#マーケティング #顧客起点 #顧客への敬意

マーケティングの狙いを、お客さんに 「思い出させる」 「行動させる」 「買わせる」 と表現すると、どこか違和感を覚えないでしょうか。

今回はこの疑問から着想を得て、マーケティングの全体像を 7 つのステップで整理し、ステップごとのそれぞれの言葉に込めた 「顧客起点とは何か」 について考察します。

マーケティングの本質を 7 つのステップで理解する

マーケティングとは、「お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般」 です。

では、具体的にどのような活動を行うのでしょうか。マーケティングの全体像を 7 つのステップで見ていきます。

知ってもらう

マーケティングの最初の一歩は、自社の商品やサービスの存在を知ってもらうことです。

どれほど素晴らしい商品でも、お客さんに存在を知られていなければ選ばれません。まず、自分たちの商品が 「誰に」 「どのように」 役立つのかを言葉にし、他社の商品との違いを明確にします。

その上で、文章、写真、動画などを使い、お客さんが商品を見つけられる状態をつくります。広告、SNS、メディア露出、口コミなど、さまざまな顧客接点を通じて情報を届けます。

この段階では、自社の強みを正しく言葉にすることが大切です。

商品の機能や使い方に加え、なぜこの商品が生まれたのか、開発者がどのような想いを込めたのか、他社が簡単には真似できない、自社ならではの強みは何かを掘り下げます。自社が持つ価値を理解し、お客さんに伝わる言葉や表現に置き換えて届けます。

思い出してもらう

生活者に 「知ってもらう」 と 「行動してもらう」 の間には、「思い出してもらう」 という段階があります。

人が商品を買おうと考えるのは、特定のニーズが生まれたときです。普段の生活者から、商品を探して選ぶ消費者へと意識が切り替わる。その文脈で自社商品を思い出してもらう必要があります。

たとえば、喉が渇いたとき、友人への贈り物を探しているとき、新しいスニーカーが欲しくなって検索するときです。こうした 「必要な文脈」 で、自社の商品が真っ先に思い浮かぶかどうかが、選ばれるかどうかを左右します。

そのためマーケティングでは、情報を届けるとともに、お客さんの記憶に残る工夫をします。印象に残るブランド体験や一貫したメッセージ、感情に響くストーリーが、必要になったときの想起につながります。

行動してもらう

商品を思い出してもらったら、次の行動につなげます。

ここでの 「行動」 とは、店舗への来店、ウェブサイトへのアクセス、資料請求、試供品の申し込みなど、購入に至る前の一歩を指します。お客さんが興味を持ち、「もっと知りたい」 「試してみたい」 と思える状態をつくります。

無料サンプルや期間限定のキャンペーン、わかりやすい導線、背中を押すメッセージなどを用意し、お客さんが次の一歩を踏み出しやすい環境を整えます。

ここでも、お客さんへの理解が欠かせません。お客さんはどこにいるのか、どのような言葉が響くのか、何に不安を感じているのか。お客さんの立場から考え、行動をためらう原因を一つずつ取り除きます。

買ってもらう

行動してもらった後は、購入につなげます。

選ぶという行為の最終決定権は、常にお客さんにあります。企業が商品の良さを主張するだけでは、お客さんが納得して購入する理由にはなりません。

マーケティングの出発点はお客さんです。「誰に」 「どのような価値」 を届けたいのか、そのお客さんは 「なぜ」 他の商品ではなく自社の商品を選ぶのかを、お客さんの立場から深く理解します。

店舗、オンライン、代理店などから適切な販売チャネルを選び、購入までの流れをスムーズにします。価格、支払い方法、配送方法なども整え、お客さんが納得し、安心して購入できる環境をつくります。

購入の瞬間に、お客さんへの理解と自社の強みが結びつきます。商品とお客さんの間に縁が生まれる瞬間です。

使ってもらう

商品は、購入後に使われることで顧客価値を生みます。

お客さんが実際に商品を使い、困りごとを解決できれば、商品の価値を実感できます。その体験によって、商品がつくられた目的も果たされます。

売り手は、販売後の利用まで見届けます。使い方をわかりやすく説明し、サポート体制を整え、トラブルには迅速に対応する。お客さんが商品の価値を十分に引き出せるよう支援します。

