投稿日 2018/02/08

書評: 半径3メートルの 「行動観察」 から大ヒットを生む方法 (高橋広嗣) 。消費者インサイトでヒットを生む方法


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書評の記事です。

ご紹介したい本は、半径3メートルの 「行動観察」 から大ヒットを生む方法 です。



  • マーケティングのことをもっと知りたい
  • 行動観察とは?
  • 消費者インサイトからヒット商品を生む方法

こんな疑問に答える内容でブログを書きました。


この記事でわかること


この記事で書いているのは、本の内容、マーケティングで消費者インサイトを使ってヒット商品を生み出す方法です。

行動観察という消費者理解から、インサイトをどう見い出すかを具体的な事例でご紹介します。そもそもの消費者インサイトとは何か、インサイトを見つけるフレームワークについても書いています。

マーケティングを仕事にしている方、マーケティングに興味のある方にも参考になると思います。ぜひ、最後まで読んでみてください。


この本の内容


以下は本書の内容紹介からの引用です。

いま、古くて新しい「行動観察」というマーケティングの手法が注目されています。

行動観察の強みは、消費者が説明できない潜在的なニーズを明らかにしてくれる点にあります。

行動観察が注視しているのは、その人のなに気ない習慣であり、普段のありふれた生活。そこにこそ、ライバルが知り得ない宝の山が眠っているのです。


行動観察とは


行動観察は、定性調査の一つです。調査対象者の振る舞いや行動を、一定の時間をかけて観察します。観察する間、観察者側からは何も関与せずただ観察し続けるやり方 (非関与型) と、対象者の気になった行動について確認や質問をする関与型があります。

具体的に観察をするのは、その人の行動、表情・目線、習慣となっていることです。観察した事象を分析し、観察者が気づいたことなどの多面的な情報を統合していくというプロセスから、調査対象者本人が自覚できていない、言葉には出せないことを深く理解します。

行動観察で期待できるのは、消費者が自分でも説明できない潜在的な気持ちを明らかにすることです。つまり、行動観察は、消費者インサイトを見い出す方法として有効なのです。


消費者インサイトとは何か


消費者インサイトとは、人を動かす隠れた心理です。消費者自身も普段は意識していませんが、気付かされれば思わず行動に結びつく奥にある気持ちです。

インサイトのことを 「心のホットボタン」 と表現することもあります。的確にその気持ちが刺激されれば、関心が湧くなどの態度変容、購入という行動、時には習慣すらも変わることがあります。


インサイトは主体的に見い出すもの


消費者インサイトは、自分たちが主体的に見い出すものです。決して、消費者に直接聞いたりアンケート調査で答えとして書かれ、消費者からもらえるものではありません。

先ほどのインサイトは何かで解説したように、インサイトは普段は意識されない隠れている感情です。日常では無意識下にあるので、消費者自身も言葉や文章にできないのです。


インサイトを見い出す方法


本書で興味深いと思ったのは、紹介されていたインサイトを見い出す方法です。この考え方を知ることができただけでも、読んだ価値がありました。単におもしろいと思えただけではなく、実際の自分の仕事でも役に立っています。

インサイトを見い出すポイントは、次のような見方をすることです。

 「当初の想定では ○○○ だと思い込んでいたが、真実はその逆で □□□ である」

自分たち、もしくは消費者の想定・思い込みや常識に対して、全く新しい切り口や視点が得られれば、その切り口がインサイトになるという考え方です。

以下は、私自身が使いやすいようにフレームワークに落とし込んだものです。


消費者インサイトのフレーム
  • 当初の想定
  • 観察からの実際
  • 新しい切り口 (インサイト)
  • アクション (施策)


以下、本書で紹介されていた事例から2つ、このフレームワークに当てはめてみます。


事例 1: 油・水なしでパリッと焼ける!! ギョーザ (味の素)


主婦への行動観察から、冷凍餃子の新しい調理法を提供した商品です。

味の素は、自社の冷凍餃子を商品リニューアルするために、主婦を対象に行動調査を実施しました。家庭で毎日使っているフライパンを持ってきてもらい、普段通りに冷凍餃子を調理する様子を観察しました。

味の素の担当者の発見は、餃子を焼く前にフライパンに入れる水の量をきちんと測らずに、目分量で水を入れていたことでした。

水の量が多すぎると餃子はべちゃべちゃになり、少ないと焦げ付きます。味の素の担当者は、美味しい餃子を作るために水の量は、パッケージに書かれている量を正確に測って調理していると思い込んでいました。

行動観察からわかったこと、その後の味の素の対応をフレームワークに当てはめると、以下になります。


フレームワーク活用例: 冷凍餃子
  • 当初の想定:冷凍餃子を美味しく作るために、水の量をパッケージの説明通りに正確に測って調理する
  • 観察からの実際:水の量の表示は無視し、目分量で水を入れていた
  • 新しい切り口 (インサイト) :料理を手軽に作りたい。特に冷凍餃子のような冷凍食品は、手間暇を省きたい時に使うので、水の量をいちいち測っていられない
  • アクション (施策) :フライパンに水も油も使わなくてよく、ただ焼くだけでよい冷凍餃子を開発


