投稿日 2010/11/03

宇宙の3つの常識がくつがえった

自分の中で今までは当たり前だと思っていた宇宙についての常識がありました。例えば、(1)宇宙にあって多くを占めるのは星や銀河、(2)宇宙の始まりを説明するのはビックバン理論、(3)銀河や地球など全てものがこの宇宙内に存在する、といった内容です。

しかし、宇宙についての本を読んでこれらの常識が自分の中で覆えりました。そこで今回のエントリーでは主に2冊の本、「宇宙は何でできているか」(村山斉 幻冬舎新書)、「インフレーション宇宙論」(佐藤勝彦 講談社)から、自分の常識がどう覆されたかを中心に書いてみます。



■この宇宙の96%を占めるもの

宇宙にある大部分の質量は地球や銀河などによるものだと思っていました。今回知ったこととしては、星と銀河の質量は宇宙のわずか0.5%にすぎないということです。では残りは何で占められるのか。宇宙の質量は以下のような構成となっているようです(図1)。

 宇宙の質量構成比

特に今回初めてその存在を知ったのは、23%を占める暗黒物質(ダークマター)と73%の暗黒エネルギー(ダークエネルギー)でした。

暗黒物質とは、我々地球を含む銀河を銀河たらしめるもの、すなわち、もし暗黒物質が存在しなければ銀河が今の形を構成できずバラバラになると考えられています。また、暗黒エネルギーとは、宇宙を加速膨張をさせているエネルギー。実は宇宙は現在も膨張し続けており、さらに言うとその膨張する加速度は大きくなり続けているようです。詳しい話は省略しますが、宇宙の加速膨張を理論的に説明するために考えられているのが暗黒エネルギーの存在なのです。



■宇宙のはじまりを説明するインフレーション理論

これまで信じていたことに、宇宙のはじまりはビックバンという現象の発生があります。ビックバン理論の概要は、宇宙の最初は「火の玉」であり、その後に膨張していく過程で次第に温度が下がりガスが固まって星が生まれます。そこから銀河が形成され現在に至るというものです。

しかし、実はビックバン理論では説明できないことがあります。「インフレーション宇宙論」の著者である佐藤勝彦氏によれば、例えば「なぜ火の玉からなのか?」や、「火の玉の前はどのような状態だったのか?」などであり、ビックバン理論では、特異点という「神の一撃」の存在を許すことにもなるようです。つまり特異点から始まった宇宙がなぜ火の玉になったかが説明できません。余談ですが、著者は物理学者として、神の存在を用いることなく物理法則だけで宇宙の創造を語りたいものだ、としています。

ここでインフレーション理論の登場です。まずインフレーション理論はビックバン理論を補完する理論です。インフレーション理論を簡単に説明すると以下のようになります。

インフレーション理論では、宇宙は真空のエネルギーが高い状態で誕生し、このエネルギーによって急激な膨張が起こりました。これは宇宙誕生直後の10のマイナス36乗秒後から10のマイナス34乗秒後までの極めて短い時間。宇宙が最初から火の玉として生まれてそのエネルギーで膨張したわけではなく、真空のエネルギーが宇宙を急激に膨張させることで相転移により熱エネルギーに変わる、この時点でようやく「火の玉」になったのです。

■宇宙はユニバースではなくマルチバース?

最も驚かされたのがこれです。宇宙は英語でユニバース、つまり、1つのという意味のユニ(uni)が使われていますが、宇宙は1つではなく多数存在するマルチバース(multiverse)という考え方です。

マルチバースの考え方では、今私たちが存在する宇宙は数ある宇宙の中のone of themでしかないということになります。マルチバースのイメージは下図のようになり、たくさんある1つ1つの球体のようなものがそれぞれ宇宙を表しています(図2)。


マルチバースのイメージ

マルチバースの考え方は、前述のインフレーション理論から説明されており、インフレーションの発生の順番で、親宇宙、子宇宙、孫宇宙、・・・、というように宇宙が次々できるとしています。無から生まれる宇宙は、私たちが存在する宇宙だけとは限らずいくらでも別の宇宙ができる可能性があるということです。

ただ、現在のところマルチバースというのは理論的に予言されているだけにすぎず、実際に科学的に証明されたわけではなく、あるいは観測されたものではありません。ましてや仮にその存在が証明されたとしても、この宇宙から抜け出し別の宇宙に行くことがどうやってできるのか、宇宙は膨張しているのでいずれ2つの宇宙が衝突するのか(あるいは重なるのか)、などと考え出すとなんともわけがわからなくなってしまいます。

■考えさせられたこと

「宇宙は何でできているのか」および「インフレーション宇宙論」を読んでいて感じたこととして、フロンティアというものはどれだけでも広がるということがあります。読み進めていく中で、1つ新しい理論ができれば新しい矛盾が生まれる状況が多くありました。何か新しいことを知れば次の疑問が生まれ、それにより自分には知らないことがまたでてくる、ということだと思います。

