#マーケティング #顧客インタビュー #顧客理解
効果的な顧客インタビューは、新しい商品開発や既存商品の改善、そしてマーケティング活動において重要な要素です。
インタビューを通してお客さんの本当のニーズや課題を理解することで、ビジネスの成長につながる貴重な洞察を得ることができます。今回は、顧客インタビューを成功に導くためのポイントを解説します。
顧客インタビューへの姿勢と訊き方
マーケティングリサーチにおける顧客インタビューは、お客さんを深く理解することによって、有益な洞察を引き出すための方法です。
しかし、相手から本音を引き出し、商品を買った理由や買わなかった理由などの行動の背景までお客さんを理解することは簡単ではありません。
そこで今回は、顧客インタビューにおける目指したい姿勢と訊き方をご紹介します。顧客インタビューを成功に導くための6つのポイントを、具体例を交えながら解説していきます。
- まずは傾聴に徹し、話しやすい雰囲気をつくる
- 相手の意見を訊く前に、お客さんの置かれた状況、実際にやった行動や起こった事象を聴く。その後に感情などの行動や事象に関連する心理を掘り下げる
- うまくいっていない事象を訊く
- 成果が出なかった原因を相手に考えてもらう
- 理想とする結果や成果を教えてもらう
- こちらからは解決策を示さず、自分の意見や解釈を伝えるのは最小限とする
では順番に見ていきましょう。
まずは傾聴に徹する
顧客インタビューで大切なのは 「聞き役に徹すること」 です。
インタビュアーは自分が話すよりも相手の話を聴くことに重点を置きます。相手の言葉を途中で遮ることなく、じっくりと耳を傾けることによって、お客さんの本音を引き出せる雰囲気をつくります。
インタビューを始めるとき、インタビュアーはつい質問を急ぎがちですが、最初は相手が話しやすいようにし、話に集中することが大事です。インタビューの冒頭で 「今日は何でも話してくださいね」 などと伝え、相手が自由に話せる環境を整えましょう。
例えば、新しい製品についてのフィードバックを求める場合、「製品を使ってみてどうでしたか?」 といきなり質問するのではなく、「どのようなシチュエーションで使いましたか?」 と、相手が具体的な状況や行動・体験を語りやすくするよう心がけると、リラックスして話してもらえます。
質問した後は、相手の回答を最後まで聞き切るようにします。沈黙が訪れてもあわてず、相手が考えをまとめる時間をとるといいでしょう。この沈黙の後に、予想外の貴重な話を聞けることもあります。
行動や事象を確認し、次に心理を掘り下げる
相手の意見や感想を尋ねる前に、まず置かれた状況、その状況で実際に行った行動、起こった事象について質問するのがポイントです。お客さんの体験を具体的に理解することができます。
具体的な行動や事実を入口に掘り下げることで、その後の顧客理解がより精度の高いものになります。
例えば、「最近、商品 Z を購入されたと伺いましたが、どのような場面でその商品を初めて知りましたか?」 や 「初めて手に取ったときはどんな状況でしたか?」 と尋ね、次に 「その時、何か感じたことや考えたことはありましたか?」 であったり、「購入を決める際に迷いはありましたか?」 などと、行動に関連する心理を聞き出します。
お客さんの行動とその背後にある感情の関連性を明らかにすることができれば、その状況で生じたニーズや欲求に対する理解が深まり、より深い洞察を得られます。
うまくいっていない事象を訊く
顧客インタビューでは、うまくいったことだけでなく、失敗や期待外れに終わった経験にも触れてもらうといいです。
お客さんのネガティブな経験にこそ、お客さんが感じる本当の課題や不満が隠されています。自社商品やサービスの弱みを紐解き、改善の糸口を見つけることができます。
例えば、「実は使いづらいと感じたことはありますか?」 や、「期待にそぐわなかった点があれば教えてください」 といった質問をすると、具体的な不満や改善の余地をうかがい知れます。あえて一歩踏み込み 「ぶっちゃけ、この商品、使いにくくないですか?」 と切り込むのも手です。
ネガティブな体験がお客さんの口から出てきたら、「その時どう感じましたか?」 と心理を掘り下げていきます。
