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投稿日 2011/11/19

Google+でプロダクト全体最適を進めるグーグル

Googleと言えばネットで何かを検索する時には当たり前のように使いますが、それ以外のサービスも色々と利用していることに気づきます。仕事とプライベートのスケジュール管理にはGoogleカレンダーは外せないですし、他にもGmail、Google Reader、Googleドキュメント、などと挙げていくと1つのアカウントで様々なグーグルサービスを活用しています。
投稿日 2011/10/29

高機能一辺倒へのテレビにはあまりワクワクしなくなったので、そろそろ次のテレビに期待したい

先日の24日にスティーブ・ジョブズ公認の伝記が発売されましたが、書かれていた内容で話題を呼んでいたのは、ジョブズがTVへの取り組みに強い意欲を持っていたことです。
Jobs's final plan: an ‘integrated’ Apple TV|The Washington Post

■ジョブズのTVへの熱意

書かれていたことは確かに興味深いものでした。ワシントンポストから引用したものがこちら。
“He very much wanted to do for television sets what he had done for computers, music players, and phones: make them simple and elegant,” Isaacson wrote. (引用者注:Isaacson氏はジョブズ公認伝記の著者)
Isaacson continued: “‘I’d like to create an integrated television set that is completely easy to use,’ he told me. ‘It would be seamlessly synced with all of your devices and with iCloud.’ No longer would users have to fiddle with complex remotes for DVD players and cable channels. ‘It will have the simplest user interface you could imagine. I finally cracked it.’”
これを読むと、ジョブズはコンピューター(Mac)・音楽プレイヤー(iPod)・携帯電話(iPhone)で成し遂げた、シンプルでエレガントなユーザー体験をテレビでも実現したいという熱意を持っていたことがうかがえます。ユーザーが持っているiPhoneやiCloudとも連携させることも構想していたようです。とにかくシンプルで、誰でも使えるようなテレビです。

そして最後にこう言っています。「I finally cracked it(その方法がついにわかった)」。crackというのは、この文脈では「暗号を解読した」みたいなイメージですが、ジョブズがこのように言ったとすればかなり具体的なイメージを描いていたのではないかと思います。ただ、「その方法」がどんな内容なのかは残念ながら、今回のジョブズの伝記には書かれていなかったようです。

■What is "I cracked it" for the next TV?

では、ジョブズはどのようなテレビを思い描いていたのか。上記のジョブズの言葉の中にはTVのリモコンについて不満を抱いていたことがわかります(No longer would users have to fiddle with complex remotes for DVD players and cable channels)。となると少なくともリモコンはもっとシンプルで使いやすいものになるはず。余分なものを徹底的にそぎ落とし、本当に必要なものだけしか残さないジョブズの哲学にも近い考え方です。

とすると、iPodのような本当に必要なボタンだけしかないリモコンになるのでしょうか。確かにそれは十分にあり得ることだと思います。自分の家にあるTVのリモコンを思い浮かべると、本当にたくさんのボタンがあるのに実際に使うボタンは最低限に限られます。中には一度ども押したことのないボタンもある。そういうのを割り切って削っていけば、かなりシンプルなリモコンにできそうなものです。

テレビを操作するのに別にリモコンではなくてもいいのでは、という発想で考えると違ったテレビのコントロールの仕方もでてきます。それがiPhone4Sで搭載された音声認識のSiri。つまり、直接テレビに話すことでコントロールするという考え方です。このSiriについては、実際に海外のブログとかを読んでいると、TVへの統合への期待がかなり高い印象を持ちました。Siriについてはまだ実際に使ったことがなく、YouTubeや使った人の書いたブログとかを読んだ印象ですが、「明日の天気は」「○○に行くにはどう行ったらいい」という質問にも的確に回答するなど、なかなかおもしろそうな機能です。Siriは単に人間の話した言葉を正確に聞き取ることだけではなく、質問やリクエストを理解しその答えを提案するというのは、既存のボイスメモやボイス検索とは大きく異なると思います。テレビにSiriがあれば、「野球が見たい」と言えば野球中継を映してくれ、もしかすると、「ちょっと退屈なので何か笑える番組を見たい」とテレビに話しかければ、ユーザーの好みや過去の視聴履歴などから、その人に合った番組を提案してくれるかもしれません。人によっては漫才などのお笑いかもしれないし、別の人には落語なんてことも。そこには、TV番組欄を見て今の時間に何がやっているかとか、適当にチャンネルを変え見たい番組を探すザッピングなどはもはや不要です。

音声認識のSiri以外だと、アップルは離れたデバイスを動かすのにジェスチャーを使うことを研究しているという話もありました。これも既存のリモコンだけに比べて、テレビの使い勝手を大きく変えてくれるかもしれません。ただ、SiriはすでにiPhone4Sに実装されていることに比べ、こちらはまだ少し先の話になりそうですが。
Apple exploring 3D gestures to control devices from a distance|AppleInsider

■そろそろフレームを変える時

あらためて考えてみると、今私たちの身の回りにあるテレビへの操作は、ほぼ100%リモコンを使っています(リモコン以外だと主電源のON/OFFくらい)。その状況でいろんな機能が次々に追加される一方でリモコン操作という形式が変わらなかった結果、とても使いにくいリモコンになってしまいました。とにかくボタンが多い割に実際に使うボタンは多くなく、わかりにくく使いづらいのです。

ところが多くのテレビメーカーはそこにはあまり注力していなく、より大きく、高画質な美しい画面、あるいはそれ専用の眼鏡を用意し3Dという立体的に見ることができる画面を実現し、ユーザーに提案してきています。これはよりいい機能を追加するという足し算の発想ですが、本当にそこにユーザーのニーズがあるのかは個人的には疑問です。さらなる高性能よりも利便性なのではないでしょうか。

番組配信の仕方もアップルは変えるのかもしれません。iCloudとも連携するということは、単に放送される番組を見るだけではなく、過去の番組も含めて見たい番組を見たい時に、その状況に適切なデバイスで見られるようになるのでしょう。家で見る時はリビングのアップルTVで、自分の部屋のベッドではiPadで、電車で続きを見る時はiPhoneで、といった感じで、アップルが得意とするユーザーに必要以上の設定をさせることなく、全ての端末が一連となって機能する仕組みです。

直感的な操作性に優れたテレビ、自分の好きな番組を好きなように見られるという、ユーザーにとって何が本当に価値があって、それに対して自分たちが提供できることは何か、これを徹底的に考え抜いた結果、ジョブズの頭にはすでにそのテレビは完成していたのではないでしょうか。

■次のテレビへの期待

こんな情報がありました。次のアップルTVは2012年あるいは13年頃にリリースされるというものです。
Apple Could Release TV Set in 2012 [REPORT]|Mashable
Apple Looking to Launch Siri-Enabled Television Set by 2013|MacRumors

アップル以外にも、グーグルとTVの話題も見かけました。方向性はアップルTVと似ており、シンプルにし利便性を高めるというものです。
An Update on Google TV|Google TV
Google TV gaining Android Market, simpler interface with new update|AppleInsider

昨今はTV離れが言われ、実際にそうしたことを示すデータを見かけることもありますが、少なくとも自分の身の回り、家族だったり、ツイッターやフェイスブックを見ていると、テレビの話題で盛り上がっていることが少なくありません。なんだかんだでテレビって、みんな好きなんだなと感じます。そんなテレビでイノベーションが起こるのか、そしてそれが私たちとテレビの関わりを変えてくれるのか。近い未来にその答えがわかる日がやってくるのかもしれません。


