#マーケティング #カテゴリー戦略 #独自ブランド資産
自社商品は、お客さんや消費者から 「真っ先に思い浮かぶ選択肢」 になっているでしょうか?
TENTIAL (テンシャル) 社の BAKUNE (バクネ) は、パジャマという日用品で 「リカバリーウェア」 という新しいカテゴリーを創出し、存在感を放っています。
今回は、TENTIAL の BAKUNE の事例から学べる、「カテゴリー戦略」 と 「独自ブランド資産の構築」 について見ていきます。
TENTIAL の疲労回復パジャマ BAKUNE
TENTIAL (テンシャル) は、BAKUNE (バクネ) というブランドで、パジャマという衣料市場に 「リカバリーウェア」 というカテゴリーの中で存在感を放っています。
BAKUNE は当初はアスリート向けというイメージが先行していましたが、TENTIAL はリカバリーウェアを 「毎日がんばる全ての人へ」 と再定義。特に、忙しい日々を送るビジネスパーソンに向けて、「着て寝るだけで疲労回復につながる」 という手軽さと効果を訴求しました。
TENTIAL はお客さんの声にも耳を傾け、ニーズに合った対応を取っています。「高価なパジャマを試着なしで買うのは不安」 という声には直営店を、「リカバリーウェアを大切な人にプレゼントにしたい」 という声にはギフト対応をといったようにです。
では、TENTIAL の BAKUNE の事例から学べることを掘り下げていきましょう。
「パジャマ」 の価値認識を書き換える
BAKUNE のアプローチで注目したいのは、消費者が持つパジャマへの固定観念を打ち破り、新しい選び方を提案した点です。
BAKUNE が提案する新たな選択基準
従来のパジャマを選ぶ基準には、普通は自分の体に合うサイズ感、肌触りの良さ、好きなデザイン、価格帯といったところではないでしょう。これらはもちろん大事な要素です。
しかし BAKUNE はここに、全く新しい選択基準を持ち込みました。
それが、「睡眠の質を高め、積極的に疲労回復を促す機能」 です。
パジャマは快適に眠るためのものだけにとどまらない。日中の体調や仕事などでのパフォーマンスを左右する存在であると。睡眠時のコンディショニングツールであるという新しい価値観を BAKUNEは提示したのです。
新しいカテゴリーでの第一想起の獲得
では、もし 「パジャマが欲しい」 と思ったとき、消費者の頭に最初に浮かぶのはどんな選択肢 (候補となるブランド) は何になるでしょうか?
TENTIAL は、健康とパジャマのことに意識が向いた際に、自社の 「BAKUNE」 が真っ先に思い出してもらえるブランド、つまり第一想起される選択肢となることを目指しました。
パジャマという大きなくくりではありません。睡眠時の疲労回復やコンディション調整という文脈において、BAKUNE はパジャマへの新しい価値基準・選択基準をつくり出し、その顧客文脈で No.1 のポジションを築くことを狙っているわけです。
独自ブランド資産の構築
BAKUNE の事例からもうひとつ学べるのはブランディングです。
「独自ブランド資産の構築」 という視点でも学びが得られます。
独自ブランド資産とは
独自ブランド資産 (Distinctive Brand Asset (DBA) ) とは、ブランドが他のブランドと区別され、消費者やお客さんからはっきりと容易に識別されるための独自の特性のことです。
具体的には、ブランド資産には、ブランド名、ロゴ、スローガン、パッケージデザイン、色、音、キャラクターなどがあります。ブランドイメージにつながったり、そのブランドだと特定するために生活者が関連付けるさまざまな要素を含みます。
人の記憶のネットワークの中にブランドにひもづく認識、印象、解釈、体験したことなどのブランド連想イメージがつくられると、独自ブランド資産は人の頭の中でできあがっていきます。独自ブランド資産に一貫性があればブランド連想は強化され、お客さんはブランドをすぐに思い出すことができるのです。
ブランドが強力な独自資産を持っているということは、他社がそのブランド資産をマネしても、人は他社ブランドではなく自社ブランドのことを想起します。自分たちの独自ブランド資産がますます優位になるという構図です。
TENTIAL が持つ独自ブランド資産
BAKUNE というブランド名、ほかには、ウェブやパッケージに施されたデザイン、リカバリーウェアという新しいカテゴリー名とセットで認識されることにより、TENTIAL は消費者の頭の中に 「BAKUNE = 着て寝ると疲れが取れるパジャマ」 というイメージを残します。
加えて、トップアスリートや有名アーティストなど、パフォーマンス向上を追求する人たちとのコラボの事例がブランドストーリーの一部になります。 「プロの一流コンディショニング方法が自分でも手軽にできる」 という認識が生まれ、BAKUNE のポジションをより強固なものにします。
BAKUNE がつくるブランドイメージ連想
独自ブランド資産に一貫性があればブランド連想は強化され、消費者やお客さんはブランドを思い出すことができます。
BAKUNEは 「着るだけで疲れが取れるパジャマ」 というシンプルかつインパクトのある価値を前面に打ち出すことで、睡眠・疲労回復・活力向上といったポジティブなイメージを連想させやすくしています。
実際に着用した BALUNE ユーザーが 「翌朝の目覚めが全然違う」 や 「疲労感が翌日に残らない」 といった経験をすると、体験がブランドの認知や好感度をさらに押し上げることでしょう。
独自ブランド資産とブランド連想の好循環
TENTIAL の BAKUNE の事例で示唆があるのは、独自ブランド資産の構築とブランド連想の強化が相互に作用し合い、好循環を生み出している点です。
BAKUNE という覚えやすい名前、リカバリーウェアという新しいカテゴリー名は、消費者の頭の中に 「疲労回復できるパジャマ」 という新しい選択肢と、関連するポジティブなイメージ (質の高い睡眠, 翌日に元気になれる) を効果的に刻み込みます。
そして、実際に製品を使用した顧客が良い体験 (よく眠れた, 疲れがとれた気がする実感) をすると、その体験が 「BAKUNE」 や 「リカバリーウェア」 という独自ブランド資産と結びつき、ブランドイメージはさらに強くなります。
BAKUNE は独自ブランド資産を構築し、ブランド資産を一貫したものとして消費者の心に打ち出すことにより、「疲労回復パジャマなら BAKUNE」 という第一想起を獲得し、新しい市場カテゴリーにおけるリーダーとしての地位を確立することを目指しています。
他社が類似製品を投入してきたとしても、消費者の頭の中にすでに形成された 「BAKUNE = リカバリーウェアの元祖・本物」 というブランドイメージがあれば、それが BAKUNE 以外を買わない状況をつくり、BAKUNE の優位性を保つことにもつながります。
まとめ
今回は、TENTIAL の疲労回復パジャマ 「BAKUNE」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後にポイントをまとめておきます。
- 新しい選択基準を提示することで、既存カテゴリーの常識を再定義することができる
- 自社が No.1 になれる新しいカテゴリーを定義し創出し、そこで第一想起の獲得を目指す
- 独自ブランド資産の構築は、競合との差異化や顧客文脈でのブランド想起のしやすさを高めるカギを握る
- 一貫したブランド連想の設計により、購入時に思い出される確率を上げる。ネーミング、パッケージ、ビジュアル、体験を一貫性を持たせて記憶に残るブランドへ
- 独自ブランド資産とブランド連想が連動することで、模倣困難な競争優位を築ける。連想の強化がさらなる体験を生み、ブランド資産が累積的に強化されていく好循環をつくる
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