#マーケティング #顧客インサイト #顧客価値
ビジネスの世界で成功を収めるには、お客さんのことを深く理解することが重要です。特に、今回のテーマである 「顧客インサイト」 をいかに見つけられるかが成功のカギを握ります。
そこで今回は、顧客インサイトを発掘するための具体的なポイントをご紹介します。
お客さんとの向き合い方、着目する視点など、すぐに実践できるテクニックです。お客さんの本音を紐解き、心をつかむマーケティングへーー。ぜひ一緒に学びを深めていきましょう。
顧客インサイト
マーケティングは、お客さんに価値をもたらすための活動全般です。
価値とは商品やサービスからお客さんにもたらされるものです。よって、実際にお客さんにとって何が価値になるかを、お客さんを理解することを通して向き合うことになります。
奥にある価値観に直結する心理
理想は、相手であるお客さん自身すらも気づいていなかったり、言葉にして他人に説明できないような奥にある本当の価値を見出すことです。掘り起こしていき、本質的な価値を発掘するというイメージです。
このような人の心理の潜在的な領域にあり、マーケティングにおいて捉えたい価値観に直結する深層心理を 「顧客インサイト」 と言います。
顧客インサイトとは、人を動かす隠れた気持ちです。普段はお客さんも認識していないものの、そうだと気づかされれば、気持ちが変わる態度変容につながり、さらには詳しく調べたり、お店に行く、買うなどの行動変容のトリガーになる "心のスイッチボタン" が顧客インサイトです。
マーケターが自ら発掘するもの
顧客インサイトについて大事な認識は、インサイトはお客さんが直接教えてくれることはないということです。
というのも、顧客インサイトはお客さんは言葉にできなかったり、自覚していても本音を他人には言いたくない、あるいはそもそも気づいていない深層心理だからです。
ではどうするかと言えば、顧客インサイトをマーケターは自ら発掘するしかありません。少なくともお客さんから直接的に教えてもらえることは期待してはいけないのです。
インサイトからの価値提案
そして、見出した顧客インサイトに響くような商品の魅力を価値として提案します。ここにマーケティングを成功させるカギがあります。
顧客インサイトにもとづいた価値提案によって、お客さんの心のスイッチボタンが刺激されれば、お客さんは 「なんで私のほしいものがわかるの!?」 や 「そうそう、こんな商品がほしかった!」 という気持ちになるわけです。
顧客インサイトを発掘するポイント
では、顧客インサイトを発掘するためにはどうすればいいのでしょうか?
もちろんそう簡単ではなく、魔法の杖のようなものは存在しないという前提で、顧客インサイトを見出すためのポイントをいくつか見ていきましょう。
お客さんに深く向き合う
言葉にすると当たり前のように聞こえるかもしれませんが、顧客インサイト発掘の基本は 「お客さんとしっかり向き合うこと」 です。
お客さんが気づいていない本当の価値や真のニーズを見つけ出すためには、お客さんの声を丹念に聞き、行動や態度の変化を観察することが重要です。日常の身近な出来事、自分自身や身近な人の体験・経験の中にも、価値を知るヒントが隠されていたりします。
思い込みにとらわれず、実在のお客さんを観察する
マーケティング理論や思い込みにのみにもとづく "インサイト" ではなく、実際にお客さんがどう感じ、どう行動しているのかをリアルに接することが大切です。
お客さんを深く理解する方法のひとつに、1対1でのインタビュー調査があります。デプスインタビューと呼ばれ、最近では n1 インタビューと言われたりします。他には、自宅や職場に訪問しての観察調査、さらに深く入り込む場合はお客さんと同じことを一緒に体験するようなアプローチもあります。
n1 が有効なのは、ひとりの実在するお客さんの具体的なストーリーを伺い知れることです。
実在のお客さん (n1) が態度変容を起こす瞬間、行動をする瞬間など、顧客インサイトが表に出てきて心理や行動に影響を与える瞬間を捉えます。インタビューでは直接インサイトを言葉で説明してもらえるケースはほとんどありませんが、n1 からの話を詳しく聞くことでマーケターは相手の心の動きや変化を予想する手がかりが得られます。
インタビューや観察調査などは、抽象的な机上の話ではなく、具体的なひとりのお客さんの行動や感情にもとづいているため、リアリティがあります。
ジレンマや矛盾に注目してみる
人間は合理的な一面もあれば、他人からすると全く合理的には見えない側面を持ち合わせています。
お客さんの言っていることや行動に一貫性がなかったり、ときには矛盾するような言動には、お客さんの隠れた心理や本音が垣間見えることがあります。
ジレンマとも言えるようなこと、たとえば、
- 健康的な食生活を重視すると常日頃は言っているのに、普段の節制がうそのようにときどき暴飲暴食をしてしまう
- ビールなどのアルコール飲料は飲まないと言うが、そうかといってノンアルコール飲料には不満があると言う
- SNS でつながりたい気持ちがある一方で、SNS でのやりとりや情報に気疲れする
などです。
こういった相反する心理はどちらも、その人にとっては真実であり、「矛盾の交差点」 に顧客インサイトのヒントが隠れています。
