#マーケティング #ブランディング #顧客価値
自社の商品やサービスは、お客さんの心にどれだけ強く残っているでしょうか?
どんなにすばらしい商品・サービスをつくっても、お客さんに覚えてもらったり、思い出されなければ、お客さんから選ばれることは難しいのです。
今回のテーマは 「ブランディング」 ですが、ブランディングはロゴやデザインをただかっこよくするだけでは十分とは言えません。では、どうすればブランディングを成功させることができるのでしょうか?
ブランディングの本質に迫り、ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
ブランドとブランディング
まずはブランドとブランディングについて整理してみましょう。
ブランドとは
ブランドとは、お客さんからの 「好ましい感情」 が伴った商品やサービス、あるいは企業です。好ましいというポジティブな感情とは例えば、好き、満足、共感、誇り、憧れ、応援したい気持ちです。
こうした感情移入が深い商品ほど、強いブランドということになります。
では、商品へのポジティブな感情移入はどのように起こるのでしょうか?
感情移入はユーザー体験からです。お客さんが商品やサービスを認知し、購入するプロセス、利用時において具体的なユーザー体験から直接的に感情が形成されます。
商品やサービスへの感情移入に加えて、提供者への信頼や共感からも好ましい感情は生まれます。
商品やサービスと違って提供者自体を使うことはありませんが、企業が示すビジョンやミッション、発信するメッセージ、振る舞いなどから感情が沸き起こります。商品やサービスを使い、提供者への信頼感が増す時にもポジティブな感情は生まれるでしょう。
ブランディングとは
ブランディングとは、お客さんが商品・サービスに好ましい感情移入を起こしてもらうための働きかけです。
もう少し詳しく表現をすると、ブランディングが目指すのは、商品・サービスのことを知ってもらい、忘れないよう記憶にとどめてもらって、必要なタイミングで思い出してもらうことです。
そのために大事なのは、お客さんが商品に見出した価値や顧客体験を、関連する 「要素」 に紐づけることです。ここで言う関連要素とは、商品やブランド名、ロゴ、デザイン、色や形、メッセージ、他には、音や香りなどのその商品特有のものです。
これらがひとつでも多く商品と結びつき、記憶として残れば、商品への忘却を防ぎ、買い物のタイミングで想起され、はじめての初回購入や、リピートとなる継続購入へとつながることが期待できます。
ブランド連想
ここまで見てきたように、ブランドとは好ましい感情が伴った商品ということですが、これを別の言い方をすればブランドとは 「良いユーザー体験の総体」 と捉えられます。
人の記憶の仕組みは連想にあります。ブランドの理論にも連想が重要視されており、「ブランド連想 (Brand Associations) 」 と呼びます。
2つの方向性
ブランド連想は、人の記憶ネットワークの中にできるブランドにひもづく認識、印象、解釈、体験したことの連想イメージのことです。
ブランド連想が強化されていくことで、独自ブランド資産が人の頭の中にできあがっていきます。ブランディングに一貫性があればブランド連想は強化され、お客さんはブランドを容易に思い出すことができます。
ブランド連想には2つの方向性があります。
- 文脈からブランドへの連想 (文脈 → ブランド)
- ブランドから文脈の連想 (ブランド → 文脈)
前者の 「文脈 → ブランド」 は、あるシチュエーションという特定の顧客文脈でブランドが想起されることです。シチュエーションがあり、ブランドが連想され、欲しいと思うという流れです。
もうひとつの連想のされ方である 「ブランド → 文脈」 は、ブランドのロゴや広告を見たときに利用シーンやシチュエーションなどの文脈が思い出されることです。ブランドを見たり聞くことによって、シチュエーションが思い浮かび、そのシーンになりたいという気持ちを生み出します。
スタバのブランド連想
ブランド連想のイメージを深めるために、スターバックスを例に当てはめてみましょう。
文脈からブランドへの連想 (文脈 → ブランド) では、たとえば、コーヒーを飲みたいと思ったり、快適な場所でリラックスしたい、あるいは平日の外出中に集中して仕事をしたいと思った時に、自然とスターバックスが思い浮かぶというものです。
文脈からスターバックスを思いつき、スタバのロゴや緑色のイメージ、店舗の雰囲気、過去に経験したスタバでの体験などのスタバというブランドのことが次々に記憶から呼び起こされていきます。
もうひとつのブランド連想の方向性は、ブランドから文脈の連想 (ブランド → 文脈) でした。
スターバックスの緑色のロゴを見るだけで、高品質なコーヒー、落ち着いた店内の雰囲気、親しみのあるスタッフ、ゆっくりと時間をすごせる体験を連想していくというものです。
顧客価値と結びついていることが大事
ロゴやデザインがお客さんの印象に残ることはブランディングにおいて重要ですが、商品を使うことによってお客さんへの価値が生み出されなければ、購入や継続的な利用にはつながりません。
ロゴをかっこよくすればいい?
