#マーケティング #新規顧客獲得 #継続顧客維持

ランニング市場で存在感を放つアシックスが、市民ランナーとの接点強化に動きました。

背景には、ブランドをどう広げ、いかにお客さんから長く選ばれ続けるかという課題がありました。

今回は、アシックスの事例から、熱量の高いファンとなってくれるお客さんを増やす打ち手を紐解きます。

ランニングイベントで顧客接点強化

出典: Asics

出典: Asics

アシックスジャパンは 2025 年 4 月に、東京湾を臨む芝浦エリアで 「MEET YOUR COMFORT RUN with ASICS」 というランニングイベントを開催しました (参考情報) 。

抽選で選ばれたランニングの初心者から経験者までの 90 名の参加者が集まったこのイベントは、ランニング指導にとどまらない多様な体験を提供しました。

イベント参加者は、アシックス所属のコーチ陣の指導の下、ランニングを行ったほか、会場に設けられたアシックスの最新シューズの試し履きをする機会もありました。

また、カフェスペースでのフード提供や懇親会があり、ラジオ局の J-WAVE とコラボした DJ パフォーマンスも披露されました。

アシックスといえば、トップアスリートが愛用する本格的なスポーツブランドというイメージが強いかもしれません。しかし、その裏側では、趣味で走り始めたばかりの初心者や、健康のために走る市民ランナーとどう繋がっていくか、という課題感がありました。

アシックスは特にランニング初心者に、走ること、体を動かすことの心地よさを感じてもらいたいという狙いで開催されたのが、「MEET YOUR COMFORT RUN with ASICS」 です。

* * *

では、アシックスの事例から学べることを掘り下げていきましょう。

この事例は、熱量の高いお客さんをいかに増やすかに示唆があります。

ファンとなるお客さんを増やす打ち手

では、具体的にどのようなアプローチをとれば、ファンとなるようなお客さんを増やすことができるのでしょうか?

結論から言うと、客数を増やすアプローチは以下に分けられます。

  • 一度買ってくれたお客さんに二度目・三度目と買ってもらう [ライト顧客の継続顧客化]
  • 長くずっとお客さんでいてもらう [継続顧客の維持]
  • お客さんが離れていかないようにする [離反顧客の最小化]

では、これらをアシックスの事例に当てはめて順番に詳しく見ていきましょう。

アシックスに学ぶファンの増やし方

アシックスの一連の取り組みは、先ほどの 3 つの打ち手が連携し好循環を生み出しています。ひとつずつ、その中身を紐解いていきましょう。

ライト顧客の継続顧客化

お客さんになってくれた人と、その関係を一度きりで終わらせないことが重要です。

参加した 「MEET YOUR COMFORT RUN with ASICS」 のイベントでの体験価値により、アシックスの継続顧客となることが期待できます。

ランニングで体を動かした後にご飯を味わうのは格別な時間であり、そういった体験は記憶に残るので、イベントに参加して 「楽しかった」 「心地よかった」 という体験は、参加者の記憶に深く刻まれたことでしょう。

また、会場にはシューズの試し履きスペースが設けられ、アシックスの専門スタッフが一人ひとりに合った一足を提案してくれました。「どのシューズを選べばいいかわからない」 という、特にランニング経験のまだ浅い人の不安を解消し、アシックスのシューズとのポジティブな体験を演出したかたちです。

こうした 「楽しい体験」 と 「安心できるブランド体験」 の組み合わせが、直接的に相手の心を動かし、「アシックスって、やっぱりいいかも」 というより好意的なブランドイメージを芽生えさせるのです。

こうしたブランド体験とポジティブな記憶こそが、「またアシックスのイベントに参加したい」 「アシックスのシューズを使い続けたい」 と思わせる、継続顧客化につながっていきます。

さらにアシックスは、イベントで生まれた参加者の熱量をその場限りにせず、継続的な関係へとつなげるための 「橋渡し」 を用意していました。

そのひとつが、オンラインサービス 「ASICS Running Program」 です。

アシックスは、MEET YOUR COMFORT RUN with ASICS のイベントで 「走るって楽しい!」 「このシューズ、すごく走りやすい!」 と感じた高揚感を、その場で終わらせることはしませんでした。

ASICS Running Program では、アシックス所属コーチがアシックススポーツ工学研究所の監修を受けたランニングメソッドをもとに指導を行います。コーチによる週次アドバイスや毎週のバーチャルレースなど、無理なくランニングを継続できる場をつくっています。

