投稿日 2025/02/09

見えない壁を越える。3つの典型的なマーケティングの問題点とその解決策

#マーケティング #認知 #想起

せっかく開発した新商品なのに、なかなか認知されない…。カテゴリーの中で自社商品が埋もれてしまう。あるいは、よく使われているのに、ブランド名がお客さんの記憶に残らない…。

これらは、多くの企業が直面する典型的なマーケティングの問題点です。では、具体的にどんな課題があり、どう対処すればよいのでしょうか?

今回は、そんな 「見えない壁」 とも言える3つの典型的なマーケティングの解決すべき問題について、原因と解決策を探ります。ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。

典型的なマーケティングの解決すべき問題


マーケティングでよくある典型的な問題点として、次のようなものがあります。

  • [問題 1] 他社に比べて自社商品の認知度が低い
  • [問題 2] カテゴリーと自社商品が結びついていない
  • [問題 3] 商品は使われているが、商品名が知られていない (いつも使っている "あれ" としか認識されていない) 


3つの解決すべき問題について、具体的な状況を詳しく見てみましょう。

[問題 1] 他社に比べて自社商品の認知度が低い

BtoC ビジネスなら生活者が、BtoB なら企業内の担当者が、自社商品のことを知らないという状況です。

たとえば、競合製品が多く存在する市場で、自社製品は相対的にウェブやテレビなどの広告、SNS での話題性、口コミ、お店での露出が少ないために、多くの人がそもそも存在自体に気づいていない状態です。

専門用語で言えば、これは 「助成想起」 という問題です。助成想起とは、対象者に複数の選択肢や写真などを提示すれば、商品名のことを思い出してもらえることです。しかし助成想起が低いと、商品の写真や名前を見せても知らないと言われ、認知度が低いケースです。

お店に競合商品と並んで置かれていたとしても、知られている競合のほうが手に取りやすく、自社商品は知られていないのでお客さんから選ばれる可能性は低いです。

具体的なケースに当てはめると、新しいエナジードリンク商品を発売したものの、すでに市場にある主要な競合商品 (例: レッドブルやモンスターなど) の認知度が高く、広告の露出やキャンペーンの規模が自社よりも大きいため、消費者の中で自社の新商品ドリンクが存在していることすら知られていないという状況が該当します。

[問題 2] カテゴリーと自社商品が結びついていない

2つ目のこの問題は、自社の商品やブランドが、特定のカテゴリーや使用シーンと結びついていないというものです。

見込み顧客はそのカテゴリーやジャンルの商品またはサービスを必要としているのですが、自社商品がそのカテゴリーの中にあることが結びついていないために、お客さんに想起されないため、検討や購入の候補に入らないという問題です。

先ほどの1つ目は助成想起でしたが、こちらは何もヒントなしに思い出せるという 「純粋想起」 の課題です。「健康食品 (カテゴリー) と言えば?」 と訊かれたあとに、自社商品がカテゴリーと結びついて出てこない状態です。

具体例に当てはめると、健康サプリメントというカテゴリーで生活者がサプリ商品を買おうとしているときに、他の大手ブランド (DHC, ファンケルなど) はすぐに想起される一方で、自社ブランドはカテゴリーとの関連が弱く、頭の中の選択肢に入らない場合です。自社商品はそのカテゴリーに含まれているにもかかわらず、買ってもらえる可能性は高まりません。

[問題 3] 商品は使われているが、商品名が知られていない

3つ目のよくあるマーケティングでの解決すべき問題です。商品自体は生活者や企業に使用され、利用者の日常の中で浸透しているものの、ブランド名や商品名が意識されていないケースです。

お客さんは自社商品を繰り返し使っていても、特定の名前で認識していない、いわば 「無名の便利グッズ状態」 になってしまっているわけです。これは日用雑貨品でよく見られる例です。

日常的に使用される洗面所やお風呂まわりにある歯磨き粉、石けん、シャンプーなどは、自分のお気に入りのずっと使っているブランドが常に置いてあるものの、生活者は 「いつも使っている "あれ" 」 としか認識していなく、何のシャンプーを使っているかと聞かれても商品名を答えられない状態です。

商品自体は実用的で評価され、ずっとリピートをしつづけてもらっていますが、何かのきっかけで他の商品に代替されやすいリスクもあります。

3つの課題への対処


では、ここまで見てきた3つのマーケティングの問題点について、それぞれどのように課題として対処するといいのでしょうか?