おしゃれなロゴや格好いいデザイン、ユニークなおもしろい商品名で印象に強く残るというだけで、その商品を買うでしょうか?
まわりで話題になっていたり、自分にとって良さそうだったら、とりあえずは一回は買うことはあるかもしれません。しかし、使ってみて期待通りでなければ、2度目の購入はないでしょう。ロゴなどの飾りを良くするだけでは、十分ではないのです。
よく、ロゴを変えたい、見た目のパッケージデザインを良くしたい、名前も変えたいという話がビジネスの現場では挙がりますが、それだけでは継続的な売上にはなりません。
お客さんが自分にとっての価値を商品に見出さない限り、どんなに良いロゴやネーミング、デザインであっても事業成長には貢献しないのです。
中心に 「顧客価値」 があること
大事なのは、商品を使ったり保有することからたらされる、「お客さんにとっての価値」 があることです。
先ほど整理したブランドがつくられるプロセスからわかるように、ブランドのらしさ、商品への好ましい感情移入はユーザー体験からです。お客さんが商品やサービスを認知するとき、検討し購入するプロセス、利用時において具体的なユーザー体験から価値を実感し、その結果としてお客さんの頭の中でブランドになるのです。
中心にはお客さんがいて、次にお客さんが商品・サービスに見出す 「顧客価値」 がきます。これは 5W1H で言えば Who (顧客) と What (顧客価値) です。
顧客と顧客価値のまわりに、さまざまなロゴやデザインを見て感じた五感での体験、使ってみてのユーザー体験が点在しているイメージです。こうしたネットーワークがお客さんの記憶の中につくられることで関連要素が結びつき、ブランド連想が起こりやすくなります。そして結果として、お客さんの頭の中にブランドとしてできあがるわけです。
ブランディングは手段
ブランディングで目指すのは、お客さんに自社商品のことを覚えてもらい、忘れないよう記憶に刻まれ、初回購入や継続購入を促すことです。そのためには、ロゴなどの装飾からただ印象を強めるだけでなく、商品の便益、買ったり使うことでの顧客価値をお客さんにしっかりと感じてもらうことが大切です。
この意味において、ブランディングそのものは目的ではなく、ビジネスでの手段です。
まとめ
今回はブランディングについてでした。
最後にポイントをまとめておきます。
- 商品やサービスがお客さんにとって価値のあるものでなければ、ロゴやデザインがどんなにかっこよく印象的でもブランディングの観点では意味がない
- お客さんは商品を使うことで実際に感じた体験から価値を見出し、商品と顧客価値が良い記憶として結びつくことでブランドがお客さんの頭の中でできる
✓ 一貫性のある体験
- ブランドが提供するユーザー体験と顧客価値には一貫性があることが大事
- 商品、サービス、企業のビジョン、発信メッセージがすべて統一されることによって、ブランドの 「らしさ」 がつくられ、ブランドへの愛着や信頼が高まる
✓ 強い連想の形成
- ブランドと関連する要素 (ロゴ, デザイン, メッセージなど) がお客さんの記憶に強く残ることにより、お客さんが商品を必要とする顧客文脈において、商品を思い出してもらえたり (想起) やブランド連想が促進される
- 「文脈 → ブランド」 と 「ブランド → 文脈」 の両方向でブランド連想を形成することが重要
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