アフリカのことわざから、組織の多様性について考えます。
アフリカのことわざ
社会派ブロガーのちきりん氏とプロゲーマーの梅原大吾氏の対談本である 悩みどころと逃げどころ で、アフリカのことわざが紹介されています。
アフリカのことわざは、「早く行きたければ一人で進め、遠くまで行きたければ、みんなで進め」 です (If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.) 。
以下は、本書からの該当箇所の引用です。
ウメハラ: 知り合いから聞いたんですが、アフリカのことわざに 「早く行きたければ一人で進め、遠くまで行きたければ、みんなで進め」 って言葉があるんだそうです。まさにそうだと思いますね。
ちきりん: それ、よくわかります、日本企業ってね、日本人男性だけで意思決定をしたがるんです。女も外国人も入れたくない。日本人男性に関しても、仕事第一じゃない奴はダメ。価値観の違う奴は仲間に入れたくない。
理由は、そのほうが 「早く行けるから」 です。同じような価値観の人だけで意思決定すると、摩擦も少なく効率的にさっさと進める。
でも、インド人やら中国人やらシリア人やらが入り始めたら、「早く」 は進めない。いちいちめんどくさい。でも、「遠くに行く」 には、明らかにそっちのほうがいい。
多様性を欠く組織では刺激が少なくて発想が拡がらないし、クローズドな環境って人間関係が固定するので、遠慮や上下関係が生じる。
だから 「遠くに行く」 ためには、オープンで多様性に富んだ組織になることが必須なんです。でもその転換がなかなかできない。
ウメハラ: 早く進むために最適化された組織は、遠くまで進むというレースでは力が発揮できないってことなんですね。
引用: 悩みどころと逃げどころ
アフリカのことわざからの示唆
アフリカのことわざで思ったのは2つです。
✓ アフリカのことわざからの示唆
- 組織の多様性について、組織形態とどこを目指しているかで多様性の是非が分かれる
- 仕事でのプロジェクトの進め方
以下、それぞれについてご説明しますね。
[示唆 1] 組織の多様性
以前、ベンチャー企業で働く知り合いとランチをしていた時のことです。知人と私では、多様性の考え方に違いがありました。
多様性の見解の違い
知り合いは多様性について次のように述べていました。
- 少なくとも自分のいるベンチャー企業や自分のチームには、多様性はなくてよい
- チームには日本人以外のメンバーがいて、コミュニケーションや意思決定プロセスに時間がかかりすぎる
- 自分のリソースを割かなければならず、本来自分がやりたいことに時間を使えない
一方の私は、多様性については逆に考えていました。具体的には次のような考え方です。
- 組織に多様性やオープンであることは、デメリットよりもメリットのほうが大きい
- 自分とは異なるキャリアや専門知識を持っている人がいれば、自分では気づかなかった視点や方法が得られる。異なるアイデアが組み合わさり、よりよい解決策が見い出せる
見解が違った背景
多様性で意見が異なった理由は、ベンチャー企業とそうではない状況の違いでしょう。
一般的にベンチャーは早く進みたいと思っている組織です。アフリカのことわざにおける 「早く行きたければ一人で進め」 に該当します。全くの一人ではありませんが、一人のような状況、つまり多様性よりも同じような人たちで意思決定を早くし、前に進むことを優先します。
一方、アフリカのことわざの後半の 「遠くまで行きたければみんなで進め」 は、目的地が遠い場合は、所属メンバーの多様性が望ましいと理解できます。
フェーズによって多様性の価値が変わる
もちろん、「ベンチャー企業 = 多様性はないほうがよい」 という単純なものではありません。組織における多様性に、唯一の正解はないでしょう。
よく言われるのは、組織には多様性があるべきということですが、一概に多様性があればよいわけでも、その逆でもないのです。
アフリカのことわざ 「早く行きたければ一人で進め、遠くまで行きたければ皆で進め」 には、小規模のチームや組織にとって示唆があります。
人数の少ない組織は成長し、やがては大きな組織になります。その過程において多様性の是非を検討したほうがよいという示唆です。
目の前の問題解決に邁進する 「早く進むこと」 を優先するフェーズから、企業理念や構想するビジネスを実現するなどの 「より遠くまで行くこと」 への比重が高くなるフェーズに移りつつあるタイミングです。
[示唆 2] プロジェクトと多様性
アフリカのことわざについて思ったことの2つ目は、プロジェクトと多様性についてです。
プロジェクトを早く成果を出すものと、時間かけて大きな成果を出すものに分けると、次のように当てはめることができます。
- 早く成果を出す:早く行きたければ一人で進め
- 時間をかけて成果を出す:遠くまで行きたければみんなで進め
アフリカのことわざからの示唆は、早く成果を出したい場合は、自分でできることはやってしまい、一人で、もしくは少人数で進めるほうが効率的であることです。
一方、大きなプロジェクトでは、多様な人々が集まり、それぞれの経験やスキルを活かしながら進めるほうがよい、ということです。
大きなプロジェクトでも、全体では 「みんなで進め」 で、マイルストーンやタスクを細かくしたそれぞれでは 「早く行きたければ一人で進め」 を実践してもよいでしょう。
最後に
今回は、組織の多様性について考えました。
多様性で重要だと思うのは、性別や人種の違いという観点以上に、様々な考え方、経験や知見、専門とする得意分野で、多様性があることです。つまり、外見的な多様性よりも、中身の多様性です。
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