#プロジェクトマネジメント #意思決定 #本
大きなプロジェクトの成功と失敗の分岐点は、一体どこにあるのでしょうか?
今回は、ビッグプロジェクトを成功に導く3つの秘訣を、書籍 「BIG THINGS - どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか? (ベント・フリウビヤ, ダン・ガードナー, 櫻井祐子) 」 から紐解きます。
そして、Amazon が実践する意思決定の方法をかけ合わせ、プロジェクトマネジメントについて考察します。
ぜひ一緒に学んでいきましょう。
どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?
書籍 「BIG THINGS - どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?」 は、著者のベント・フリウビヤとダン・ガードナーによる、ビッグプロジェクトの成功と失敗の法則を探る一冊です。
世界中の1万6000件以上のプロジェクトを調査した結果、成功率がわずか 0.5% であるという事実は、ビジネスやプロジェクトマネジメントに関心のある読者にとって興味深いデータです。
この本では、成功するプロジェクトと失敗するプロジェクトに見られる決定的な違いが3つ挙げられています。大規模なプロジェクトを成功に導くためには、次の3つがポイントになります。
- ゆっくり考え、すばやく動く
- すでにあるアイデアを活用する
- ベテランや経験者を仲間にする
それぞれのポイントは、プロジェクトの実施やビジネス戦略に役立つ重要な視点を提供しています。
ゆっくり考え、すばやく動く
成功するプロジェクトは、計画を重視します。
決して行動を急がず、しっかりと計画をつくり、リスクや可能性を事前に把握した上で進める傾向があります。それに対し、失敗するプロジェクトは計画をおろそかにし、考える前にすぐ行動に移してしまうことが多いとのことです。
例えば、本書で紹介されていた例のひとつが、シドニー・オペラハウスの建設プロジェクトです。このプロジェクトは、計画の不備により予算オーバーや工期延長といった大きな失敗に陥いりました。
一方、近現代美術専門の美術館であるグッケンハイム・ビルバオは、予算内かつ工期内に完成しました。詳細な計画とデジタルシミュレーションを駆使し、成功を収めたプロジェクトの代表例です。
すでにあるアイデアを活用する
成功するプロジェクトのふたつの特徴は、既存のアイデアや成功事例を活用する点にあります。オリジナリティを求めながらも、先例を参考にして改善を重ねるわけです。
Google の検索サービス、Facebook のソーシャルネットワークサービスは、決して一番最初に市場を開拓したわけではありません。
先行者の事例を学びつつ、自分たちの強みを生かして改善し、成長を遂げました。唯一無二の存在になることに固執せず、既存の知識を適切に活用することがプロジェクトの成功に寄与するのです。
ベテランや経験者を仲間にする
プロジェクト成功のためには、チームにベテランや経験豊富なメンバーを加えることが成功のカギを握ります。
特に規模が大きく複雑なプロジェクトでは、経験者の知識とスキルがプロジェクトの円滑な進行に大きな役割を果たします。逆に失敗するプロジェクトは、経験の浅いメンバーや外部の人間に頼りがちです。
その道のベテランと協力し、その経験を最大限に活用することで、プロジェクトの成功確率を引き上げることができます。
Amazon の二種類の意思決定
書籍 「BIG THINGS」 で紹介されているビッグプロジェクトの成功と失敗の違いを、もう少し広げて考えてみましょう。
さらに掘り下げるために、Amazon の創業者であるジェフ・ベゾスの意思決定の理論と結びつけると、考察を深めることができます。
書籍 「ベゾス・レター - アマゾンに学ぶ14ヵ条の成長原則」 で、ベゾスは意思決定を 「1型」 と 「2型」 に分けるという考え方を提示しています。
1型の意思決定とは?
1型の意思決定とは、重大で後戻りのできない決定のことを指します。
- 重大かつ元には戻せない (または戻しづらい) 。一方通行のドアのようなもの
- ドアは一度通り抜けてしまえば、向こう側の世界が気に入らなかったとしても、もう元の世界に戻ってくることはできない
- 組織全体で慎重に時間をかけて検討と協議を重ねる
ベゾスは 「一方通行のドア」 に例えています。一度通り抜けてしまえば、元に戻ることは難しいということからです。そのため、1型の決定は慎重に時間をかけて検討する必要があります。
2型の意思決定とは?
一方で、2型の意思決定は後から変更や修正が可能な決定です。
- 変更することも元に戻すこともできる。往復可能なドア
- 2型の決定が最善でなければ、その結果をずっと我慢する必要はない。もう一度ドアを開けて元の世界に帰ればいい
- 決断力のある人や少人数のグループがすぐ下すことも可能で、むしろそうすべき
- 組織が大きくなるにつれて、2型なのに重い1型の決定プロセスが適用されていく傾向がある
ベゾスは2型を 「往復可能なドア」 と表現します。一度決めて実行しても、うまく結果が出なければ、再度元に戻ることができるのが2型の意思決定の特徴です。
2型では、決断は早く行い、少人数のチームで対応することが可能です。アマゾンは、組織の大きさに関係なく、迅速な意思決定を行うために、2型の意思決定を活用しています。
Amazon が1型と2型に分ける理由
アマゾンは、なぜ意思決定の対象を二種類に分けているのでしょうか?
