投稿日 2025/10/24

マーケティングの本質から実践まで。マーケティング活動の6つのステップで解説

#マーケティング #顧客起点 #価値創出

どうすれば、うちの商品を選んでもらえるのか?
なぜ、あのお店はいつも繁盛しているのだろう?

あなたは、お客さんに 「選ばれる理由」 を届けられているでしょうか?

マーケティングの本質は、お客さんからの選ばれる理由をつくり出すことにあります。今回は、そのおもしろさと、顧客価値創造の具体的なプロセスを6つのステップで解説します。

マーケティングの本質 - なぜ 「選ばれる」 必要があるのか?


あなたは 「マーケティング」 という言葉に、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

ビジネスの世界では頻繁に耳にするマーケティングという言葉ですが、その本質を捉え、明確に説明するのは案外難しいかもしれません。

マーケティングとは

様々な専門家や経営者、学者、企業、団体が独自の定義を提唱していますが、マーケティングとは 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 です。これが、私が考えるマーケティングの定義です。

ここで重要なのは 「選ばれる理由」 という部分です。数ある選択肢の中から、

  • 特定の商品やサービスを購入してもらえる
  • 提供したサービスを継続的に利用してもらえる
  • 店舗に足を運んでもらえる
  • 特定の企業やブランド、あるいは個人が指名される


これら全てが 「お客さんから選ばれる」 ということです。

選ばれる理由をつくることがなぜ重要なのか

ではなぜ、この 「選ばれる理由」 をつくることが、それほどまでに重要なのでしょうか?

答えはシンプルです。お客さんから選ばれ続けることによってのみ、その商品やサービスは市場で生き残り、ひいてはビジネスそのものが存続できるからです。

偶然にヒット商品が生まれることもあるでしょう。しかし、ビジネスを持続させるためには、運や偶然に頼るわけにはいきません。

自社の商品やサービスが意図的にお客さんから選ばれる確率を高めること、それこそがマーケティングに課せられた役割なのです。

そして、忘れてはならない大前提があります。

それは、選ぶという行為の最終的な決定権は、常にお客さんにあるということです。企業側の論理だけで 「これが良い製品だ」 「この機能が優れている」 と主張しても、それだけではお客さんの心は動きません。

マーケティングの出発点は、常にお客さんです。

誰に価値を届けたいのか、そしてそのお客さんはなぜ他の商品ではなく自社の商品を選んでくれるのか (あるいは、選んでくれないのか) 。お客さんの立場に立って、深く、そして具体的に理解することが求められます。

マーケティングは専門部署を超えた全社的な活動


先ほどのマーケティングの定義である 「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 にもうひとつ込めた意図があります。それは 「活動全般」 という言葉に象徴される、マーケティングの範囲の広さです。

マーケティングと聞くと、マーケティング部といった特定の部署の専門業務だと考えるかもしれません。しかし、本来マーケティングは、会社全体で取り組むべき活動であり、考え方そのものなのです。

例えば、

  • 商品開発部は、市場のニーズや顧客の声を深く理解し、お客さんから選ばれる魅力を持つ商品を生み出す

  • 製造部や品質管理部は、お客さんの期待に応える品質を安定的に提供し続け、ブランドへの信頼という 「選ばれる理由」 の根幹を支える

  • 人事部は、顧客視点を持ち、マーケティングマインドを持って行動できる人材を採用・育成することで、組織全体のマーケティング能力を底上げする

  • 経理部は、適切な価格設定やコスト管理を通じて、顧客が納得できる価値と、企業が持続的に活動できる利益の両立に貢献する


このように、お客さんから選ばれる理由をつくるためには、企業内のあらゆる部門、あらゆる立場の人が、それぞれの持ち場で 「お客さんのために何ができるか」 を考え、実践していく必要があります。

だからこそ、マーケティングは会社全体に浸透させたい経営思想であり、ビジネスパーソンにとって必須のスキルセットと言えるのです。

マーケティング活動の全体像 - 顧客価値創造への6つのステップ


では、「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 とするマーケティングは、具体的にどのようなプロセスで進められるのでしょうか?

もちろん、業界や商材、企業の状況によって細部は異なりますが、基本的な流れとして、顧客価値を創造し、届け、関係性を深めていくための次の6つのステップで捉えることができます。

  1. お客さんを決める
  2. そのお客さんのことを理解し、お客さんが抱えている困りごとを見つける
  3. 困りごとを解決する商品を用意する (なければつくる) 
  4. お客さんに商品の魅力を伝え、買ってもらう
  5. お客さんに商品を使ってもらうことで価値を生む
  6. お客さんに他ではなく自社商品を選ばれ続ける状態をつくる


ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

[Step 1] お客さんを決める - 誰に価値を届けたいか?

マーケティング活動の出発点は、「誰に」 価値を届けたいのか、すなわち注力するお客さんを明確に定めることです。

すべての人を満足させる商品やサービスをつくるというのは現実的ではありません。自社の強みを活かし、最も価値を提供できる相手は誰なのかを見極める必要があります。

例えば、ファッションであれば流行に敏感な若年層、健康食品であれば健康意識の高いシニア層、特定の趣味を持つ層などです。

誰をお客さんと定めるかによって、その後の商品開発やコミュニケーションの方向性が変わります。

[Step 2] そのお客さんのことを理解し、困りごとを見つける - 顧客のリアルを知る

注力顧客が決まったら、次はその人たちや企業のことを徹底的に深く理解するステップに進みます。

消費者であれば年齢や性別、居住地といったデモグラフィック情報だけでは十分とは言えません。普段どのような生活を送っているかのライフスタイル、何を考え、何に価値を感じるかの価値観、どんな情報をどこから得て、どのような購買行動をとるのかです。