リアルイベントに参加した人が、もっと本格的にランニングをしたい、サポートが欲しいと思った場合に、オンラインプログラム ASICS Running Program へとスムーズに誘導するわけです。

これは、ランニングイベントという 「点」 の体験を、プログラムにまでという 「線」 の関係へと転換させる設計になっています。初回体験からコミュニティ参加、そして行動の習慣化という段階的な設計が、アシックスのお客さんでいつづけてくれるという顧客の継続化を促進しているのです。

継続顧客のファン化

お客さんに長くブランドを愛し続けてもらうためには、「当たり前」 にならず、新鮮な驚きや喜びを提供し続けることが大切です。

アシックスは、お客さんをただ維持するのではなく、熱量の高いファンへと育てるための工夫を凝らしています。

その中心にあるのが、リアルとオンラインを組み合わせた、飽きさせない接点づくりです。

具体的には、ASICS Running Program のオンラインでは週次アドバイスやバーチャルレースで日々のモチベーションを支え、オフラインではプログラム参加者限定のリアルイベントを定期的に開催するというふうにです。

懇親会での参加者同士の交流も重要な要素です。「気の合う仲間が見つかり、それがランニングを継続するきっかけになるかもしれない」 という狙いのもと、アシックスを中心としたコミュニティが形成されています。この所属意識が、ブランドを使い続けるドライバーとなります。

これらのたとえ一つひとつは小さくても頻度の高い顧客接点が、少しずつアシックスへの愛着を高め、やがてはファンになっていくことが期待できます。

離反顧客の最小化

どんなに良いサービスでも、離れてしまうお客さんは一定数で存在し、離反顧客をゼロにすることはできません。

ランニングのような活動は、モチベーションの低下や怪我など、ふとしたきっかけで中断され、アシックスにとってお客さんではなくなってしまう可能性は常にあります。

そこでアシックスは、その 「つまずきの瞬間」 を見逃さず、手厚くケアする仕組みを持っています。

オンラインプログラムでのコーチによる "伴走" は、ランニングの機会が停滞している時や、目標を見失いかけた時に、的確なアドバイスで再び背中を押してくれることでしょう。

また、イベントでの懇親会も重要な役割を果たします。そこで生まれたランニング仲間の存在は、一人ではランニングの継続にくじけてしまいそうな時も、お互いに励まし合い、走り続けるためのサポートになります。

さらに、リアルな場でのお客さんとの直接的な対話は、お客さんが口に出す前の小さな不満や要望を吸い上げる場として機能します。「シューズのこの部分が少し気になる」 といったフィードバックを得て、先回りして改善することで、不満が大きくなって離れてしまうのを未然に防ぎます。

機能的なサポートと、感情的な繋がり。この両輪でお客さんをオンラインとオフラインの両面から支えることにより、不満が原因での顧客離反を最小限に抑えています。

各アプローチの連携と相乗効果

今回のアシックスの事例で特筆すべきは、3 つのアプローチが独立しているのではなく、リアルイベントというひとつの施策の中に複合的に組み込まれ、相互に連携している点です。

リアルイベントで一人ひとりのお客さんと出会い、その感動をオンラインプログラムで 「継続的な顧客関係」 へとつなげる。手厚いサポートとコミュニティで 「自社ブランドのファン」 になってもらい、そして、継続的な顧客接点とコミュニケーションで 「離反顧客」 を防ぐ。

この一連の流れが好循環を生み出します。

アシックスのマーケティング戦略の根幹にあるのは、「より多くの人にアシックスを好きになってもらうことが、なによりの対価」 という、長期的な視点に立った思想からでしょう。

アシックスの創業哲学である 「健全な身体に健全な精神があれかし」 という考えのもと、お客さま一人ひとりの自己実現をサポートしながら、ランニング人生に寄り添う。目先の売上を追うのではなく、一人ひとりのお客さんと丁寧に向き合い、ランニング人生に寄り添う。

こうした姿勢が、ひとりでも多くのファンを増やす打ち手を有機的に結びつけ、持続的な成長を実現する原動力となっているのです。

まとめ

今回は、アシックスのイベント 「MEET YOUR COMFORT RUN with ASICS」 の事例を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントとして、ファンを増やす 3 つのアプローチのまとめです。

  • 一度買ってくれたお客さんに二度目・三度目と買ってもらう [ライト顧客の継続顧客化]
  • 長くずっとお客さんでいてもらう [継続顧客の維持]
  • お客さんが離れていかないようにする [離反顧客の最小化]