投稿日 2017/11/02

書評: モチベーション革命 - 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (尾原和啓) 。自分の why と生きがいを見つけよう


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モチベーション革命 - 稼ぐために働きたくない世代の解体書 という本をご紹介します。



エントリー内容です。

  • モチベーションの違い ( 「乾けない世代」 と 「乾いている世代」 )
  • 自分の why 、生きがい
  • 意味のイノベーション


モチベーションの違い


本書でのモチベーションとは、何のためにがんばるか、働き、生きるかという価値観です。

著者の指摘は、2017年現在で30代以下の若い世代と、上の世代とでは価値観が全く異なることです。


 「乾けない世代」 と 「乾いている世代」


30代以下の世代は、生まれたときから身の回りにモノが溢れ 「ないものがない」 が当たり前で、「乾けない世代」 と表現されます。40代以上の世代は 「乾いている世代」 です。

2つの世代について、本書で紹介されている具体的なイメージは次の通りです。先に、上の世代である乾いている世代からです。乾いているからこそ何かしらの 「潤い」 を求めます。


乾いている世代 (上の世代)

  • 汗水垂らして頑張って、高い目標を達成する
  • そのご褒美に、美味しい料理を食べ、ワインを飲み、きれいな女性と一夜を共にするなどの 「身体的・心理的・社会的な快楽」 を味わうことに幸福を感じる


乾けない世代 (若者)

  • 自分が頑張る意味が持てるものに、自分が好きな人たちと、とことんハマることを重要視する。金銭や物理的な報酬とは関係なく、「自分の好き」 を追求する
  • 出世するために残業する気は起こらないが、好きな友達と、お気に入りのアイドルのライブを助けるボランティアスタッフとしてなら、朝まで働ける


著者の尾原氏は、新しいモチベーションを持つ 「乾けない世代」 が、これからの世の中の中心になっていくと言います。


乾けない世代が重視するもの


乾けない世代と乾いている世代を、アメリカ人心理学者のマーティン・セリグマンが唱えた人間の欲望で比較すると対照的です。

セリグマンが提唱した人間の欲望は、5つあります。達成、快楽、意味合い、良好な人間関係、没頭です。上の世代である 「乾いている世代」 は、達成と快楽を欲すると著者は言います。一方の 「乾けない世代」 は、意味合い、良好な人間関係、没頭を重視するとのことです。


若者への応援メッセージ


本書のターゲット読者は、乾けない世代です。ゆとり世代と言われる、2017年現在で30才以下の若者です。上の大人の世代のやり方や考え方に馴染めない人たちに向けて、そのモチベーションを肯定し、応援するメッセージが読み取れます。

そして、モチベーションを高め、より充実した仕事や生きがいのある人生を送るためにどうすればよいかが書かれています。


ライフワークを見つける


例えば、自分にとってライフワークは何かを見つけることです。尾原氏は次のように書いています。

ライフワークとは、たとえお金にはならなくてもついつい取り組んでしまうような、好きで好きでたまらない “生きがい” です。もしあなたが今、とても疲れているのなら 「そんなものはない」 とすぐにこの本を閉じたくなるかもしれません。

しかし、どんな人にも、「このために生きているな」 と思えるほど、好きなものが存在するのです。そしてそれを実感できるときが、あなたが元気になるときです。

 (中略)

自分が好きで仕方ないライフワークなら、放っておいても24時間、1年中考えていられます。つまり、ワークのなかのライフワークにおける部分をいかに広げていくかが大事、ということです。

これは、ライフとワークが別々に独立していた時代が終わりつつあるということを表した言葉でもあると言えるでしょう。

 (引用:モチベーション革命 - 稼ぐために働きたくない世代の解体書)


自分の why は何か


著者の言っていることに共感できたのは、自分の好きなことは何かを追い求めることでした。他人にどう思われても、寝食も忘れて自分が没頭できることは何かです。自分の 「why」 は何かです。

自分の好きなことがライフワークになり、生きがいまで高められるかは、読んでいて考えさせられました。


生きがいの構成要素


興味深かったのは、本書で紹介されていた生きがいの4つの構成要素でした。生きがいとは、次の4つを満たすものだとします。

  • 大好きなこと (That which you love)
  • 得意なこと (That which you are good at)
  • 世の中が必要としていること (That which the world needs)
  • 稼げること (That which you can be paid for)

 「好きなことで生きていく」 と聞けば、確かに魅力的です。しかし、現実的には誰もが実践できているわけではありません。好きかどうかだけではなく、それが世の中から求められ、稼げるようになるかです。

一方で、生きがいを見つけられるかの第一歩は、自分が好きなことは何かを見つけることでしょう。好きなことを続けて得意なことになり、世の中からも必要なものになり、結果的に稼げることになるというプロセスが望ましいです。


意味のイノベーション


もう一つ興味深く読めたのは、「意味のイノベーション」 でした。以下は本書からの引用です。

AI の時代は課題解決よりも課題発見が大事だという話をしました。ただ、すでにあらゆるモノで溢れた現代で、日常のなかからそれを見つけ出すことは困難です。そんな時代に大事なことは、すでに存在するモノに対する 「意味のイノベーション」 です。

 (中略)

これは、生まれたときから周囲がモノで溢れていた 「ないものがない」 世代が大好きな、既存のモノに 「新しい意味」 を提供することで 「今あるものが全く違う魅力あるものになる」 という新しいビジネスのあり方です。

 (引用:モチベーション革命 - 稼ぐために働きたくない世代の解体書)

ここで言う 「意味」 は、「価値」 と見ることができます。つまり 「意味のイノベーション」 とは、すでにあるモノが持つ既存の価値に対して、新しい切り口からこれまでになかった価値を見い出すことです。

イノベーションとは、「未来の当たり前」 をつくることです。

今はまだないこと、誰も気づいていなく実現できていないことが、やがては当たり前のようになることです。意味のイノベーションは、まだ価値として発見されていないことが、未来では当たり前のように皆が価値と見い出していることです。

これまでにな切り口で、新しい価値を提供することは、マーケティングにも通じます。

他のプレイヤーにはできず自分たちはできて、顧客からも選ばれ、売れる仕組みにまでできることだからです。競合と差別化された強みが自分たちにはあり、その強みを顧客が価値として評価されるものにできるかです。


本書を批判的に評価すると


あえて批判的に評価をすると、本書で書かれている内容は著者の主観です。著者がこれまで見てきたことの観察、それが意味することや解釈、考えたことです。

逆に言えば、書かれていることを客観的に示すファクト (データや情報) は提示されません。

著者が直接、あるいは間接的に見聞きした 「定性調査」 に基づいた内容が書かれています。一方で、「定量調査」 に該当するものはありません。

本書に書かれていることに共感をするか、内容を信じるかどうかは、読者一人ひとりに委ねられています。この本の内容とは違う考え方や反論があっても、フォクトに基づいた議論にならなければ水掛け論になってしまうでしょう。


最後に


先ほどの批判的な評価で書いたように、本書の内容は読む人によって評価が分かれるでしょう。著者の言うことに共感できる人には支持されます。著者の狙いは、controversial という議論を呼ぶ内容にし、あえてそのようにしていると見ることができます。

もし書かれている内容に共感が湧かないのだとすると、なぜそうなのか、自分はどう思うか、自分のモチベーションや生きがいは何かを考えるきっかけにできます。

自分の気持ちや考えを見つめ直し、それでもなお変わらないとすれば、そのプロセスを経ることも本書の価値です。



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。