さらに、日々の生活や仕事の中で、どんなことに喜びを感じ、逆にどんなことに不便さや不満、悩み (ペインポイント) を抱えているのかです。

顧客理解を深めるプロセスで特に重要なのが、お客さんが抱える具体的な 「困りごと」 を発見することです。

例えば、「共働きで子育てもしているため、忙しくて健康的な食事を作る時間がない」 というのは、現代社会における切実なペインポイントのひとつでしょう。ほかにも、「スマートフォンのバッテリーが夕方頃には切れて夜に困る」 「自分の肌に合う化粧品が見つからない」 「自宅からオンライン会議に参加するとネットワークが遅く相手の声が途切れる」 など、様々な困りごとが存在します。

顧客理解では、お客さんの解像度を徹底的に高めていくことが求められます。ここでの顧客理解の深さが、次に来る解決策の提示につながります。

[Step 3] 困りごとを解決する商品を用意する(なければつくる) - 価値の具体化

お客さんの困りごとが明確になったら、いよいよそれを解決するための具体的な商品やサービスを開発・提供するステップです。

先の例で言えば、食事を作る時間がないというペインポイントに対しては、

  • 短時間でおいしく調理できる冷凍食品やミールキット
  • 栄養バランスが考慮された総菜や弁当
  • 調理時間を劇的に短縮する高機能な調理家電


などが解決策となりえます。

既存の自社商品ラインナップで対応できない場合は、ゼロから新しい商品を開発することも必要になります。その際には、

  • その解決策は技術的に実現可能なのか? (実現可能性) 
  • 開発・製造・販売にどれくらいの費用がかかるのか? (コスト) 
  • 市場に存在する競合製品と比べて優位性はあるか? (競争力) 
  • 注力顧客が求める便益に対して適切な価格で提供できるか (価格訴求力) 


といった点を多角的に検討し、お客さんの困りごとを解決できる最適な価値を具体化していくことが大事です。

[Step 4] お客さんに商品の魅力を伝え、買ってもらう - 価値の伝達と関係構築の始まり

どんなにすばらしい商品やサービスがあっても、存在をお客さんに知られていなかったり、知っていも価値がお客さんに伝わらなければ、選ばれることはありません。

そこで重要なのが、開発した商品の存在を知ってもらい、興味・関心を引き出し、自分に必要なものだと認識してもらって購入へとつなげるためのコミュニケーションです。

商品・サービスがお客さんの生活やビジネスをどのように変えるのか、生活を豊かにし、ビジネスを成長・成功に導くか、どんな問題を解決してくれるのかという 「顧客メリット (ベネフィット) 」 を、お客さんの言葉にして、わかりやすく伝えることが大切です。

見込み客が 「これはまさに自分のための商品だ」 「この価値ならお金を払う意味がある」 と自分ごととして捉え、共感し、購入したいという気持ちになってもらうことを目指します。

[Step 5] お客さんに商品を使ってもらうことで価値を生む - 体験価値の提供

お客さんが商品を購入してくれた瞬間は、ゴールではありません。むしろ、そこからがお客さんとの関係性をつくる本番であり、スタートです。

商品やサービスがもたらす価値は、お客さんが実際に使い、体験することによってはじめて生まれます。お客さんが商品を使うことによって、抱えていた困りごとが解決されたり、期待していた以上の顧客価値や喜びを感じたりして初めて、買ってよかったという満足感を得ます。

売り手には、商品を売ったら終わりではなく、購入後の利用体験にも責任を持ち、お客さんがスムーズに、そして最大限に商品の価値を享受できるようサポートすることが求められます。例えば、わかりやすい取扱説明書、丁寧なカスタマーサポート、活用方法の提案などが挙げられます。

[Step 6] お客さんに他ではなく自社商品を選ばれ続ける状態をつくる - 関係性の深化と独自価値の確立

マーケティングの最終目標は、一過性の成功ではなく、お客さんに 「選ばれ続ける存在」 になることです。そのためには、お客さんとの間に長期的な信頼関係を築き、深めていく必要があります。

購入後のフォロー、お客さんの声を商品改善やサービス向上に活かす仕組み、商品やブランドに愛着・親近感を深めてもらう特典、ファンコミュニティの運営によるお客さんとの交流促進などです。もちろん、これらは商品カテゴリーによって相性の差はあるものの、いずれにしてもお客さんとの継続的な接点を持ち、コミュニケーションを図ることが求められます。

そして、競合他社には真似できない、自社ならではの独自の価値を提供し続けることが大切です。最終的には、お客さんにとって 「このブランドでなければならない」 「他では代替がきかない」 と思ってもらえるような、特別な存在になることを目指します。

* * *

以上のこれら6つのステップは、必ずしも一直線に進むわけではなく、時には行きつ戻りつしながら、少しつずつお客さんとの関係を深めていくものです。

この一連の流れを意識し実践していくことによって、「お客さんから選ばれる理由をつくる」 というマーケティング活動の本質に近づくことができるでしょう。

まとめ


今回は、あらためてマーケティングの本質について考えました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • マーケティングとは、お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般

  • マーケティングは特定部署の専門業務にとどまらず、企業全体で取り組むべき経営思想と活動である

  • 選ぶ最終決定権は常にお客さんの側にある。マーケティングの出発点は顧客理解から始まる

  • 顧客価値の創造プロセスは6つのステップで構成される
    ① お客さんを決める
    ② 顧客理解
    ③ 解決策を用意する
    ④ 魅力を伝え、買ってもらう
    ⑤ 使ってもらい価値を実感してもらう
    ⑥ 選ばれ続ける状態をつくる


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。