2015/04/22

Facebook 動画広告効果調査が色々と考えさせてくれた

Facebook と 調査会社 Nielsen が共同で、Facebook 動画広告の効果測定調査を実施しました。結果は以下で発表されています(2015年3月)。

The Value of Video for Brands | Facebook for Business




■調査手法

調査の方法は、
  • 調査対象の広告は 173 本
  • 対象の広告を見せるグループと(Exposed group)、対照群のグループ(Control group)を比較
  • 広告に効果があったかどうかの評価項目は3つ。広告想起(Ad recall)、ブランド認知(Brand awareness)、購入意向(Purchase intent)
  • さらに、動画広告の視聴時間長さによって、広告効果の違いを計測
  • 2014年12月 - 2015年2月に実施 (参考:この調査についてのインタビュー記事)

調査対象の広告について、1点補足です。

発表ページ(こちら)には書かれていなかったのですが、この調査について前述インタビュー記事(こちら)には、次のような言及がされていました。
Since we wanted to understand successful campaigns, we then filtered the selected studies for those campaigns that had lift across Ad Recall, Brand Awareness and Purchase Consideration; for example, we used only studies with statistically significant lift in Brand Awareness for the Brand Awareness portion of our analysis.
ここで言われているのは、3つの指標(Ad recall, Brand awareness, Purchase intent)を見たのは、3つともで有意な増加があった動画広告に絞った、とのこと。

つまり、結果として発表されたのは、対象とした 173 本の全てにおける結果ではなく、173 本の中から結果が良かったもの(significant lift)のみなのです。この点に、注意が必要です。

ここは非常に重要で、発表のページにはその点が全く触れられていません。少なくとも結果が 173 本の全てではなく、広告効果があったものに絞ったことは書くべきです。そして、173 本のうち、対象とした有意に増加した広告が何本あったかの言及も必要でしょう。

これは読み手にミスリードを起こしうるし、誠実な調査発表結果とは言えません。

■購入意向まで効果があった調査結果。でもこれは当たり前の話だった

調査結果について、いくつか印象を書いておきます。なお、上記でも触れた通り、結果は有意に良かったものだけに絞った広告のみである前提で見る必要があります。

例えば、発表された結果だけを最初見たときは、広告想起 / ブランド認知 / 購入意向の 3 つ全ての指標において、広告効果が見られたことは注目に値すると思いました。特に、個人的に興味深かったのは、購入意向まで効果が見られた点です。

というのも、一般的には「広告想起 → ブランド認知 → 購入意向」とファネルが深くなる分、広告を見たことにより、その商品/サービスを買いたいと思う態度変容が起こるのは簡単ではないからです。

私自身も、業務で Facebook のこの調査と同じような広告効果測定調査の経験があります。広告想起やブランド認知まではアップリフトがあっても、態度変容の一番深いところにある購入意向までは広告が寄与しないケースが多くありました。だからこそ、Facebook の動画広告効果測定調査で、購入意向まで効果が見られたことは驚きでした。

しかし、購入意向が上がった結果であったのは、そもそもとして 173 本のキャンペーン広告から、増加したものだけに絞られていました。3つの指標で有意にアップリフトがあったことは当たり前、という話でした。

なので、知りたいのは、173 本のうち、購入意向まで効果があったのは何本あったのか。購入意向と効果あり/なしにはどういった違いが傾向として見られるか。

あるいは、同じ動画素材でも、広告を出す場所(メディア)の違いで広告効果に差が出るのかも興味深い分析視点です。

例えば、同じ動画広告でも、① Facebook のフィード内自動再生広告(Auto play)、② YouTube 上のプレロール動画広告、③ Web 上のバナー面やコンテンツ内に表示される自動再生動画広告、は広告効果(ブランドインパクト)に違いがあるかというリサーチができれば、とても興味があります。

購入意向などの広告効果(ブランドインパクト)に寄与する要因として、クリエイティブとメディアの各要因でどうなるのか。このあたりを深掘りした結果が知りたいところです。

