投稿日 2024/08/02

昭和から令和へ。Regain の時代の変化とともに進化するブランド戦略

#マーケティング #リブランディング #顧客文脈

自社のビジネスは、時代の変化に合わせて進化しているでしょうか?

今回取り上げるのは、1988年 (昭和63年) に誕生し、昼夜問わず働くビジネスマンを応援してきた栄養ドリンクの 「Regain (リゲイン) 」 です。

その当時の昭和と比べ、令和の時代に入り働き方や消費者の価値観は大きく変化しました。昔ながらのキャッチコピーでは、現代の消費者ニーズに応えることは難しいかもしれません。

では、ビジネスを時代の流れと共に成長し続けるには、どのようなアプローチが必要でしょうか?

今回は、リゲインが時代の変化にいかに対応し、リブランディングを通じてどのように消費者の心をつかみ続けているのかを解説します。

ドリンク剤 「Regain」 


栄養ドリンクの 「Regain (リゲイン) 」 は、バブル全盛期の1988年に誕生しました。

リゲインの歴史



リゲインは、昼夜を問わず働くビジネスマンの疲労回復を目的とし、話題性のあったテレビ CM の後押しもありヒット商品となりました。

1989年の平成元年には、 「24時間、戦エマスカ。」 のキャッチコピーでさらに人気を博し、仕事や遊びに全力を尽くすビジネスマンからの支持を得ます。

しかし、1990年代のバブル崩壊と共に日本経済が厳しい時代に入ると、リゲインも市場縮小の影響を受けたものの、リゲインはその後も40代以上の 90% を超える高いブランド認知度で市場に残り続けました (参考記事) 。

錠剤タイプの登場

令和が始まる直前の2019年2月、新たな展開として錠剤タイプの 「リゲイントリプルフォース」 が発売され、2023年には処方を強化した 「リゲイントリプルフォース EX」 が追加されました。

リゲイントリプルフォースはビタミン B1 誘導体や滋養強壮成分を配合し、「糖化」 に着目したエイジングケア商品です。リゲイントリプルフォースは、定期購入者の半数がミドル世代の女性とのことです (参考記事) 。

ちなみに糖化とは、食事などから摂った余分な糖質が体内のたんぱく質などと結びつくことで、細胞などを劣化させる現象です。糖化により AGEs (たんぱく糖化最終生成物) という老化物質が生成されます。

リゲインのリブランディング

ここまで見てきたリゲインのリブランディングは、「カラダをつくる、明日をつくる」 というコンセプトの下、人生100年時代を生きるすべての人に対して、若々しく元気でいることの大切さを伝えるものです。

このコンセプトのもと、リゲイントリプルフォースのパッケージデザインは女性が抵抗なく受け入れやすいものに変更され、女性からの人気を集める要因となっています。

このように時代に合わせて進化を遂げたリゲインは、リゲイントリプルフォースの売上好調もあり、今もなお多くの人々に支持され続けています。

学べること


ではリゲインの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

ビジネスを成功させるために重要なことのひとつは、「その時の世の中の時流」 を捉えたり、トレンドに乗ることです。

当時の時流にマッチ

リゲインが誕生したのはバブル時代の1988年でした。昭和から平成にかけての日本の経済が盛り上がっていた頃です。

昼も夜も戦うバブル世代のビジネスマンを応援する存在となり、 「24時間、戦エマスカ。」 を打ち出し、リゲインはそのための栄養ドリンクという訴求を展開しました。

パンチ力のあるキャッチコピーで多くのビジネスマンに愛されたのは、当時の社会的環境と時流に見事にマッチした結果です。

昭和と令和の違い

時はたち、令和の今は24時間働くという風潮ではなくなっています。

現代はワークライフバランスの重視や、健康への意識の高まりが見られます。単に一時的な疲労回復を提供するだけのブランドでは消費者のニーズに応えることは難しいでしょう。

今もまだ 「24時間、戦エマスカ。」 のイメージが残るリゲインですが、今後も人々から選ばれるブランドになるためには、今の時代の空気感や価値観に沿った存在になることが求められます。

時代変化に沿ったリブランディング

そこでリゲインが取ったアプローチは、時代の変化を深く理解し、ブランドのポジショニングを再定義することでした。人生100年時代に 「いつまでも若々しく元気でいたい」 という共通の願いを持つ男女に対し、思いに応えるブランドになろうとポジショニングを変えようとしています。

24時間働くための一時的な栄養補給で元気になることだけではなく、もっと長い時間軸である 「いつまでも若々しく」 という、人生での健康維持や健康増進をサポートする役割を果たすことを目指しているわけです。

時代と顧客理解からの価値定義

この戦略変更の背景には、市場や消費者の変化を正確に捉え、そのニーズに応える商品開発があります。バブル時代の一時的な疲労回復から、長期的な健康維持へのシフトは、消費者が本当に求めていることへの洞察から生まれたものです。

リゲインの事例は、ビジネスが成功を収め続けるためには、ただ時流に乗るだけでなく、社会や消費者の変化を察知し、それに応じてブランドの立ち位置や提供価値を柔軟に再定義することの大切さを教えてくれます。

市場や消費者のニーズ、トレンド、世の中の時流を深く理解し、それにもとづいてブランドの意義や価値を再解釈することは、持続可能なビジネスを運営する上で不可欠な要素です。生活者文脈や顧客文脈にフィットするようなブランドの意義や提供価値を再定義することが大事です。

リゲインのように、時代と共に進化することで、長きにわたり消費者から支持されるブランドを築くことができるのです。

まとめ


今回はリゲインのリブランディング事例を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • ビジネスの成功には、時代の流れやトレンドを捉えることが重要

  • 単に時流に乗るだけでなく、社会や消費者の変化を感知し、それに合わせてブランドの立ち位置や提供価値を柔軟に再定義することが大事

  • 生活者文脈や顧客文脈に合わせ本当に求められる価値を提供し続けることが、持続可能なビジネスにつながる


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。