※参考情報

Jobs's final plan: an ‘integrated’ Apple TV|The Washington Post
Apple exploring 3D gestures to control devices from a distance|AppleInsider
Apple Could Release TV Set in 2012 [REPORT]|Mashable
Apple Looking to Launch Siri-Enabled Television Set by 2013|MacRumors
An Update on Google TV|Google TV
Google TV gaining Android Market, simpler interface with new update|AppleInsider


投稿日 2011/09/17

やっぱりグーグル先生の考えることはすごい。Google ローカルショッピングという挑戦

グーグルが実店舗の商品の価格や在庫情報を検索できる「Googleローカルショッピング」の提供を開始したと発表しました(11/9/16)。

参考:Google ショッピングで実店舗の商品を検索|Google Japan Blog


Google ローカルショッピングとは


このサービス内容をもう少し見てみます。


(引用:ヨドバシやマツキヨの商品、1200店の価格をグーグルで在庫情報も|日本経済新聞(2011/9/16))

上図は日経新聞からの引用ですが、現時点ではヨドバシカメラやマツモトキヨシホールディングス、良品計画など流通大手7社と組み、全国の実際の店舗にある商品価格や在庫情報をネット上で見られるようになっています。

Google マップと連携することでその店がどこにあるかや、電話番号・店舗までのルートも表示します。

実店舗での販売商品だけでなく、ネット通販サイトでの価格・在庫情報もわかるので、ユーザーは実際の店舗からネット上の店舗まで商品情報を簡単に比較することができます。

Google ローカルショッピングは無料でユーザーに提供されています。そして、小売の参加料も無料のようなので、グーグルにとっては直接このサービスでお金を稼ぐという位置づけではないようです(ページ上の広告表示はありますが)。

ここにグーグルの哲学を見ることができます。

あくまで情報を集めてきて整理をし、それを使うユーザーを増やすという考え方。つまり、「世界中の情報を整理する」というミッションに沿って、マネタイズはユーザーを増やすことでそこに表示させる広告効果を高めることを通じて実現するというものです。

このローカルショッピングの特徴だと思うのが、店舗の商品価格や在庫情報を小売側から提供を受けている点です。

というのも、グーグルはどちらかというと情報は自分で集めてくる傾向があり、例えば、Web上の情報はクロールロボットを徘徊させることで、ストリートビューはカメラ付きの自動車を実際に走らせていますし、Googleブックスなんかも自分たちで書籍をスキャンしています。

このようにオンラインもオフラインの情報も自分たちの手で集めているのですが、ローカルショッピングにおいては小売から提供してもらっています。

グーグルは12年末までに参加企業を100社程度まで増やすとしているようですが、拡大するにあたり、「精度を重要視している。急速に拡大したいが、密にやりとりして、クオリティを担保できればやっていくという形でパートナーを増やす」(グーグル プロダクト マネージャーの鈴木宏輔氏)という方針のようです。

参考:実店舗の商品価格や在庫も検索できる「Google ローカルショッピング」|CNET Japan


参加する小売側の狙いは Online to Offline


この CNET の記事にはさらに、ヨドバシカメラ取締役副社長の藤沢和則氏の次のようなコメントがあり、小売側にとっても参加する意義があることがうかがえます。

店頭でスマートフォンを見て、ネット販売の価格と比較して帰ると言う方もいる。(Google)ローカルショッピングで『実際の店舗も安い』と分かってほしい。ネットのほうが実店舗より安いという“都市伝説”を崩していく。

O2O(Online to Offline)という言葉をよく見るようになりました。

意味は、オンライン上にある情報がオフラインでの購買行動に影響を与えるというようなことですが、イメージとしては、お店に買いに行く前に価格コムなどで口コミ情報の価格情報を見て、口コミ評価の高い商品を最安値のお店で買う感じです。

パソコンだけではなくスマートフォンなどのモバイルにも対応していることも考慮すると、Google ローカルショッピングはまさにO2Oを促すサービスです。

上記のヨドバシカメラのコメントも、Online to Offline につなげる内容だということに気づきます。

小売にとってローカルショッピングへの参加は無料とはいえ、グーグルへこれまでは(ネット上には)非公開だった情報を提供することになります。

もちろん、今後は自分たちの競合他社も同様に情報を提供することになる可能性があり、グーグルのサービス上で情報が透明化されることで間違いなく価格などの競争が激しくなるでしょう。ローカルショッピングはまさに小売とグーグルの二人三脚です。


Google の挑戦


Googleローカルショッピングでは商品が、どこに・いくらで・どれだけ売られているかの情報や店舗の地図や電話番号がGoogleマップ上に表示されます。

これをグーグルが整理した情報としてユーザー側に提供する、うまく循環すれば、ローカルショッピングを見たユーザーが店舗に足を運び購入し、次もローカルショッピングを使うという形が生まれます。

何か買う時はグーグル先生にちょっと聞いてみるという人が増え、使用頻度も上がること、そして参加企業も拡大し実店舗からというオフライン情報がさらに集まってくる、これがグーグルが描く当面のゴールイメージでしょう(このへんを KPI で目標設定しているのではと思います)。

あらためてローカルショッピングというサービスを通じてグーグルがやっていることを整理すると、これまでは自力ではなかなか取得できなかった実店舗からの情報を、小売から日々定期的に提供してもらえる仕組みが構築できたことになります。

ネット販売の情報であればオンライン上なので情報を集めやすいことに比べ、集めにくかったオフラインの情報が手に入る。それも小売からオフィシャルな形で。実店舗の情報がオンラインに取り込まれ、Google マップなどの既存のオンラインサービスと連携することで価値が生まれます。

当然ここに Google+ などのグーグルが持っているサービスともつながってくるのではないでしょうか。グーグルにとってはこのローカルショッピングは意味のある一歩だなと感じます。グーグルはまた1つオフラインの情報をオンラインに引き込もうとしているのかもしれません。


※参考情報

Google ショッピングで実店舗の商品を検索|Google Japan Blog
ヨドバシやマツキヨの商品、1200店の価格をグーグルで在庫情報も|日本経済新聞(2011/9/16)
実店舗の商品価格や在庫も検索できる「Google ローカルショッピング」|CNET Japan
ヨドバシやマツキヨなどの店頭在庫をググれる「Googleローカルショッピング」始動|Gigazine
Googleがローカルショッピングの検索機能を公開。近隣店舗の商品価格と在庫情報が調べられる|TechCrunch JAPAN

投稿日 2011/08/27

日本の1万年の人口増減とFacebookのネクストステージ

先日、ツイッター上である先輩が「Facebookがそろそろ潮時かもしれない」というツイートをされていました。飽きたとか単純な理由ではなさそうだったので、ちょっと気になりReplyをすると、次のような状況からでした。
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色々な「友達」が増えすぎてなんとなく投稿がしにくくなった。フェイスブックには最近できた友達から中学時代の友人までいるので、投稿内容を妙に意識してしまう結果、無難なことしか書けない。今は不特定多数の人に見られるtwitterのほうが逆に気軽に投稿しやすい。
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■なぜFacebookでは無難な投稿内容になるのか

上記のリプライをもらった時に、確かにそうだなと思いました。フェイスブック(以下、FB)上にはいろんな「友達」がいます。地元の友達や大学の友人、仕事でお世話になっている方、等々です。FBに投稿するとき、どこかで見られることを意識してしまいます。例えば、投稿内容が特定のグループにしか意味・背景が通じないことだったりする時は書き込むのを結局やめたり、あるいはどこかで自分のことを良く見せようという気持ちがあるような気がします。つまり、書き込み内容にフィルターがかかってしまい、結局フィルターを通るのは無難な内容になってしまうのです。最大公約数的な感じで。

