2012/04/30

ドリルを売ろうとした Sony と、穴を開けるサポートをした Amazon

今日で4月が終わるので、2012年も3分の1が経過したことになります。時計で言うとちょうど20分のところに針がある状態です。

12年の今年は今のところコンスタントに本が読めていて、1ヶ月で20-25冊程度、4ヶ月ではほぼ100冊くらい読みました。このうちの8割以上はアマゾンから買った本です。感覚的には9割に近いくらいかもです。それくらい本はアマゾン経由で手に入れています。

本をアマゾンで買うのに何が魅力かって、中古も含めた豊富な品揃え、モバイルからでも手っ取り早く注文ができて、安定した配送の仕組みですぐ届く、送料無料、あたりかなと思っています。トータルでの提供サービスが素晴らしいです。


電子書籍を理解する3つのフレーム


次にアマゾンに期待したいのはキンドルです。電子書籍を読める環境のサービス提供です。

電子書籍は、電子書籍端末という「デバイス」、電子化された本という「コンテンツ」、電子書籍を手に入れるための「プラットフォーム」という3つの層で考えるといいと思っています。アマゾンへの期待はデバイス、コンテンツ、プラットフォームというトータルでの電子書籍サービスの提供です。

2012/04/28

「象の足を見るな」:新入社員の時に教えられ、今もなお考えさせられる話

「象の足を見るな」。この言葉は新社会人となって会社に入社してすぐくらいに、当時の副社長に言われたものです。

その心は、全体像を見ることの大切さ。

今でもよく思い出す教えで、それくらい当時も今も変わらず心がけています。象の足になるなという例えは、「群盲象を評す」という寓話をもとにした話でした。Wikipediaから引用すると、
盲人達は、それぞれゾウの鼻や牙など別々の一部分だけを触り、その感想について語り合う。しかし触った部位により感想が異なり、それぞれが自分が正しいと主張して対立が深まる。しかし何らかの理由でそれが同じ物の別の部分であると気づき、対立が解消する、というもの。
盲人は6人いて、象に触れた時の各自の答えは全く違ったという話:象の鼻を触った者は「蛇」、耳を触った者は「扇」、牙を触った者は「槍」、足を触った者は「木」、体を触った者は「壁」、尻尾を触った者は「ロープ」。


各部分の特徴の例え自体は間違ってはいない(例。鼻⇒蛇)けど、全体を見た時には各自の齟齬が大きいですよね。物事を正確に、あるいは本質をつかむためには全体像を把握することが大事である、だから決して全体像を見ることなく一部分だけで終わってはいけない。「象の足を見るな」。副社長からはそんな話を聞きました。

■全体像を広げる:業務プロセスを超えた先まで考えてみること

例えば、A⇒B⇒C⇒D⇒E、という社内での仕事のプロセスがあって自分の役割はCを完了させることだとします。自分の仕事だけを考えるのであれば目の前のCだけを見て、次のDに渡すことだけを考えていればよい。これはある意味すごく楽なことです。前後のことは意識せずとも与えられたことだけをやっていれば特に問題はなかったりします。

でも、これだといけないと思うわけです。プロセスの前提が変わった場合、もしかしたらBよりCを先に済ませたほうがいいかもしれません。あるいはBとCを並行して行なうことでプロセス全体の時間短縮も可能かもしれない。これは、目の前のCしか見ていないと決して思いつかないもの。全体像ではなく、まさに「象の足しか見ていない」状態。

A⇒B⇒C⇒D⇒Eは社内でのプロセスと設定しましたが、最近思うのは全体像の位置づけをもっと広く持たないといけないということです。全体像を社内だけではなく、社外までも捉える。Aより前には売り手のお客がいて、Eより後にも買い手のお客があります。もっと言うと、買い手のお客の先には生活者がいます。だから、自分のやるタスクはCだけだとしてもAより前、そしてEより後の消費者や世の中全体にどう影響するかも考えないといけない、と。そうすることで自分がやっていることの意義だったり、自分は世の中の何を変えられるのか、世界にどういうインパクトを与えられるかまで考えることができると思っています。

