#マーケティング #顧客視点 #本
お客さんや消費者が本当に求めているものを理解できているでしょうか?売り手の視点にとらわれ、お客さんの本音から遠ざかっていませんか?
売り手の視点と買い手の視点には少なからずギャップがあり、その乖離がお客さんが感じていたり、期待する顧客価値を見逃す原因になります。
今回は、幕末から明治初期の歴史小説 「アメリカ彦蔵 (吉村昭) 」 を取り上げ、ビジネスやマーケティングへの示唆を解説します。
続きを読んでいただき、あなたのマーケティングへのヒントをぜひ一緒に探っていきましょう。
本書の概要
小説 「アメリカ彦蔵 (吉村昭) 」 は、幕末から明治初期の日本とアメリカを舞台にした歴史小説です。主人公の彦蔵 (ジョセフ・ヒコ) の波乱に満ちた人生を描いた作品です。
小説は著者による緻密な調査からの史実にもとづいた内容で、激動する時代での日本とアメリカ、そして彦蔵の苦難、葛藤、成長を描いています。
運命を変えた海での遭難
物語は嘉永三年 (1850年) 、13歳の彦太郎 (彦蔵の幼名) が船乗りとして航海に出るところから始まります。
彦太郎の乗っていた船は嵐に遭遇し、難破して太平洋沖で漂流します。漂流中、アメリカの捕鯨船に救助され、彦太郎と他の乗組員はアメリカに渡ることになります。
多くのアメリカ人の好意により、日本への帰国を支援してもらった彦太郎たちでしたが、この時期の日本 (江戸幕府) は鎖国政策を固めており、たとえ日本人の漂流民であっても外国からの帰国が叶えられない状況に置かれます。
アメリカでの生活
故郷に帰ることができず、再びアメリカに渡った彦蔵は、現地で教育を受け、英語を習得します。親切なアメリカ人たちのサポートもあり、学校に通い最新の商業にも触れる機会を得ます。
最終的には彦蔵はアメリカ国籍を取得し、アメリカでの生活の中でキリスト教の洗礼を受け、ジョセフ・ヒコという名前を名乗るようになります。
帰国と日米外交での活躍
彦蔵はアメリカで知己を得て、リンカーン大統領を含む三代の大統領と面会する機会を得ます。日本人として初めてアメリカの大統領に直接会ったのが彦蔵です。
アメリカでの経験を経て、彦蔵は日本に帰国することを決意します。その頃の日本は黒船来航によって幕府は開国をしたばかりで、日本を取り巻く国際関係や国内状況は大きく変わっていました。
彦蔵は通訳として太平洋での遭難から9年ぶりに故国に戻ります。帰国後は、日米外交やビジネスの前線で活躍し、彦蔵は幕末から明治維新にかけての激動の時代を生き抜きます。
幕末の日本において、彦蔵は西洋諸国と日本の橋渡し役を務め、歴史的な重要な場面に立ち会う姿が描かれます。
テーマとメッセージ
歴史小説 「アメリカ彦蔵」 は、漂流という運命を変える出来事に遭遇し、自らのアイデンティティに悩みながらも人生を切り開いていく彦蔵の姿を描いています。
彦蔵の物語は、異文化との接触、自由な発想や民主主義といった西洋的価値観による日本への影響、人種や国籍、人としての振る舞いや成長をテーマにしており、幕末の日本とアメリカの関係を照らし出す興味深い作品です。幕末当時の漂流民たちの苦悩、帰国後の苦労や葛藤も描かれています。
本の内容は吉村昭さんの丁寧な取材と構成によって、歴史的事実にもとづいたリアリティを持ちつつ、文学的な深みも併せ持つ作品です。歴史を多角的に捉えている視点が特徴的です。
歴史小説から学べること
「アメリカ彦蔵」 は、マーケティングにおいても示唆を与えてくれる小説です。
特に、小説の物語を通して歴史を多角的な視点で見られることです。
日米を中心にした小説の舞台で、アメリカ人に帰化した彦蔵や外国人 (政府関係者, 船乗り, 外国人商人など) という目から日本のことを、そして同時に、救出されてアメリカに渡った日本人として彦蔵の目からアメリカのことを描いています。
こうした 「相手からの視点」 でものごとを見ることは、マーケティングにも通じます。
相手視点で捉える彦蔵の物語
彦蔵の波乱万丈の人生は、相手の視点を理解することで道を切り開いていったプロセスそのものです。
アメリカから日本を見る視点
彦蔵はアメリカでの生活によって、日本の文化や価値観が外部からどのように見られるかを知りました。
アメリカの自由や民主主義を体験することで、日本の封建制度や鎖国政策のことを国際関係の中で捉え直しました。
この経験は、後に彦蔵が通訳や外交官として活躍する際の貴重な洞察につながります。幕末から明治初期の外交活動において、相手国にどう日本のことを説明し、交渉するかという場面で活かされました。
日本からアメリカを見る視点
一方で、彦蔵は日本人としてアメリカの社会や価値観を観察し、両者の違いを理解することで、文化的ギャップを埋める役割を果たしました。これは現代においても異文化理解や自分とは異なる文脈を把握するのと同じです。
このように彦蔵の 「相手の立場に立って捉える力」 は、国際社会での日本や異文化間の橋渡しだけでなく、物事を多角的に捉える柔軟性を育む源となりました。
マーケティングへの応用: 相手視点で価値を見つける