極端な人がやっていること
ごく一部の尖った人の変な使い方から、顧客インサイトへのヒントを得るという方法もあります。
マーケティングの用語でエクストリームユーザーという表現があり、「極端な人」 です。彼ら・彼女らは、身近に自分にぴったりの商品がなかったりすると、自分たちで工夫して独自の使い方をしていることがあります。エクストリームユーザーは売り手が考えもつかなかった商品の使い方を自ら作り出しているわけです。
表面的にはエクストリームユーザーのやっていることは、むしろ大多数の人には合わないものです。しかし、そうした行動や方法をとっている人のこだわりを掘り下げると、商品・サービスへの価値を独自の視点で捉えていることが見えてきます。
そこからマーケターが解釈を膨らませつつ、エクストリームユーザーの用途や使い方の本質を理解し、普通のお客さんへの価値実現のヒントを得ることを目指します。エクストリームユーザーへの理解をうまく取り入れることで、新しい商品開発やマーケティングに活かせます。
反対意見からも学ぶ
ジレンマや矛盾に近いものとして、反対意見や極端な声にも耳を傾けてみると、インサイトが見出せるかもしれません。
商品やカテゴリーについて、「大嫌いだ」 という強い否定的意見も、見逃しているインサイトが眠っていたりします。当たり障りのない中立的な意見よりも、強い反発や嫌悪感を示す意見のほうが商品やサービスの本質的な課題や潜在的なニーズへの手がかりとなることもあるでしょう。
どんな人気の商品・サービスにも一定数のアンチ的なスタンスをとる人はいます。無関心ではなく、アンチ的な言動の奥には、まだ売り手や作り手も知らなかった新たな価値創造につながる視点が埋もれているかもしれません。
価値が生まれる瞬間を捉える
お客さんが実際に価値を感じる瞬間を捉えることで、顧客価値がよりリアルに腑に落ちる感覚が得られます。
たとえば、態度変容の瞬間です。商品に無関心だった人が 「買ってみたい」 と心理が変わるときに注目します。
そして大事なのは、その瞬間を見逃さないことだけではなく、その心理や行動の変化のトリガーや要因を深く掘り下げることです。このプロセスは、まだ言葉にはできないホットな感覚をお客さんと一緒にインサイトを掘り当てるようなイメージです。
価値が発生する瞬間を捉えられれば、その価値を別のお客さんに伝える手がかりが見えてきます。
普遍性と仮説の検証
n1 では、ひとりのストーリーから入っていくわけですが、インサイトだと思った発見は他の人にも当てはまるか、どれだけ普遍性があるかを検証することも重要です。
n1 のアプローチを否定するわけではありませんが、具体的なひとりのお客さんを起点にする場合、見出したインサイトや顧客価値がどれほど広く適用できるかを考えることが大切です。これは、顧客インサイトからマーケティングの戦略や施策に転換するときのポイントになります。
Who, What, How を整理する
ここまで顧客インサイトの発掘のための着眼点を見てきましたが、結局のところ顧客インサイトは 「道具」 にすぎません。
インサイトを見出すことはゴールではなく、マーケティング活動、もっと言えばビジネスを成長させるためのプロセスだからです。重要なのは、見出したインサイトや顧客理解を次につなげることです。
そこでやることは、個人のストーリーやインサイトをもとに、誰に、どんな価値を、どのように届けるかという、いわゆる Who, What, How で整理します。インサイトはお客さんの心理で、顧客価値をもたらすための起点になり、価値をどう伝え、どのように実現するかの材料です。
顧客インサイトはあくまでツールなわけですが、マーケティングを成功に導く強力な存在です。道具は使いようで、活用できて成果に結びつけてこそです。
まとめ
今回は、マーケティングの重要な概念である 「顧客インサイト」 についてでした。
最後にポイントをまとめておきます。
- 顧客インサイトは 「人を動かす隠れた気持ち」 。普段はお客さんも認識していないが、そうだと気づかされれば態度変容につながり、さらには行動変容のトリガーになる心のスイッチボタン
- 顧客インサイト発掘の基本は、お客さんと深く向き合うこと。n1 インタビューや観察調査によって、お客さんの具体的なストーリーや心理変容・行動変容の瞬間を捉える
- また、お客さんのジレンマや矛盾、エクストリームユーザーや反対意見から学べる。合理的でない行動、極端な考え方や方法の背後には、お客さんの本音や深層心理がある。掘り下げることで新たな価値を見出すことができる
- 顧客インサイトからの顧客理解をもとに Who (顧客) , What (顧客価値) , How (価値実現) を整理し、戦略や施策に転換する
- 見出した顧客インサイトに響くような商品の魅力を価値として提案する。顧客インサイトにもとづいた価値提案によって、お客さんの心のスイッチボタンが刺激されれば、お客さんは 「なんで私のほしいものがわかるの!?」 や 「そうそう、こんな商品がほしかった!」 という気持ちになる
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