#マーケティング #顧客理解 #顧客満足
企業は競合他社の動向に目を向けがちですが、本当の競争相手は実は別のところにいます。それは 「変わり続けるお客さんのニーズそのもの」 です。
では、どうすれば常に変化する顧客心理を捉え、お客さんから飽きられることなく選ばれ続けることができるのでしょうか?
その答えのヒントが、セブン-イレブンの外国人観光客への取り組みにあります。セブン-イレブンから、本当の顧客理解とは何かを考えます。
セブン-イレブンのハイブリッド顧客理解
日本へのインバウンドの外国人観光客の増加は、日本の小売業に新たな変化をもたらしています。
定量データ分析と店舗スタッフへのヒアリング
セブン-イレブンは、外国人観光客のニーズを応えるため、売上データの分析と現場スタッフからのヒアリングを組み合わせたアプローチを推進しています (参考情報) 。
定量データでは、POS データなどから得られる国籍別の売れ筋商品や購買傾向を分析します。具体的には、どの国の観光客がどの時間帯にどんな商品を購入しているのか、といった具体的な購買情報を数値で把握します。
加えて、店舗スタッフを通じて定性情報も収集しています。
外国人観光客が SNS で見て買いに来たと思われる商品、パッケージがおもしろいと手に取ったであろう商品、探している商品が見つからず困っていたといった、具体的な来店客の話です。こうした定性情報は数値だけではわからないリアルな現場からの情報源です。
外国人からの人気の高い商品
セブン-イレブンで売られている外国人観光客から人気のある商品とは、例えば 「たまごサンド」 や 「チョコっとグミ シャインマスカット味」 、 「蒙古タンメン中本 辛旨味噌」 です。
SNS での外国人観光客による投稿がきっかけで人気に火がつきました。また、イチゴなどのフルーツも、高単価でありながら、見栄えの良さや日本ならではの品質が評価され、売れ筋商品となっているようです。
セブン-イレブンは外国人客に共通して響くキーワードとして 「見栄えが良い」 「もちもち食感」 「日本文化」 「北海道」 などを抽出しました。
これらを具体的な店舗施策に活かしています。
例えば、外国人観光客には馴染みが薄く探しにくい 「ファンタ メロンソーダ」 のような商品は、目立つポップを設置したり、棚の取りやすい位置に陳列するといった工夫を凝らしています。
では、セブン-イレブンの事例から学べることを掘り下げていきましょう。
心理を読み、行動を予測し、体験を予想する
セブン-イレブンがやっていることの根底には、お客さんの立場になり、消費者やお客さんの心理を深く理解し、その行動を予測し、求めるであろう体験を先回りして提供するという姿勢があります。
定量と定性が描き出す顧客心理
定量データは、消費者や顧客の行動パターンや傾向を客観的に示してくれます。
どの商品が売れているか、どこのエリアや時間帯で顕著か、どんな顧客層が買っているかといった事実は、消費者や購買動向を知るうえで参考になります。
ただし、なぜその商品が買われたのか、背景にある心の部分である消費者心理や価値観までは、数字データだけでは深く読み解けません。そこで重要になるのが、定性的な情報です。お客さんの隠れた心理や期待を明らかにする手がかりとなります。
セブン-イレブンの例
セブン-イレブンは、定量と定性の情報を組み合わせ、外国人観光客が 「なぜその商品を選ぶのか」 「どういった顧客文脈があるのか」 まで深く洞察しようとしています。
例えば、見栄えの良さを求める心理の裏にはどんな欲求があるのか、食品のもちもち食感へのこだわりは、どんな体験を求めているかというふうにです。
このような顧客心理の理解は、お客さんの次の行動を予測し、より満足度の高い購買体験を設計するための土台となります。
本当の競争相手は 「変わり続けるお客さんのニーズ」
ヒット商品が生まれると、売り手は成功に浸ることができます。
しかし、市場環境、消費者、顧客企業は常に変化しており、その変化に置いていかれると成功は一時的なもので終わってしまいます。お客さんの 「今日の満足」 は、「明日の飽き」 につながるからです。