注意が必要なのは、一見すると1型だと思える論点の中には、実は2型が多く含まれていることです。
2型であれば少ない人数で早く決断ができるものが、1型だと捉えてしまうと決定に手間と時間がかかります。リスクを避けるようになり、行動に移せなくなります。
今から通ろうとしているドアは、一方通行なのか、それとも両面通行ドアで入っても戻れるのか。この意識を持ち、決める前に判断することによって、意思決定の質とスピードの両方を上げることができます。これが、アマゾンが意思決定を意図的に1型と2型に分けて捉えようとする理由です。
大きい意思決定への示唆
では最後のパートでは、書籍 「BIG THINGS」 と、アマゾンの意思決定の方法をかけ合わせて考察をしてみます。
「BIG THINGS」 と1型の意思決定
BIG THINGS で示された成功するプロジェクトに共通する3つのポイントは、特に1型の意思決定に該当します。
- ゆっくり考え、すばやく動く
- すでにあるアイデアを活用する
- ベテランや経験者を仲間にする
一度決断をし実行に移せば後戻りはできないので、計画を入念に立てる、先行事例やアイデアを参照する、経験を活かすことで、意思決定したことの失敗の可能性を最小限に抑えることができます。
まず、「ゆっくり考え、すばやく動く」 という計画を重視する姿勢は、1型の意思決定のために必要になります。
重大な決断を急いでやって行動に移してしまうと、あとから取り返しがつかない結果を招きます。シドニー・オペラハウスの失敗プロジェクトの例では、計画を軽視して行動に移したため、予算オーバーや工期延長といった致命的な問題に発展しました。
このような一度決定したら戻れない性質を持つプロジェクトは、1型の意思決定に相当します。1型では計画を練り、入念な意思決定が求められます。
また、見たことあるアイデアを活用するというアプローチも、1型の意思決定に取り入れるといいでしょう。
成功するプロジェクトは、先例や成功事例を参考にしてリスクを最小限に抑えています。組織全体が慎重に計画を進める1型の意思決定では、参考情報として過去の知識を活用することで、安定した成功を目指すことが可能です。
3つ目のポイントである 「ベテランや経験者を仲間にする」 も、1型の意思決定に関わってきます。
複雑で重大な意思決定を行う際には、ベテランの経験者とチームを組み、彼ら・彼女らの知識やスキルを活用するといいでしょう。
2型の意思決定での柔軟な対応
アマゾンの 「2型の意思決定」 は、修正が可能であり、より迅速な判断が求められる場面で適用されます。
2型の意思決定に該当するプロジェクトでは、リスクが相対的に低く、失敗しても簡単に方向を変えることができる類のものなので、少人数のチームが素早く決断を下すことが可能です。これは 「BIG THINGS」 で強調されている計画と慎重さを重視するアマゾンの1型とは異なり、状況に応じて早い対応が求められる場面に当てはまります。
ベゾスは、多くの決定が実際には2型の意思決定であるにもかかわらず、それを1型と捉えてしまうことで、決断が遅くなるリスクを指摘しました。もしすべての意思決定を1型のように扱ってしまうと、組織全体が慎重になりすぎ、行動に移すタイミングを逃してしまう機会損失の可能性が生まれてしまいます。
したがって、プロジェクトが1型か2型かを判断し、状況に応じて適切な意思決定の方法を選ぶことが大切です。
「BIG THINGS」 と 「Amazon の意思決定」 の共通点
書籍 「BIG THINGS」 と、アマゾンの意思決定の考え方に共通するのは、計画と実行のバランスを取る重要性です。
アマゾンで言う1型の意思決定では計画が重視され、しっかりとた準備が必要ですが、2型の意思決定では計画を立てることにこだわりすぎるよりも、迅速な行動が求められます。
アマゾンの成功要因のひとつには、意思決定の種類と重みを理解し、それぞれに適したアプローチを取ることによって、効率的な成長とリスク管理を実現している点にあるのでしょう。
BIG THINGS で強調されている大規模なプロジェクトを成功させる3つのポイントは、アマゾンの1型の意思決定に該当し、慎重さと計画性が成功に不可欠であることを示しています。一方で、大小でさまざまなプロジェクトを走らせる企業では、状況に応じて1型か2型かを判断し、2型だと思えば意思決定をすばやく行い、早く柔軟に行動に移すことが大事になります。
このように、プロジェクトの規模や性質に応じた意思決定方法を使い分けることが、成功の道筋を描くために重要です。
まとめ
今回は、プロジェクトマネジメントでの意思決定について考えました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 大規模なプロジェクトを成功に導くためのポイントは、① ゆっくり考えすばやく動く、② すでにあるアイデアを活用する、③ ベテランや経験者を仲間にする
- アマゾンの意思決定では 「1型」 と 「2型」 に分ける。決めようとしていることが1型か2型かを判断することで、意思決定の質とスピードが向上する
- 1型は、重大かつ後戻りができない決定。一度通ったら戻れない 「一方通行のドア」 。慎重に時間をかけて検討する。2型は、後から変更したり修正が可能な意思決定。後戻りができる 「往復可能なドア」 。決断力のある人や少人数のグループで早く決め実行に移す
- 「ゆっくり考え、すばやく動く」 、「既存アイデアの活用」 、「ベテランや経験者の協力を仰ぐ」 の3つは、慎重な意思決定が求められる1型に該当する
- プロジェクトは計画と実行のバランスが重要。状況に応じて1型と2型を切り分けることで、効率的な計画策定、意思決定、実行のリスク管理ができる
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