一方のツイッターの場合、気軽にできるのは不特定多数の人というところがポイントだと思っています。というのも、不特定多数だと投稿内容から自分がどう思われてもある程度構わないという意識があり、だからFBほど投稿内容にフィルターがかからなく、無難なことでなくてもアップできる。もちろんその中にはFBと同じように知り合いや友達、同僚もいるわけで、ツイートする/しないのフィルターをかけますが、それでも気楽にツイートできてしまいます。

■Facebook上の友達が増えるとどうなるか

FBに話を戻しますが、FB上で友達の数が増えることで次第に投稿内容がPersonalな内容が少なくなるという記事がありました。
Do Growing Friend Lists Mean Shrinking Facebook Use?|All Facebook

以下の図は同記事の元記事からの引用ですが、それによればFB上でつながっている友達の数により、より個人的なネットワークであるPersonal Networkから、Social Network、Professional Networkの3つに分かれると指摘しています。

NETWORK OVERLOAD: WHY FACEBOOK IS SINKING UNDER ITS OWN POPULARITY (WARNING TO GOOGLE+)|GREAT FINDSから引用

記事では同じ内容でも、Personal、Social、Professionalの3つで表現が次のように変わると言います。「週末をJaneと過ごしてとても楽しかったよ」(Personal)、「楽しかったハワイ旅行から今戻ってきた」(Social)、「ハワイで有意義な時間を過ごした」(Professional)。

もちろん、人により様々だとは思いますが、友達が増えるということは冒頭で書いたように色々な人間関係がFB上にできるので、個人的な内容やプライベートの話が中心だったものが、人数が多くなることでより公なメッセージになるというこの記事での指摘は理解できるものだと思います。

この引用記事のタイトルは「Do Growing Friend Lists Mean Shrinking Facebook Use?」(友達が増えることでフェイスブックの使用が減る?)です。確かに、フェイスブック疲れというか、フェイスブック離れみたいなものもちらほらと聞いたり、ネット上でも見かけるようになりました。(理由は様々で一概に友達の人数とは限らないことだと思いますが)

■1万年間の日本人口の趨勢からの示唆

「2100年、人口3分の1の日本」(鬼頭 宏 メディアファクトリー新書)という本をちょっと前に読んだのですが、そこにおもしろいことが書かれていました。2005年をピークに日本が人口が減少期に入ったと言われていますが、本書によると縄文時代以来の約1万年間において、日本では少なくとも4回の人口増加期と減退期があったようです(p.47-48)。

人口が増加するのは、海外から新しい技術や物産・社会制度が導入され新しい文明システムへと転換していく時代、一方で人口減退が起きるのはそれが定着して社会が成熟し発展の余地がなくなる時代だと言います。一例を引用します。狩猟採集社会であった縄文時代、人口密度は狩猟採集で成り立つ社会として世界一と考えられてるようですが、一方で生活は環境に左右され縄文時代後半は寒冷化も進んだことで人口は減少したようです。ですが、人口減退に歯止めをかけたのが稲作文化の流入でした。日本に水稲農耕が定着すると人口増加期に入ったようです。つまり、原始的な狩猟社会に稲作という新しいシステムが外部から入ったことで、新しい段階に移ったのです。 

人口から読む日本の歴史から引用

■外部からの「変化」がFacebookに何をもたらすのか

個人的に思うのが、これと同じようなことがフェイスブックにも起きているのではないかということ。もちろん全然仮説レベルなのですが、FBも転換期にあり、これまでのユーザー数が爆発的に増大しているフェーズから次の段階に移りつつあるんじゃないかなと。さっきの日本での人口増加・減退の歴史を参照すると、FBが次のフェーズに入り、さらに成長するためには外部からの新たな文化・システムが必要ということになります。それは何なのか。

そのきっかけになるのでは思っているのが、つい最近FBが発表した複数のアップデートです。その中には投稿の公開範囲を制限するのが簡単になるとあります。ユーザーが投稿を下書きしている時点で公開範囲のオプションが表示され、Friends(友だち), Public(一般公開)、Custom(カスタム)と選べるようです。
Making It Easier to Share With Who You Want|The Facebook Blog
Facebook、友だちがタグ付けした写真を事前に承認できるようになった―その他改良多数発表|TechCrunch JAPAN

これの発表内容を見た時に連想させられたのがGoogle+のCircleです。G+とFBの違いの特徴として、G+はサークル機能により投稿内容が指定しやすくなっていることがあります。G+では他のユーザーをフォローする時にそのタイミングでどのサークルに含めるかを決めますが、FBではこれまではリストはあまり有効に使われていない印象でした。それが、今回のFBの発表でG+のシステムを意識した変更のように思えました。

この変更がFBや私たちユーザーに何をもたらすのか。投稿の公開範囲が選びやすくなったことで、冒頭で書いたような無難な投稿内容にとどまらなずより活発なコミュニケーションができるようになるのでしょうか。今後の様子を見る必要がありそうですが、次のフェーズに入るための「外部からの新しい文化・システム」になるのか、興味深いところです。


※参考情報

Do Growing Friend Lists Mean Shrinking Facebook Use?|All Facebook
NETWORK OVERLOAD: WHY FACEBOOK IS SINKING UNDER ITS OWN POPULARITY (WARNING TO GOOGLE+)|GREAT FINDS
Facebook Sees Big Traffic Drops in US and Canada as It Nears 700 Million Users Worldwide|Inside Facebook
人口から読む日本の歴史
Making It Easier to Share With Who You Want|The Facebook Blog
Facebook、友だちがタグ付けした写真を事前に承認できるようになった―その他改良多数発表|TechCrunch JAPAN
Facebook、プライバシー機能をアップデート--投稿の公開先指定やタグ付けの承認などで変更|CNET Japan


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投稿日 2011/08/07

民放5社×電通のネットテレビは普及するのか?期待したいVODを考えてみる

先日、テレビに関してある発表がありました。民放キー局 5 社と電通が共同でインターネットテレビを来春に実用化するというものです。

電通のプレスリリースでは、「インターネットTV上において、民放各社が主体となった有料課金型のVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスを共同で推進していくことに基本合意」とあります。

参考:民放キー局 5 社と電通が共同でVODサービスを推進|電通


民放5社 × 電通の VOD サービスとは


電通によるリリース内容をもう少し見てみます。

この民放VODは、テレビの価値を向上させるという共通認識のもと、視聴者により多くのテレビ番組への視聴機会を提供することで、テレビ番組の視聴者層を拡大し、テレビ番組のファンを増やそうとするものです。

(中略)

民放VODは、簡単で誰でも使いやすいユーザーインターフェイスを開発し提供することを検討しています。

(中略)

この民放VODを、インターネットTVだけではなく、スマートフォン・タブレット端末などマルチデバイスにも広げ、リアルタイム視聴に繋げる流れを作り出すことにより、テレビの価値の最大化を図っていきます。

リリースでは抽象的な表現にとどめている印象ですが、この方向性は正しいと思います。つまり、TV番組視聴者を増やすために、ユーザーインターフェイスに優れ、TVだけではなくスマホやタブレットPCでも視聴可能としていくというのですから。

