った、興味を持った、使ってみたいと思ったなど、こうした関係を生み出すことが広告には求められます。


魅力的な広告コピーをつくるために


では、どうすれば魅力的な広告コピーをつくれるのでしょうか。本書から、参考になったことをいくつかご紹介します。


魅力的な広告コピーをつくるために
  • マーケティング視点で広告コピーを考える
  • 広告コピーを書くまでが9割
  • タグラインとキャッチフレーズの役割


以下、それぞれについてご説明します。


[ポイント 1] マーケティング視点で広告コピーを考える


広告コピーを考えるにあたって、マーケティングの考え方が根底にありました。具体的には以下です。


マーケティング視点で考える
  • 自分が広告しようとしている商品やサービスは何か
  • 顧客にとってどのような特徴やベネフィットがあるのか
  • 他の競合商品と比べてどう違うのか
  • それをどんな人 (= ターゲット) に売るべきなのか


これらのうち、広告コピーを考えるにあたって特にポイントになるのは、次の2つだと小霜氏は言います。


広告コピーを考えるポイント
  • 商品の具体的な情報、競合商品との違いである USP (Unique Selling Point) を考える
  • 商品を買ってくれる可能性があるターゲットを具体的に考える


[ポイント 2] 広告コピーを書くまでが9割


広告コピーをつくる中で、机に向かってペンを走らせる、あるいはパソコンに向かってキーボードを叩く作業は、全体の1割ぐらいだそうです。

重要なのは、書く前までのマーケティング的な作業です。これを考えるのに9割とのことです。

具体的には、競合を調べ、商品の USP を見極め、ターゲットを決め、彼らの欲求や不満、不安に思いをはせる。こういったことがコピーを書くためには、必要不可欠です。


[ポイント 3] タグラインとキャッチフレーズの役割


タグラインとキャッチフレーズは、役割が異なります。


タグラインとキャッチフレーズ
  • タグライン:商品の価値が最大化されるような 「定義付け」 に特化したコピー
  • キャッチフレーズ:タグラインに関心を持たせるために興味を引くためのコピー


タグラインは戦略そのものであり、キャッチフレーズより先に書くべきであると言います。タグラインには、ターゲットにとってその商品がどのような価値を持つのかを書きます。

広告コピーの最も重要な役割である 「企業や商品の価値を最大化すること」 「言葉を使ってモノとヒトとの関係を創ること」 はタグラインが担います。

キャッチフレーズの役割は、あくまでもターゲットの関心をキャッチすることです。キャッチフレーズで表現することは、ターゲットに 「自分に関係ある話かも」 と一瞬で感じてもらうことです。一瞬でというところが強調されていたのが印象的でした。


ブランドとは 「気持ちのいい記憶」


小霜氏のブランドについての考え方も、興味深いものでした。

ブランドとは 「気持ちいい記憶」 のことです。ブランドのラベルを見るとターゲットの中で気持ちいい記憶を蘇らせる作用のことだと説明されています。

この 「気持ちいい記憶」 は、美味しいや便利などの生理的欲求だけでなく、「新しい自分になれる」 という気持ちよさもあり、社会が成熟するほどその欲求は高まっていきます。

そして、ブランドロゴとはその商品の気持ちいい記憶を蘇らせるトリガーです。過去の体験や、初めてのことでも起こるであろううれしいことと結びつけるもの、象徴的に表すものがブランドロゴです。


最後に


本書は、広告コピーをどう書くかのテクニックだけにとどまりません。マーケティングの考え方が色濃くあり、広告コピーにとどまらず興味深く読めました。



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。