2017/03/27

Google が提言する 「広告運用 KPI の新たな潮流」 。根拠にしている広告ビューアブルリーチ調査が興味深い


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グーグルが、ビジネスユーザー向けのオウンドメディア Think with Google にて、ネット広告配信の調査結果を公表しました (2017年3月) 。

KPI の新たな潮流 - ビューベースリーチを可視化する|Think with Google


広告のビューアビリティという視点の投げかけ


タイトルにある 「KPI の新たな潮流」 とは、ネット広告を評価するために使っているクリックやコンバージョンとは別の評価指標を指しています。具体的には、次の通りです。

これまでの CTR (クリック率) や CVR (コンバージョン率、または成約率) だけではなく、その広告がどのくらい見られたかという viewability (ビューアビリティ) の視点が大切ではないかという問いかけです。KPI は viewed impression 、つまり、ユーザーから見える場所に広告が表示された回数になります。

「評価指標である KPI が変われば、広告配信における運用も連動して変えるべき」 という提言が、上記 Think with Google 記事でのもう1つの論点です。

クリックやコンバージョンを目的とするならば CPC (Cost per click: クリック単価) を使います。一方、ビューアビリティを目的とするならば viewable CPM (vCPM) を使うことを記事では提案しています。

ビューアビリティが目的の広告とは、例えば、広告を見てもらった時には、必ずしもクリックからその場で購入や申込みがなくてもいいものです。店頭や実際に買うタイミングになった時に、広告の商品やブランドを思い出してもらうことを狙ったブランディング広告です。

ここまでを整理すると、以下のようになります。


クリックとコンバージョンを目的にする広告

  • KPI: CTR (クリック率) や CVR (コンバージョン率)
  • 運用: CPC (クリック単価) を入札単価とする。クリックを最適化する運用


見てもらうことを目的とする広告

  • KPI: viewed impression
  • 運用: vCPM (viewed impression あたり単価) を入札単価とする。ビューアビリティを最適化する運用


Think with Google 記事の問題提起は、見てもらうことを目的とする広告キャンペーンにもかかわらず、CTR を評価指標にしていたり、CPC 最適化の運用をしていないか、というものです。


広告のビューアビリティに関するグーグルの自主調査


Think with Google の同記事では、上記の提言の根拠になったグーグルの自主調査結果が紹介されています。

調査では、調査パネルのユーザーに、実験的に2つの広告を別々に配信しました。1つは、vCPM 運用、もう1つは CPC 運用です。広告配信・投下予算・配信ターゲットは同じに揃えました。

調査結果で興味深いと思ったのは、広告が配信されたリーチ層の違いです (リーチは viewed impression ベース) 。具体的には CPC 配信でリーチした層と vCPM 配信でリーチした層の違いです。

下図は CPC 配信のリーチユーザー規模を緑色の円、vCPM 配信のリーチユーザー規模を青色の円で表しています。


モバイル・デスクトップのビューアブルリーチ % をそれぞれ 100 にした場合の割合
引用:KPI の新たな潮流 - ビューベースリーチを可視化する|Think with Google


調査を実施したグーグルによれば、この結果を以下のように評価しています。

モバイル (Andorid) での配信実験では全体の接触者のうち CPC 運用 と vCPM 運用の両方の広告にリーチした人は4割程度にとどまり、それぞれの運用手法で、異なる層に接触していることがわかります。

モバイルで、vCPM 配信と CPC 配信の両方でリーチしたユーザーが 41% (接触者を 100) ということは、残りの6割は vCPM 配信または CPC 配信のいずれかでしかリーチできないということです。調査結果は、CPC 配信では 20% 、vCPM 配信では 39% でした。

これが意味するのは、広告を見てもらうことを目的にする時には vCPM で配信をしたほうがよい、ということです。なぜなら、見てもらいたい目的なのに CPC 配信をしてしまうと、広告を出すべき人とは別の人にも広告が出てしまうからです。


ビューアビリティの視点で見る、モバイルとパソコンのウェブ広告枠の違い


リーチの重複のベン図を、モバイル (Android) とパソコンで比べた時に、モバイルのほうがインクリメンタルリーチ (vCPM か CPC 配信のいずれかでしかリーチできない) が多いのも興味深いです。再掲する下図で、モバイルの CPC 配信: 20% 、vCPM 配信: 39% のところです。


モバイル・デスクトップのビューアブルリーチ % をそれぞれ 100 にした場合の割合
引用:KPI の新たな潮流 - ビューベースリーチを可視化する|Think with Google


これは Think with Google の記事内には触れられていませんでしたが、理由として考えられる仮説は、パソコンでのウェブサイトは 「クリックされやすい広告枠」 と 「ビューアブルな広告枠」 は同じ場合が多いのでしょう。具体的には、サイトの上部に出る広告はクリックされやすく、かつビューアブルなのではないかというものです。

一方のモバイルでは、「クリックされやすい広告枠」 と 「ビューアブルな広告枠」 が必ずしもイコールではない傾向がパソコンよりもあると考えられます。具体的には、モバイルサイトでは一覧性がパソコンより低いので、広告はパソコン画面よりもすスクロールされすぐに画面外に行ってしまいビューアブルになりにくい、ただし一部の少数の人はクリックする、という可能性です。


最後に


グーグルの自主調査は、他にも vCPM 配信と CPC 配信の違いだけで、クリック率やリーチ単価がどの程度異なるのかも論点になっています。興味のある方はぜひご覧ください。

KPI の新たな潮流 - ビューベースリーチを可視化する|Think with Google

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多田 翼 (書いた人)


外資系 IT 会社にて 「シニア マーケティングリサーチ マネージャー」 (LinkedIn) 。

1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身。学生時代は京都。家族4人で東京23区内に在住、2人の子どもの父親。気分転換は毎朝1時間のランニング。

書いている内容は、所属組織や会社の正式見解ではなく個人の見解です。