もう一つ印象的だったのは、電通が民放5社をとりまとめている点。個人的にこれができるのは電通以外に見当たらないのではと思います。

このニュースを上記のリリース前に報じていたのが日経でした。電子版では同日の午前2時頃に、紙媒体でもその日の朝刊に掲載されていました(テレビでネット動画も自在に 民放5社と電通、来春に|日本経済新聞)。

こちらではVODサービスのイメージ(右図は日経から引用)や課金体系など、少し具体的な内容が報じられています。中身を見ると、少し残念な気持ちになりました。そこに書いてあったのはこの方法で本当に普及するのかという内容だったからです。


普及への3つのハードル


有料課金型VODということでその価格体系ですが、1時間番組が1本300円前後となる予定だそうです。

会員登録をすれば銀行からの引き落としなどで課金されるとのこと。300円を払ってでも見たいような番組がどれくらいあるかというのが、1つ目に感じた普及へのハードルです。

もちろん、関連する動画も見られるという付加価値があるので単純には現在の放送内容との比較はできません。しかし、それにしても番組1本で300円というのはかなり強気な価格設定だと感じます。

サービスを実際に見てみないとなんとも言えませんが、個人的には1ヵ月で10本までは無料、見放題は300円/月くらいのイメージ。これでもVODは使わないかもしれません。

2つ目のハードルがコンテンツです。

日経には、「民放5社合計でドラマやドキュメンタリー、スポーツなど過去に放送した動画は6500本あり、今後増えていく。」とありました。

今後は増えていくことに期待はしたいですが、現時点で5局で番組動画数が6500本というのは少ないです。このVODサービスで期待したいのは、上図にあるようにどれだけ関連する動画と連動するかだと思いますが、コンテンツの量が不足する感が否めません。

コンテンツ数を増やすとともに有料の価値に見合う質も求められますが、個人的には現在TVで放送されている番組の質からすると、300円という価値に見合うかというとちょっと厳しいと感じます。

3つ目のハードルについてです。

現在発売されているテレビではこのサービスを受けられないため、家電数社が来春にも対応機器を発売する方向で準備を進めている点です。TVの買い替えが必須というのは普及には相当にハードルが高いです。

この間、エコポイントやアナログ放送終了に伴う地デジ対応TVの買い替えが大量に発生しています。電通のリリースでは14年度の本格運用を目指しているとありますが、TVの平均使用年数は10年以上というデータもあります(家電リサイクル法の施行状況|経済産業省)

例えば、せめてアップルTVのように既存のTVにつなげるだけでOKとかでないと、この有料VODのためにすぐにTVの買い替えが起きるとはなかなか思えません。

以上3つを整理すると、価格(Price)、コンテンツ(Product)、見るために新しいTVが必要(Place)ということで、マーケティング4Pで言うところのうち、普及には3つのハードルが存在します。(残りのPromotionは、日経がフライング気味で具体的に報じたことで特にネット上で否定的な意見が多いように感じるのはうがった見方かもしれませんが)


なぜ電通はVODサービスに取り組むのか


さて、ここであらためて考えてみたいのが、なぜ電通がこの有料課金型VODを推進するのかという論点です。個人的な印象ですが、民放5社のとりまとめは簡単ではなかったように感じます。それをやってでも電通にとって得られるメリットは何なのかです。

電通のリリースでは「テレビ番組の視聴者層を拡大し、テレビ番組のファンを増やす」とありますが、やはりここにはTV広告を拡大させるという意図があると考えるのが自然だと思います。

そもそもこのVODサービスが純粋に視聴者からの60分番組1本で300円という課金だけで成立するのか、課金+広告というビジネスモデルなのかは現時点では不明ですが、電通が絡んでいることを考えると後者となるように思います。では広告をどんな形で入れてくるのか、実はこのVODのニュース発表の数日前にあるリリースを発表しています。

参考:電通とジュピターテレコム(J:COM) VOD サービスにおける新たな広告モデル『CM 割』を開始|電通


中身を要約すると、JCOMのVODサービスで、企業のCMを視聴すると視聴料が割り引きとなる広告モデル「CM割」を9月1日から3か月間試験的に始めるとのことで、割引は105円。このニュースを報じたAdverTimes(アドタイ)によれば、視聴料は60分のテレビ番組で315円とあります。

参考:CM視聴で視聴料105円割り引き 電通とJCOM、VODで新たな広告モデル|AdverTimes(アドタイ)


60分番組が300円程度。これで電通の意図も見えてくるのではないでしょうか。つまり、これは偶然の一致ではなく、民放5社とのVODを考慮した上での広告モデル構築のためのパイロットテストではないかと思います。

JCOMと取り組んでいる試験サービスでは、既存のTVの広告モデルよりもう一歩踏み込んでいる印象があります。というのは、用意されているCMは60秒~180秒の長尺版で(ジャンルの異なる8つのCMの中から見たいものを1つ選ぶ)、ユーザーは視聴後に簡単なアンケートが用意され、その後に番組視聴となるようです。

電通の説明では、「視聴者は複数業種の中から自ら選んだCMを視聴するので好意を持って見てもらえる。また長尺タイプのCMを見てもらうことで、より商品・ブランド理解につながる」とあります。

個人的には、315円から105円の割引があってもまだ高いように気がしますが、広告無しの視聴を追加で課金するのではなく、広告ありを割引するという「引き算」の発想はなかなかおもしろい試みです。


期待したいVODサービス


最後に、VODサービスに関してあらあめて思うことを少し。今回の発表では民放5×電通という組み合わせでしたが、これが電通ではなく例えばニコニコ動画やYouTubeだとどうなったか、これを少し考えてみます。

YouTubeであれば、ユーザー数という規模のメリットがあります。つまり世界中にユーザーがいる。もちろん日本語のTV番組は基本的には日本語なのですが、

Googleには音声翻訳やYouTubeへの自動字幕表示技術があります。もっと技術精度を上げる必要はありそうですが、この当たりをうまく活用すれば日本語番組を自動的にその国の言語で字幕表示させることも可能になることが期待できます。

参考:Google、音声入力で57言語を翻訳できるアプリ『Google Translate』配信開始|Searchina
参考:YouTube、日本語音声を認識して字幕を自動生成・表示する機能を追加|INTERNET Watch

グローバルに日本のTV番組を配信できるとして、アニメなど日本には有力なコンテンツがあります。あるいは四季折々の日本や文化遺産、観光地としてもアピールできるかもしれません。

民放5社、あるいはNHKも含めた日本のコンテンツ資産をグローバルで普及しているYouTubeと組み合わせることで日本の良さを知ってもらえるかもしれません。

あとはYouTube(Google)、TV局、コンテンツプロバイダー、広告主の各プレイヤー間でうまくマネタイズできる仕組みがあり、ユーザーにとっての優れたユーザーインターフェイスがある。これら価値に見合う価格体系。これくらいの構想であればわくわくします。


※ 参考情報

民放キー局 5 社と電通が共同でVODサービスを推進|電通
テレビでネット動画も自在に 民放5社と電通、来春に|日本経済新聞(11年8月3日)
民放5社が新たなインターネットテレビを来春に実用化、専用テレビも同時発売|GIGAZINE
家電リサイクル法の施行状況|経済産業省
電通とジュピターテレコム(J:COM) VOD サービスにおける新たな広告モデル『CM 割』を開始|電通
CM視聴で視聴料105円割り引き 電通とJCOM、VODで新たな広告モデル|AdverTimes(アドタイ)
Google、音声入力で57言語を翻訳できるアプリ『Google Translate』配信開始|Searchina
YouTube、日本語音声を認識して字幕を自動生成・表示する機能を追加|INTERNET Watch

