
今回は、調査についてです。
エントリー内容です。
- 良い調査を見極めるポイント
- 喫煙者のアロマの効果を研究した調査
- Why からはじまるゴールデンサークル
良い調査を見極めるポイント
2015年7月現在、仕事での役割は 「マーケティングリサーチマネージャー」 です。
Why, How, What の3つに一貫性があるか
業務として様々な調査に関わります。自分の経験から、良い調査企画や調査結果なのかどうかを見極めるポイントは、why, how, what の3つの要素に分けて見ることです。
- Why: 調査背景と目的、調査結果がどのように役立つのか
- How: 調査設計や調査手法 (分析や結論のためにどうやってデータを取得するのか)
- What: 分析結果を示すグラフや数表、考察や結論
重要なのは、Why, How, What の3つに一貫性があるかです。
その調査に Why があるか
調査について意識して関心を持つようにしているのは、why です。
Why とは、その調査背景と目的は何かです。調査実施するにあたってのモチベーションとも言えます。
また、調査結果がどのように役立つのかの視点も、忘れてはならない重要なポイントです。
調査企画書には目的として 「XX を明らかにする」 とは書かれています。ただ、調査目的としては、もう一歩先まで明記されているものが望ましいです。
XX を明らかにし、それはどのように役に立つのかです。何の意思決定に寄与できることなのか、自分たちの何に貢献するのか、調査結果レポートの読み手にとってどんな次のステップにつなげられるのかです。
明確な why があるかとは、調査に存在意義があるかどうかです。
Why がクリアになっていて、その先の how (調査設計) が適切なのかどうかにつながります。調査から得られたデータでつくられる what (グラフなどのアウトプットや結論) も、why とつながっているかどうかです。
喫煙者のアロマの効果を研究した調査 (How の例)
Why を実現するために、どのような手段で調査をするかが how です。
具体例で考えてみます。最近目にしたものに 「喫煙者と非喫煙者にアロマはどんな影響があるか」 を調査したレポートがあります (レポートの PDF) 。
調査設計は、喫煙者と非喫煙者をそれぞれ2つのグループに分け (2 x 2 の合計4グループ) 、片方のグループにアロマを、もう一方のグループにはアロマがない環境がつくられます。
- 喫煙者のアロマあり
- 喫煙者のアロマなし
- 非喫煙者のアロマあり
- 非喫煙者のアロマなし
4つのグループにおいて、気分や不安などの心理面や注意集中力が、アロマの有無によってどのように変化するのかを観察する調査でした。
調査対象者は、20歳以上の病気加療中や薬服用中を含まない健常な男子大学生です。喫煙者14名、非喫煙者14名の合計28名でした。
調査対象者の状態不安などの心理、集中力を確認するタイミングは、合計3回に設定されています。
- 喫煙者がたばこを吸う前 (Pre-test)
- 喫煙1時間後に同じテスト (Post-test 1)
- さらに2時間後にテスト実施 (Post-test 2)
非喫煙群も、喫煙者群と同じタイミングで3回の各種測定が行われました。
分析のための比較軸は、
- 4つのグループ:喫煙アロマあり、喫煙アロマなし、非喫煙アロマあり、非喫煙アロマなし
- 3回の測定:Pre、Post 1、Post 2
分析は、有意水準 5% 未満で t-test から対象グループに統計的に有意な違いがあるかどうかを検証しています。
リサーチデザインで興味深かった点は2つありました。1つ目は、喫煙者と非喫煙者それぞれでアロマありとなしの2つのグループをつくっていること。2つ目は、集中力などのテスト測定を喫煙後に2回実施している点です。
特に2点目については、Pre / Post test 結果から喫煙前後で比較できるとともに、Post が2回あるので、アロマの効果があったかどうかを一時的なものなのか、持続されるのかどうかも検証できます。
この設計アイデアは自分のやっていることに応用ができそうです。
Why からはじまるゴールデンサークル
今回のエントリーに関連して、Simon Sinekの 「優れたリーダーはどうやって行動を促すか (How great leaders inspire action)」 (リンク先は日本語字幕付き TED 動画) をご紹介します。
紹介されているアイデアを一言で表現すると、「人は『何を (What) 』ではなく『なぜ (Why) 』に動かされる」 というものです。「なぜ」 という自分の動機やビジョンや理念がまずあり、自分が信じていることを語ることで、共感が生まれ人々を惹きつけるという考え方です。
プレゼンでは例として、アップルが取り上げられています。
- Why: 我々のすることはすべて 世界を変えるという信念で行っています。違う考え方 (Think Different) に価値があると信じています
- How: 私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ簡単に使え、親しみやすい製品です
- What: こうして素晴らしいコンピュータができあがりました
はじめにアップルの why であるビジョンを伝えています。人々はこれに共感するからこそ、アップルの商品を手に取るのです。これが why からはじまるストーリーです。
プレゼンの動画はこちらです。
Start with why -- how great leaders inspire action | Simon Sinek | TEDxPugetSound - YouTube
動画よりもテキスト (日本語) で読みたい、という方はこちらをどうぞ。
サイモン・シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか|読む TED