投稿日 2025/04/22

競争に勝ち生き残り続けるための 「4つの力」 。OODA ループで実践する方法

#マーケティング #戦略 #本

変化の激しい現代は、過去の成功体験や古い常識にとらわれると、新たな機会を見逃してしまいます。一方で、環境変化を巧みに捉え、自らの強みを最大限に活かすことができれば、成長を続けられるでしょう。

この違いはどんな力によるものなのでしょうか?

今回は、歴史から学ぶ 「競争に生き残り続ける4つの力」 について、 「戦略は歴史から学べ - 3000年が教える勝者の絶対ルール (鈴木博毅) 」 という本から、具体的なビジネスでの実践方法とともに考えます。


ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

競争に勝ち生き残り続ける必要な 「4つの力」 


ビジネスの世界で競争に打ち勝ち、そして生き残り続けるためにはどうすればいいのでしょうか?

結論から言うと、次の4つの力が重要になります。

  1. 探索力
  2. 翻訳力
  3. 強み発見力
  4. 強み発揮力


では順番に見ていきましょう。

[探索力] 新たな情報や知恵を取り込む力

探索力は、外部環境を観察し、新しい情報を取り込む能力です。

変化が激しい時代において、古い常識や過去の成功モデルに頼るだけでは、新しいチャンスや脅威を見逃してしまいます。探索力という能力がある人や組織は、未踏の領域を探索し、新たな知見を得ることで競争相手より一歩先に進むことができます。

探索力を発揮するには、外部環境の変化を絶えず観察し、そこから何が重要かを見極める力が必要です。

例えば、全く異なる業界や文化から学びを得ることは、既存の問題に対する新しい解決策を導く手がかりとなります。また、探索した結果を検証し、仮説を立てながら試行錯誤を繰り返す姿勢も重要です。

このプロセスを通じて、変化に適応し、未来への準備を整えることができます。

[翻訳力] 問題を再定義し、機会を見つけ組織を動かす力

翻訳力とは、得た情報を理解するだけにとどまらず、組織や状況に応じて再構築する能力です。そして、価値のある形に変換することで新たな機会を生み出します。

複雑な問題をそのまま受け止めるのではなく、本質を見抜いて考察し、再定義することによって、新しい解決策や機会が見えてきます。翻訳力を持つ人や組織は、表面的な問題の事象に惑わされることなく、深い思考をもとにした行動を取ることができます。

翻訳力を活かすには、まず情報を解釈する力が求められます。

表層的な事実だけにとどまらず、背後にある要因や構造を見極め、洞察を得ることが重要です。また、洞察を他者に共有し、組織全体を動かすコミュニケーション能力も含まれます。

翻訳力からデータや事象を超えて、意味ある行動を生み出す指針が生まれることでしょう。例えば、混乱した状況で一見バラバラに見える情報を整理し、新たな方向性を示すリーダーシップは翻訳力の例です。

[強み発見力] 自分たちの優位性を見出す能力

強みを発見する力とは、自分たちがどの領域で最大限の価値を発揮できるのかを理解し、明確にする能力です。例えば、自社の持つ独自の技術力が、特定の市場ではユニークな力であることに気づき、その技術を用いて競争優位性を築く取り組みを行うというふうにです。

強み発見力は、時間やお金、人員などのリソースが限られている現実の中で、自分たちが集中すべき分野を選択し、成果を上げるための基盤を築きます。すべての分野で優位性を持つことは現実的ではないため、どこに注力するかを見極めることが競争力を向上させるポイントになります。

強みを見出す力を発揮するには、まず自己分析からです。

内部リソースやスキル、組織の特性を理解し、どの部分が競争優位を生み出せる源泉になるかを評価します。そのうえで外部環境との整合性を確認し、自分たちの強みを発揮できる事業領域や条件を探し出すのです。

このプロセスを通じて、限られた資源を最大限に活用し、競争優位を築く道筋が明らかになります。強みを発見する力は、特定の分野での優位性を生み出し、成功の可能性を高めるでしょう。

[強み発揮力] 強みを最大化する状況をつくる

強み発揮力とは、見出した優位性をどのように具体的な成果につなげるかを計画し、実行する力です。

どれほど優れた強みを持っていても、それを適切に活用しなければ、無駄な努力や失敗に終わる可能性があります。一方で、適切な方法で強みを活かすことができれば、持続的かつ効率的に成果を上げることが可能です。

強みを活用するには、活かすための適切な領域や場面を選び出すことが必要です。競争環境や市場のニーズを分析し、自分たちの強みが最も効果を発揮する状況を見極めます。

また、運用プロセスの中で、定期的に成果を測定し結果にもとづいて戦略や実行方法を調整することも重要です。さらに、他の強みやリソースと統合してシナジーを生むことで、より大きな価値を創出することにもつながります。

