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インサイト実践トレーニング という本をご紹介します。
本書の内容
以下は、本書の内容紹介からの引用です。
人は必ずしも、アタマで合理的に考えてモノを選ぶわけではない。
ヒット商品のウラに、インサイトあり。機能やデザインが多少よいぐらいでは、消費者に振り向いてもらえない。思わず買いたくなるスイッチを、いかに押さえるかがカギ。
では、どうやってインサイトをとらえ、自社の強みと関連させ、マーケティング施策に落とし込めばよいのか。実践的なツールを使いながら、段階を追って紹介していく。
この本に書かれている内容を自分なりにまとめると、次の3つです。
本書の内容
- 消費者インサイトを深く理解するために、どのような方法があるか
- 見い出したインサイトを、自分たちのビジネスにどう活かすか
- これらを、具体的な事例を通して解説している
インサイトとは何か
本書では、インサイトとは 「人が思わずモノを買ったり、行動を起こしたりする心のホットボタン」 と説明します。
私が思うインサイトは、よりシンプルに表現すれば 「人を動かす隠れた心理」 です。消費者本人も普段は意識していませんが、気づかされれば行動につながる気持ちです。行動とは、買うことや行くこと、態度変容も含みます。時には、自分の習慣すらも変えます。
なお、インサイトについては、別のエントリーで詳しく解説しています。
参考:消費者インサイトとは何か? 「インサイトを見い出す方法」 をわかりやすく解説します
なぜインサイトが重要なのか
インサイトが活きるのは、成熟したカテゴリーです。日本のような、多くのカテゴリーで、すでに顕在化したニーズが満たされているような市場においてです。
もし成長している市場であれば、消費者の 「欲しい」 という気持ちが見えるので、新しい機能や競合製品との違いを打ち出せばニーズを満たすことができます。
しかし、成熟していたり伸び悩んでいる市場の場合、消費者が 「欲しい」 と思ってもらうところから始めないといけません。買うなどの行動への動機づけが必要です。
ここにインサイトという、普段は本人すらも意識していない感情に気づくよう働きかけ、行動を起こすことを狙います。
読んで思ったこと
ここからは、本書を読んで印象に残ったことです。3つあります。
読んで思ったこと
- インサイトとプロポジションは両輪
- 「売れる理由」 ではなく 「買いたい気持ち」 を考える
- 直接 「なぜ」 を聞かない
[思ったこと 1] インサイトとプロポジションは両輪
プロポジションとは、消費者インサイトに対して、商品・サービスやブランドの提供者側からの提案です。インサイトという人の気持ちを満たすために、商品を通しての価値提案です。
ビジネスの観点では、消費者インサイトを見い出すだけでは道半ばです。インサイトに対して、自分たちは何をするかです。
インサイトとプロポジションは、車の両輪のようにセットで考えるものです。さらに、プロポジションは競合他社など誰にでも提供できるものではなく、自分たちにしかできないものかどうかの視点が大切です。
具体的には、自社の独自資源がもとになっているか、他社にはできない強みと一貫性があるか、企業またはブランドのビジョンやミッションとの整合性があるかです
[思ったこと 2] 「売れる理由」 ではなく 「買いたい気持ち」 を考える
企業側の立場にいると、自社商品をどう売るか、なぜ売れるのかという提供者の視点に立ってしまいます。
本書に書かれていたことで印象的だったのは、「売れる理由」 ではなく 「買いたい気持ち」 を理解しようとする姿勢でした。
売れる理由と買いたい気持ちは、一つのものをそれぞれ逆方向から見ています。
消費者インサイトでは、後者の 「買いたい気持ち」 をいかに深く理解するかがポイントです。つまり、企業視点ではなく生活者視点で、提供者側の論理ではなく買う人の気持ちを、たとえ自分とは違っていたとしても、いかに想像できるかです。
[思ったこと 3] 直接 「なぜ」 を聞かない
この本では、インサイトを探るための調査手法が具体的に解説されています。
手法の1つに、頭の中のイメージを言いたいことを、あえて写真やイラストで表現してもらう方法が書かれています。
コラージュ法と呼ばれ、例えば、コーヒーを飲むシーンを写真に撮ってきてもらう、あるいは、対象となる商品やサービスのイメージに合う写真を、調査担当者があらかじめ用意した数十枚から百枚程度の中から自由に選んでもらうやり方です。
この時のポイントは、被験者が選んだ写真に 「なぜ選んだのか」 と直接的に理由を聞かないことです。なぜなら、人は 「なぜ」 と聞かれると、論理的に答えようと、時には無理やりに頭の中で答えをつくってしまうからです。
直接 「なぜ」 を聞かない代わりに、「その写真のどこに注目したか」 を確認します。対象者が写真を選んだ理由を直接的に尋ねずに、その理由を読み取るのはあくまで自分たちです。
最後に
本書は、インサイトとは何かだけではなく、「インサイトの見い出し方」 を具体的に解説した本です。タイトルにある 「実践トレーニング」 の通り、わかりやすく書かれています。
マーケティングを実務で担当されている方には、消費者インサイトについて学ぶためにおすすめの一冊です。
この本の姉妹本に、インサイト があります。
こちらも、過去のエントリーで書評を書いています。ぜひご覧ください。
参考:書評: インサイト (桶谷功)