今回はマーケティングについてです。
ターゲット顧客を決めるために、ベネフィットからセグメンテーションをするやり方をご紹介します。
なぜベネフィットセグメンテーションなのか
ベネフィットからセグメンテーションをつくる理由は、同じ人でも、時と場合によってニーズが異なるからです。ニーズごとに分けてマーケティングをするためです。
例えば飲料であれば、ある人には次のような利用シーンがあります。() 内がニーズです。
✓ 飲料の利用シーン
- 朝の出社直後にコーヒーを飲む (仕事モードに切り替えたい)
- お昼ごはんにお茶を飲む (昼食に合うさっぱりした飲み物を飲みたい)
- 午後は濃いめのコーヒーを飲む (眠気を覚ましたい)
- 夕方はエナジードリンクを飲む (仕事をもうひと頑張りしたい)
同じ人でもこれだけのニーズが存在します。一人の生活者の中に複数のニーズがあるということは、ニーズごとに求められる価値 (ベネフィット) があることを意味します。
自分たちの製品やサービスは、どのベネフィットに適しているかです。ターゲットとする生活者がどのようなベネフィットを求め、それに対してどんなマーケティング活動をするかです。
ベネフィットセグメンテーションの具体例
求めるニーズ (ベネフィット) でセグメントをつくる方法は、新人 OL 、つぶれかけの会社をまかされる という本にわかりやすく紹介されています。
以下は本書からの引用です。
「20代女性」 (男性でも同じです) といった場合、20歳の遊び回る大学生、21歳の就活の大学生、23歳の新人ビジネスパーソン、25歳の中堅ビジネスパーソン、27歳の DINKS の主任、あるいは29歳のお子さんがいる専業主婦など、さまざまな 「20代女性」 が含まれてしまいます。
「20代女性」 という分け方ではニーズが全く違う人が混在してしまうので、ニーズがわからないのは当たり前なのです。
(中略)
ではどうすればいいのでしょうか?求める価値が違うために分けるのですから、「ベネフィット (価値) 」 でくくればいいのです。
「分ける」 というより 「くくる」 ですね。ニーズが近い人をまとめるのです。
(中略)
当たり前のように見えますが、こればベネフィットセグメンテーションなどと呼ばれる、実は比較的高度な手法です。
「時間がないから10分で昼食をすませたい」 というニーズを持つ40代男性は、「ゆっくり同僚と話がしたい40歳男性」 より、「時間がないから10分で昼食をすませたい」 というニーズを持つ20歳女性に近いのです。
「ゆっくり同僚と話がしたい」 という40歳男性は、「ゆっくり友人と話がしたい」 という20歳女性のニーズに近いでしょう。年齢や性別ではなく、求める価値でくくればよいのです。
マーケティングをするターゲット顧客を明確にするために、人を 「分ける」 ではなく、同じニーズがある人たちを 「くくる」 と考えます。
ベネフィットセグメンテーションの方法
具体的にはどういう方法でくくればよいのでしょうか。
具体化 → 普遍化 → 人をくくる
再び、新人 OL 、つぶれかけの会社をまかされる から引用します。
顧客を価値でくくる具体的な方法は、具体化 → 普遍化 → 人をくくる、という3ステップです。これは私のオリジナルノウハウです。
まずは 「価値」 を具体化します。「付加価値」 のようなあいまいな言葉ではダメです。「どんな」 付加価値なのかを、お客様の言葉で具体化します。
イタリアンレストランの場合、最低限 「上司に怒られた後、友人と大騒ぎしてスカっとしたい」 くらいには具体化します。
(中略)
次に、具体化した後で、普遍化します。この場合は、「大騒ぎして職場のストレスを発散」 ですね。
最後に、同じような 「価値」 を求める人を探してくくります。「いうことを聞かない部下にハラをたて、大騒ぎしてスカっとしたい」 という課長さんも、同じニーズかもしれません。
すると、この課長と部下のニーズは同じですから、同じセグメントとしてくくってしまっていいわけです。「ストレス発散大騒ぎニーズ」 で考えると、世代も性別も違う人が同じ価値を求めているわけです。
(中略)
「具体化 → 普遍化 → 人をくくる」 という順番がポイントです。
最終的には性別・年代などに落とし込んでもいいのですが、それは、価値で人をくくった 「後」 の話です。価値で人をくくってみて、「やっぱりゆっくり語らうニーズは30代カップルが多い」 ということであれば、それは 「30代カップル」 とすればいいのです。
このようなプロセスを飛ばして 「30代カップルのニーズは?」 などと考えると、「ニーズがわからない」 と嘆くことになります。
以下は、「具体化 → 普遍化 → 人をくくる」 について見ていきます。
価値を具体的に言語化する
先ほどの引用は平易に書かれていますが、内容は深いことを言っています。
「具体化 → 普遍化 → 人をくくる」 という順番です。始めに行なうのはニーズの具体化です。ターゲットとしたい顧客はどんな価値を求めているのかを、徹底的に具体化します。
引用内に書かれていたように、「付加価値」 などの曖昧な表現ではありません。具体的にどのような付加価値なのかを、顧客の言葉で具体化します。本書で紹介されていた具体例は、「上司に怒られた後、友人と大騒ぎしてスカっとしたい」 でした。
価値を普遍化し、同じニーズの人たちをくくる
具体化した顧客が求めている価値を一般化し、同じ価値を求めている人でくくります。
具体的なニーズである、「上司に怒られた後、友人と大騒ぎしてスカっとしたい」 と 「言うことを聞かない部下に腹が立ったので、ストレスを解消したい」 は、「大騒ぎして職場のストレスを発散するニーズ」 と普遍化できます。
普遍化した後は、同じニーズを持つ人をくくります。くくった結果がベネフィットセグメンテーションです。
一般的にセグメンテーションは分けることだと理解されているでしょう。一方、ベネフィットセグメンテーションのポイントは、具体化したそれぞれのニーズを普遍化し、同じニーズと見なせる人同士を 「くくる」 というやり方です。
覚えておいて損はない方法
セグメンテーションのオーソドックスな切り口は、性別・年代・居住地域・職種・家族構成・年収などを使います。
例えば、20代女性というデモグラ情報で人を分けて、そのセグメントに入った人たちの特徴やニーズを探るやり方です。20代女性とそれ以外の人たちの違いを分析します。
ベネフィットセグメンテーションは逆のアプローチをとります。顧客が求めるニーズから入り、同じようなニーズでくくるというアプローチです。
ベネフィットセグメンテーションは、覚えておいて損はないマーケティングの方法です。