■ちょっと蛇足かも:マーケティング4Pと4C

自分の役割がCで、その後のD⇒Eと続き、最終的には生活者まで考える。この時に意識するのは生活者としての自分です。自分自身も生活者や消費者、あるいはユーザーの1人とも言えるので、自分がユーザー・消費者の立場に立った時に今の仕事はどう映るのか。この視点は意識するかしないかで結構違うと思っています。

有名なマーケティング理論の1つに4Pというものがあります。Product(製品/サービス)、Price(価格)、Place(売り場・店)、Promotion(広告・宣伝)の4つのPです。マーケティングミックスとも呼ばれます。これはある意味、売り手の視点だと思っていて、買い手である消費者視点に切り替えると、4Cという発想ができます。

Product  → Cutomer value(価値)
Price    → Customer cost(支払うコスト)
Place    → Convenience(利便性:商品の手に入れやすさ)
Promotion → Communication(一方通行ではなく双方向のコミュニケーション)

この4Cの話はエントリー趣旨とはやや蛇足気味ですが、最近あらためて考えさせられ買い手視点の発想はともすれば抜けてしまうなと思ったので紹介させていただきました。


※参考情報
群盲象を評す|Wikipedia


2012/04/21

書籍 「失敗の本質」 に見るガラパゴス化とイノベーション


Free Image on Pixabay


下記の表は、名著 失敗の本質 - 日本軍の組織論的研究 で指摘された太平洋戦争 (大東亜戦争) 時の日本軍と米軍の戦略と組織特性の比較です。


引用:失敗の本質 - 日本軍の組織論的研究


日本軍と米軍のそれぞれの特性を並べてみると、相互に関係していることがわかります。日本軍の特性をまとめると次のようになります。

  • 日本軍は戦略には明確なグランドデザインがなく目的があいまいで、短期決戦を好む傾向にあったこと
  • 短期決戦志向のために戦略オプションでは代替案 (戦況が変化した場合のプラン・対応計画) が乏しかった
  • 組織特性においても、人間関係を重視し成果よりも動機や敢闘精神を重視した集団主義

本書がおもしろいのは、6つの戦い (ノモンハン事件、ミッドウェー海戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦) から上表のような日本軍と米軍の戦略・組織特性比較を明らかにするだけではありません。

さらに深掘りしなぜ日本軍は失敗したのか、そして現在にも活かせる失敗の教訓を残している点にあります。

2012/04/14

リアルタイムウェブ中毒だった自分と今の自分

インターネット。もはやこれなしでは自分の生活が成り立たないと思えるほど、プライベートでも仕事でもいろんなシーンで使っています。何かわからないことや調べる時はネットで検索、ニュースもテレビや新聞からではなくツイッターやRSSなどの各種サービスから、友達とのコミュニケーションもネットが当たり前になっています。

ネットは便利です。間違いなく人々の生活を変えました。でも、2012年の今年になって私自身はネット利用時間を意図的に減らしています。

■リアルタイムウェブ中毒


以前はツイッターやGoogleリーダーなどのRSS、ziteなどのキュレーションサービス、メール、フェイスブックも含め頻繁に使っていました。電車の待ち時間などちょっとした隙間時間はほぼiPhoneでチェックしていたし、朝起きてまずやっていたのはiPhoneの起動でした。家に帰宅した後もそうですね。

今思えばほとんど中毒と言える状態で、何がそうさせていたかと考えると「リアルタイムに常に情報に接触していたい」という欲求があったからだと思っています。ツイッターがまさにそうだし、ツイッターほどのリアルタイム性ではないですがRSSも含め、アプリを起動すれば常に最新の情報があり、今何が起きているかのリアルタイム情報をまるでシャワーのように浴びていた感じ。朝起きてツイッターを見ると自分が寝ていた間の特に海外の新着情報がたくさんあったし、仕事が終わってからや帰宅後にチェックすればその日の出来事や今何が起こっているかがほぼリアルタイムで入ってきました。リアルタイムウェブ中毒状態です。

