投稿日 2015/07/29

オハイオ州立大学の 「性的 / 暴力表現の広告への影響調査」 が興味深い




オハイオ州立大学が、広告における性的および暴力的表現が、広告を見た人にどう影響するかの調査結果を発表しています(2015年7月) 。

​Sex and violence may not really sell products | News Room - The Ohio State University

今回のエントリーでは、調査から興味深かったものを取り上げます。


調査結果の概要


調査からは、過度の性的または暴力表現を伴う広告、同表現を含むコンテンツ内の広告は、広告効果が (性/暴力的でないものに比べ) 低くなることがわかりました。

場合によっては、その商品やサービスへの信頼性が下がる、ブランドが既存する、購買意欲を下げるなどの、マイナス効果も見られたとのことです。


調査の方法


調査方法は、過去44年間における53の各調査をまとめるやり方です (メタアナリシス) 。調査対象者はのべ約8,500人です。以下は発表からの調査方法についての引用です。

Researchers analyzed the results of 53 different experiments (a so-called meta-analysis) involving nearly 8,500 people, done over 44 years. All of these experiments examined some facet of the question of whether sexual or violent media content could help sell advertised products.

調査の視点は大きく2つです。

  • 広告そのものに性的または暴力表現が含まれる場合の影響
  • 性的または暴力表現を伴うコンテンツ内に表示される広告の影響

後者については、広告自体は必ずしも性的または暴力的な表現は含まれません。

対象となったメディアは、紙媒体 / テレビ / 映画 / テレビゲームとのことです。ネットは含まれなかったようです。

調査で広告効果を見る指標は、次の通りです。

  • 広告対象のブランドが記憶されたか
  • そのブランドへの認識 (brand attitudes) 
  • 購買意向


調査結果 1: 性的/暴力表現に注目が集まってしまった


調査結果で興味深かったのは、コンテンツ内または広告内の性的/暴力表現が注目されるために、本来伝えたい広告メッセージへの関心が下がったことでした。

オハイオ州立大学の調査発表から、該当箇所の引用します。

“People are so focused on the sex and violence they see in the media that they pay less attention to the advertising messages that appear along with it,” Bushman said.

(引用者注: Brad Bushman 氏は調査の共同責任者で、オハイオ州立大学 Professor of communication and psychology)

男女を比較すると、男性のほうが、性/暴力表現をより注目する傾向があり、そのために広告ブランドへの記憶が弱くなったとのことです。該当箇所の引用です。

Men’s brand memory was more impaired than women’s when watching media content or ads featuring sexual or violent imagery.

“This fits in with evolutionary theory that suggests males pay more attention to violence and sex than women do,” Lull said. “Because they’re paying more attention to this content, they are less likely to remember the ads.”

(引用者注: Robert Lull 氏は Ph.D. in communication at Ohio State)


調査結果 2: ブランドや購入意向にネガティブな影響


もう1つ興味深い結果です。性的/暴力表現のある広告が、購買意向にどう影響するかです。

過度な性的/暴力表現がある広告は、その商品やサービスを買いたくなくなってしまう影響が見られたようです。性的あるいは暴力的表現により単にその広告が記憶に残らないだけではなく、購入意向が下がってしまうのです。

Sexual ads didn’t hurt brand attitudes and buying intentions overall. But the higher the levels of sexual content in the ads, the more negative the attitude people had toward the brand and the less likely they were to say they would buy the product.

本来、広告を出す目的は売上を伸ばすことです。そのために、広告メッセージから買いたいと思わせる購入意向を喚起することを狙います。

しかし、性/暴力表現が広告に含まれると、目的とは逆の結果になってしまいました。広告を流すことにお金をかけたにもかかわらず、自社ブランドに損害を与えてしまっているわけです。


なぜネガティブな影響が出たのか


思ったのは、次のような心理的な要因があったのではということです。広告内に性的/暴力的な表現が含まれると、それを見た人が嫌悪感を抱き、その感情が広告されている商品自体にもネガティブな影響として伝染するという心理的な悪影響です。

自分の経験から言うと、広告内の商品と全く関係がなく、単に注意を惹くだけのために性的/暴力的な表現を使った広告は残念に思います。この事象が、今回の調査結果からも出ているように思えます。


調査結果 3: 年代や時代による違い


ネガティブな影響が、年代と時代によってどう違うかも検証されています。

年代の違いは、年齢が上の人ほど、暴力や性的な内容を含む広告の商品を買いたくないと答える傾向がったようです。

時代については、ネガティブな影響は昔よりも最近のほうが小さくなっているとのけっかでした。該当箇所の引用です。

Older people in the studies were less likely to say they would buy products featured in violent or sexual ads, compared to younger people.
Another interesting finding was that memory impairments and negative attitudes toward brands featured in violent or sexual ads have actually decreased over the past decades.

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。