投稿日 2011/07/17

Googleが計画する「ウェブデータ取引所」は、あなたと広告のミスマッチを解消してくれるのか

それにしてもスケールの大きなニュースです。Ad Age DIGITALによれば、グーグルがウェブデータの取引所を創設する構想を持っているとのことです。
Google Readies Ambitious Plan for Web-Data Exchange|Ad Age DIGITAL

■グーグルが計画中のウェブデータ取引所とは

まずは開発中とされるグーグルのこの取り組みについて見てみます。簡単に言うとグーグルがやろうとしているのは、ユーザーデータが売買できる仕組みおよび場(取引所)を提供するということです。ユーザーデータは、ネットでの行動履歴データで例えば訪れたサイトや検索した時に入力した単語(検索ワード)など。このデータが売買されるわけですが、売り手はウェブサイトなど、買い手は広告主となります。

広告主は何のためにデータを買うかというと、広告をどういう人たちに表示をさせるかというターゲット情報を得るためです。広告の基本は、1.人の集まるところに出す(だからTV広告では視聴率が重宝される)、2.広告を見てほしい人に見てもらう、だと思っていますが、この2点を考えるためにターゲット情報が活用されます。ここで言うターゲット情報というのが、上記のウェブサイトなどから提供される「ネットでの行動履歴」に当たりますが、ネットでの行動履歴というのは、言い換えればその人の興味・関心のデータです。というのは、ネットで何かのサイトや動画を見る、検索をするなどは、そこに何かしらの興味があってのことで、上記のAd Ageの記事では「新車を購入しようとしている人」、「旅行を計画中の人」などの例が書かれていますが、行動履歴を積み重ねるとその人が何に興味を持っているのか、さらにはどういう人なのかもある程度はわかるようになります。

グーグルが開発しているこのデータベースが実現すれば、広告主は自分の広告を表示させたいターゲットを抽出することができ、広告を見てもらいやすくなり購入にもつながることが期待できます。ユーザーデータについて需用と供給が成り立つことで、それに対してグーグルの役割は、あらゆるユーザーデータを一つに集約した巨大データベースを構築し、売り手と買い手の間で円滑にデータが売買されるような仲介役なのです。

■あなたにとってどういう意味があるのか

では、仮にグーグルのウェブデータ取引の仕組みが実現されるとして、その場合に私たちに一体何をもたらすのかということを考えてみます。認識としてあらためて考えてみたいのが、自分たちのまわりにはたくさんの広告であふれているものの、それらのうちどれだけの広告に興味・関心を持ち、さらにはその広告の商品・サービスを買うところまで至ったかという点です。ウェブ上でも多くの広告が表示されますが、個人的には大部分はクリックすることはなく、もっと言えば何の広告かの認識すらしていないこともあります。

この状況を冷静に考えてみると、現在の広告は多くの場合でミスマッチが起こっているのではないでしょうか。つまり、広告が表示されていても、見る人にとってその時点で興味関心は持たれていない、本当に見てほしい人(見てくれる人)に表示されないというミスマッチです。これはあらためて考えてみると残念な状況です。とういのも、ミスマッチが発生しているということは、その広告の広告主・消費者・広告媒体の三者それぞれにとっても望ましい状況ではないと言えるからです。広告出稿費を払ったのに広告の効果が出ない、見たくはない広告が表示される、表示広告に効果が見えにくいと広告媒体としての価値が上がらない、といった感じに。

広告というのは必要な人に適切なタイミングで提供できれば、消費者と広告主の双方にメリットがあるものだと思っています。広告の中には関心を抱くものも多少はあるわけで、広告で存在をはじめて知ったり、ちょっと買ってみようかなと思うこともある。あるいは実際に広告の影響で買うこともあります。

少し前置きが長くなりましたが、グーグルの取り組みが実現されるとこうしたミスマッチが解消していく可能性があると考えます。グーグルが提供している検索連動型広告は検索ワードという興味・関心に連動した広告なわけですが、それよりも幅広いネットでの行動履歴をベースに広告を表示させるターゲットを選んでくることができるからです。これにより、広告が必要な人に適切なタイミングで提供されることが期待できます。ふと○○が欲しいと思った時に向こうから知らせてくれたり、自分の中で完全なニーズになっていないことまで提案してくれる、なんてことが実現できるかもしれません。

■独占とプライバシーの問題

一方で、自分のネットでの行動履歴が使われることに対しての反発も当然起こってくるでしょう。このようなウェブのユーザーデータはクッキーという機能を活用することになるのですが(他にも仕組みはあるのですが)、自分のデータが提供されることがわかっていて許諾が得られている場合はいいとして、ユーザーにとっては自分のウェブデータが活用されていることにも気づいていないケースもあり、このあたりは個人情報やプライバシーの問題が必ず出てくると思います。

それにただでさえグーグルは独占禁止法やプライバシー問題で、アメリカやヨーロッパの独禁・司法当局からの監視の目が増している状況です。そんな中、グーグルが個人のウェブデータを集約し、売買できるようなデータベース・仕組みを構築するとなれば、独占禁止法とプライバシー問題の両方で懸念の声が出てきてしまう恐れがある。その実現は簡単ではないというのが個人的な見解でもあります。
フェイスブック・米当局…グーグル支配に包囲網|日本経済新聞(11年7月7日)
[FT]グーグルに独禁法関連の疑い相次ぐ 今度は欧州で訴訟 |日本経済新聞(11年6月28日)

■グーグルにとってなぜこのプロジェクトなのか

それでもなお、グーグルはこのプロジェクトを前に進めていくのでしょう。なぜなのかを整理するために、ここではグーグルの目的を考えてみます。1つ考えられるのは、ユーザーの行動履歴というウェブデータが集まるデータベースが構築できそこにデータを売る/買うプレイヤーが集まる、こうしたプラットフォームをグーグルが支配することです。支配できれば、課金モデルが構築できます。一定の手数料という形でグーグルにとっては持続的な利益を得ることができる。

この可能性はなくはないのですが、個人的にはグーグルの目的はこのビジネスモデルではないのではと思っています。それはグーグルがアンドロイドOSを無償提供し、あくまでアンドロイドの普及を進めているのと同じで、グーグルにとって大事なのはあらゆるウェブのデータが集まることです。グーグルの目的は、データが集まり、広告主がそのデータベースからターゲットを抽出できる、本当に必要な人に広告が表示でき広告のマッチング精度・効果が上がる、そしてオンライン広告の価値がより向上すること。これがグーグルが描いていることなのではないでしょうか。

冒頭で引用したAd Ageの記事はタイトルにAmbitious Planという表現が入っており、さらに記事ではこのプロジェクトに詳しいグーグルの幹部によれば「one of the most ambitious in Google's march to become a brand advertising giant.」と表現し、グーグルがブランド広告の巨人になるためは最も重要なプロジェクトの1つと指摘しているのです。グーグルの目的はウェブデータ取引所で広告主にデータを活用してもらい、オンライン広告へこれまで以上に投資してもらうこと、ひいてはそれが広告媒体としてグーグルの収益に結びつくという構図です。

■個人データ活用への期待

最後に、このニュースについて自分はどう思うかを少し書いておきます。ウェブのデータ活用にはメリット/デメリットがあるものの、結論としては期待のほうが大きいと思っています。マイナス面としては自分のウェブ上の行動履歴がデータとして誰かに(知らないところで)活用されるという不安がありそうですが、一方でウェブを使い以上はある程度の自分のデータが提供されてしまうのは不可避だと考えます。自分の個人情報をウェブ上に預けることで、利便性を享受できている面もあります。であるならば、データが提供されることを受け入れ、そこから個人データをいかに活用し、どうすれば世の中をもっと豊かにできるかを考えたいというのが個人的な思いです。

