#マーケティング #コミュニケーション #BGCとUGC
企業が発信する情報と、ユーザーが自発的に生み出す情報――。2つのコンテンツが持つ力を戦略的に活用できているでしょうか?
消費者は企業からの一方的なメッセージだけでなく、同じ立場の人々のリアルな声も重視します。しかし、自社発信の情報に注力し、ユーザー発信のコンテンツを見落としていないでしょうか。
2つを組み合わせることにより、ブランド認知度の向上だけでなく、他には従業員の採用活動においても効果を発揮します。今回は、その相乗効果を最大限に活かす方法を考えます。
BGC (Brand Generated Content)
まずは、企業側が発信する情報コンテンツである BGC について見ていきましょう。
BGC とは
BGC とは、Brand Generated Content の略です。
Brand とあるように企業やブランドが主体となって制作・発信するコンテンツのことです。例えば、テレビ CM 、ブランドの広告アカウント発信、公式サイトの情報などが該当します。
企業が伝えたいメッセージやブランドイメージを明確に、統制された形で届けることを目指します。ブランド認知度の向上や、新商品のコンセプトを広く知らせる役割を果たします。
ここでご紹介したいのは、企業の採用活動における BGC の事例です。
意外にも強い 「テレビ CM」 の影響力
大学生を対象とした調査によれば、42.1% の学生が企業ブランディングや商品広告を見て、採用意向を高めた経験があると回答しました (参考情報) 。
広告媒体別の影響度では、意外にもテレビ CM が1位 (43ポイント) と最も高く評価されている。以下、Web メディア広告と YouTube 広告 (37ポイント) 、Instagram 広告 (35ポイント) と続きます。
若年層のテレビ離れが指摘される中でも、テレビ CM が未だ強い影響力を持つ背景には、生活導線上で自然に目に入りやすく、またテレビ CM を出せる企業は資金力や信頼感があると認識される点があります。
テレビ CM や公式 SNS 発信などの企業発信
企業は様々な形で BGC によりメッセージを届けています。
就職活動をしている大学生に向けての企業からの BGC を活用したコミュニケーション例をいくつかご紹介します。
[事例 1] 日清紡ホールディングスのテレビ CM
1つ目の事例は、「歌おうニッシンボー」 というユニークな日清紡ホールディングスのテレビ CM です。
日清紡ホールディングスは、あえて具体的な事業内容を前面に出さず、このユニークな CM から企業名の認知を目的としつつ、結果的に若年層との接点づくりも狙っています。
[事例 2] ナレッジワークの交通広告
営業支援ツールを提供するナレッジワークは、交通広告や新聞全面広告といった BGC から、自社の製品価値だけでなく、企業としてのビジョンや価値観を発信しています。
便利な営業支援ツールという機能説明に終始するのではなく、「 (営業職の) 働き方を変えれば、企業はもっと強くなる」 といった、より高い視座からのメッセージを打ち出すコミュニケーションです。
[事例 3] ヤンマーホールディングスの TikTok 発信
農業機械などで知られるヤンマーホールディングスは、若年層との新しい接点を創出するために、TikTok を BGC の発信の場として活用しています。
「#工場あるある」 や 「広報社員の1日密着」 といった動画コンテンツを企業公式アカウントから投稿し、若者に馴染みのある短尺動画というフォーマットで、企業の実態や社風、社員の働きぶりをカジュアルに伝えます。
かつての 「ヤン坊マー坊天気予報」 で高い知名度を誇ったヤンマーホールディングスですが、その放送終了後、若年層への認知度向上が課題となっていました。TikTok に合わせた BGC 展開は、課題に対する有効な一手です。
UGC (User Generated Content)
それでは次に、ユーザー自身が生み出す情報である UGC の役割について見ていきましょう。
UGC とは
UGC は User Generated Content の略です。一般ユーザーによって作られ、SNS 等で発信されるコンテンツを指します。
SNS での口コミやレビュー以外にも、ブログ記事、個人の YouTube 動画などが代表例です。
企業発信ではない、第三者のリアルな声として受け止められやすく、商品やブランドを身近に感じたり親近感を抱き、購買意欲に影響を与えます。消費者は購入前に UGC を参考にすることが普通になりました。
学生・ユーザーが主体となって発信する声や体験
BGC が企業からのメッセージであるのに対し、UGC は学生や一般ユーザーの自発的な発信です。これらが就職活動においてどのような影響を持つのでしょうか。
■ SNS 上でのクチコミ・コメント
テレビ CM や交通広告を見たユーザーや就活生が、SNS であの CM が気になるとか、実はうちにこのメーカーの製品があるなどとつぶやくのが、身近な UGC です。
