売上を伸ばすためには、どうすればいいのでしょうか?
新しい商品を次々と開発することは本当に必要なのでしょうか?
多くの企業が直面するこの普遍的な問いに対して、新商品に頼らない方法が存在します。
それは、既存の商品やサービスが持つポテンシャルを活かし、最大限の収益を引き出すことです。
そこで今回は、顧客ロイヤルティを高めつつ、未顧客のいる未開拓の市場にアプローチし、そして休眠顧客や離反顧客を取り戻すことで、収益を上げる実践的な打ち手を解説します。
さらに、新商品開発の前に考慮すべき、4つの重要なマーケティング施策も掘り下げます。
収益を上げる5つの打ち手
企業が継続的に収益を上げるためには、大きく分けると5つのアプローチがあります。
- ロイヤルユーザーからの収益を伸ばす
- ライトユーザーの使用頻度を増やし、ロイヤルユーザー化して収益を伸ばす
- 自社商品を認知している潜在顧客を新規顧客化して収益を伸ばす
- 自社商品を認知していない未顧客から認知を獲得し、新規顧客化して収益を伸ばす
- 休眠状態にあるユーザーや離反顧客に戻ってきてもらい収益を伸ばす
順番に見ていきましょう。
ロイヤルユーザーからの収益を伸ばす
まず、ロイヤルユーザーからの収益拡大は、購入単価や購買頻度を高めることを狙います。
なお、ロイヤルティの高い顧客層からはすでに安定した収益源となっているため、これ以上の客単価を求めても伸びしろは限られる場合があります。その場合は、ロイヤル顧客がライトユーザーや離反顧客にならないような 「ディフェンス」 が重要になります。
ライトユーザーを使用頻度を増やしてのロイヤルユーザー化
2つ目のアプローチは、ライトユーザーからロイヤルユーザーへの転換です。
お客さんの中でもまだ使用頻度が高くないライト層に焦点を当て、商品の購入や利用回数を増やすことでより高い収益を生み出すことを目指します。
自社商品を認知している潜在顧客の新規顧客化
3つ目のアプローチには、自社商品のことを知っている潜在顧客を新規顧客に変える打ち手があります。
既に商品のことを認知していたり、興味は持っているもののまだ買っていない・使ったことがない潜在層からの収益を引き出します。これには、潜在顧客の物理的または心理的な購入障壁を取り除き、購入への背中を押す施策が有効です。
自社商品を認知していない未顧客の新規顧客化
また、自社商品をまだ認知していない未顧客への認知拡大も、新たな顧客層を開拓し、市場の拡大を図る重要な方法です。
これにはたとえば、新たにターゲットとする顧客セグメントに合わせた効果的な広告キャンペーンやプロモーション活動を展開します。
休眠顧客や離反顧客の復活
5つ目のアプローチとして、休眠状態のお客さんや過去にお客さんだった人たちに戻ってきてもらうことも、見過ごされがちながら収益源です。
休眠顧客や離反顧客の人に再度関心を持ってもらい、ニーズに合った商品の使い方、買いにくい理由を消すことで、再度自社との関係を築き直すことを狙います。
客数を増やすか、客単価を伸ばすか
売上を分解すると、「売上 = 客数 × 客単価」 となります。
この数式にもとづくと、売上を増加させるためには、客数を増やすか、または客単価を上げるか、あるいはその両方を目指す必要があります。
先ほど見た 「収益を上げる5つの打ち手」 は、売上と客単価の2つの方向性に沿って展開されます。
客数を増やす
客数を増やす施策は、新規顧客の獲得と既存顧客の維持となります。
5つの施策のうち、3番目、4番目、5番目が該当します。
- 自社商品を認知している潜在顧客を新規顧客化して収益を伸ばす
- 自社商品を認知していない未顧客から認知を獲得し、新規顧客化して収益を伸ばす
- 休眠状態にあるユーザーや離反顧客に戻ってきてもらい収益を伸ばす
新しいお客さんを引き付けたり、以前のお客さんを再獲得することによって、客数増加を目指します。
客単価を伸ばす
一方で、客単価を増やす施策では、1番目と2番目です。
- ロイヤルユーザーからの収益を伸ばす
- ライトユーザーの使用頻度を増やし、ロイヤルユーザー化して収益を伸ばす
これらの打ち手は、お客さんの購買行動や心理を深く理解し、顧客理解にもとづき顧客文脈に合った価値提案を高めることが肝になります。
