#マーケティング #広告 #ブランド体験
広告は、お客さんに見てもらえて初めて役割を果たします。
数多くのコンテンツが並ぶ中で、お客さんが自分から触れたくなる広告は、どのようにつくればよいのでしょうか。
今回は、G-SHOCK の Roblox 参入から、広告だからこそ 「選ばれる理由」 をつくる大切さを考えます。
G-SHOCK が Roblox につくった 「時計以前」 の接点
カシオ計算機は、腕時計が欲しくなる前の小中学生と接点をつくろうとしています。商品を選ぶより前から G-SHOCK に親しんでもらう、いわば 「時計以前」 の取り組みです。
腕時計を欲しがる前の小中学生に照準
カシオ計算機は 2026 年 7 月 15 日、オンラインゲームプラットフォームの Roblox (ロブロックス) に、G-SHOCK が独自に用意したゲーム空間である公式ワールドを公開しました。
出典: PR TIMES
Roblox は、世界で 1 日あたりの利用者数が 1 億 5000 万人を超え、若い世代から高い支持を得ているサービスです。利用者はさまざまなゲームで遊ぶほか、自分の分身となるアバターを着せ替えたり、友人と交流したりできます。
G-SHOCK が狙いを定めた相手は、腕時計への購入意欲がまだ高まっていない小中学生です。
スマートフォンがあれば、時刻はすぐに確認できます。腕時計は、以前のように誰もが持つ生活必需品とは言い切れなくなりました。これは、スマホを持つのもめずらしくなくなった小中学生も同様です。
それでも、進学や受験、部活動、ファッションへの関心などをきっかけに、腕時計が欲しくなる時期は訪れます。カシオは購買の直前だけを狙わず、その何年も前から G-SHOCK に親しんでもらおうと考えました。
将来、腕時計を選ぶ場面で G-SHOCK を思い出してもらうために、購買が始まる前から記憶に残る接点をつくります。Roblox は、ゲームを通じてブランドに親しんでもらう場所として使われています。
アバターで着け、ゲームの中で遊ぶ
Roblox では、利用者が自分の分身となるアバターをつくり、服や小物を着せ替えながら友人と遊びます。G-SHOCK は、この文化の中に腕時計を持ち込みました。
Roblox の G-SHOCK 公式アバターアイテム (出典: PR TIMES)
アバター用の時計アイテムには、G-SHOCK を代表する 「DW-5600」 と 「GA-2100」 をもとにしたモデルがあります。それぞれ 6 色、合計 12 種類を用意しました。
時計のほかにも、T シャツ、キャップ、バックパックなどがあります。現実の腕時計を買う前に、仮想空間の中で G-SHOCK を身に着けられます。
アバターの見た目は、利用者にとって自分らしさを表す手段です。友人と会う場所や遊ぶ内容、その日の気分に合わせて服装を変えます。
G-SHOCK は時刻を確認する道具として紹介されるより先に、身に着けたくなるファッションとして体験されます。
公式ワールドでは、スケートボードで障害物を越えていく Obby (オビー) と呼ばれるゲームを提供しています。Obby は Roblox で親しまれている障害物レースのジャンルです。
出典: PR TIMES
利用者はスケートボードに乗り、ジャンプや方向転換をしながらコースを進みます。簡単に一度で終わらない難易度にしてあり、失敗しても繰り返し挑戦したくなる内容です。
スケートボードは、G-SHOCK が長く関わってきたストリート文化とも相性があります。コースには、G-SHOCK の品質試験で行われる耐久テストを思わせる障害物も入っています。
ゲーム内には、時計の部品を使った空間や G-SHOCK を意識したタイマー表示もあります。遊びながら、ブランドの世界観に触れられます。
課金への配慮もあります。有料のアバターアイテムに加えて、ゲーム内で遊ぶと手に入るアイテムや、イベントで無料でもらえるアイテムも用意しています。
課金をしなくても参加できる範囲があるため、小中学生本人だけでなく、保護者も受け入れやすい形です。
新規層との接点とブランドへの反応を測る