お客さんの満足は、お客さんから 「飽きられる始まり」 でもある
どんなに良い商品やサービスであっても、同じものが提供され続けると、お客さんは次第に新鮮味を感じなくなり、満足度は低下していきます。最初に感じた 「満足」 は、やがて 「当たり前」 となり、ついには 「飽き」 へと変わってしまうのです。
顧客満足は固定的なものではなく、常に移り変わる動的なものと捉えることが重要です。
お客さんが商品やサービスから離れていく原因のひとつは、売り手側のマンネリ化です。提供される商品やサービスに変化がなく、新しい価値提案がなければ、お客さんは次第にその商品やブランドから心が離れてしまうことでしょう。
セブン-イレブンでは、「たまごサンド」 や 「チョコっとグミ シャインマスカット味」 が SNS での口コミにより人気商品となりました 。多くの外国人観光客が 「おいしい」 「日本にしかないユニークな商品」 などと評価し、購入に走りました。
セブン-イレブンはこうした状況を一過性のブームで終わらせないために、常に新しい商品の投入や既存ラインナップの見直しを図っています。外国人観光客が特定の商品に満足してその後に飽きてしまう前に、次の新鮮な商品や購買体験を提供しようという意思の表れです。
向き合うべきはお客さんの変化
一般的に企業は競合他社の動向を注視し、シェア争いを繰り広げます。しかしセブン-イレブンは、真の競争相手とは 「常に変わり続けるお客さんのニーズ」 と捉えています。
業界の常識や他社の戦略に過度にとらわれることなく、消費者やお客さんが今何を求め、何に価値を感じているのかを深く理解し、それに応え続けることこそが、持続的なビジネスの成功につながります。
外国人観光客のニーズは、日本への訪問目的の変化、情報収集ツールの進化 (例えば、利用する SNS の使い方など) とともに変わり続けます。以前は 「インバウンド観光客の爆買い」 がクローズアップされましたが、ここ最近は 「体験型消費」 や 「聖地巡礼」 といったモノよりもコトが重視されます。
このような人々の変化に企業が対応できなければ、いくら過去に成功した商品やサービスであっても、次第にお客さんからの支持を失ってしまいます。
また、日本人客の消費行動も、高齢化や健康志向の高まりなどによって変化しています。セブン-イレブンは、こうした変化を察知し、国内外の顧客双方のニーズに対応できる商品ラインナップやサービス提供を目指しています。
どんなに日本人には長く愛されてきた定番商品であっても、現在の外国人観光客の嗜好に合致するとは限りません。セブン-イレブンは、常に 「お客さんの立場」 から、お客さんが今、何に価値を感じているのかを問い続け、商品やサービスを進化させています。
セブン-イレブンは、まだ表面化していない潜在ニーズに目を向け、常に半歩先、一歩先を見据えた商品開発やサービス改善に取り組むことで 「お客さんからの飽き」 という見えない敵と戦っているのです。
まとめ
今回は、セブン-イレブンの事例を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 人の心理を読み、行動を予測し、体験を予想する。行動の背景にある心理や価値観を読み解くことで、顧客が次に何を求め、どんな体験を期待するかを予測し、先回りして価値を提供できる
- お客さんの満足は、お客さんから飽きられる始まりでもある。顧客の満足は永続的なものではなく、放置すれば 「当たり前」 になり、やがて 「飽き」 へと変わる
- 売り手側のマンネリが顧客を失う原因となる。ヒット商品に安住せず、顧客が飽きる前に常に新しい価値や新鮮な体験を提案し続けることが大事
- 本当の競争相手は 「変わり続けるお客さんのニーズ」 。業界の常識や他社の動向に固執するのではなく、顧客が今何を求めているのかを理解する。常に潜在ニーズを探求し、自ら変化し続ける
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