でも、ふと思ったんですよね。これって本当に自分がやるべきことなのか、本当に必要なことなのか、と。試しに一日あたりどれくらい時間を使っているのかをグーグルカレンダーに記録してみたら自分の思っていた以上でした。隙間時間でも積み上げると結構な時間。これが一日だけならまだしもほぼ毎日なので、1ヶ月や年間にすると相当な時間に当たります。自分の結論として、無理矢理にでもネット、特にリアルタイムウェブへの接触時間を減らし、代わりにその時間に例えば朝の出勤までは本を読んだり、仕事や勉強したり、夜に家に帰った後はあえてiPhoneは全く使わずリラックスできたりと、自分の生活が変わりました。(さらっと書いてますが、相当変わりました)

■「ネット・バカ」で書かれたネットが引き起こす注意力散漫への警鐘

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること「リアルタイムウェブ中毒」で考えさせられるのが「ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること」という本で書かれていたことです。この本の主題は、ネットを当たり前のように使うようなり人間の脳に変化が起こっている、具体的には脳が注意力散漫になることへの警鐘です。注意力散漫になるとは逆に言えば1つのことに長く集中できないという状態。頻繁にツイッターを見る、RSSをチェックする、メッセージ受信のアラートで作業を中断しメールを確認する。この回数/頻度が多いほどそれ以外のことを長くやり続けることが困難になります。

「ネット・バカ」という邦題にやや違和感はありますが、原題は「THE SHALLOWS What the Internet Is Doing to Our Brains」。Shallowは浅瀬という意味で、自分の解釈としては、深い集中ができないことを指していると思っています。本書の中で著者がこの本を執筆するにあたり、あえてネット環境が整っていないコロラド山中に引越し、携帯電話が通じず、ネット回線スピードが遅い状況に身を置いたことを書いています。ツイッターのアカウントをキャンセルし、フェイスブックを休止、RSSをシャットダウンしスカイプもほとんどやらずに、メールのチェック頻度も少なくしたそうです。当初は苦痛どころではないと相当苦労した様子が伺えますが、新しい環境に慣れるに従い1つのことへの集中力が増し、執筆活動が大いに進んだとのこと。

このエピソードはなかなか考えされるものです。自分の場合はさすがに山中に引越すことはしませんが、ネットに常時接続しているリアルタイムウェブ中毒状況から脱したほうがよいと思ったのは前述の通りです。今思えばリアルタイムウェブ中毒とは注意力散漫な状態そのものでした。結果、積み上げると結構な時間を費やしている。その時間全てを浪費したとは思っていませんが、使ってた時間は無視できない量でした。だから、リアルタイムウェブと距離を置いたことで時間が確保できたことが大きいと思っています。

■集中と注意力散漫の二兎を追う

とはいえ、じゃあネットを使わない生活に戻れるかというとそれはもはや不可能でしょう。ネットにはメリットとデメリットがあり、リアルタイムウェブ中毒はデメリットのほうに置きましたが、それでもメリットのほうが大きいからです。

自分の生活で変えたことはネットから意図的に離れる時間をつくることでした。そうすることで確かに注意力散漫だった状態が変わったと感じます。自分の脳のあるスイッチがオフになったような感じ。ここで言うオン/オフというのは、常時ネット接続のオンかオフかでもあり、注意力散漫か1つのことに集中できているかも指しています。

あらためて思うのが、注意力散漫な状態がいつもダメかというと、そうでもないことです。「ネット・バカ」での著者の指摘で興味深かったのが、「歴史のほとんどの期間で人間の脳は注意散漫な状態であった」というもの。他の動物同様に、不意に敵に襲われたり、近くにある食料を見落とさないようにするため、つまり生存のためです。もともと脳は1つのことに集中するよりも注意力散漫な状態のほうが自然なのです。それが人間社会が発達するにつれて基本的な身の安全は保証されるようになり、本などから文字情報を獲得するなど1つのことへの集中力が必要になっていたと理解しています。

注意力散漫な状態をダメなわけではないとさっき書いたのは、ボジティブに捉えれば思いもよらない斬新な新しいアイデアが生まれることにつながるかもしれません。新しい考えやアイデアはそれを考えている時よりも、別のことを考えていたり行なっていた時に、ふと思いついたりするものです。

ネットとのつきあい方の現時点での自分の考えは、ツイッターなどのリアルタイムウェブのメリット/デメリット、注意力散漫になることへのプラスとマイナスを意識し、なるべくメリットを大きくすること。そのためにやっているのが意図的にネットから離れる時間をつくることです。集中と注意力散漫の二兎をあえて追ってみることにしています。