順番に見ていきましょう。

認知度を上げる

マーケティング 4P に沿って考えていくと、Product である製品自体の強みや独自性を定義するところからです。商品特徴と想定顧客の求めることのかけ合わさったことを強みとして打ち出し、コンセプト、製品名、パッケージなどの細部にも一貫性をもって連動させます。

認知度が低い段階では、顧客接点として期間限定の割引やお得な特典を用意することで、お客さんが 「試してみたい」 と感じるように、自社商品の存在感を高めます。

取り扱い店舗やオンラインでの販売から、生活者が目にする機会を増やすといいでしょう。店頭や EC につながるように、マーケティングコミュニケーションでは広告キャンペーンを展開し、テレビ、SNS や YouTube などのメディアを活用して生活者に自社商品を知ってもらうことを目指します。また、ターゲット顧客がいるコミュニティやイベントへの協賛も効果的です。

カテゴリー文脈で自社商品を想起してもらう

製品のパッケージやネーミングにカテゴリーと関連するキーワードを盛り込みます。たとえば、パッケージの中に文字やイラストで強調し、カテゴリーに属する商品であることがパッと見てわかりやすくします。製品名にカテゴリーを想起させる言葉を入れるのも手です。

自社製品がそのカテゴリー内の代表的な商品として取り扱われている場所、たとえば専門店や Web サイトでの取り扱いを増やすことで、お客さんがカテゴリー製品を購入する際に自社商品を目にする機会を増やします。

コミュニケーションではカテゴリーの想起を促すための広告を展開します。

カテゴリー名と自社商品の関連性を繰り返し訴求すると効果的です。たとえば 「健康食品 (カテゴリー) と言えば、○○ (自社商品) 」 というイメージを持たせるような訴求から、生活者の意識にカテゴリーと商品をリンクさせるコミュニケーションです。他には、業界内での専門家の推薦を受けることによって、カテゴリー内での信頼性を高めるというアプローチもあります。

いつも使っている "あれ" からの脱却

商品自体の認知度を高めるために、使用中や使用後に明確に商品名を生活者に意識させる工夫が必要です。たとえばパッケージの色やイメージは変えずに、目立つよう商品名を入れたりするというふうにです。

商品が使われている場面で、商品名やブランドロゴがしっかりと目立つようにする必要があります。店舗では商品名を大きく表示したポップを設置したり、EC サイトでは画像に商品名を大きく見せるなどです。

商品名を強く認識してもらうために、プロモーションでは商品名を一貫して繰り返し訴求します。CM やオンライン広告で商品の使用シーンを紹介し、お客さんから自分が使っている商品の使い方と同じであるから親近感を持ってもらい、その際に商品名を自然に繰り返し目にしたり耳にすることで記憶に残す工夫を入れます。

また、キャンペーンを通じて商品名が生活者の口に出されるような企画 (例: SNS で商品名をハッシュタグにして投稿するキャンペーン) を展開することも効果的です。

* * *

いずれの課題にも 「魔法のランプ」 や 「魔法の杖」 のような万能な解決策はありませんが、大事なのは正しい現状認識と、問題への原因を明らかにしての課題への対処です。そして、行った施策は本当に問題解決に効果があったかの評価検証も重要です。

まとめ


今回は、マーケティングでよくある課題を取り上げました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • マーケティングでは、① 認知度の低さ、② カテゴリーと自社商品の結びつきの弱さ、③ 商品が使われているが商品名を覚えてもらえていないという典型的な解決すべき問題がある

  • こうした問題解決への課題に対し、商品特徴を強みに打ち出す一貫性のあるブランディング、「○○ (カテゴリー) と言えば自社商品」 と連想させる製品デザインやコミュニケーション、利用シーンでの商品名の強調などの施策が有効

  • マーケティング活動では、正確な現状認識と原因分析、課題設定、そして効果的な対策の実施に取り組む。また、施策の効果を検証し、PDCA をまわしながら継続的な改善と成長を目指す


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。