マーケティングでは、商品やサービスを売る側の視点だけではなく、消費者視点や顧客視点に立つことが大事です。
小説 「アメリカ彦蔵」 をマーケティングの文脈で読み解くと、多くの示唆を得ることができます。
相手がどのように自分を見ているかを理解する
マーケティングにおいて、消費者やお客さんが自社の商品やブランドをどのように見ているか、感じているかを知ることは重要です。
彦蔵がアメリカで過ごす中で、日本がアメリカからどう見られているかを肌で学んだように、マーケティングでも 「消費者・お客さんが自社をどう見ているか」 をリサーチし、洞察を得ることが顧客理解では大事です。
例えば、自分たちでは 「価値がある」 と思っている商品特徴が、お客さんにとってはさほど重要ではないという認識ギャップはよくあることです。売り手視点ではなく、買い手視点や使い手視点になって、消費者やお客さんにとって本当に価値があるのは何かを、相手の視点から再評価することで顧客価値を見極めることができます。
相手の意図や動機を洞察する
小説では、アメリカ人や外国人商人の行動や発言から、彼らが何を意図し、何を価値と考えているかを彦蔵が洞察する場面があります。
マーケティングでも、お客さんの行動データや言葉の背景にある意図を読み解き、「ジョブ理論 (Jobs to Be Done) 」 などの手法を用いて本質的なニーズを見極めることが重要です。
お客さんの文脈に沿った価値を訴求する
彦蔵は、アメリカ社会に適応するために西洋の価値観や作法を知り、英語を学び、人々との交流を通して相手国の文化を理解しました。
同じように、企業も消費者やお客さんの生活習慣やビジネス習慣を知り、ときには自らも消費者・お客さんと同じ環境や状況に身を置き、実際に体験することによって、初めてお客さんの行動や人間心理を深く理解することができるのです。
そして、顧客理解によって得られた洞察にもとづき、お客さんの文脈に沿った価値提案が求められます。例えば、商品をアピールする際には、ただ売り手側の考えや論理を押し付けるのではなく、お客さんの置かれた文脈やライフスタイルに合わせて顧客価値を再解釈することが大事です。
彦蔵がアメリカと日本の違いやギャップを理解し、それぞれの相手に文脈や意図まで伝わる翻訳を心がけたように、マーケティングでも商品やサービスの価値を 「消費者の言葉」 や 「お客さんの言葉」 で伝えることが大切です。
マーケティングで相手視点の実践
小説 「アメリカ彦蔵」 からの学びとして、次のようなマーケティングでの実践へのヒントが得られます。
- 市場を多面的に分析する: 参入している市場だけではなく、隣接するカテゴリーや未開拓の市場などの今の市場の枠を外した視点で捉え直し、分析することが、マーケット拡大の糸口となる
- お客さんが感じる "違和感" を解消する: 彦蔵が外国語や異文化間の通訳や橋渡し役として活躍したように、マーケティングでも商品がお客さんに馴染むように、お客さんが持つ背景を理解し、顧客文脈に合うよう、心理的なバリアを取り除くことが有効
- 信頼を獲得する: 小説の中で彦蔵が、アメリカを中心とした海外の要人や商人からの信頼関係を築いたように、マーケティングにおいて 「お客さんからの信頼」 をつくることが成功につながる
歴史物語をマーケティング思考で読み解く
歴史小説 「アメリカ彦蔵」 を読み、歴史を多面的な視点で見ることの意義は、マーケティングにおける消費者やお客さんの立場になることの大切さと重なります。
この小説からは、マーケティングへの示唆として 「相手の視点に立つことで相手のことを理解でき、また自分自身の強みを再発見することにより、自らの存在意義や顧客価値を見出す」 というメッセージに変換できます。
ひとつのものごとを単眼ではなく複眼的に捉え、色々な角度に光を当てられれば、ことの本質に迫ることがてきます。これをマーケティングに応用することによって、より深い人間理解や顧客理解、そして価値創出につながるでしょう。
まとめ
今回は、小説 「アメリカ彦蔵 (吉村昭) 」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- マーケティングは、消費者視点や顧客視点に立って初めて本当の顧客価値を理解できる
- 市場を多角的に観察し、隣接するカテゴリーや未開拓の領域に目を向けることで、従来の枠組みを超えた新たな可能性が生まれる
- お客さんの行動や消費者心理の背後にある本質を読み解くことにより、深い顧客理解につながる。自分たちの見立てとお客さんの見立ての認識ギャップを埋めることによって、顧客価値を再評価する
- 相手の文脈や価値観を深く洞察することで、自社の魅力を正確に伝える方法が見えてくる
- お客さんの顧客文脈に沿うよう、お客さんの言葉で価値を伝える。顧客の 「違和感」 を理解し、違和感からつくられている心理的バリアを取り除く
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