2018/02/26

書評: インターネット的 (糸井重里) 。「○○ 的」 と捉え、人々がどのように使い、世の中はどう変わるか


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インターネット的 という本をご紹介します。著者は、コピーライターで 「ほぼ日」 を運営する糸井重里さんです。



エントリー内容です。

  • 本書の内容、ネットについての本質が書かれた本
  •  「インターネット的」 とは何か
  •  「○○」 と 「○○ 的」 。「○○ 的」 から見えてくるもの


本書の内容


本書の 「はじめに」 には、以下のように書かれています。

もともとこの本は、2001年に新書として出版し、1998年に 「ほぼ日刊イトイ新聞」 を始めたぼくが、インターネットに触れて思ったこと、感じたことを書いたものです。

その本が、どうやら、十年以上経って話題になっているらしい。じぶんで言うのもおかしいですが、読んだ方によれば 「いまの時代が予見されている」 そうです。「ぜんぶ、ここに書いてあるじゃないか」 なんていう声もいただきました。

そういった声はぼくのところにも届きましたし、出版社のほうにも届いたようです。それで、十年の時をへて、「インターネット的」 はこうして文庫化されることになりました。

こういった本にしては異例のことらしいのですが、文庫化にあたって、内容にはほとんど手を加えずに済みました。最低限の用語などを調整したくらいです。


ネットについての本質が書かれた本


新書として2001年に出版され、文庫本は2014年です。文庫本は2001年の新書からほとんど手を加えてないとのことで、この本に書かれていることは、2018年の今から15年以上も前に糸井さんがインターネットについて考えていたことです。

読んでいても、内容が今の時代と乖離しているような違和感は感じません。それだけ、ネットについての本質的なことが書かれている本です。


 「インターネット的」 とは何か


本書のタイトルにもなっている 「インターネット的」 に、糸井さんの言葉へのこだわりを感じさせます。インターネットとの違いは、次のように書かれています。

インターネットと 「インターネット的」 のちがいというのは、字面では単に "的" があるかないかのことなんですが、これは重要なポイントになってきます。

 「インターネット的」 と言った場合は、インターネット自体がもたらす社会の関係の変化、人間関係の変化みたいなものの全体を思い浮かべてみてほしい。

 (引用:インターネット的)

 「インターネット」 と 「インターネット的」 は、自動車とモータリゼーションの違いに似ていると言います。

  • インターネット:自動車と道路。インフラとして道路が整備され、自動車は人や荷物を運ぶもの
  • インターネット的:モータリゼーション。自動車が発明され、社会に広く普及したことによって、世の中が変化していったことの全てを含む

糸井さんが本書で書きたかったことは、インターネットの可能性を、ネットを使う人がどう思い、どのように使うか、そして、ネットによって社会がどう変わり、豊になるかです。

料理にたとえて、次のように書いています。

インターネットは、「伝える仕組み」 です。いわば、人間の生み出す情報という 「料理」 をすばやくどこにでも届ける 「お皿」 です。ほんとうは、一番面白いのは、お皿に何をのせるかということのはずです。お皿自体には、ぼくはあまり興味がないのです。

でも、これまで、インターネットの本を何冊読んでも、「お皿」 と 「お皿を運ぶシステム」 と 「お皿にマークを入れる権利の奪い合い」 や、「お皿の数」 のことばかり言っていたわけです。

 (引用:インターネット的)


 「○○」 と 「○○ 的」


 「インターネット的」 と表現したときに何に注目しているかは、インターネットという手段ではなく、手段によって人は何を考え、どのように使い、その結果として世の中はどうなるかです。社会がネットによって豊かになるかどうかは、人がネットをどう使うかです。

糸井さんの 「インターネット的」 への考察を読んで思ったのは、インターネットという情報を届ける仕組みが登場しても、人間の本質的なところはそう簡単には変わらないと捉えられていることです。何を幸せに感じるか、価値観、欲望などです。

 「インターネット的」 を 「○○ 的」 と一般化すれば、本質が見えてきます。

何か新しい技術や仕組みが登場したときに、人はそれをどのように捉えるか、世の中はどうなっているかを、「それを使う人」 という視点で考えることです。

○○ 自体は、手段にすぎません。大事なのは、○○ を使って何が変わるかです。

思ったのは、手段としての ○○ に入るものは変わり続けること、一方で大切なのは、それを使う人の何が変わり、何が本質的に変わらないのかを見失わないことです。


 「○○ 的」 から見えてくるもの


2018年2月時点で、「○○ 的」 を何か新しい仕組みを当てはめるとしたら、思いつくのは、AI (人工知能) 、VR や AR などの人工現実、ブロックチェーンです。

いずれも、これからの社会を大きく変える可能性を持っているものです。ただし、AI もブロックチェーンなどは、あくまで手段です。人がこれらを使って何をしたいのか、世の中はどう変わるか、人の変わらないことは何かです。

○○ を 「○○ 的」 と表現することによって、新しい技術やビッグワードが出てきたときに過度な期待を抱きすぎることなく、冷静に 「手段」 と 「目的」 を分けて考えることができます。



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書いている人 (多田 翼)

ベンチャーから一部上場企業の経営・事業戦略を支援。マーケティング、コンサルティング・アドバイザー・メンター、プロダクトマネジメント。前職は Google でシニアマーケティングリサーチマネージャー、現在は独立 (詳細は LinkedIn または Facebook をご覧ください) 。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。