お客さん1人ひとりにもたらす価値を高めることで、ロイヤルユーザーの購買頻度や単価を上げる、そしてライトユーザーをより収益性の高いお客さんになってもらうことを狙います。長期的な顧客関係の強化と収益性の向上を実現します。
新商品開発前にやるべきマーケティング施策
客数を増やしたり、客単価を上げるためには、新商品の開発が多くの企業にとって魅力的なアプローチに映るでしょう。
しかし、新商品開発の前に問うべきは 「既存商品を本当にやり抜いたのか」 です。既存の商品に対して十分な施策を行っているかを検討することが重要です。
新商品を開発する前に考慮すべきことは、やるべきことは次の4つです。
- ロイヤルユーザーが見出している商品の顧客価値をライトユーザーに共有し、商品の魅力を伝え使用頻度を上げる
- 現状の商品の価値を評価してくれそうな潜在顧客へターゲット範囲を広げる
- 商品の新しい利用用途や使い方を提案する
- 自社商品を買うときに感じる物理的・心理的負担を減らす
順番に見ていきましょう。
ロイヤルユーザーだけが知っている商品価値をライトユーザーに共有し、使用頻度を上げる
既存商品に対して十分な施策を行うための1つ目の方法は、ロイヤルユーザーが見出している商品の顧客価値をライトユーザーに共有することです。それによりライト層がまだ知らない商品の魅力を伝え、使用頻度を上げることを狙います。
商品価値をより広範囲のお客さんに伝えることに焦点を当てます。
ロイヤルユーザーの利用方法からヒントを得て、ライトユーザーの興味を刺激し、使用頻度を増やすことは顧客基盤の拡大と深化に貢献します。お客さんの口コミや成功事例の共有を通じて、商品の知られざる魅力を高めることができるでしょう。
現状の商品価値を評価してくれそうな潜在顧客へターゲット範囲を広げる
次に、今の商品の価値を評価してくれそうな潜在顧客への接触範囲を広げます。この施策は、新規顧客の獲得と市場の拡大に貢献します。
未開拓の市場やまだ自社商品を認知していない未顧客に対するマーケティング活動を強化し、より広い範囲の見込み顧客に商品の価値を伝えることで、新規顧客を獲得することが期待できます。
新しい利用用途や使い方を提案する
3つ目の既存商品のポテンシャルを引き出す方法は 「新しい利用用途や使い方を提案する」 という施策です。
商品の多様性や汎用性を打ち出し、既存顧客に対しても新規顧客に対しても、商品への新たな関心を喚起します。商品に対する既存の見方を書き換え、今までは取り込めていなかったニーズやライフスタイルにマッチする新しい使用シナリオを提供します。
このアプローチからは、お客さんからの商品に対する新たな興味をつくり、商品の使用頻度や範囲を拡大することを狙います。
自社商品を買うときに感じる物理的・心理的負担を減らす
最後に、「商品を買うときに感じる負担を減らす」 という打ち手も残っています。購入プロセスをより簡単で快適にすることに注力するわけです。
商品を探したり買う際に生じてしまっている障壁を取り除くことにより、お客さんの購入意欲を邪魔することなく、新規顧客の獲得や既存顧客の購入頻度の向上を高めます。
これには、購入プロセスのわかりやすさや簡素化、支払い方法の多様化、価格設定など、お客さんが自社商品を手に取りやすく、買いやすくするための様々な取り組みが含まれます。
具体的なサービスへの当てはめ
それでは、ここまでの内容を具体的なサービス事例に当てはめてみましょう。
架空のケースですが、ある企業が 「ヘルシーミールキット」 という食品の SaaS サービスを提供しているとします。このサービスは、健康志向の高い人たちに向けて、栄養バランスが設計された食材とレシピを提供するものです。
ここでは、新商品開発に先立って行うべき先ほどの4つのマーケティング施策について、ヘルシーミールキットの例を使って解説していきます。
- ロイヤルユーザーが見出している商品の顧客価値をライトユーザーに共有し、商品の魅力を伝え使用頻度を上げる
- 現状の商品の価値を評価してくれそうな潜在顧客へターゲット範囲を広げる
- 新しい利用用途や使い方を提案する
- 自社商品を買うときに感じる物理的・心理的負担を減らす
では順番に見ていきましょう。
ライトユーザーの利用頻度を高める