※参考情報
Google Readies Ambitious Plan for Web-Data Exchange|Ad Age DIGITAL
データが通貨になる Googleが「ウェブデータ取引所」機能構築へ=米報道【湯川】|TechWave
フェイスブック・米当局…グーグル支配に包囲網|日本経済新聞(11年7月7日)
[FT]グーグルに独禁法関連の疑い相次ぐ 今度は欧州で訴訟 |日本経済新聞(11年6月28日)


投稿日 2011/07/03

グーグルが新SNSのGoogle+をリリースする2つの意味とわくわく感

ついにGoogleも動いてきました。同社が世界に発表した新しいSNSであるGoogle+です。(11年7月2日現在まだパイロットテスト段階で、一部のユーザー限定で使用が可能)

参考:Introducing the Google+ project: Real-life sharing, rethought for the web|The Official Google Blog

今回のエントリーでは、Google+について以下のような論点で書いています。

  • Google+とは何か?Facebookとの違いは?
  • なぜGoogleはSNSに取り組むのか?
  • Google+が普及するとどうなるのか?そして期待すること
投稿日 2011/04/03

Googleは「+1」でソーシャル検索を実現できるのか?

グーグルがアメリカ時間の3月30日に、グーグル検索結果のページで「+1」(プラスワン)ボタンの表示を開始したと発表しました。
+1’s: the right recommendations right when you want them—in your search results | Official Google Blog

+1の表示イメージ

出所:Official Google Blogから引用

今回のエントリーでは、グーグルの「+1」の仕組みと、自分は+1をどう思っているかを中心に書いています。

■「+1」の仕組み

ユーザーが気に入ったページや良いと思った広告を「+1」ボタンで推薦し、友人に対してより良い検索結果、検索連動広告(AdWords)を提供できるというものです。+1の使用イメージは「Google Inside AdWords」ブログでの掲載記事にあった説明イメージがわかりやすいです。(引用:The +1 button & AdWords | Google Inside AdWords

1.グーグルの検索結果に表示される「+1」ボタン


 2.「+1」クリック後 (青くなる)


3.友人の検索結果 (友人Brianが「+1」をクリックしたことがわかる)


ボタンのイメージとしてはFacebookの「いいね!」ボタン、mixiの「mixiチェック」と同じような印象です。グーグルは「+1」ボタンにより、これまでの独自アルゴリズムに基づく検索結果表示とは異なった、自分の友人のおすすめが反映されるというソーシャル検索をリリースしたのです。

今のところ(11年4月3日時点)ではアメリカのみのリリースですが、+1を使用するためにはグーグルアカウントでログインをした状態で検索を行う必要があります。現時点でグーグルが認識するユーザーの友人というのは、グーグルアカウントに関連付けられている友人・知人のようで、GmailあるいはGoogle Talkのチャットリストに登録されている人々、Googleコンタクトに登録されている人々、Google ReaderとGoogle Buzzでフォローしている人々に限定されているとのこと。(参考:Googleが「+1」ボタン発表、Facebookの「いいね!」に似たソーシャル検索|INTERNET Watch

それでは、グーグルの+1は、ソーシャル検索として普及するのでしょうか。個人的には様子見か、やや少し懐疑的に見ています。以下、その理由を3つ書いています。

■理由1:ソーシャルグラフ

ソーシャル検索で重要な要素は自分が持っているソーシャルグラフ、つまり、(ネット上での)人間関係です。既存のグーグルの検索アルゴリズムであれば、誰が検索をしても返ってくる結果は変わりません。自分が知りたい情報が見つかるかは、検索するキーワードの選び方がポイントになります(もちろん、これだけではないですが)。一方のソーシャル検索では、検索キーワードに加え、自分の友人がどういったサイトをおすすめしているかによって、検索結果が異なります。

現在のところ、+1に反映されるソーシャルグラフはGoogleアカウントに限定されています。個人的には、SNSやツイッターのほうが充実しており、今のGoogleアカウントに紐づくソーシャルグラフでは少し物足りないように感じます。ただ、この点はグーグルも取り組んでいくとしており、公式ブログではツイッターなどとも連携を目指すと言っています。ツイッターのソーシャルグラフがグーグルの検索結果に加われば、ソーシャル検索の精度は高まるかもしれません。

■理由2:ユーザーインターフェイス

2つ目の理由は、ユーザーが「+1」ボタンをクリックする時の使いやすさ(ユーザーインターフェイス)に関するものです。+1を自分が使うイメージを具体的に想像してみると、(1)グーグルで何かを検索する ⇒(2)知りたかった情報が掲載されたサイトが見つかる ⇒(3)そのサイトからグーグル検索結果に戻って「+1」ボタンをクリック、となります。

フェイスブックの「いいね!」ボタン(あるいはmixiチェック)と比較すると違いが明らかになりますが、「いいね!」はニュースサイトやHP上に設置されているのに対し、+1は現時点ではグーグルの検索結果ページに設置してあります。故に、上記(3)のように、一回戻って「+1」をクリックする必要があり、これは自分であれば、一回戻るだけとはいえちょっと面倒な流れです。

もっとも、同じくグーグル公式ブログによれば、グーグル検索結果ページ以外にも「+1」ボタンを展開していく姿勢を出しているので、「+1」ボタン設置のブラグインが提供されるのは時間の問題だとは思います。ただ気になるのは、今でも多くのページですでに「つぶやく」「いいね!」「はてブ」・・・などのソーシャル系のボタンが複数設置されていて、さらに「+1」も増えることになる点です。

■理由3:「+1」のユーザーメリット

3つ目の理由は、+1をクリックするユーザーのメリットに関してです。3つの理由のうち、この3つ目が最も気になる点です。では、+1とフェイスブックの「いいね!」とで比較してみます。

「いいね!」ボタンを押すと、フェイスブック上の友人のニュースフィードや自分のウォールに『○○さんがリンクについて「いいね!」と言っています。』と表示されます。自分の「いいね!」情報が友人にリアルタイムで共有ができます。

翻ってグーグルの「+1」ボタン。+1をクリックすると、その結果が反映されるのはグーグルの検索結果ページです。逆に言えば、自分の友人がそのページに含まれるキーワードをグーグルで検索するまでは、自分の「+1」の情報は共有できないのです。

フェイスブックの「いいね!」やツイッターのRTと、グーグルの+1では、そもそもの設計思想が違うように思います。つまり、いいね!やRTは友人同士で共有するためのツール、+1は検索精度を向上させる・検索連動型広告の品質を高めるためのツールです。

フェイスブックの「いいね!」、あるいはツイッターのRTもそうですが、なぜわざわざ自分がこの手間を1つ行うかというと、自分が共感したモノ・コトを簡単に発信して共有したい気持ちからだと思います。これがインセンティブ。しかし、グーグルの「+1」では、共有されるのは友達がグーグルで検索をしたタイミングに限定されるという条件が付きます。なので、今の時点での+1には、「いいね!」やRTほどのユーザーメリットが直観的にはないような気がしました。(長い目で見れば、多くの人が+1を使用すればグーグルの検索精度は全体的に向上するユーザーメリットはあるのですが)

■最強はGoogle+Facebook?