主婦の、料理をなるべく手間をかけたずに手軽に作りたいという本音に近い気持ちから、行動に表れたのは 「水を測らずに目分量で手間をかけずに作ること」 でした。

料理の手間を省きたいという気持ちは、直接聞いても簡単には出ない本音です。手間暇をかけないことに対して、どこかに後ろめたい思いがあるからです。もし尋ねても、その気持ちを本音では言わず、建前としての答えが返ってきてしまいます。

味の素は、行動観察からのインサイトを見い出しました。

インサイトに対して味の素がやったことは、そもそもの調理方法を変えたことでした。水も油も主婦が使わなくても、焼くだけで餃子ができるというアプローチです。

メーカーのアクションとして秀逸だと思ったのは、決して、パッケージに 「水の量を正しく測りましょう」 という説明をさらに目立たせることではなかったことです。これでは、インサイトに沿ったアプローチにはなりません。


事例 2: 家庭用食器洗剤キュキュット (花王)


2つ目の事例です。花王の食器用洗剤 「キュキュット」 です。

花王は当時、新しい食器用洗剤を開発するために食器洗いという行動を徹底的に分析をしたそうです。個別に家庭訪問調査を行ない、主婦が実際に台所で食器を洗っているところを行動観察しました。

花王の調査担当者が発見したのは、主婦が洗ったお皿を水かお湯ですすぐ時の主婦の様子でした。「まだお皿がヌルヌルしている」 「 (洗ったのに) 汚れがまだ残っている」 と、主婦はがっかりした表情を見せたことです。

スポンジに洗剤をつけ泡立て、食器をスポンジで洗い、水ですすぎ、ようやく食器洗いに終わりが見えてきた段階で、汚れがまだ落ちていないと気づき、主婦の顔には落胆の表情がありました。

行動観察から花王が新しい視点を持ったのは、消費者にとって洗ってきれいになる実感を得られるのが、いつなのかでした。食器を洗う瞬間ではなく、「すすぎ終わった瞬間」 でした。

インサイトのフレームワークに当てはめると、次のようになります。ポイントは、汚れを落としきれいにした実感はいつかです。


フレームワーク活用例: 台所用洗剤
  • 当初の想定:食器洗いで汚れを取りきれいにしている実感が得られるのは、泡の付いたスポンジで食器を洗っている時
  • 観察からの実際:食器の洗剤の泡をすすいだ後に、まだヌルヌルや汚れが残っていることに落胆の表情を見せた
  • 新しい切り口 (インサイト) : 「洗ってきれいにした実感」 が得られるのは、スポンジで洗っている最中だけではなく、すすいだ後にちゃんと汚れが取れているかを確認した瞬間
  • アクション (施策) :油汚れや泡が素早く確実に落ちるような商品開発。情緒価値として 「すすいだ瞬間、指先でキュキュッと汚れ落ちを実感できる」 を訴求。商品名も 「キュキュット」 とした


食器用洗剤の利用者が、すすいだ後にまだ汚れが残っていることを明確に言葉にしたわけではありません。すすぎ後に落胆の表情を見せただけでした。その瞬間を、花王の調査担当者は逃しませんでした。

落胆などのネガティブな表情が出るということは、裏を返せば 「○○ ならいいのに」 という言葉には出ない気持ちが奥にあります。

行動観察で見つけた一瞬の出来事について、何を意味するかを掘り下げ、消費者のインサイトを見い出しましたのです。


まとめ


今回は、半径3メートルの 「行動観察」 から大ヒットを生む方法 という本から、消費者インサイトを書きました。

最後に今回の記事のまとめです。

  • 行動観察は、調査対象者の振る舞いや行動を、一定の時間をかけて観察する。調査対象者本人が自覚できていない、言葉には出せないことを深く理解する。消費者インサイトを見い出す方法

  • 消費者インサイトとは、人を動かす隠れた心理。消費者自身も普段は意識していないが、気付かされれば思わず行動に結びつく奥にある気持ち。
    的確にその気持ちが刺激されれば、関心が湧くなどの態度変容、購入という行動、時には習慣すらも変わる

  • 消費者インサイトは主体的に見つけるもの。インサイトを見い出すポイントは、次のような見方をすること。「当初の想定では ○○○ だと思い込んでいたが、真実はその逆で □□□ である」

  • 消費者インサイトのフレームは、
    • 当初の想定や思い込み
    • 発見 (例: 観察からの実際)
    • 新しい切り口 (インサイト)
    • アクション (施策)


最後に


この本から最も参考になったのは、ここまでご紹介したインサイトを見い出すフレームワークです。


消費者インサイトのフレーム
  • 当初の想定や思い込み
  • 発見 (例: 観察からの実際)
  • 新しい切り口 (インサイト)
  • アクション (施策)


この考え方は、自分の仕事にも役に立っています。新しい切り口として 「これはインサイトではないか」 と思えたことにフレームワークを当てはめ整理すると、有用なインサイトかどうかを判断することができます。

本書は、豊富な具体例として身近な商品を多く扱っています。タイトルにある 「半径3メートル」 の世界にも、注意して見渡し、自ら行動観察をすると、思い込みに対して発見があり、そこには新しい切り口となるインサイトがあるのです。

日常生活で 「インサイト脳」 を鍛えるために参考になる一冊で、一読の価値があります。



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社概要はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。