使い続けてもらう

お客さんから選ばれ続けることが、持続可能なビジネスにつながります。

長期的な関係を築くため、購入後もお客さんとの接点を持ち続けます。アフターサービスを充実させ、お客さんの声を商品の改善に活かし、定期的にコミュニケーションを取る。こうした積み重ねによって信頼関係が深まります。

使い続けてもらうには、お客さんがほかの商品では得にくい独自の価値を提供し続けることが大切です。

広めてもらう

最後のステップでは、価値を実感したお客さんに、商品について周囲へ伝えてもらいます。

口コミや SNS を通じて、お客さんが自分の言葉で商品について語る。この状態は、マーケティングが目指したい姿です。その声が新たな人に商品を知ってもらうきっかけとなり、7 つのステップが再び動き始めます。

良い商品を提供するだけで、自然に口コミが生まれるとは限りません。誰かに伝えたくなる体験やストーリー、価値まで商品とともに設計します。

さらに、お客さんが語る言葉に耳を傾けます。実際に使ったお客さんの言葉には、企業からの説明以上に人を納得させる力があります。商品の価値や使い方、感動がその人自身の体験として語られるため、次のお客さんが商品に興味を持つきっかけになります。

お客さんの語りから、企業がまだ把握していなかった自社の強みが見つかることもあります。本人も言葉にしていなかった気持ちや予想外の使い方、企業が想定していなかった価値の感じ方などです。

こうして得られた発見は、次の 「知ってもらう」 での貴重な情報や洞察につながります。

すべてのステップに込めた 「もらう」 という言葉の意味

7 つのステップは、「広めてもらう」 から次の 「知ってもらう」 へとつながり、循環していきます。そのすべての中心にいるのは、お客さんです。

ここで、7 つのステップをもう一度振り返ってみます。

知ってもらう、思い出してもらう、行動してもらう、買ってもらう、使ってもらう、使い続けてもらう、広めてもらう

マーケティングの本質を表すため、すべてのステップを 「もらう」 という言葉でそろえています。

 「もらう」 が表しているのは、すべての行為の主語がお客さんであることです。お客さんが知る、思い出す、行動する、買う、使う、使い続ける、広める。どの段階でも、実際に動くのはお客さんです。

 「もらう」 と表すことで、「させる」 という使役の発想から距離を置いています。

 「思い出させる」 「行動させる」 「買わせる」 と表現すると、企業が主導権を握り、お客さんを思い通りに動かそうとする響きが生まれます。

選ぶという行為の最終決定権は、常にお客さんにあります。

企業が担えるのは、お客さんが自ら選びたくなる理由を丁寧につくることです。お客さんの意思を尊重し、判断を信頼した上で、その選択を待ちます。「もらう」 という言葉には、こうしたお客さんへの敬意を込めています。

お客さんを主語に置き、敬意を持って向き合う姿勢は、マーケティングを支える土台です。

まとめ

マーケティングの 7 つのステップと、「買ってもらう」 などの表現に使った 「もらう」 という言葉に込めた考え方を紹介しました。

学びのポイントをまとめます。

  • マーケティングとは、お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般
  • マーケティングは 7 つのステップ (知ってもらう, 思い出してもらう, 行動してもらう, 買ってもらう, 使ってもらう, 使い続けてもらう, 広めてもらう) で循環する
  • すべてのステップに 「もらう」 という表現を使うのは、主語がお客さんであるから。お客さんに何かを 「させる」 という使役表現からは、お客さんを思い通りに操作できるという誤解が生じる。「もらう」 という言葉にはお客さんへの敬意がある
  • 選ぶという行為の最終決定権は常にお客さんにあり、企業はお客さんが自ら選びたくなる理由を丁寧につくる