投稿日 2025/02/23

お客さんの "表" と "裏" の心理を見抜くマーケティング術 ~ 建前ニーズと本音ニーズの活用法 ~

#マーケティング #顧客理解 #建前ニーズと本音ニーズ

お客さんが口にする 「建前」 の裏に隠れた 「本音」 こそ重要です。

では、お客さんの本音をどうやって探り出せばいいのでしょうか?そして、どう活かせば商品やサービスの価値を最大限に引き出せるのでしょうか?

今回は、「建前ニーズ」 と 「本音ニーズ」 の違いに迫り、効果的なマーケティングをどうすればできるのかを紐解きます。

建前と本音


マーケティング活動で本当にお客さんに響くメッセージを届けるには、表面的なニーズを捉えるだけでは十分とは言えません。

2つの裏表のニーズ

ここで役立つのが 「建前ニーズ」 と 「本音ニーズ」 という考え方です。2つを的確に捉え活用することによって、お客さんの心理の奥にある 「本音」 を掘り起こし、より効果的な施策を打ち出せる可能性が広がります。

特に、お客さんの隠れた欲求に気づき、応えることでお客さんと長期的な信頼関係を築くことができます。

建前ニーズと本音ニーズ

 「建前ニーズ」 とは、お客さんが表向きに口にする建前となるニーズです。

一方、「本音ニーズ」 は建前の裏にある本音の欲求や感情です。人は社会的な評価を気にする傾向があるため、表向きの要望と内に秘めた願望が異なることは少なくありません。例えば、「家を清潔に保ちたい」 という建前の裏には 「他人に良い印象を持たれたい」 という本音が隠れていることでしょう。

マーケティングでお客さんの建前と本音の両方を読み取ることができれば、お客さんの真の欲求に応えるメッセージや体験をもたらすことができます。商品やサービスの価値を最大限に引き出せ、お客さんから 「これが自分に必要だ」 と感じてもらえるものになるのです。

具体的な事例への当てはめ


ではいくつかの具体例に当てはめて、建前ニーズと本音ニーズを見比べていきましょう。

[ケース 1] 健康食品

健康食品を購入するお客さんのニーズを見てみます。

建前ニーズとしては 「健康を維持したい」 や 「体調管理をしっかりやりたい」 という表向きの理由が聞こえてくるでしょう。

その裏に隠れている本音ニーズは 「見た目を若々しく保ちたい」 とか 「他人から健康的に見られたい」 といった本音かもしれません。「健康でいるために」 だけではなく、「健康的に見られたい」 「自信を持ちたい」 という他人の目を意識しての隠れた本音ニーズあるわけです。

この場合、マーケティングコミュニケーションも 「毎日の健康維持に役立つ」 だけにとどまらず、「若々しさと自信をサポートする」 「自分らしさをキープする」 というメッセージを加えるといいでしょう。よりお客さんの本音に訴えることができます。

本音ニーズを捉えることで、健康食品がもつ 「機能性」 の面を強調するだけでなく、感情的な訴求力も加わります。

さらに、具体的な体験談、例えば、実際にこの健康食品を使用して改善したユーザーの声や、健康的な生活を楽しんでいるシーン (例: 家族と笑顔で過ごすシーンや, 運動を楽しんでいる様子) を視覚的に訴えることにより、ターゲット層の心に響くアプローチを取ることができます。

[ケース 2] 消臭剤

次に、消臭剤の例を見てみましょう。

人は 「家を清潔に保ちたい」 「嫌な臭いをなくしたい」 という建前ニーズを持っています。しかしその裏には 「手間をかけずにキレイに見せたい」 や 「自分の匂いを消臭剤で家族に気づかれないようにしたい」 、「他人が来ても恥ずかしくない環境を保ちたい」 という本音ニーズが隠れています。