これは何も物理学者などの科学者だけによらないと思っています。例えば、何か新しいことを学んで知れば、それに関連する新しいことをさらに知りたくなる、という感じです。仕事も然りで、何か新しいことに挑戦すれば、次はもっと難しいことにチャレンジしたくなります。こういった知的好奇心やチャレンジ欲はいつまでも持ち続けたいものだなとあらためて思いました。


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投稿日 2010/11/02

RSSとソーシャルフィルターはひとまず共存で

■様々なソーシャル

ソーシャルという言葉があります。個人的に感じるのは、特に今年は様々なものにソーシャルという言葉が付いたことです。これまではSNSのソーシャルくらいでしたが、ソーシャルゲーム、ソーシャルメディア、SNSなどでの人間関係を表すソーシャルグラフ、ソーシャルブックマーク、などです。

ソーシャルサーチと言う検索もあります。これは、世間の評判や意見、あるいはユーザーの趣味や嗜好を反映させた検索のことです。あるいは、ソーシャルフィルターと呼ばれるものもあります。ソーシャルフィルターとは、興味関心が似ている自分の選んだ人によって情報を選んでもらい、結果的に多種多様な情報から必要なものを手に入れることだと思っています。例えば、自分の趣味や考え方が近い人をツイッターでフォローすれば、その人からの情報は自分のアンテナにひっかかりやすい、という感じです。

■RSSの役割は終わった?

2か月くらい前だったかと思いますが、「RSSの役割は終わったのでは」という話がネットで話題になっていました。その理由として、ツイッターやSNSなどのソーシャルメディアの登場でRSSリーダを使わなくても情報を収集できる方法が出てきたためで、例えばツイッターをうまく活用すれば、自分が欲しい情報も入ってくるし、自分の興味範囲外の思わぬ情報が入ってくることもあるからです。普段ツイッターを使っているのでこの説明は理解できますし、故に、わざわざRSSリーダーを使わなくても情報が入ってくるという話だと思います。RSSがソーシャルフィルターに取ってかわる、または、ソーシャルサーチの台頭はイメージとしては、下図のようになりそうです(図1)。


本当に、ソーシャルサーチではない従来型の検索やRSSは不要なのでしょうか?個人的には、両方とも引き続き必要であると思っています。

まず、能動的な情報収集である検索ですが、確かにソーシャルサーチは場合によっては有効なツールです。自分の嗜好や趣味に合わせた検索結果が出てくる、例えば、自分の興味に合った書籍が検索結果の上位に出てくれば、その検索結果には満足できそうです。一方で、このような検索は悪く言えば、人間的なバイアスが発生します。つまり、自分の嗜好や意見に近いものばかりでは一様な検索結果となり、多様な情報に触れる機会を失ってしまうかもしれません。

■RSSとソーシャルフィルターは共存する

次に、RSSですが、確かにツイッターやFacebookをうまく活用できれば、それだけでも十分すぎるくらいの情報が手に入ることができるかもしれません。実際に先日、RSSをあえて一日使わないことを試してみましたが、大きな問題はありませんでした。しかしそれでも、RSSは現在のところ、自分にとっては不可欠なツールなのです。なにもこれはソーシャルフィルターを否定するという意味ではなく、むしろ、RSSとツイッターなどのソーシャルフィルターはお互いを補完しながら使えるツールだと考えてます。ここで、RSSとソーシャルフィルターをいくつかの項目で整理してみます(表1)。


この表を少し補足すると、RSSはブログやサイト単位で登録をする一方で、ツイッターやSNSは人というアカウントごとの登録です。Whoを登録するソーシャルフィルタ-のほうが多様な情報が入ってきます(ニュース記事以外にも、その人の行動などのつぶやき等)。またRSSはストック型の情報管理に対して、ソーシャルフィルターはフローのイメージです。

RSSを重宝している理由の1つに、RSSはサイトの文字や画像をRSS画面上で見ることができる点にあります。これがツイッターだと140文字という文字数制限とiPhoneという画面サイズの制約からどうしても、リンク先に飛ばざるをえない状況がよくあります。特に屋外ではリンク先に飛ぶという時間が意外に長く感じられ、スターをつけたりInstapaperに保管したりして、あとから読んでいます。でもRSSならその場でさくさく読めて便利です。

ソーシャルフィルターは、RSSに比べてフィルターの精度がどうしても劣るような気がしています。これは、自分のソーシャルフィルターの使い方が甘いだけなのかもしれませんが、どうしても相対的に「広く浅い」情報だというのが現在の印象です。ただ、ツイッターの「広い」情報は時として思いがけないものであり、これはこれでおもしろいと思っています。

今のところの結論としては、RSSとソーシャルフィルターは共存する、ということになります(図2)。マトリクスの4つの象限とも、自分にとっては必要な情報収集方法なのです。


今回あらためて思ったのは、ソーシャルフィルターとはまだまだ発展途上なものだということです。もちろん、もうすでに使いこなしている人も多くいると思いますが、個人的には、RSSの活用に比べ、ツイッターやSNSの利用は試行錯誤が続いているように思います。

ツイッターやFacebookは活用方法において工夫の余地が大きいと思います。また、APIにより、これまでになかったような便利なアプリやサービスが開発される可能性があります。その時は、もしかしたらRSSとソーシャルフィルターがハイブリッドされ、もっと便利な情報収集ツールになるのかもしれません。


投稿日 2010/10/30

なぜネットサーフィンは死語になったのか?