食事提供サービスのヘルシーミールキットでは、 利用頻度が多かったり会員期間の長いロイヤルユーザーからのフィードバックや使用方法を継続的に集めています。
ロイヤルユーザーを理解し、彼ら・彼女らの具体的な使い方、何に楽しみや価値を見出しているかをまとめ、ソーシャルメディアやマーケティングキャンペーンを通じてライトユーザー (たまにしか利用していないユーザー) に共有します。
たとえば、「ヘルシーミールキットを1ヶ月続ければ健康的な食生活が自然と身についた」 といったロイヤルユーザーの体験や効果を知ってもらうことで、ライトユーザーにも一層の興味を持ってもらい、サービスの利用頻度を増やし、徐々にロイヤルユーザーになってもらうことを狙います。
これにより、客単価の向上に寄与します。
潜在顧客へターゲット範囲を広げる
ヘルシーミールキットをまだ使っていない人に、サービスの特徴や得られるメリットを伝えることも重要です。
たとえば、栄養管理士や料理メニュー研究家の人、健康やヘルスケアの領域での影響力のあるインフルエンサーを通じて、サービスの認知度を高める施策を展開します。
すでに健康的なライフスタイルに関心があるものの、ヘルシーミールキットの存在を知らなかったり、知っているだけで使ったことのない未顧客や潜在顧客層にアプローチするわけです。
他にも打ち手として、健康をテーマにしたイベントやフェアでのプロモーションも効果的です。これらの活動は、新規顧客の獲得からの客数の増加につながります。
新しい利用用途や使い方を提案する
季節ごとの特別メニューや、特定の健康目標 (例: 体脂肪管理, 筋肉増加, 栄養補給) をサポートするレシピを提案することで、手軽さやおいしさだけではなく健康管理としてのサービスの新しい使い方を提案します。
ロイヤルユーザーはさらにサービスを利用したくなり (客単価の向上) 、ライトユーザーはサービス利用の新たな機会を得ることができます (客単価の向上) 。
認知しているが未利用の潜在顧客やまだ認知していない未顧客には新しい視点をもたらし、サービスが気になり使い始め、試しに使ってみること (客数の増加) が期待されます。
買う物理的・心理的負担を減らす
サービスの見つけやすさ、メニューの比較や選びやすさをシンプルにし、会員登録、支払い方法をわかりやすくすることも忘れてはいけません。
柔軟なサブスクリプションプランの提供、ユーザーフレンドリーなウェブサイトデザイン、迅速なカスタマーサポートなどにより、購入時の障壁を減らします。
新規顧客の獲得、離反・休眠状態のユーザーの再活性化が促進され (客数の増加) 、ライトユーザーのサービス利用頻度を高めることができます (客単価の向上) 。
別々の目的の施策を組み合わせる
これら4つの施策は、顧客の獲得 (客数の増加) と既存顧客のさらなる利用 (客単価の向上) に貢献します。
これらの施策を効果的に組み合わせることで、マーケティング戦略は全体として機能するでしょう。最終的にはこれらの打ち手を通じて、持続可能な成長と収益性の高いビジネスモデルの構築につながります。
まとめ
今回は、収益を伸ばすために、特に既存商品・サービスのポテンシャルを最大限に引き出すためにどうすればいいかを考察しました。
最後にポイントをまとめておきます。
- ロイヤルユーザーからの収益を伸ばす [客単価]
- ライトユーザーの使用頻度を増やし、ロイヤルユーザー化して収益を伸ばす [客単価]
- 自社商品を認知している潜在顧客を新規顧客化して収益を伸ばす [客数]
- 自社商品を認知していない未顧客から認知を獲得し、新規顧客化して収益を伸ばす [客数]
- 休眠状態にあるユーザーや離反顧客に戻ってきてもらい収益を伸ばす [客数]
✓ 新商品開発前にやるべきマーケティング施策
- ロイヤルユーザーが見出している商品の顧客価値をライトユーザーに共有し、商品の魅力を伝え使用頻度を上げる [客単価]
- 現状の商品の価値を評価してくれそうな潜在顧客へターゲット範囲を広げる [客数]
- 商品の新しい利用用途や使い方を提案する [客数, 客単価]
- 自社商品を買うときに感じる物理的・心理的負担を減らす [客数]
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