室内空間から臭いを消すことに加え、 「いつでも訪問者を迎えられる状態を保ちたい」 という安心感が重要な要素となります。

よってマーケティングコミュニケーションでは、たとえば消臭剤の広告に 「瞬時に空間をリフレッシュ」 「使うだけでお部屋が清潔に」 といったメッセージとともに、本音ニーズに応える 「手間をかけずに室内空間を清潔できる」 という印象を与えるといいでしょう。

 「家族に体臭を気づかれないようにできる」 や 「他人に家の匂いに気づかれない安心感」 という、より感情的な価値も生み出せます。消臭剤の 「使いやすさ」 や 「手軽さ」 だけにとどまらず、匂いを隠して自分が恥ずかしい思いをしたくないという消費者の本音ニーズに訴えることができます。

また、実際に使っている場面、例えば急な来客時にもあわてずに済み、快適な家で迎えているシーンを描くことで、消費者が消臭剤の効果や得られる安心感を想像できるようにすることも効果的です。

[ケース 3] サブスクサービス

エンタメ系のサブスクリプションサービスを利用するユーザーは、 「さまざまなコンテンツを楽しみたい」 という建前ニーズを持っています。

その一方で、実際には 「流行についていきたい」 「話題に遅れたくない」 という本音ニーズがあり、これは他人との社会的なつながりや承認欲求と結びついている本音です。人は他者との会話や人間関係において、「遅れを取りたくない」 という気持ちが背後にあるわけです。

この場合、「最新コンテンツをいち早くチェック」 や 「トレンドを知りたいあなたにおすすめ」 といった訴求をすることによって、より本音に沿ったサブスクの顧客価値を伝えることができます。お客さんに 「これさえあれば安心」 と思ってもらうことで、サービスの利用価値に気づいてもらえます。

また、限定コンテンツの提供、例えば、期間限定の特別コンテンツや、特定の条件を満たした会員のみが体験ができるという特典をつけることにより、ユーザーに特別感を感じてもらえます。

ユーザーは自分だけが得られる特別な価値を感じ、サービスやブランドに対する愛着をより深まることが期待できます。

建前ニーズと本音ニーズを活用したマーケティングのポイント


マーケティングにおいては、お客さんが表向きに語るニーズだけでなく、本音のニーズや欲求にも応えることが大切です。

お客さんの 「建前ニーズ」 と 「本音ニーズ」 の2つを意識することで、表面的なニーズを超えて、お客さんの心の中にある 「本当に欲しいもの」 に応えることにつながります。

建前ニーズと本音ニーズを見極めるためには、顧客インタビューなどの定性調査によって、お客さんの言動の裏にある欲求や価値観を掘り下げるアプローチが欠かせません。また、本音ニーズに訴求するメッセージを打ち出す際には、お客さんのことを尊重し、共感的な姿勢をとることも重要です。

マーケティングでの建前ニーズと本音ニーズの活用は、深いレベルでお客さんに響くメッセージをつくり上げるための有効な方法です。

お客さんが感じている課題や悩みに寄り添い、その解決策を一緒に見つけていくようなスタンスが、お客さんとのより強い信頼関係を築くカギを握ります。

感情に訴えるマーケティングを展開することで、ブランドの存在価値を高め、顧客との長期的な関係を強化することができるのです。

まとめ


今回は、建前ニーズと本音ニーズという考え方を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • マーケティングではお客さんの 「建前ニーズ」 と 「本音ニーズ」 を理解することが重要。建前ニーズは表向きに語られる望み、本音ニーズはその裏にある本当の欲求

  • お客さんの本音ニーズにまで応えることによって、商品やサービスの価値を最大限に引き出せる。たとえば 「健康を維持したい」 という建前の裏には 「若々しく見られたい」 という本音があるように、隠れた欲求を読み取り、共感するメッセージを伝えると効果的

  • お客さんの隠れた欲求 (本音ニーズ) を理解するためには、顧客インタビューなどの定性調査を実施する。お客さんが感じている課題や悩みに寄り添い、その解決策を一緒に見つけていく姿勢が大事


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。