■広告を見た時間長さ(秒数)による広告効果の違い

次に興味深い点は、広告を見た時間(秒数)によって、広告効果に違いがあったかどうかを見た結果でした。

ここでも、調査手法として補足があります。

この調査では、広告を接触させるグループ(Exposed group)と、比較対照としてのグループ(Control group)を構築する設計となっています。広告視聴時間まで分解して見る場合、Exposed group も Control group も同じ視聴時間の人どうしで比べる必要があります。

ここで問題になるのは、Control group の人の視聴時間をどう割り出すかです。というのも、Control group は広告に接触しない人たちなので、そもそもとして対象広告を何秒見るかがわかりません。

そこで Facebook と Nielsen が工夫したのは、Control group の人たちが「仮に調査対象広告を見たとすれば、何秒見たであろうか」をモデルにより予測したことです。例えば、A さんは 5 秒見るであろう人、B さんは 25 秒見るであろうと予測し、A さんは、Exposed group の 5 秒広告視聴者との比較対照として「5 秒 control group」と扱ったのです。

なお予測モデルには、各ユーザーの Facebook 上のデータを使ったとのこと(参考:上記インタビュー記事)。

個人的に、このモデルがどこまで精緻なのかは気になりますが、これ以上は判断のしようがないのも事実です。なので、ここからは、広告視聴秒数ごとの Exposed group と Control group が、比較するために正しく作られている(Apple to Apple)という前提で見ていきます。

広告を見た時間長さ(秒数)による広告効果の違いの結果は、以下のグラフです。



このグラフで、いくつかおもしろい結果が出ています。例えば、
  • Ad recall は動画広告を長く見るほど、アップリフトが高くなる (緑のグラフが増加傾向)
  • Brand awareness (ブランド認知)は、15 秒くらいまでは増加しているが、15 秒以上は長く見てもアップリフトはほぼ同水準
  • Purchase intent (購入意向)は、他の 2 つに比べ視聴時間長さによるアップリフトの違いは少ない
  • 広告想起(Ad recall)では、1 秒の動画広告接触でも 15% 程度のアップリフトが見られる

■動画広告を終わりまで見られなくても広告効果がある。では何秒ならよいか?への示唆

次も、広告の視聴時間長さごとで見た結果です。

以下のグラフは、広告効果が見られた人を各指標ごとに 100 とし、視聴時間の長さの構成比を積上で表したものです。



グラフの見方は、一番左の Ad recall なら、広告効果があった人のうち、広告を 3 秒以内までしか見なかったのは 47% (半分弱)、10 秒以内しか見なかったのが 74% (4 人のうち 3 人)。

おもしろいのは、横軸 x (視聴時間) が増えるごとに y はまず急激に大きくなり、視聴秒数が大きくなるほどグラフはなだらかな増加を示しています。グラフの形状が y = x^1/2 のような増え方です。

個人的な感覚としては、y = x^2 、もしくは、ある点がティッピングポイントになって急激に増加し、その後にまた増加が鈍化する S 字カーブを描くのではと思っていました。

広告視聴が 3 秒以内でも、Brand awareness 効果があった人の 1/3、Ad recall 効果があった人の 1/2 の人で態度変容があったことは興味深いです。

確かに自分の感覚を当てはめてみると、例えば YouTube の動画広告で 5 秒経過すると広告をスキップできる TrueView があります。

スキップするかどうかとは、その動画広告が自分にとって興味があるかどうかです。自分の場合は、ほぼどの広告も 5 秒たった時点ではスキップするかどうかを判断できています。さらに言えば、5 秒のスキップができるまで「早くスキップしたい」と待っていることもあります。

これはつまり、5 秒よりもっと短い時間で、その広告を判断していることを意味します。自分のこの感覚と、Facebook 調査結果を合わせて考えてみると、動画広告の冒頭 3 秒くらいで、人は興味ある/ないの評価ができてしまうのかもしれません。

そう考えると、TVCM を使った 15 秒や 30 秒の動画広告でも、最初の 3 秒から 5 秒でいかに視聴者の関心を惹きつけられるか(アテンション)が大事であると、Facebook の調査結果は示唆しています。


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