※参考情報
リアルタイムウェブとチェックインの可能性を考える|思考の整理日記


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2012/04/08

「勝ち続ける経営」 を続けるマクドナルドのすごさ




マクドナルドが昨年2011年期の既存店売上高は前年比プラス (1.0% 増) であったと発表しています (2012年1月5日) 。


業績は V 字回復


これで2004年から8年連続の対前年プラスです。驚異的とも言える成長を続けているマクドナルドですが、実は2003年までは7年連続のマイナスでした。2004年を堺に V 字回復をしているわけです。


引用:ダイヤモンド・オンライン


V 字成長を牽引しているのが、マクドナルド代表取締役会長兼社長兼 CEO の原田泳幸氏です。今回のエントリーではマクドナルドの経営について取り上げ、何がすごいのかを思ったところを書いてみます。

参考にした本は2冊です。

勝ち続ける経営 - 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論
マクドナルドの経済学

2012/04/01

Google Consumer Surveysの価値:グーグルの新しいビジネスモデルはネットリサーチの破壊的イノベーションとなるのか

Googleが米国時間3月29日に、新しいビジネスモデルを発表しました。

Google consumer surveysというマーケティング調査アンケートによるマネタイズを狙うもので、さすがグーグルと思ってしまう仕組みです。

今回のエントリー内容は3つ:Google Consumer Surveyの仕組み/価値、So what?、課題を書いています。


■Google Consumer Surveysのビジネスモデル

消費者アンケート調査をグーグルで簡単に低コストでできてしまうサービスです。

流れとしては、例えばマーケティング用にデータが欲しい時、Google Consumer Surveys(以下、GCS)でアンケートを作成します。アンケート調査はGoogleが契約しているウェブサイトで表示され、そのウェブサイト訪問者が回答する。アンケート結果はグーグルにより集計され、自分のGCSで確認します。

図にするとこんな感じです。


アンケートが表示されるウェブサイトは有料コンテンツサイトを想定しています。サイト訪問者はGCSのアンケートに回答すると有料会員ではなくてもコンテンツが見られる仕組み。

具体的なイメージは、日経新聞電子版の有料記事は毎月料金を支払っているユーザーしか閲覧できませんが、もし日経にGCSアンケートが表示されるとすると、無料会員ユーザーでもアンケートに答えれば有料記事も見られるのです。これがGCS回答者メリット。

ビジネスモデル/価値を簡単に書くと次のようになります。
  • アンケート依頼者:GCSでアンケートが簡単に/低コストで実施できる。回答結果は早ければその日のうちに返ってくるので、「ちょっとしたリサーチデータ」を入手できて便利
  • グーグル:アンケート実施による課金から売上/利益を得る。Google AdSense広告のマーケティングリサーチ版とも言える新しいビジネスモデル
  • 有料ウェブサイト運営者:アンケートの回答数に応じてグーグルから金額が支払われる。有料会員以外からも売上を得ることができる
  • サイト訪問者(アンケート回答者):アンケートに答えることで有料コンテンツを無料で見られる

