投稿日 2024/08/05

BtoB 企業のための展示会攻略法。来場者の心をつかむ出展プランのつくり方

#マーケティング #顧客理解 #PMF

展示会や業界イベントは、BtoB 企業にとって大きなチャンスです。しかし、多くの企業が見落としているのは、お客さんとなる来場者の 「顧客文脈の理解」 です。

訴求したいお客さんが、どのような状況下であなたのブースに足を踏み入れ、何を求めているのか――。こうした相手の文脈を理解することで、商品や資料をブースに展示する以上の成果をもたらします。

今回は、BtoB 企業の展示会出展を 「マーケティングコミュニケーション」 として捉え、展示会への出展を成功に導く方法を紐解きます。

BtoB での展示会の位置づけ


BtoB マーケティングにおいて、展示会などの業界イベントは重要な顧客接点のひとつです。

参加者にとっての展示会の位置づけや使い方が、従来から変化しています。

―― 先ほど言及された通り、BtoB マーケティングでは展示会も選択肢となります。

小笹 (カラフル代表の小笹文 (おざさあや) 氏) ただし、企業にとって、展示会の位置づけが今までとは違ってきている側面もあるという認識が必要です。展示会に出展する目的はリード (見込み客) を獲得するためという企業も多いと思います。確かにそうした面もありますが、もう一つ重要な役割があります。それは、部長や本部長といった顧客企業のキーパーソンが、自社の製品を 「見たことがある」 「知っている」 という状態をつくることです。

というのも、決裁者がその製品を知っていると、窓口担当者が稟議を通すときに、承認が得やすくなることは容易に想像できるからです。実際、担当者が導入したい製品やサービスを見てもらうために、上司を連れていくというケースが多いことも、私が大学院在籍時に行った調査研究でも明らかになっています。

―― 従来、展示会は一回りして数多くの製品やサービスに触れてみる場でした。それが今では、担当者はインターネット上で既に情報を得ており、検討段階に絞り込んだ製品を上司に見てもらう場に変わってきている。

小笹 もちろんすべてではないですが、デジマが発展した結果、そういうケースも増えているわけです。そこで問題となるのが、主催者や出展側がそうした展示会の位置づけの変化に対応しきれていないこと。展示会のフォーマットは数十年以上変わっていません。いまだに女性のコンパニオンがブースに立って名刺集めをしている光景も目にします。

そうではなく、必要なのは、訪問した上司に会社や営業の雰囲気を気に入ってもらったり、信頼感を持ってもらったりすること。そのためには、説得力のある話ができる人を配置し、上役との商談にも対応できる場所を設けるなど、"上司訪問仕様" に展示スペースを作り変えることが不可欠です。


展示会は、参加者にとってはかつて多くの製品やサービスに初めて触れる場所でしたが、現在では担当者がインターネットで情報を得た上で、絞り込んだ製品候補を上司に見せる場にもなっているという指摘です。これは、決裁者が製品を知っていることで稟議を通しやすくするためです。

しかし、この変化に主催者や出展する側が十分に対応していないと、出展者と来場者でミスマッチが起こります。

そこで、展示会のフォーマットを見直し、新しいニーズに合わせて展示スペースを 「上司訪問仕様」 に変更し、説得力のある人材を配置し、上役との商談にもその場で対応できるような用意をしておく必要があるわけです。

マーケティング思考を取り入れた BtoB 展示会の対応


展示会の話からは、マーケティングの思考や方法を取り入れることで、展示会への出展をより効果的にできるということを教えてくれます。

顧客文脈を理解する重要性

マーケティングコミュニケーションにおいて、訴求したいお客さんがコミュニケーションの顧客接点で、どういう行動、心理状態や姿勢で臨んでいるのかを押さえておくことが大事です。

誰に向けてのコミュニケーションかという顧客設定、顧客接点でのそのお客さんの顧客文脈やモードをセットにして見極めます。

出展目的が曖昧になっていないか?

BtoB ビジネスでは、展示会やイベントへの参加がマーケティングや営業活動の重要な一環となります。これらのイベントへの出展は、多くの企業にとって一大イベントであり、その準備には相応の時間とリソースが投じられます。

しかし、参加すること自体を目的にしたり、参加や出展の目的が曖昧なままになっているケースも少なくありません。

目的の明確化を

重要になるのは、展示会へはそもそも何のために出展するのか目的の明確化です。

目的を定めるにあたっては、参加する来場者の顧客文脈を理解することがポイントになります。

先ほどのインタビューでの指摘は、普段は同行することが難しい上司や部門責任者と一緒に来場するケースが増えているとのことでした。

これが意味するのは、出展側の企業にとって、顧客文脈やシチュエーションに合わせた目的設定と出展プランについて、参加者の文脈に合わせて練り直す必要があるということです。

展示会で PMF を達成する

ところで、ビジネスの用語で 「プロダクトマーケットフィット (PMF) 」 という概念があります。

展示会に出展するにあたっての提示資料やデモなどを 「自社のプロダクト」 と見立てれば、展示会でも PMF の達成、すなわち展示会での自社コンテンツを来場者のニーズに合わせにいくという考え方が有効です。

マーケティングの役割

マーケティングとは、お客さんの本当のニーズにいかに自社の商品やサービスをフィットさせて、お客さんの満足度を高めることです。突き詰めれば、お客さんの成功を支援したり、お客さんに幸せになってもらう活動がマーケティングです。

マーケターは、いわばお客さんと商品の縁を結ぶ 「恋のキューピット」 のような橋渡し役です。

商品を売ることのもっと手前にあるマーケティングのコミュニケーション、具体的には広告や、今回の事例にあげた展示会などでも、こうしたお客さんと商品の架け橋になる役割がマーケティングには求められるのです。

まとめ


今回は BtoB マーケティングでの展示会の位置づけを考察しました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • マーケティングコミュニケーションで大事なのは、顧客文脈を深く理解し、訴求したいお客さんがどの接点でどのような行動や心理状態にあるかを把握すること

  • BtoB 企業にとって、展示会や業界イベントへの参加は重要なマーケティングや営業活動のひとつ。出展企業は来場者の顧客文脈を理解し、それにもとづいた目的設定と出展プランをつくるべき

  • プロダクトマーケットフィット (PMF) はビジネスにおける重要な概念であり、展示会出展にも応用可能。展示会で提示する資料やデモを自社の 「プロダクト」 と見立て、来場者のニーズに合わせることで、展示会における PMF を達成する

  • マーケティングは、顧客ニーズに商品やサービスをフィットさせる活動。展示会もまた、顧客と商品の架け橋となれる


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。