企業が意図しないタイミングや文脈で発信されるため、潜在層がその声を目にし、興味を持つきっかけになります。
■ 実際に商品を購入・利用した体験共有
消費者からの 「家で使っている家電が同じメーカーばかりだと気づいた」 、「実際に購入して (商品の) 性能に関心を持った」 といった体験や評価が SNS やクチコミサイトで共有されると、それが UGC として波及していきます。
企業側としては、提供する商品やサービスの品質、顧客満足度が高ければ高いほど、ポジティブな UGC が自然発生的に生まれ、それが採用活動においても有利に働くという好循環が期待できます。
■ TikTok や YouTube などでのバズり
ヤンマーホールディングスの事例のように、企業が発信した BGC (例: TikTok 動画) がきっかけとなり、ユーザーがそれを元にしたコンテンツを制作・拡散することも UGC の一形態です。
たとえば、企業の動画に対するコメント欄での活発な意見交換、動画の面白い部分を切り取った二次創作的な投稿、TikTok のデュエット機能を使ったコラボレーション動画などがこれに当たります。
このような形で UGC が UGC を呼ぶというバズりが生まれると、情報は短期間で拡散していき、企業の認知度やブランドイメージは高まります。
BGC と UGC を組み合わせる意義
ここまで見てきた事例は、ブランドの公式発信からの BGC が UGC を誘発し、UGC がさらに他の人の認知や就職意向に影響を与えるという好循環が起こることを示唆しています。
メッセージの多様化と深化
BGC では企業が伝えたい統制されたメッセージを発信し、UGC では多様な解釈や感想、実体験にもとづいた声が加わります。それにより、企業やブランドのイメージがより立体的かつ多角的に伝わります。
例えば、日清紡の CM (BGC) を見て 「おもしろそう」 と感じた学生が、実際に日清紡のことを調べてみて 「実は社会貢献もしているらしい」 という情報を得て SNS で UGC として発信するといった具合です。
企業からの BGC だけでは伝えきれない企業の側面や魅力が、UGC を通じて補完され、より深い企業理解へとつながります。
情報接触機会の増加と記憶への定着
BGC だけでなく、関連する UGC が様々なプラットフォームで展開されると、消費者が企業情報に触れる機会が増えます。
企業のことがより強く記憶に残りやすくなり、いざ商品を買う文脈が発生したり、また就職活動をする際にその企業が思い出されやすく (想起されやすく) なります。
テレビで CM を見て (BGC) 、SNS で友人の投稿を見て (UGC) 、さらに Web サイトで情報 (BGC) を確認するというように、複数の顧客接点で繰り返し情報に触れることで、企業への関心と理解が深まっていくことでしょう。
認知と信頼の両立
企業発信の BGC (テレビ CM や広告) でまず広く認知を獲得し、それを見たユーザーが SNS などでポジティブな UGC を発信することによって、情報への信頼性や共感度が高まります。
若年層は企業からの情報だけでなく、同じ若い世代のリアルな声である UGC も普通にチェックするので、BGC と UGC の組み合わせは有効です。企業が伝えたいメッセージ (BGC) と、ユーザーのリアルな体験や評価 (UGC) がそろうことにより、消費者は多角的な情報から企業を判断できます。
このように、企業が発信する BGC を起点としつつ、それが消費者の間で UGC として自然発生的に広がり、共感を呼ぶようなコミュニケーションが威力を発揮します。
商品の販売以外にも、採用活動においても BGC とUGC の相乗効果を最大限に活かすことができれば、より多くの人たちにアプローチできる可能性が広がります。
まとめ
今回は、就活生への企業からのコミュニケーション事例を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- BGC (ブランド生成コンテンツ) は企業やブランドが主体となって発信するコンテンツ。テレビ CM や公式サイトなどから、企業が伝えたいメッセージやブランドイメージを届け、ブランド認知度の向上や新商品のコンセプト周知に貢献する
- UGC (ユーザー生成コンテンツ) は一般ユーザーが SNS などで発信するコンテンツ。企業発信ではない第三者の声として信頼されやすく、商品やブランドへの親近感を醸成し、他の消費者の購買意欲や就職意向にも影響を与える
- BGC でブランドの世界観や公式メッセージを伝えつつ、UGC を通じて多様なユーザー視点からの具体的な使用感やメリットが語られる。情報に深みと広がりが生まれ、メッセージが多角的に伝わる
- BGC と UGC が複数のチャネルで展開されることにより、消費者がブランド情報に触れる機会が増える。記憶に残りやすくなり (メンタルアベイラビリティの向上) 、商品選択や企業選択の際に想起されやすくなる
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