■Google Consumer Surveysの詳細

実際にGCSでアンケートを途中まで作ってみた感想や以下のGCS情報から、もう少しGCSについて書いておきます。

マーケティングリサーチとかに関心のある方には読んでいただきたいですが、専門的な内容もあるのでこのパートは読み飛ばしてもらってもいいかもです。WhitepaperにはGCS詳細以外にもデータ検証結果が記載されてます(通常ネット調査や電話調査と比較検証など)。
How it works|Google consumer surveys
Whitepaper: Comparing the Accuracy of Google Consumer Surveys to Existing Probability and Non-Probability Based Internet and Telephone Surveys. (PDF, 631 KB)
  • 質問数は1問のみ。対象者を絞りたい場合は別途スクリーニング用に2問まで追加可能。つまり最大でも3問(スクリーニング2問+アンケート1問)
  • アンケート作成はGCS上で自分で作る。いくつかテンプレートも用意されている。実際にいろいろ作ってみた印象として簡単にアンケートが作成できる。バイアス除去のために回答選択肢をランダム表示させる機能も
  • 料金は1サンプルあたり10セント(1ドル=85円とすると0.85円。1000sで8500円)。回答者を絞る場合は50セント。絞り込み方法は2つ:デフォルトで用意されている属性情報(性別・年代・地域(US Westくらいの粗いレベル))を使う場合と、自分でスクリーニング設問を作成する場合(例.あなたは犬を飼っていますか?)。回答者数を1000sまでとか上限指定できる
  • 属性情報はグーグルのクッキーやIPアドレスから。クッキーはGoogle Display NetworkでのDoubleClick用に使われているもの。つまり性別や年代などの属性データはアクセス履歴の行動データから判定される
  • アンケートが配信されるサイトには、最低回答率を毎月達成しなければ翌月からはアンケートが表示できなくなるなどの条件があり、一定品質を確保するように配慮されている
  • アンケート結果はグーグルで処理されGCSから確認。回答データのグラフや数表。一部コメント付き。GCSページ上で属性絞込みなどもできる。結果イメージはこちら
  • 回答結果データはローデータとウェイトバック集計の両方。ウェイトはネット母集団調査(Current Population Survey。おそらく外部データ)と、年代×性別×エリアのセルから作成
  • アンケートデータはグーグルによれば「すべての回答は匿名で、ユーザーの個人情報とひも付けられることはなく、また、後でターゲット広告に利用されることもない」とのこと
  • 現在のGCSサービス範囲はアメリカのみ。調査対象地域もアメリカに限定

GCS紹介動画がいくつかあるので、こちらを見るとアンケート作成や回答データ結果確認方法のイメージがわかるかと思います。


Google Consumer Surveys: How to create surveys|YouTube


Google Consumer Surveys: How to view your results|YouTube

■So What?

ここまで、GCSのビジネスモデルや何ができるかを書いてみました。

もう少し深掘りしてみます。グーグルがGCSでやろうとしていることは、広告モデルとは異なるビジネスモデルの構築です。簡易アンケートを使ったコンテンツサイトの収益化の提案と言ってもいいでしょう。GCSには4つのプレイヤーがいて、それぞれのWinが成立しうる仕組みです。4者それぞれに価値があるのがGoogle Consumer Survey。

ネット広告の世界で検索連動型のAdWords、コンテンツ連動型のAdSenceという2つのイノベーションを起こしたのがグーグルでした。単に新しい方法をつくっただけではなく、自分たちの大部分の利益を稼ぐビジネスモデルです。

これがあったからこそ、これまでのグーグルは一見すると収益に結びつかないような様々なサービスを作り続け、その中からはGmailなどのグーグルの代表的なサービスとして今も多くのユーザーに使われています(ここ最近は急激なソーシャルシフトとGoogle+を中心とした統合を進めていますが)。

AdWords/AdSenceの特徴は低コストとロングテールにあり、広告とは基本的には人が多く集まるメディアに出稿するものを、たとえ1日に1ビューしかないページでもグーグルは広告メディアに変えたのです。GCSは広告でやったことをネットリサーチでもやろうというもの。

では既存のネットリサーチやリサーチ会社にとってGCSは脅威なのか、それとも機会なのでしょうか。

企業のマーケターやブランド担当者などにとっては、GCSはリサーチデータ入手の新しい選択肢になるでしょう。これまでネットリサーチ会社に依頼していた調査を、GCSで自分でアンケートをつくってスピーディかつ低コストでデータが得られる。

リサーチ会社にとって一定の顧客流出は起こるかもしれません。ただ、個人的に思うのはGCSではアンケートは1問だけであまり深いことまでは調査できなく、だとすると、これまではリサーチ会社に頼むほどでもなかった調査をGCSでやってしまう、すなわち、新しいネットリサーチニーズが生まれるのではということ。既存リサーチ会社とグーグルでパイの取り合いではなく、新しいマーケットができるのではないかと思っています。