検索にソーシャル性を組み合わせるのは、グーグルにとっては一大プロジェクトだと思います。グーグルの検索結果はアルゴリズムによる機械的なものでしたが、ここにソーシャルというこれまでとは異なる概念が入り込むからです。グーグルという巨人がその歩む方向を変えつつあるようにも感じます。その意味では今後が楽しみです。

自分が信頼のおける人からの情報は有益だと感じてしまうことからも、ソーシャル検索は今後の有望な領域だと思います。実際に、すでにマイクロソフトとフェイスブックはタッグを組み、マイクロソフトの検索サービスBingにフェイスブックの「いいね!」情報を反映させる取り組みを進めています。個人的には、この記事が指摘するように、Google+Facebookと組んでくれるのが、ユーザー側からするとありがたいのですが。
ブラウザー拡張機能「+Like」があればGoogle +1は不要?|Tech Crunch

いずれにせよ、グーグルの+1についてはもう少し様子を見るとともに、今後も注目しておきたいです。


※参考情報

「+1」(プラスワン)|Google
+1’s: the right recommendations right when you want them—in your search results | Official Google Blog
The +1 button & AdWords | Google Inside AdWords
Googleが「+1」ボタン発表、Facebookの「いいね!」に似たソーシャル検索|INTERNET Watch
ブラウザー拡張機能「+Like」があればGoogle +1は不要?|Tech Crunch


投稿日 2011/02/27

多様性を希望したい今後の検索サービス

グーグルの公式ブログ:「Official Google Blog」に、2/24付で次のような記事がエントリーされていました。Finding more high-quality sites in search

■グーグルの検索アルゴリズム変更

記事によれば、アメリカ時間の同日に検索アルゴリズムを大幅に変更したとのこと。改訂の目的は、質の低いサイトを検索結果から除外し、質の高いサイトを上位に上げるためというもの。グーグルによれば、質の低いサイトとは役に立たないコンテンツや単に他からコピーしたコンテンツなどを指しています。なお、検索アルゴリズムの変更はまずはアメリカだけのようで、今後は他国にも展開すると記事では言及しています。

ちなみに、今回のアルゴリズム変更前のことですが、グーグルの検索結果が自分の望む情報が得られない状況を批判した記事がTechcrunchに掲載されていました(記事:Search Still Sucks)。この記事の記者によると、旅行先の宿泊ホテルを探す時やガジェット製品レビューを検索する時は、グーグルは使っていないと言っています。つまり、この分野ではグーグルで検索をすれば自分に必要な情報よりも、そうでないサイトばかりが表示されるのだと思います。24日の今回のグーグルの検索アルゴリズムの変更はこうした状況を改善しようというものです。

グーグルが検索アルゴリズムを改善し続けるのは、彼らが次のようなゴールを設定しているからです。Our goal is simple: to give people the most relevant answers to their queries as quickly as possible. (Official Google Blogより) 目指すところは同じですが、ここ最近はグーグルとは異なる方法を取る検索サービスが登場しているのが興味深いです。

■グーグルとは異なる新しい検索サービス

まずはマイクロソフトのbing。これも2/24付のbingのブログによると、検索結果にフェイスブックの「いいね」ボタンの情報を表示させるそうです。どういうことかと言うと、検索結果のサイトに対してユーザーのフェイスブック内の友達が「いいね!」を投稿していれば、URLの下に友達のアイコンが並び、「いいね」としたことが表示されるのです(図1)。

引用:Bing expands Facebook “Liked Results” | bing Community

bingと同じようなことをblekkoという検索サービスがグーグルに挑戦しています。詳細はこちら:Blekko Goes Social, Now Lets You Search Sites Your Friends Have ‘Liked’ On Facebook | Techcrunch

■コンピューターvs人間

グーグルは検索アルゴリズム、すなわち技術を徹底的に追及することで、検索結果向上を目指しています。一方で、上記のbingやblekkoなどは、友達の「いいね」という人の情報を加味した検索結果を返します。

bingについては、表面的にはグーグル対マイクロソフトの対決に見えますが、実は起こっていることはグーグル対フェイスブックだと思っています。これは個人的な見方ですが、グーグルの思想には、あらゆることをコンピューターがするにようなる、という考え方があるような気がします。一方のフェイスブックは、人を中心に置くという思想であることが「フェイスブック 若き天才の野望」という本では、「人間中心型情報構造」という表現で書かれています(p.431)。

■多様な検索サービスを

では、これら検索サービスについてどう考えるのか。個人的には、グーグルの検索システムはこれからも必要であり、フェイスブックのようなSNSによるソーシャルグラフの情報を活用した新しい検索システムもあってもいいと思っています。現在の検索サービス市場のシェアはグーグルが独占している状況です(図2)。

出所:Experian Hitwise

多様な検索サービスがあり、そして実現されるのはグーグルの目指すゴールであってほしいと思っています。Our goal is simple: to give people the most relevant answers to their queries as quickly as possible.

そう言えば今日、あるテレビ番組で次のような言葉を耳にしました。
「人生での無駄な時間は探し物をする時間である。」

探し物が情報である検索にも、この言葉は当てはまるのではないでしょうか。


※参考情報

Finding more high-quality sites in search | Official Google Blog
Search Still Sucks | Techcrunch
Bing expands Facebook “Liked Results” | bing Community
blekko
Blekko Goes Social, Now Lets You Search Sites Your Friends Have ‘Liked’ On Facebook | Techcrunch
Experian Hitwise reports Bing searches increase 21 percent in January 2011 | Experian Hitwise


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投稿日 2010/12/27

Googleと「個人データ」を考える

「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることである」。これはGoogleが掲げるミッションです。

■Googleが無料サービスを提供できるワケ

グーグルは多くのサービスを提供しています。ウェブ検索、Gmail、グーグルドキュメント、カレンダー、グーグルマップ、YouTube、等々、ここで挙げきれないほど。そして特徴的なのは無料でユーザーに提供していることです。

なぜ無料で提供しているのでしょうか。別の表現をすればどこでお金を取っているのでしょうか。その答えは広告にあります。アドワーズという検索結果連動型の広告やアドセンスというコンテンツ連動広告がそれです。グーグルの考え方は、自社のサービスを使うユーザーが増えれば増えるほど、そこで表示される広告価値が上がる。よって、ユーザーには無料で提供してくれるのです。

■個人データの取得と活用

実は広告以外に、無料で提供する別の目的があると思います。それがユーザーの利用情報である「個人データ」の取得。

例えば、グーグルで検索に使われた検索語(クエリー)は履歴として蓄積され、別のユーザーの検索に活かされています。グーグルの検索ボックスに入力していくと、検索語の予測が複数表示されますが、あれが活用例です。このように多くのユーザーが使えば使うほど、グーグルの検索精度も向上していきます。グーグルにとっては個人データの取得、ユーザーにとっては利便性の享受という、ウィン-ウィンの関係が見えてきます(図1)。


個人データ活用のわかりやすい例がグーグルのブログ上で公表されていました。「Google 年間検索ランキングで、2010 年を楽しく振り返ろう」という記事がそれです(以下は記事から一部引用)。

出所:Google Japan Blog

■データから情報へ

個々人がグーグル検索を使って知りたいことは千差万別です。しかし、ユーザーの利用履歴という個人データを積上げることで、上記の例では今年の流行が見えてきます。個人データという状態では必ずしも整理されておらず量も膨大ですが、蓄積し体系立てることでデータは「情報」となります。

このことに関して、ドラッカーは著書「明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命」で次のように述べています。「整理して体系化しないかぎり、データは情報とならず、データにとどまる。意味をなすには、体系として把握しなければならない」。