成功した体験だけでなく、お客さんの失敗からの経験から得られる洞察も、商品やサービスの向上、マーケティング活動に役立ちます。
成果が出なかった原因を相手に考えてもらう
成果が出なかった原因を問いかけることで、相手に自分自身で考えてもらうことも有効です。
例えば、語学学習アプリについてインタビューでは、「目標の語学レベルに達成できなかった要因は何だと思いますか?」 と尋ねます。ユーザーからの 「毎日の学習時間を確保できなかった」 という回答に対して、さらに 「どのような要因で時間確保が難しかったのでしょうか?」 と掘り下げます。
このように、なぜその時うまくいかなかったと思うかを訊くことで、お客さん自身が問題の要因を整理することを促します。お客さんが 「なぜ思い通りにいかなかったのか?」 と考え、課題を自分の言葉で語ってもらうことによって、表面的な意見ではなく、一段深い洞察になります。問題の根本原因や、改善のヒントを顧客視点で得ることができます。
理想とする結果や成果を教えてもらう
顧客インタビューでは、相手が求める理想的な結果や成果も尋ねてみましょう。
お客さんがどのような価値や体験を求めているかが浮き彫りになります。「こうなったらいいな」 という願望を具体的に掘り下げていくことで、お客さんの潜在的なニーズが見えてきます。
相手が目指している理想状態を把握することで、お客さんの価値観や期待レベルをとらえられます。
例えば、フィットネスアプリについてインタビューする場合、「このアプリを使って、どのような成果を期待されていますか?」 と質問します。相手から 「3ヶ月で5キロやせたい」 という具体的な目標が挙がれば、さらに 「なぜ5キロなのですか?」 や 「3ヶ月という期間はどのように決めましたか?」 と掘り下げていきます。
プロダクトの改善を意識するなら 「もし理想的な形で機能するなら、どのような結果を期待しますか?」 と訊くことにより、お客さんの本音を知る手がかりが得られます。理想の姿がわかると、サービスや商品の改善方針がより明確になります。
解決策の提示は控え、自分の意見や解釈を伝えるのは最小限にする
インタビューの場では、こちらから解決策を示すことはなるべく避けるようにします。
インタビュアーが解決策をインタビュー中に思いついたとしても、その場では提示せず、お客さんがインタビューの中で自ら課題や問題解決のヒントについて、お客さんの言葉で語ってもらうことに価値があります。インタビュアー側から安易に解決策を伝えてしまうと、お客さんの思考や話の内容がその方向に話が誘導される恐れがあります。意図せぬバイアスが発生してしまうわけです。
もしユーザーが 「アプリの操作が複雑で使いにくい」 と言ったなら、こちらから 「では、このボタンをここに配置すれば良いのでは?」 といった具体的な提案は控えます。その代わりに 「使いにくいと感じる理由はどこにあるんでしょう?」 とさらに詳しく訊くことで、真の問題点を明らかにしていくというふうにです。
インタビュー相手であるお客さんが、問題や課題を言ってくれた際には 「なるほど、そうした問題があるんですね」 と共感を示すだけでまずは十分です。こちらから意見を出さず、相手の言葉を尊重することによって、お客さんの立場になったインサイト (洞察) を抽出できるでしょう。
以上の6つのポイントをひとつでも意識して実践することで、顧客インタビューはお客さんの本音や心理を深く探る有意義な対話になります。
まとめ
今回は顧客インタビューについて、うまくインタビューをできるポイントを順に見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- まずは傾聴に徹し、話しやすい雰囲気をつくる
- 相手の意見を訊く前に、お客さんの置かれた状況、実際にやった行動や起こった事象を聴く。その後に感情などの行動や事象に関連する心理を掘り下げる
- うまくいっていない事象を訊く
- 成果が出なかった原因を相手に考えてもらう
- 理想とする結果や成果を教えてもらう
- こちらからは解決策を提示せず、自分の意見や解釈を伝えるのは最小限とする
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