2017/01/03

書評: 「本質直観」 のすすめ。- 普通の人が、平凡な環境で、人と違う結果を出す (水越康介)


Free Image on Pixabay


「本質直観」 のすすめ。- 普通の人が、平凡な環境で、人と違う結果を出す という本をご紹介します。

データ分析、マーケティングやマーケティングリサーチに示唆がある本です。



本質直観とは


タイトルにもある 「本質直観」 について、本書から引用です。

本質直観とは、私たちが 「本質を捉えた」 と確信していることそれ自体を手がかりにして、むしろその根拠を疑い、問い直す作業を意味します。ようするに、本質を捉えることが大事だよね、というのではなく、自分の確信がどのようにして成り立っているのかを確認していくのです。

日常的な言葉である直感 (instinct : 本能に近いでしょうか) ではなく、直観 (intuition : 直感を鍛え上げる、あるいは問い直す感じ) を使う理由がここにあります。

本質直観では、自分が何かを思ったことについて、そう思った理由や背景への深掘りを、自分自身に対して行ないます。

本質直観と逆のやり方は、自分が思ったことが正しいかどうかを、他人も同じように思うかを確認することです。

確認する向きが他人か自分かについて、本書には信号機を例に、次のような説明があります。他人に確認するやり方を 「直観補強型思考」 、自分に対して深掘りをするのが 「本質直観」 です。

たとえば、信号機の前に立ち、右に行くべきか左に行くべきかを考えているとしましょう。そしてこのとき、右に行くという判断をしたとします。

直観補強型思考であれば、この判断の正しさを確認するため、ほかの人もまた右に行くと判断しているかどうかを調べることになります。アンケートでもとればすぐに結果は出るでしょう。

けれども、仮に多くの人が右に行くと答えたからといって、右に行くことが正しいかどうかは依然わかりません。その人たちが、本当に右に行くかどうかもわかりません。みんなであなたを騙そうとしているのかもしれません。

本質直観の場合はどうなるでしょう。

問われるべきは自分の判断です。どうしてあなたは右に行こうと考えたのか。右側の道路の方がよく整備されていたからかもしれません。あなたが右利きだったからかもしれません。左側は上り坂になっていて、ちょっと大変そうだったからかもしれません。

自分の判断の理由を遡って考え直してみる、そのなかで、自分の判断が正しいのかどうかを改めて問い直すことができます。


本質直観とマーケティングリサーチ


本書が興味深く読めたのは、本質直観の考え方をマーケティング、マーケティングリサーチ、データ分析に当てはめて考察されていたからでした。

本質直観とマーケティングリサーチが組み合わさると、マーケティングリサーチの位置づけは一般的なアプローチと逆になります。

通常、リサーチでは、仮説という自分たちがそうであろうと考えることの検証を、ターゲット顧客も同じように思うかどうかという視点で行ないます。直観補強型思考です。

本質直観を適用すれば、自分たちが仮説として持っていることを、なぜそう思ったか、その根拠は何かを他人ではなく、自分自身に問い直すためにマーケティングリサーチをします。

仮説にまでなっていないアイデアや直感、何かに違和感を感じたり、驚いたことも同様です。

自分が感じたことを、他人に聞いて確認するのではありません。なぜそのアイデアが自分の中で生まれたのか、自分が驚いたのはなぜなのかを自分自身に問うのです。

もし 「答え」 があるとしても、その答えを顧客や他人に求めません。答えは自分の中にあり、まだ気づいていない何かを取り出すというやり方です。

この考え方はマーケティングリサーチだけにとどまらず、データ分析にも示唆があります。

データ分析から得られた情報に対する自分の考えや仮説、データ結果から自分が驚いたことを、自分自身の中で問い直します。なぜ自分はそう思うのか、そのように反応したのかです。

そのプロセスを通じて、自分の考えを磨いていくのです。



最新エントリー

多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にて 「シニア マーケティングリサーチ マネージャー」 (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝1時間のランニング。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。