個人データについて思うのは、ネットがありモバイルも含め個人の情報発信が普及しなければ、可視化できないものであったということです。

例えば、SNSやツイッターで発信される情報の多くは、昔は個人の中でしか存在しないようなものでしたが、今ではネット上に乗せることで情報が共有されます。個人データが価値を持つような有効活用される背景には、こういった技術の進歩に加え、データ収集システムやデータハンドリングなど、データから情報体系への仕組みができてきつつある点も大きいように感じます。

■Android OS普及と個人データ取得

グーグルに話を戻しますが、前述のようにグーグルが提供するサービスのユーザー数が増えれば増えるほど、また使用すればするほど、グーグルには個人データが集まってきます。PCでの使用に加え、アンドロイドOSのスマートフォンが普及していくことで、ますますその傾向が強まる可能性があります。

ちなみに、asymcoというハイテク市場分析系ブログで企業アナリストであるDediu氏が2011年末までのスマートフォンの普及動向を予測しています(図2)。

出所:asymco

左のブロックは米国調査会社ニールセンの調査データが出所です(2010年12月現在の最新の調査結果はこちら)。そして右側はDediu氏による推計で、緑色のアンドロイドOSシェア(人数ベース)が伸びているのがわかります。

■個人データ独占という課題

このように、グーグルはこれからも個人データの取得を拡大させる可能性がありますが、それは同時に、グーグル1社が独占的に個人データを収集するという課題も抱えることになります。その例がグーグルとヤフーの検索技術提携により、両社の日本での検索シェアは9割になることで、これに対しては反対する声や適切な競争環境を損なうことへの懸念もあります。

個人データが有効に活用されること自体は、世の中がより便利になる方向にあると思っています。ただ、よりよい世界になるには一方で課題も存在するのが現状です。


※参考情報

Google 年間検索ランキングで、2010 年を楽しく振り返ろう|Google Japan Blog
http://googlejapan.blogspot.com/2010/12/google-2010.html

Half of US population to use smartphones by end of 2011|asymco
http://www.asymco.com/2010/12/04/half-of-us-population-to-use-smartphones-by-end-of-2011/

U.S. Smartphone Battle Heats Up: Which is the “Most Desired” Operating System?|Nielsen
http://blog.nielsen.com/nielsenwire/online_mobile/us-smartphone-battle-heats-up/

経済教室|日本経済新聞2010年12月24日(金)朝刊


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投稿日 2010/11/27

書籍 「ソーシャルメディア維新」

「ソーシャルメディア維新」(オガワカズヒロ マイコミ新書)という本を読みました。今回のエントリーでは、同書で取り上げられているグーグルとフェイスブックを中心に見ていきます。

■「ソーシャルメディア維新」の主題

この本の内容を一言で表現すれば、ウェブトラフィックがグーグルの「検索エンジン」からフェイスブックなどの「ソーシャルメディア」へのシフトです。具体的には、各種ウェブサイトへ行く時に従来はグーグルで検索をしていたのが、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディア経由となっている状況を指しています。ちなみに副題でも、フェイスブックが塗り替えるインターネット勢力図、とあります。

少し古いデータですが、アメリカの調査会社Hitwiseの発表(2010年3月15日)によれば、アメリカでのアクセス数でフェイスブックがグーグルを抜いたようです(図1)。フェイスブックは前年同週比で185%増、一方のグーグルは9同%増としています。


■検索エンジンからソーシャルメディアへのパラダイムシフト

グーグルの検索エンジンからフェイスブックなどのソーシャルメディアへのシフトを見るため、まずはグーグルについて考えてみます。

グーグルは次のようなミッションを掲げている企業です。Google's mission is to organize the world's information and make it universally accessible and useful.(Googleの使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることである) グーグルがこれまでやってきたことは、まさにこのミッションに従ってのものであり、社会にあるありとあらゆる情報をウェブ上に整理し、検索可能な状況をつくる努力をしてきたのだと思います。

グーグルのすごさは、ネットでの検索エンジンで世界一になり、かつそこから検索連動型などの広告モデルを自分たちの収益に結びつけたことです。グーグルは多くの人がネットを使えば検索も利用されると考えており、だから彼らは検索可能な領域を増やし続けてきたのではないでしょうか。

このようなグーグルとユーザーのWinWinの状況を脅かしつつあるのが、フェイスブックなどのソーシャルメディアの存在です。ツイッターを使っていて実感することに、何かのサイトやコンテンツを知るきっかけがフォローしている人のつぶやく情報だということがよくあります。例えば話題になっているニュースを知るきっかけはツイッターという状況が普通に起こるようになりました。

「ソーシャルメディア維新」ではツイッター上を流れるつぶやきなどの総称をソーシャルストリームと表現し、グーグルのこれまでの情報整理の仕方ではソーシャルストリームのスピードに追いつけていない状況が発生していると言います。というのも、グーグルの考え方はウェブの最小単位をウェブページとし、それらのリンク構造を把握することで正確な検索技術を実現してきましたが、ソーシャルメディアの台頭で、ウェブページよりもその上に流れている情報やコンテンツが重要になってきたからで(図2)、その流れのスピードがグーグルにとって速すぎるのです。「ソーシャルメディア維新」では、このような状況の結果として、グーグルの検索エンジンからソーシャルメディアへのパラダイムシフトを起こしていると指摘しています。



■Facebookが目指すもの

フェイスブックのグーグルに対する優位性に、フェイスブックの5億人を超えるユーザーの人間関係情報(ソーシャルグラフ)があります。さらには、各ユーザーが持つ様々な情報への興味・関心もそうで、例えばLikeボタンにより、これらの興味関心までもユーザー同士でつながります。「ソーシャルメディア維新」という本では、フェイスブックが行おうとしているのは人間関係というネットワークをウェブに移すこと、すなわち人間関係のクラウド化であり、かつウェブ上にある様々なコンテンツとフェイスブック内の人間関係を結びつける「オープングラフ」だと指摘しています。

上記のようにグーグルの捉え方はウェブページとウェブページのリンクでしたが、フェイスブックはユーザーの人間関係や興味・関心のリンクを目指します。グーグルはウェブ上の情報を整理してくれますが、フェイスブックはウェブ上の情報を各ユーザーの自分好みにパーソナライズ化してくれる存在なのです。

■Facebookの課題

一方で、「ソーシャルメディア維新」ではフェイスブックが抱える課題についても言及しています。その最も大きな課題がプライバシー問題と言います。先ほどフェイスブックの優位性にユーザー同士の人間関係や興味・関心と書きましたが、実は優位性となる前提としてこれらの情報がオープンに公開されている必要があります。しかし、ユーザーにとっては当然ながら公開したくない情報もあり、それがユーザーとフェイスブックの間に齟齬が起こりプライバシー問題につながってしまうのです。

グーグルが自社の検索技術から検索連動型広告という収益モデルを築いたように、フェイスブックは自分たちが保有する優位性を収益に結び付けるためにこの課題をどう解決するか、世界中にいる5億人のユーザー数とそこから発生するウェブのトラフィックからの換金方法を見出した時、ソーシャルメディアによる維新が起こるのかもしれません。


※参考情報

Facebook Reaches Top Ranking in US (March 15, 2010) | Hitwise
http://weblogs.hitwise.com/heather-dougherty/2010/03/facebook_reaches_top_ranking_i.html

Google's Mission
http://www.google.com/corporate/facts.html


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。