OODA ループからの実践


ここまで見てきた4つの生き残るための力 (探索力, 翻訳力, 強み発見力, 強み発揮力) は、それぞれを実践するためには、OODA ループの考え方が有効です。

OODA ループとは



OODA ループは、アメリカ空軍のジョン・ボイド大佐が提唱した意思決定プロセスのフレームワークです。

 「Observe (観察) 、Orient (方向性の見定め) 、Decide (意思決定) 、Act (行動) 」 の4つの段階から成り立っています。

✓ OODA ループ
  • Observe (観察) : 情報を収集し観察する
  • Orient (方向性の見定め) : 観察内容を掘り下げ意味合いや示唆を抽出する
  • Decide (意思決定) : 状況判断にもとづいて決断をする
  • Act (行動) : 実際の行動に移す


OODA のプロセスは、環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、競争相手よりも優位に立つための方法として広く用いられています。

OODA ループの特徴は、このサイクルを繰り返し実施することで、常に現状に適応し続けられる点にあります。特に、複雑で予測困難な状況下において、固定的な計画立案にとどまらず、現場での実践を通じて柔軟に軌道修正を行うフレームワークとして有効です。

では、前半で見た4つの力に OODA を当てはめていきましょう。

観察 (Observe) からの 「探索」 

探索力は、OODA ループの最初の段階である 「観察」 によって支えられます。

観察とは、周囲の環境、競争相手、社会的トレンドなどを幅広くモニタリングすることです。情報を集めるだけでなく、変化の兆しや新たな可能性を見つける視点が求められます。

具体的には、データ収集や顧客からのフィードバック、異業種や異なる文化からも学びを得ることが探索力を強化します。

また、観察を成功させるためには、固定観念にとらわれず、中立的な視点を持つことが重要です。

方向性の見定め (Orient) からの 「翻訳力」 

翻訳力は、OODA ループの2つ目である 「方向性の見定め (Orient) 」 で力を発揮します。

この段階では、観察から得られた情報を整理し、状況を解釈して自分たちの立ち位置や目指すべき方向を定めます。これは、問題を再定義し、新たな機会を見つけ出す作業そのものです。

翻訳力を高めるには、情報処理にとどまらず、本質的な意味を抽出し、課題や目標を明確化するこそが必要です。

たとえば、収集したデータや観察結果を分析し、それらを統合してトレンドや共通パターンを見つけ出します。その後、それを具体的な戦略につなげるために、組織やチームが共通認識を持てる形で共有します。

ここでは情報の背景や文脈を深く洞察する力が求められます。そして、得た洞察を行動可能な指針へと変換できるかが大事です。

意思決定 (Decide) からの 「強み発見力」 

強みを見出す力は、OODA ループの意思決定段階に直結します。

自分たちがどの領域で優位性を打ち出せるかを選び出し、それにもとづいて具体的なアクションプランを決定します。

観察と方向性の見定めをもとに、自分たちのリソースやスキルを評価し、競争環境におけるポジションを特定します。このとき、すべての分野で競争しようとするのではなく、リソースを集中的に投下できる 「勝てる分野」 を選択することが大事です。

たとえば、ある企業が自社の技術力が特定の市場ニーズにフィットしていると判断した場合、その領域での研究開発やマーケティングを優先する決定を行うというふうにです。

リソース配分や優先順位の明確化が勝敗を分けます。

行動 (Act) からの 「強み発揮力」 

強みを発揮する力は、OODA ループの行動段階において実践されます。

意思決定で明確にした戦略を具体的なアクションに落とし込み、実行していきます。行動に移す際には起こった結果を継続的に観察し、必要に応じて次のサイクルで修正を加える柔軟性が必要になります。

その強みを最大限に発揮できる環境を整えることも重要です。

例えば、技術力が高い企業の場合、最新の設備や必要なリソースを揃えること、専門性を持つチームメンバーを配置することが、技術力を最大限に発揮するための環境づくりにつながります。強みを最大限に活用しながら、環境の変化に対応することができるでしょう。

まとめ


今回は、変化の大きい時代において生き残り続けるための4つの力を、OODA ループに当てはめて考察しました。

最後にポイントをまとめておきます。

✓ 競争に勝ち生き残り続ける必要な 「4つの力」 
  • 探索力: 新たな情報や知恵を取り込む力。外部環境を観察し、新しい情報を取り込む
  • 翻訳力: 得た情報から問題を再定義し、価値に変換することで機会を見つける力
  • 強み発見力: 自分たちの優位性を見出す能力。最大限の価値を発揮できる領域を定め、集中すべき分野を選択する
  • 強み発揮力: 強みを最大化する状況をつくる力。優位性を成果につなげるよう計画し、実行する

✓ OODA ループからの実践
  • Observe (観察) : 探索力。環境変化、消費者や顧客、競争相手の動きを観察する
  • Orient (方向性の見定め) : 翻訳力。観察した情報を解釈し目指すべき方向性を定める
  • Decide (意思決定) : 強み発見力。自らの強みを活かせる領域を選択し、具体的なアクションプランを決定する
  • Act (行動) : 強み発揮力。意思決定にもとづくアクションを実行し、継続的に成果を観察・評価し、必要に応じて改善を行う


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。