Roblox でのゲーム内アンケートでは、G-SHOCK を知らなかった人と、知っていても持っていない人を合わせると約 7 割でした。将来の顧客になり得る新しい層が参加者の多くを占め、これまで接点の薄かった人にも届いています。
体験後に G-SHOCK を 「好きになった」 または 「大好きになった」 と答えた割合は約 65% でした。当初の目標としていた 30% を上回っています。
Roblox では、訪問者数に加えて、プレー時間、再訪率、ゲームを最後まで進めた割合、アバターアイテムの着用数なども確認できます。広告を見た人数だけではわからない、どこまで遊んだのか、途中でやめた人がどれくらいいるのかまで捉えられます。
アンケートも、ゲームをもっと楽しくするために意見を伝える感覚で答えてもらいやすい特徴があります。認知や好意度の変化を確かめ、反応を見ながら内容を直していけます。
広告だからこそ 「選ばれる理由」 をつくる
G-SHOCK の取り組みからは、広告をお客さんに選んでもらうという視点が見えてきます。
広告も、お客さんが選ぶコンテンツの一つ
企業にとって広告は、商品やブランドを知ってもらうための手段です。
広告をつくる側は、商品の特徴や価格、使い方、ブランドの考え方など、何を伝えるかに意識が向きます。一方、お客さんは目の前にある多くの選択肢から、自分が見たいものや遊びたいものを選びます。
一方、お客さんが最初に判断するのは、自分にとって触れる価値があるかどうかです。おもしろそう、役に立ちそう、誰かと共有したい、自分でも参加したいと感じたときに、広告へ時間を使います。
G-SHOCK は、利用者が自分から遊びたくなる体験を広告との接点にしました。
ブランドを知ってもらいたい企業と、ゲームを楽しみたい利用者の目的が、同じ体験の中で無理なくつながっています。
広告を考えるときにも、お客さん側の理由を具体的に問い直せます。なぜ見たくなるのか。なぜ参加したくなるのか。どのような楽しさがあれば、もう一度触れたくなるのか。
広告に触れる価値が伝われば、企業が届けたい内容にも目を向けてもらえます。広告だからこそ、お客さんから選ばれる理由を丁寧につくることが求められます。
選ばれる体験に 「ブランドらしさ」 を入れる
体験の楽しさとブランドが結びつくと、何の広告だったのかまで記憶に残りやすくなります。
G-SHOCK は、選ばれる体験の中にブランドらしさを入れました。何度も失敗しながら障害物を越える Obby というゲームには、頑丈さや挑戦を応援する G-SHOCK の考え方が表れています。
スケートボードが持つストリート感も、G-SHOCK が築いてきたイメージと合います。アバターで腕時計を着ける行為は、ファッションや自己表現としての価値につながります。
お客さんが参加したくなる体験の中にブランドらしい要素をなじませれば、楽しさとブランドの記憶が結びつきます。ブランド名やロゴを見せるだけより、何を体験したかとブランドの意味を結びつけることが大切です。
小中学生のうちにアバターで着けて遊んだ記憶があれば、後に腕時計が欲しくなったとき、G-SHOCK を思い出すきっかけになります。
さらに、お客さんの反応を測りながら体験を直せば、選ばれる理由も磨いていけます。
広告においても、いや、広告だからこそ、お客さんから選ばれる理由をつくることが大切です。
まとめ
G-SHOCK の Roblox 参入の事例を取り上げ、学べることを見てきました。
学びのポイントをまとめておきます。
- 広告も、お客さんが時間を使うコンテンツの一つ。企業が伝えたい情報を並べる前に、見たい、遊びたい、参加したいと思える価値を考えるといい
- お客さんが広告を選ぶ理由を具体的にする。触れる楽しさや役立ち、共有したくなる要素があれば、ブランドからの情報にも自然に接してもらえる
- 選ばれる体験にブランドらしさを入れる。お客さんが楽しむ内容とブランドが伝えたい意味が合えば、体験の記憶からブランドを思い出しやすくなる
- 購買が始まる前から良い記憶を積み重ねる。将来、商品が欲しくなったときに思い出してもらえる接点を早い段階から育てておく