今週の前半は中国に行っていました。今回の滞在は上海のみでしたが、印象に残っていることとして、話を聞いた複数の人が「趣味はネットサーフィン」と言っていたことがあります。なぜ強く印象に残っているかと言うと、ネットサーフィンという言葉自体がここ5年くらい耳にしていなかったから。今回のエントリーでは、ネットサーフィンがなぜ死語になったかを考えることで、あらためて自分の情報収集について整理してみます。

■ネットサーフィンとは

そもそもネットサーフィンとはどのような行為なのでしょうか。いくつかのサイトを調べてみましたが、一番しっくりくる表現はWikipediaに掲載されていた次のような説明です。「ウェブページの閲覧において、各ページを、興味のおもむくまま次々に表示して閲覧していく行動を、波から波へと渡るサーフィンに見立てた造語」。ちなみに、Wikipediaには次のようにも書かれています。インターネットが普及し始めた1990年代から2000年ごろまで頻繁に使われていた。

さて、なぜネットサーフィンをしなくなったのか。ここで、この疑問を少しずらし、「なぜ自分はネットサーフィンをしていたのか」を先に考えてみます。私の場合は、ネットサーフィンが趣味とまではいかなかったものの、ネットを使い始めた頃はあるサイトを見て、そこに貼ってあったリンク先を「興味のおもむくまま」に次々と閲覧していたこともあります。当時を思い出すと、ネット自体がめずらしかったこともあり、好奇心であったり、単純におもしろかったのがその理由のように思います。

■なぜネットサーフィンをしなくなったのか

では、なぜネットサーフィンをしなくなったのか。自分の場合を考えてみると、第一の理由として、ネット検索精度の向上があります。別の言い方をすれば、ネットサーフィンよりもGoogleなどの検索エンジンを使ったほうが効率がいいということ。ネット検索精度の向上は、検索エンジンのシステム技術の向上に加え、自分の検索スキルもネットを始めた頃よりかは多少は上がっていることもあると思います。

第二にの理由として、ネットに使う時間配分のうちツイッターやRSS、あるいはこれらほどの利用頻度ではないとはいえSNSなどの存在です。あるいは、動画やオンラインでのゲームもあるかもしれません。このようなネット上のコンテンツが充実したことで、ネットサーフィンよりもおもしろい時間の使い方ができ、ネットサーフィンが不要になったのだと思います。

■ネットは目的ではなく手段

ネットサーフィンをなぜしなくなったかを考えると、そもそもとして自分の場合は、ネットの利用が目的から手段になっていることだと思います。ネットを使い始めた当初は、ネット自体がものめずらしいこともあり、ただなんとなく使っていたようにも思います。一方で、今はどうかというと、「情報収集」と「ネットでの買いもの」という2つの目的のための手段でしかないのです。ネットでの買いものも、例えば本を買う場合は広い意味では情報収集とも言えそうです。

ここで、ネットサーフィンを含め、ネット検索、RSS、ツイッターなどを下図のように分類してみます(図1)。



横軸は、能動的に情報を探しにいくか、情報が向こうからやってくるかどうか(受動)。例えばRSSやツイッターは情報が時々刻々と入ってきます。それも向こうから勝手に。一方の縦軸は、自分の欲しい情報にたどり着く精度です。つまり、効率よく情報収集できるかどうか。例えばネットサーフィンはおもしろいサイトもあればそうでない時もあり、様々な情報に行きつきます。ツイッターも同様で、雑多情報の中に自分に必要な情報もあればそうでないものもある。それに比べ、検索やRSSのほうが効率よく情報が収集できます。

ネットが情報収集のための手段と位置づけた時、情報収集をいかに効率よくするかが重要になります。上図から考えるとネットサーフィンでは非効率であり、自ら検索をしたりRSSなどを利用することで効率化を図ってきたのだと思います。

■いかに効率よく情報を集めるか

そこで、これからも考えていきたいのがどう情報収集を効率化するかです。検索スキルも十分ではないと思いますし、RSSについても登録しているサイトやRSSの使い方自体ももっとよくできそうです。

そしてSNSとツイッターです。上の図では玉石混交のセグメントに位置づけました。でももしかしたらまだ自分の活用方法が甘いだけなのかもしれません。最近感じることとして、ツイッターがRSSに近い役割を担えるような気もしますが、一方で現時点ではRSSはとても重宝しています。このあたりは、引き続きいろいろと試しながら試行錯誤が続きそうです。


※参考情報
ネットサーフィン (Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。