投稿日 2017/03/25

ネット広告の透明性を高めるビューアビリティ (viewability) という視点


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インターネット広告では、広告の表示回数をインプレッション (impression) と言います。

一般的にインプレッションは、スマホやパソコンの表示画面の外に出る広告も、インプレッションとしてカウントされます。

例えば、ウェブページの一番下に出る広告です。ユーザーが最後までそのページを見ずに、途中で別のページに移動したとしても、広告のインプレッションはカウントされます。しかし、実際に画面には広告は出ていません。


Google の視認範囲のみのインプレッション調査 (2014年)


画面外に広告が出ていて、実際は広告は見えなかった状況はどれくらいあるのかについて、グーグルが2014年に調査結果を公表しています。

調査対象のディスプレイ広告全てのインプレッションのうち、画面内の見える範囲で表示されなかった広告は 56.1% だったとのことです (参考:5 Factors of Display Viewability - Think with Google) 。配信された広告のうち、半分以上がユーザーが見ていた画面の外にあったのです。

画面の見える範囲にだけ広告が出る表示回数を、視認範囲のみのインプレッション (viewed impression) と言います。ディスプレイ広告における viewed impression の定義は、表示された広告の面積部分が 50% 以上かつ、広告が1秒以上表示されたものです。動画広告は 「50% 以上かつ2秒以上再生」 です。

ディスプレイ広告 「50% & 1秒」 の表示イメージは、グーグルの See Active View in Action のページをご覧いただくとわかりやすいです。

デモページには A, B, C, D の4つのディスプレイ広告イメージがあります。スクロールして広告部分が viewed impression になったかどうかを体験することができます。Viewable になればディスプレイ広告上の赤色のラベルが緑色になり、チェックマークが表示されます。


Facebook も重視する viewed impression


Viewed impression について、Facebook も重視をしています。2015年のリリース (The Value of Viewed Impressions (viewed impressions の価値) ) で、次のように延べています。

At Facebook, we agree that viewed impressions are a better way to measure ad delivery. The reason is simple: if an ad is viewed it has a greater chance to drive value for an advertiser. That’s why we use viewed impressions to measure ad delivery across desktop and mobile.

引用:The Value of Viewed Impressions for Advertisers - Facebook for Business

Facebook が viewed impression を重視する理由は、広告が実際に見られれば、広告主にとって広告を出す価値がより高まると考えているからです。


ネット広告に viewability という視点を


「広告の回数」 をカウントする時に、何をベースに数えるかで複数あります。

  • 広告リクエスト数
  • 広告配信数 (サーバーから)
  • 広告ダウンロード数
  • 広告表示数 (impression)
  • 視認範囲での広告表示数 (viewed impression)

下に行くほど回数は少なくなります。前述のグーグルの調査結果 56.1% が意味するのは、5つ目と4つ目の割り算である 「視認範囲での広告表示数 ÷ 広告表示数」 が 44% (非表示が 56%) ということです。

ネット広告の値段を見る指標に CPM があります。これは Cost Per Mille (コスト・パー・ミル) の略で、1000回あたりの価格です。例えば CPM が100円であれば、1000回表示にコストが100円がかかり、1回あたりの単価は0.1円です。

CPM を、どのタイミングでの回数で算出するかで単価は変わります。

広告主の立場からすると、広告がサーバーから配信されたとしても、ユーザーが見ているスクリーン内に表示されていないのであれば、それは広告表示とは言えないというのが自然な捉え方でしょう。Viewed impression という 「視認範囲での広告表示数」 でのみ広告費を支払いたいという立場です。Viewable CPM です。

広告が本当にユーザーの目に入る状態かどうかの viewability は、ネット広告の透明性や健全性を高めるために大事な視点です。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。