ただしこれはあくまでGCSリリース直後現在の機能範囲においての話で、今後もしグーグルがGCSでできること(価値)を増やすことも十分に考えられます。

GCSプレミアム版みたいな感じで、質問数がもっと増えたり、アンケート内容も動画を見せたりとか、アンケートへのニーズにもっと応えるようになると、それこそネットリサーチ会社が提供するようなサービスと同等レベルも可能になってくるかもしれません。GCSではリサーチ会社でやる場合の人件費等のコストを極力省いている仕組みなので、リサーチ会社よりも低コストで実現されるはず。

GCSアンケート回答者にとっては回答負荷が増えますがその分のメリットを返せばアンケートに答えてくれるユーザーもでてくるはず。こうなると既存ネットリサーチ会社にとっては脅威でしょう。

■Google Consumer Surveysの課題

実際にGCSでアンケートをつくってみたり、できることを見た範囲での課題もいくつかあると思います。

1つはアンケート設問数で現在は1問のみなので、本当にちょっとしたデータを簡易的に得るためのツールという印象です。

2つ目はアンケート回答者の属性情報(年代や性別など)。あくまでクッキーベースのウェブ上での行動データからなので、その精度がどこまで正しいかも気になるところ。これはどんなサイトを見ているかのログデータの積み上げから、「このユーザーは25-34才の男性だろう」という推測にすぎないからです。もっとも大量データを集めればかなりの精度で出せるのかもですが。

3つ目は回答者バイアス。GCSのアンケート回答者は有料コンテンツに訪問した有料会員ではない人たちです。つまり、ネット利用者の全員ではない。コンテンツの内容によっては、訪問する人たちが特殊な人たちという可能性もあるわけでその人たちから得られたアンケート結果に代表性があるのか、という話です(ただこのあたりはグーグルももちろん認識していて、GCSvsネット調査vs電話調査からなどのバイアス検証をしているようです)。アンケート結果はグーグルから返ってきますが、そのアンケートはどのサイトで表示され回答されたのかがわからないのも気になります。

これら3つ以外に挙げたい課題として、GCSのアンケートが有料コンテンツサイトに表示される点です。有料サイトにとって、本来なら有料課金登録者にしか見せていなかった内容をGCSユーザーが見られる権利を(一時的にせよ)与えるのは、本当にそのサイトにとって望ましいことなのかはサイト運営者により分かれるのではないでしょうか。

また、個人的な感覚として有料サイト自体の数が無料サイトに比べて少ないと思うのでアンケート配信先が偏る気がします。アンケート回答者の多様性(代表性)を考えると、それこそAdSenceのように「普通の」無料サイトで幅広くアンケートが表示されるほうが望ましいと思います。無料サイトにとっても、収益源としてAdSence以外の選択肢となり得ます。GCSはAdSence同様にロングテール発想のほうがいいように思います。

ただし、無料サイト訪問者にサイト閲覧前にアンケートを答えさせることになるので、回答者メリットがなくなります。有料サイトではアンケート回答の対価として有料コンテンツの無料閲覧がありましたが、無料サイトではそもそも閲覧はタダなので、単にアンケート回答負荷だけが残ります。これだとアンケート回答率が低くなり、そもそものネットリサーチとして成立しなくなるわけで。

GCSは今のところは米国のみのサービスで、アンケート回答対象者も米国のみです。ただ、ビジネスとして成立することが確認できれば、間違いなくヨーロッパや日本にも近いうちに展開してくるはず。日本でも使えるようになったら実際にアンケート配信とかもしてみたいですね。Google Consumer Surveysはネットリサーチの破壊的イノベーションとなるのか、これからも要注目です。


※参考情報

Google consumer surveys
How it works|Google consumer surveys
Whitepaper: Comparing the Accuracy of Google Consumer Surveys to Existing Probability and Non-Probability Based Internet and Telephone Surveys. (PDF, 631 KB)
米Google、ウェブサイト収益化の新方法「Consumer Survey」を発表|INTERNET Watch
Google、調査アンケートと有料コンテンツを組み合わせた「Consumer Survey」を発表|RBBTODAY
A new way to access quality content online|Google News Blog
Google Consumer Surveys|YouTube
Google Consumer Surveys: How to create surveys|YouTube
Google Consumer Surveys: How to target custom audiences|YouTube
Google Consumer Surveys: How to view your results|YouTube


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多田 翼 (書いた人)